2022年5月に発売された神田昌典氏の著書『未来実現マーケティング~人生と社会の変革を加速する35の技術~』。今回は、me&nurse様の「未来実現マーケティング読書会」で行われた質疑応答の内容について、詳しくご紹介していきます。
主催者(以下、主):では質疑応答を始めていきたいと思います。まずは海外からトップバッターでTさんお願いいたします。
Tさん:私はフィンランドでドメスティックバイオレンス被害者の医療費の研究をしています。神田先生の本を読んで「貧困とジェンダー」が気になったのですが、逆転ポジショニングのお話が今日特にグッときました。やっぱり私たち看護師は、ボランティアで助けてあげたいというのがとても強いんです。
しかし神田先生の本を読んで、もっと「逆転ポジショニング」で、被害者の人たちを主役にするようなことを作っていった方がいいんだなと新しい気づきがありました。そうした方たちは、自分が主役になるまでに時間がかかる方や、私なんて・・という方がとても多いと思うんです。そういった場合に、その人たちが自信を持って何かをするためには今後どんなことが大切になってくるでしょうか。
神田(以下、神):フィンランドではそういうことが社会的に当たり前のように始まっているのではないかと思うのですが、フィンランドの状況を見て、日本ではなかなか同じように進めるのは難しいとお感じですか?
Tさん:はい。それはなぜかと言うと、暴力とか障害とかへの偏見が日本は強いと思うんですね。だからどんなに暴力の被害者が普通に「暴力から立ち直りましたよ」と言っても受け入れがたいというか・・。フィンランドでは、ソーシャルメディアで「私はそれから立ち直ってこんな仕事をしていますよ」とポジティブな人たちが多いのですが、日本だと「そこから逃げました」というところで終わっていると思うんですね。「夫から逃げました。難しいところから逃げました。障害があってもなんとか生きています」という、そのゴールがやっぱりフィンランドと違うのかなという風に思います。
神:なるほど。逆にフィンランドにいらっしゃるから、そういった状況を日本で1人でもわかってくれる人が増えると、日本はむしろ変化を加速できる土壌があるんじゃないかなと思いますね。
どうしたら広がるのかという話ですが、「障害やDVとはこういうものだ」「私はいかに不幸だったか」といった認識を変えるのは「体験」しかないです。だから、認識を覆すような体験をさせてあげることになります。実際にフィンランドで普通に行われている体験を日本の人に向けてやってみると、その少数は変わり始めるんですよね。
本にも書いてある通り、僕らはやることがたくさんあると「こんなのとてもできない」と諦めてしまいます。でも、自分のいるクリニックもしくはここに集まっている人たち(ナース)の中で、Tさんがやっていることを伝えて「これはすごく面白くて、すごく大切なことだから、DVに遭った人が病院に来たらぜひこれをやってあげてほしい」と言ってあげればいいです。
Tさんのコミュニティの中にこうした人が「たった2人」いれば、そこから認識が変わり始めます。それは100人でもなければ、10人でもなければ30人でもなければ、たった2人であるところがポイントです。
これはなぜかというと、人は自分と違ったコミュニケーションをする人とは、残念ながら心が通じ合わないのです。話が全然進まない。たとえば、アメリカで行われた面白い実験があります。ウィズコロナになって、昔は握手をギュッとしていたところが握手をしなくなったんです。「手を差し出しても握手されない体験」を、我々が受けたらどうでしょうか。「あれ?嫌われているのかな」と思いますよね。そこでまた別の人に握手をしようとしたら、また手が出てこなかった。そうすると「嫌われているのかな、自分はおかしいのかな」と思って、理由もわからず2回同じ経験が続くと心を閉ざしてしまうらしいんです。いわゆる行動自体を辞める。こちらで常識的に「これは相手のためだ」「それが習慣なんだ」と思っていることが全然通用しなくなった場合には、嫌になってしまうわけです。
