下記、記事に「フォトリーディングのように、潜在意識に本の内容をインプットすることもできない。」という文言がございました。本件につきまして、弊社代表及びフォトリーディングチームが調査し、見解を発表いたします。
「速読」は科学的に不可能だと証明される。最も有効なのは「飛ばし読み」スキルを上げること
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170406-00135636-hbolz-soci [2017年4月6 日]
今回、上記記事にて参照されている原文の論文を確認いたしました。
すると、上記記事のにあるような
「フォトリーディングのように、潜在意識に本の内容をインプットすることもできない。」
という記述は、一切ございませんでした。
そのため、こちらの見解については、論文を読んだ本記事の執筆者が「おおむねの結論」として、執筆者自身の意見を追記したものであり、論文内容の正確な内容とは異なるものであることが分かりました。
原文は、「Association for Psychological Science(科学的心理学会)」の学会誌に掲載された 論文で、執筆者は、Keith Rayner 博士(カルフォルニア大学)をはじめとし、様々な心理学研究者5名です。
論文の概要を翻訳しますと、
- 速読により得られる予想 ーー 理解力を失うことなく、読むスピードをあげることには、否定しがたい魅力がある。
- 速読は、最近、スマートフォン等のデジタル機器における、速読アプリや技術登場により、さらに人気があがってきている。
- 研究結果では、理解力と、読書スピードの間には、トレードオフが存在する。2倍から3倍に読書スピードをあげながら、通常スピードの読書と同様レベルの、文書の理解ができるようにはなりそうもない。
- しかし文書の理解を完全にすることが、読者の目標でないのなら、速読やスキミングは、適度な理解をもたしながら、文書を処理することを可能にする。
- 文書の処理スピードをあげ、理解力を高めていく方法は、読書の練習を行い、ボキャブラリーを増やしていく等の、言語に熟達していくことである。
以上となります。
論文原文の全文を精読いたしましたが、「フォトリーディング」「潜在意識」という言葉はひとつも見当たりませんでした。
論文内の主要な論点は、RSVP(rapid serial visual presentation:高速逐次視覚提示)という手法を用いた、速読法の効果の検証です。この手法は、最近の速読アプリで使われているようですが、文書中の言葉のうち、一部を取り出して、ランダムもしくは定期的に表示するものです。
視野と認識の研究を踏まえると、文章から取り出された「言葉」だけを表示しても、理解力は高まらないと結論づけています。一方、取り出された「言葉」だけを表示するのではなく、文章をスキミングした場合には、異なる効果があるとしています。
スキミングによって、「スキップされた言葉は、「視力(Acuity)=明確に形態が理解できる力」が低いけれども、視点を固定された言葉の周辺にある言葉は、完全に無視されたものではないから」という理由です。
このように論文では、文書処理における「傍中心窩(parafovea)」の役割を肯定し、スキミングは、適度な理解をもたらし、文書処理スピードをあげることに肯定的です。
一方、周辺視野( periphery )を使って、文書ページ上の大きなセグメントを「読む」ことは、生物学的、心理学的に不可能と結論づけています。
その理由は、周辺視野は、文字のラインを識別することができないから、という視野についての研究結果に基づいてます(※ヤフーに転載された記事の執筆者は、この部分を参照して、「フォトリーディングのように、潜在意識に本の内容をインプットすることもできない」と自説を展開したようです)。
以上の、論文内容について、私どもの考察は、次のとおりです。
本論文の研究者は、前提条件として、「読む」を、下記のように定義しています。
「読む(reading)」とは、ひとつひとつの語句、フレーズ、文章を再現(recover)できるように、文字情報を処理すること。
この定義をもとに、周辺視野を使って文書処理をしても、それを再現することは生物学的、心理学的に不可能という結論を導き出しています。
しかしながら、「生物学的に不可能」というのは、早急な結論であると考察します。
映画「レインマン」でよく知られるようになった事実として、サヴァン症候群と障害とみなされている人の中には、膨大な量の書籍を一回読んだだけで全て記憶し、更にはそれを今度は逆から全て読み上げてしまったという記憶力を持つ人がいることは、周知の事実です。
なので「生物学的に不可能である」と断言するには、本論文執筆陣である心理学を専門分野とする研究者以外の見解も合わせて考察する必要があると考えます。
先ほどの「読む」という定義は、記憶を三段階である「想起」「保持」「記銘」を踏まえますと、 情報を「保持」「記銘」するために、文字情報を処理することを、「読む」としていることがわかります。
つまり「想起」できることは、「読む」ことにならないということを前提条件とした論文なのです。
この前提を踏まえれば、本論文の研究結果は、予想の範囲内だと考えられるでしょう。周辺視野で一度みただけで、情報の「保持」「記憶」まで可能だというのは、現時点では、さきほどのサヴァン症候群と区別された人々にみられる現象であり、そうでない普通の人々に、日常で見られる能力ではありません。
しかし「想起」できる力は、読書ではない、とは、言い切れるかどうかは、別の論点となります。もしそうであれば、多くのひとが、本を読む前に自然に行っている行為 ーー 本全体をざっとめくること ーー は、まったく読書に役だ立たない無駄な行為となります。
一度見たことがある画像は、その後、時間がたっても、高確率で当てることができるという研究結果があることからも、一度、手にとりめくった本は、情報の「想起」に資するかどうかについては、今後、科学的研究を待つ必要があると考えます。
ポールシーリィ博士が考案したフォトリーディングホールマインドシステムは、「想起」「保持」「記銘」を段階ごとに深めていくために、さまざまな文書処理法を組み合わせた5ステップの、情報処理・編集法となります。
その第3ステップが、「フォトリーディング」と呼ばれる周辺視野を使った作業となり、その目的は、文書に「馴染み」をもつことです。
どんな文書であっても、短時間で馴染みをもった後、本論文の研究者たちも、効果を実証している「スキミング」の力を高める、いくつもの文書処理技術を習得していきます。
さらに記憶を「保持」していくために、「質問づくり(マインドプロービング)」や「マインドマッピング」を組み合わせて、目的に応じた文書処理・編集ができるようになるためのシステムです。
本記事の執筆者は、記事後半で、効果的な文書処理ステップを紹介していますが、フォトリーディングホールマインドシステムは、むしろ執筆者の見解に沿った技術を体系的に習得する学習法です。
「フォトリーディング」を「潜在意識に本の内容をインプット」をする方法というのは、表面的な理解であり、その本質的な方法論および、それがもたらす効果とは全く異なるなものです。
周辺視野の活用は、心理学的な範疇に限られるものではなく、脳科学的に、これから検証していく分野であると考えます。
意識していなくても、脳は活発に活動していることはわかっていますから、今後、周辺視野を使ったときに活性している脳が、どのように記憶につながっていくかは、科学的な解明が待たれるところです。
これからもこのような見解をきっかけに、フォトリーディングを実践する私どもにとっても、単に仕事上の効果を得るだけではなく、より多くの人に安心して学んでいただけるように、研究者・教育者とともに、科学的・学術的な研究を深めていく必要性に気づかせていただきました。
今後は、そうした科学的研究と成果をもとに、さらにこの学習法をブラッシュアップしていく所存ですので、引続きご応援のほどよろしくお願いします。
アルマ・クリエイション株式会社
代表取締役 神田昌典
フォトリーディング担当一同