このことから言えるのは、相手のことを嫌いでも、大切に思っていないわけでもないのに、お互いのコミュニケーションのパターンが違ってしまうと「たった2回で僕らはコミュニケーションを辞めてしまう」ということ。つまり、世の中のコミュニティで新しい変革を起こそうというときに、今までの日本のしきたりと違うことをしようとしても、2回でみんな萎んでしまうんですね。だから理解してくれる人の中で新しいコミュニケーションパターンを広げることで、一気に広げることができます。
その際に必要な人間はたった2人。次は何をやるかと言うと、たとえば今日40数人集まっているコミュニティの中からたった2人に新しいことをやってもらい、「それは面白い」「これは確かに必要だ」と思われたら、他の地域のナースさんのお茶会を開いて、同じようにやってあげる。すると、今度はコミュニティごとに複数回のコミュニケーションが生まれてくるんですね。ですから、実際のところ、たった2人から3倍も早いスピードで変革が起こり始めるんです。それが社会変革のプロセスになります。要はたった2人でいいのだから、やる前に諦めてしまうのはもったいないと考えてみてはいかがでしょうか。
主:ありがとうございます。では次の質問よろしいでしょうか。兵庫県のEさんから、「常識や前提を無視して発想するときのコツがあれば教えて頂けたら幸いです」という質問です。
Eさん:私は今日読書会に参加して、はじめはSDGsの4番を読んでいたのですが、14番の「海の豊かさを守ろう」が対ということで、思っていた答えが14の中にあったのがすごく驚きだったんです。その中で、常識や前提を無視するのが根本の問題解決になると聞いた際に、どうしても私自身は「既存の概念の無視」や「新しいチャレンジ」に苦手意識があると感じました。そこに対して新しい思考を得たいなと思い、質問させていただきました。
神:大抵、苦手意識を抱えている分野は「自分の強みだ」との考え方があります。それはなぜかというと、医療界・看護という分野でやっていくには、常識や前提を無視されたら困るんですね。よって、実は直感的に優れたとか、常識や枠を超えた発想をする人であっても、その中で活躍していくために、自分の力をある意味では一生懸命発揮しないように重石をかけるわけです。そうすることで、これまでの間に「医療界の中で自分はやっていける」ということを学んだわけですよね。
しかし、この質問をされているということは、実は医療界の中で「常識や前提を無視して発想し行動するとこと」が求められはじめているという領域にEさんが向かいはじめるということではないでしょうか。患者の身に立って、彼らの期待を超えるようなイノベーションをやっていかないと、自分が医療業界に入った思いがずっと犠牲にされてしまうということがあったのではないかと思います。今までその気持ちをおさえて学び、経験を積み重ねてきたからこそ、ようやく創造的な「相手の身に本当に必要なこと」を提案できるタイミングにきたんじゃないかと思います。
そういった意味では「もう十分私は言われた通りにきちっとやるスキルは身につけました、ご安心ください。でも、それ以上に求められていることをやるためには、ここでもう少し自由な発想を発信することに決めました」でいいと思いますよ。
Eさん:ありがとうございます。勇気づけられました。今までの経験、自分のリソースを強みにしてここから進んでいっていいんだと思えて嬉しかったです。頑張ります。
主:つづいて、秋田大学の助教授になったナースYさんからのご質問です。固定概念を進化させるときの視点を変える方法やコツはありますか?
神:視点を変えるのに一番便利なのは「ちょっとした連想」です。子どものときによく連想はしたはずなのに、大人になってからは「連想はいけない」「突飛な妄想はいけない」と教えられてきたため、そのスキルは封印しちゃったんですね。
ところが連想力っていうのは最高に水平思考。たとえば「この問題は、解決策が得られないと諦めてしまっている。でも今解決したい」と長年思うような問題があったとします。そしたら、どんな本でもいいのでぱっと開いて、目に飛び込んできた文字から連想してみてください。そうするとそこに驚くほど答えが書かれています。
実は人間は、直接的に答えを求めることをずっと習慣づけられていたりします。だから大学に合格するためには、正しい答えを言わなくてはいけない。しかし正しい答えではなく自分の中で「何が腑に落ちるのか」ということを連想によって、手繰り寄せていく方法があります。それをぜひやってみてください。極端な話、空を見て「どんな雲の形が今空に浮かんでいるのか」というところに意識を集めても、枠を広げた考えの中から答えを選択することができるようになっていきます。今まではそういうことは「何で?」と言われがちだったんですが、最近では「メタファー思考」という風に言われていて、イメージをきっかけに「枠にとらわれないで思考していく」ということが出来始めるようになりました。
Yさん:ありがとうございます。今回質問させていただいたのが、看護師に限らず資格を持っている職種は、自分の肩書きにさらに「自分はこういうもんだ」との固定概念を持ちがちかなと思っています。だから、そこから固定概念を外すのは難しいんのではないかと思っていたのですが、先生はご自分の中で肩書きを変えられた事例があったので、そのときのことが知りたいです。
神:ちょっと難しい本ですが、『頭脳の果て アインシュタイン・ファクター』というウィン・ウエンガー博士が書かれた良書があります。すでに亡くなられましたが、とても素晴らしい先生です。この本は、連想というものを知的活動に紐づけた著書で、読むと「こういう風に説明をしていくんだ」「複雑な問題はこういう風に単純化して解決していくことができるんだ」というプロセスが書かれていることがわかります。連想や固定概念の外し方に関しては、こちらを参考にされるといいのではないでしょうか。
主:ありがとうございます。続いて、福島のHさんから「SDGsに対して、ワクワクするアイディアが思い付くために心掛けていることや神田さんがこれまでしてきたことはどんなことですか?」という質問です。
神:おもしろいですね。ナースの方々はプロセスをしっかりと間違いなくこなしていくことが大切と思っていたので、「発想」についてこんなに関心を持っている方が多いとは思いませんでした。Hさんはどうして発想に興味を持ったのですか?発想されたらお医者さんが困ることはないんでしょうか。
Hさん:私自身は、「人の真似」と言いますか、これいいなと思ったものを同じように取り入れるのが得意だなと思っています。しかし、「新しいことをやっていく」とか「今この問題にぶち当たっているんだけど自分の中でどうしようと考えること」は本当に苦手なんです。何かと何かを組み合わせたらいいんだよ、といったアドバイスはいろいろ聞くことがあるのですが、それが自分の中ではとても苦手意識があって。でも、この本に書かれていることは、とてもワクワクする楽しいアイディアがいっぱいで、私もこういうアイディアが出てくるようになったらいいなと思って質問いたしました。
神:Hさんはまだお若いんじゃないですか。先ほどの話じゃないですが、自分の強みはもう自覚しているところがありますよね。そうすると、自分でやるのではなくて「まずは真似する」ところを突き詰めたらそれでいいのではないでしょうか。この本を読んで面白いアイディアを出す人がいるんだなと思ってくれたのだとしたら、周りにもそういう先輩はいませんかね。先ほどのフィンランドの方もそうですし、新しいことを始めようというナースの方々が非常に多いので、ぜひそこから始めたらどうですかね。自分のオリジナルっていうものを急いで作る必要はないと思います。
Hさんは自分の強みを持っていらっしゃるので、むしろ新しいことをやっているところに「自分もちょっと一緒に協力する」みたいなことで、再現性があることをやってもらうことにフォーカスしたらいいかもしれませんね。今度はHさんが「オリジナルな人を周りに広げる非常に重要な役割」を果たせるのでは、と思いますがいかがでしょうか。
Hさん:はい、ありがとうございます。とても勇気づけられました。
神:世の中はそういう人を必要としています。そうでなければ、どんなユニークなアイディアを出したとしても途中で潰れてしまいますから。そういった面では、今のタイミングで「人をサポートすることによってできること」はすごく大きいと思いますよ。ぜひ頑張ってください。
主:では群馬在住の男性Kさんからの質問です。「最強のマーケティング戦略とは祭りだと書かれていましたが、私の町でも、駅前を中心とした実行委員を立ち上げて祭りを作り上げていくところです。課題は継続することなんですが、多職種の実行員がより強いチームになるために先生からのアドバイスをください」という質問です。
Kさん:群馬県の太田市という人口が22万人ぐらいの町に住んでいます。町でやっている祭りがコロナで中止されて出来なかったため、地域で飲食業などをやっている人たちと実行委員会を立ち上げ「寂れた町を復活させよう」とお祭り的なことを3、4回やっています。来てくれる方も300人から500人ぐらいで徐々に増えているのですが、いろんな職種の方の意見をまとめながらいいものを作っていくことに悶々と悩んでいます。
神:なるほど。1人で悩むと悶々となりますし、祭りというのは実は継続するのは本当に難しいですし、また継続して落ちぶれていくというところも正直あります。
そういった面では群馬の場合、三橋さんという方が前橋にいますので、Facebookで見つけて連絡をとるといいと思いますね。前橋でお祭り男と言われていまして「親方ホルモン」っていうレストランをやっています。今はコロナ渦にも関わらずものすごく頑張っていて求心力がある方です。おそらく群馬の同郷ですから非常によくしてくれると思いますし、またいろんな相乗効果があるのではないでしょうか。
ちなみに、祭りというのは神社関連で実行委員会やっているのでしょうか?
Kさん:いや、神社は全く関係がないですね。太田駅前のちょっと寂れた商店街に人を集めてイベントをやり続けようみたいな試みです。
神:まずはやっぱり神社にお参りをするということが大事です。商店街がそもそもなぜできたかというと、お宮参りをする際に参道があって、そこを人が横行したので商店街ができたっていうところが歴史的にあります。つまり、町の神社を大切にするということは、実は商売繁盛の原点なんですよ。1回行くと流れが変わります。
僕も以前、新潟の震災などで大変苦労されていた町の復興プロセスを見てきたことがあります。本当に寒いなか「救援物資も届かない、さあどこから復興しようか・・」というときに、崩れてしまった神社の鳥居を復興するところからお願いしたいと町の人から頼まれました。僕が「石油や灯油じゃないのか」と言ったら、「灯油は何とかなるが、神社の鳥居が直らないと、子どもたちが遊ぶ遊具があっても遊ぶ場所がない。だからそこから整えたい」とリクエストがあったんですね。宗教的なところに手をかけていいのかという物議も出ましたが、子どもたちの遊び場であり、町の象徴である鳥居を直し、遊具を建て直したっていうところから復興が始まったんですよね。
町っていうのは、結構面白いことに「理由がわからず運が悪い」ということがあるんです。それが地元と土地への感謝が巡り始めると、今までのブロックが取れたりします。結果、人間もいい人が集まってきて協力的な人が集まるっていうのが経験則ではございます。祭りと神社というのは密接に関係していますから、一度実行委員会のみなさんでご挨拶に行くということが僕は大切だと思いますよ。
主:ありがとうございます。では続いて、大きな病院の看護部長さんMさんのご質問です。「日本では医療の質はある程度担保されていますが、経営を学んでいない専門職が医療経営を担っているためほとんどの病院が赤字経営です。選ばれる病院になるためのマーケティング戦略のヒントがあれば教えてください」ということです。
神:厳しい話ですが、病院経営も学校経営も全く同じで、ほとんどが補助金なしではやっていけません。損益計算書や賃借対照表を見るとひどい状況で、「リストラをしないといけない」「お金を借りながらごまかしてやっている」というのが正直なところです。ですから本当のところを言うと、院の経営をドラスティックに、病院以外のところで株式会社を作るようなことはやっていく必要があるかなと。病院の建物を維持するだけでもものすごいお金がかかるため、より遠隔で地域ネットワークを組んで、ということを国としてやっていかなくてはいけないだろうなと僕は思います。
Mさん:そもそも医療者たちはマーケティングっていう言葉自体に馴染みがないと思います。あとは、競合する病院が周りにいっぱいあることはわかっているけれど何もしない人たちなんですね。このままだと潰れるよねっていうのは感じるんですけど、選ばれる病院になるためにはどうすればいいのかなと思っています。
神:大丈夫、潰れないです。地域で大きな病院をやっていると、銀行がお金を貸してくれるので何とかなります。結局誰かのせいにするだけで、学校なんかもずっと赤字で何とか存続はするんです。末路は乗っ取られて終わるケースも多いんですが・・。存続はするから、皆さんも職を失うということはないのでそこは安心です。
ただ、そういった危機感を持っているということはすごく大事。危機感を持つというのは、要は「ワクワクすること」がしたいんですよ。どういうことかというと、「今ここにいる人たちはすごくやる気も能力もある、だけど力が活かせてない」という際に、経営の問題にひっかかるのです。ところが、看護師が力を合わせて地域包括医療の中核的な役割を果たすようになると、その瞬間に経営のことを考えられるようになります。
たとえば、その瞬間に駅前の大型開発が行われて超高層マンションが建つことになり、「12階に介護フロアを作りたいんだけど、それを全部おたくの病院に任せたい」といった話が来るのです。そうすると、どんなに経営が廃れていてもワクワクしちゃうから未来しか見えなくなる。そのうちに、実は経営って回復するものなのです。マーケティングという言葉はやっぱり金儲けなので正直なところマーケティングというのを口に出したら、病院は良くないですよ。
実際、ルイ・ヴィトンとかエルメスは「マーケティング」という言葉は絶対に使いません。めちゃくちゃマーケティングしているけれど言葉は使わない。うちはいい商品・製品を作っているだけなんです、って。それを貫き通しているのです。だから、やっぱり病院もそうだと思いますよ。Mさんも本当に良い看護師であろうとすることに懸命であり続けることで、大きな機会が降ってきますから。そこでやることはまさに地域包括医療のマーケティングだったりするんですね。
Mさん:すごく勉強になります。とにかく、私たちが提供する医療をきちんと追求していくということ、それをしっかり考えていくということから始めたいと思います。
神:そういった看護師の方が出てきてリーダーシップを発揮すると、本当にそれが周りの地域も元気にします。ぜひちょっとそれをやっていただければ嬉しいですね。何か私ができることがあれば声をかけてください。
Mさん:ありがとうございます。
主:前から質問したいと言っていた、今度できるme&nurseの北海道支部の代表でもあるMさん、質問をお願いしていいですか。
Mさん:病院の中ではお医者さんが頂点というヒエラルキーの中で、看護師が「良い医療」「良い看護」みたいなことをしようとしても、なかなか難しい病院は多いと思います。人のために頑張り続けなければならない環境下において、こうした現状をどう打破していけばいいのか、伺えたら嬉しいなと思って質問させてもらいました。
神:それは人のために頑張っているがゆえに、大変なヒエラルキーのために、動きづらいような状況があるっていうことですね。
Mさん:そうですね、僕らは長年働く中で「自分の強み」も出てきて、ある領域に関しては医者よりも強くなっているところがあるけれど、ヒエラルキーの中では下に位置づけられますし、そういう意味で、労働量・責任・金銭的なバランスを欠いていたり、医師の気に入らないことがあると激しく叱責されたりといったことで思いが失墜するのを繰り返してしまいます。
神:辞めたらいいんじゃないですかね。またはドクターを逆に派遣するとか、病院に理事長を派遣するとかそっちの仕事をやっちゃうとかね。辞めたらいいなっていうのはどうしてかというと、別に本格的に辞める必要はないんですけど、実力がある人がヒエラルキーの下に入った場合、大抵そのヒエラルキーのことを悪く言い続けるんですよ。悪く言い続けるものの、実力がある人は残るんです。
だけど、悪口を言って不満をためていると、それは何よりも健康に影響を与えますから。そう考えると、要は「辞めてもいいや」と思えるぐらい外にネットワークを広げるといいですよ。ヒエラルキーというのは、その中にずっといると大変だけど、横につながっていったときに簡単にひっくり返されます。だから横で評価されると「Mさんすごい」ってなります。ある分野でいろんな大学の教授とつながったりして、「大きなプロジェクトの案件が入ってきたのでぜひ僕に任せてください」「他の病院からこういった案件をいただきました」と言ってみる。そうすると、ヒエラルキーにいる人はころっと変わります。だから実力がヒエラルキーから枠を超えたんですよ。なので、辞めたければ辞めて、だけど辞める前に周りの人たちとつながって実力を見せつけてから辞めましょう。
Mさん:すごく心に刺さります。やっぱりネットワークやつながりを作ることはすごく大切だなと改めて思いました。貴重な学びをありがとうございます。
神:読書会に来ていた一流会社の子会社の社員の方が、会社の悪口をめちゃくちゃ言っていたんです。そんな時に、読書会をやり始めて外に出たんですよ。そしたら、外に出た瞬間に彼の実力に気づいた会社からいっぱいラブコールがあって、彼は「週刊ダイヤモンド」で取り上げられたんですね。それに気付いた親会社が「君、面白いことやっているから、うちに来て教えてくれないか」と言うようになった。とたんに今度は、彼のいる子会社の上司が気づき次々とプロジェクトに登用されて、今ではチーフマーケティングオフィサーになりました。だからそういった意味で、実力のある人はあるタイミングで外に出ないといけない。中から変えるために外に出ないといけないというのはあります。頑張ってください。応援しています。
主:次は、「今チャレンジしている重症児者の居場所と出番を作る事業所を開いていて、福祉業界を一般の人に知ってもらうことを楽しく広げるヒントをください」というRさんからの質問です。
Rさん:今回のお話とても感激しました。私も、今まさに「逆転ポジション」なんです。6歳の息子が希少難病になって人生が全く変わっちゃったんですけど、そこからみんなで集まる場所が欲しいなと思って親の会を作りました。去年には認定NPOになって、今年は「ウサギの耳」という誰も孤立させない事業所を開設しました。
しかし、看護師さんがいない。職員も教育しないといけないし大変で。居場所を作るために、単に障害児を預かるのではなくて、地元の人との取り組みとか、近所のスーパーへのお買いものプログラムとか横の繋がりはもう始まっているのに、看護師さんがこない。大変なことはたくさんあるんですが、とにかく楽しいのが大好きなので、いろんなチャレンジをしています。そのときにヒントやエッセンスみたいなのがもしあれば教えていただきたいです。
神:いいんじゃないですか。Rさんはそうやって大変と言いながらも、誰よりも明るい。
Rさん:泣けないんですよ、性格的に。以前はシクシク泣いていたんですけど。こういう明るいお母ちゃんが日本にいた方がいいなと思って。その輪をどんどん広げていきたいんです。
神:泣きそうだとおっしゃいますけどね、でもすごく元気そう。なので、Rさんは大丈夫ってみんな思うから、だからみんな集まってこない。本当に落ち込む姿を見せると、実は周りで助けてくれる人がいっぱいいるかもしれない。今までは自分は息子が大変だから「頑張ろう」って1人で格闘されてきたと思うんですよね。格闘したがゆえに、明るさを身につけた。明るさという鎧をまとっているのだけど、やっぱり看護師の人ってみんな同じなんですよ。人を助けるために明るく振る舞うっていうところがあって、そうすると逆に人を寄せ付けないっていう可能性はあります。僕は思うんですけど、タイミングで本当に皆さんのヘルプが必要になったら、多分このコミュニティには喜んで助けてくれる人たちがたくさんいると思いますよ。
Rさん:子どもたちは本当にかわいいんですよ。でも重症児者は大変そうとか、責任が重いからとナースに嫌われちゃうのかな、って。
神:そこはもう少しリラックスしてもいいかもしれないですね。僕は「ナースに嫌われちゃう」とは思っていなくて、ナースの人だって重症児者が誰よりも愛おしいっていう人は少なくないはずです。僕は門外漢だからそれは言えないけれど、重症児者にケアをする時間を使うことに対してすごく大きな心の開放を感じていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。それに、先ほど「クリエイティブにはどうすればなれるんですか」と質問してくれた方も、むしろそういう風に元気で1人でやってらっしゃる方を必要としているんじゃないかなと思います。そういった面では、このコミュニティに属していること自体がもう既に準備は始まっているという風に思いました。
Rさん:実はスタートしているんですね。ありがとうございます。
主:チャット欄には、「嫌いじゃないですよ。好きな人もたくさんいますよ。」というコメントも来ていますよ。
Rさん:嬉しい、ありがとうございます。
主:神田先生、1時間にわたってお答えいただきありがとうございました。このような機会はほぼ皆無に等しいなかで、皆さんとても有意義な時間だったのではないかと思います。me&nurseでは、日ごろからこのような活動をさせていただいていますので、ぜひ興味を持って参加していただければと思います。本日はありがとうございました。
(まとめ)
今回は、me&nurse様の「未来実現マーケティング読書会」で行われた質疑応答の内容をお届けしました。
リードフォーアクションは、読書を通して仲間と共にダイアログをし、新しい自分に出会うための経験をすることができる「世界最大級の行動するための読書会」です。本を通じて、仲間と出会い対話をすることで、新しいアイディアが生まれたり、新しいアクションへ繋げたりすることができます。
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