団体、チーム、コミュニティにて継続開催中の、『未来実現マーケティング』読書会ですが、
今回は、某飲料販社様の営業に携わるかた78名様と開催しました読書会での質疑応答の様子をご紹介します。
主催者(以下、主):著者に質問してみたいこと、聞いてみたいこと、悩んでいることがあれば、ぜひこの機会に手を挙げてもらえたらと思うのですが、どなたか質問したい方はいらっしゃいますか?
主:では、トップバッターでOさんよろしくお願いいたします。
主(Oさん):私は読書がすごく苦手で、この本を読み始めるまで少し臆病な気持ちでいたのですが、「点で読む」ことができたので、すごく楽しい時間を過ごすことができました。ありがとうございます。特に私は本書のSGDs「9」に興味があったので、こちらを読ませていただいたのですが、「9」のみ“らせん線構造”になかったように思いました。なぜ“らせん構造”がなかったのか、という点を詳しく伺えましたら幸いです。
神田(以下、神):本質的なご質問をありがとうございます。「なぜ無いか」というのは開発者じゃないので、実際のところは分からないんですが、私は論理構造にすごく興味があり、「どういうふうに論理や抽象的な概念を説明するといいのか」というところはずっと研究をしています。そうすると、多くの「わかりやすい」「浸透しやすい」論理構造っていうのは、対称形になっているのです。だから、「対となる概念があるはずだ」というところを、SDGsのフレームで研究していったら確かに対になっていたというわけです。
9になる対がないのは、実はSDGsの番付表を見ると分かります。そうすると、18番があるのです。でも、それに添えられた言葉はないんですよ。もう1回ちょっとSGDsの表を見てほしいんですが、最後にはSDGsのマークが入っているんです。つまり、9の対照的な概念は「全てを包括する」と言えるんですね。
包括するってのは一体何かと言うと、結局そこには全てを包括するので、「これは誰ができるんですか?」ということになります。だとすると、おそらく僕の概念だと「自分」なんです。だから、「自分」が18番に入るんです。日本語だとよく「十八番(おはこ)」って言うじゃないですか。だから自分の得意分野を枠にはめずに見つけてくださいっていうことだと思います。17番までを枠にはめて、言われた通りやれば、平和が成し遂げられる、サステナブルな仕組みができるかと言われればそうではなくて、自分の得意分野を見いだし、自分らしさを生かすからこそ、実はトータルでサステナブルになっていくというメカニズムになっているんですね。
主(Oさん):たまたまの疑問から、非常に深いお話が聞けて良かったです。大変ありがとうございます。
主(Yさん):読書会は繁栄する国作りの原動力になる場面があるのか、という点を質問させてください。自分自身、読書会というものに今日初めて参加させていただいて、すごく楽しかったんですね。それがもっと大きく言えば、特に今日本がちょっと沈み気味なので、どうやったら国作りにもっと反映できるのかな、どう繋げられるのかな、と思って質問させていただきました。
神:ありがとうございます。この本にも書いてありますが、歴史的に見ると、時代の変わり目にはいつも「読書」を通じて人が集まり、そして国を変革する原動力になってきたんですね。それの典型的な例は、江戸末期の私塾ですね。松下村塾をはじめ、全国津々浦々で読書会が開催されていました。そこで何をやっていたかっていうと、本を持ち寄って、自分の解釈を言って、国家について語っていたわけです。
私塾で誰が先生になったかと言うと、食えなくなった侍。侍をやっていても食えなくなったからやることがなくて、おそらく生活をするためにこの私塾を起こしたんだと思うんですね。時代の変動というのは、なくなる職業と作られる職業があって、その間には常に本・ダイアログがあった。つまり、ダイアログを起こすために、本というのは素晴らしいきっかけになるということになります。
次にそれが起こったのは戦後の1946年。もう戦後もうみんな何にもなくなっちゃって困っているときに、岩波書店からある1冊の本が出版されました。それが、西田幾多郎の「善の研究」という難しい本なんですが、これが発売されたときにもう2日とか3日とかみんな行列を作ってその本を求めたと言います。僕は写真を見たときに鳥肌が立ってですね、おにぎり1個食べるのに体を売っていた時代、そのときに何万円もするような当時の金銭感覚で、なぜそこに行列を作って並んだのかと言えば、やっぱり人は時代の変わり目が「新しい価値を作るタイミング」なんです。生きていくためには、「書」が必要だったんですね。
だから東日本大震災があった際、ある男性が読書会をやってその周りの人たちが急に元気になり始めたと聞いて、私はいよいよ「本をきっかけとした読書会というものを時代に浸透させていかなくては」と思い立ちました。この読書会は、今年11年目に入りましたが、みんなでほぼ手弁当で育ってきたというのが実際のところです。
それを反映する国作りということですが、やっぱ本は「きっかけ」でしかないです。本をきっかけにすると、自分の考えを語りやすいんですよ。たとえば、自分の気付いていない「自分の物語」や「自分の強さ」について本は語れるんです。そして、本をきっかけに、それぞれの多様性のある組織、多様性のある人員、メンバーのいいところが伝わっていくんですよ。これがないと、組織は苦しいときにみんな敵になるし、疑心暗鬼になる。そういうところに本を持ち込むと、ようやく会話が始まって、自分らしさが取り戻せるようになります。
そういった面では反映する国作りというか、小さく考えれば「反映する自分作り」「反映する会社作り・チーム作り」のように、小さな部署内だけでも本をきっかけに話し合うのは、人間にとってコミュニケーションできない相手とコミュニケーションするための優れた手法ではないかなと思っています。
主:当社では、割と「活字を読む」という指導をするんですが、なかなかその意義や意味を体感する機会が作れていなかったので、今のお話は本当に有難かったです。対話のための場作りをこれから社内でも作っていきたいなと思います。
神:貴社にも創業者が書かれたバイブルのような本はあるんじゃないでしょうか。実は、一つ面白い心理があるんですが、やっぱり愛社心のある人が集まるし、必ず業績が伸びるんです。しかも、創業者のことについて熱っぽく語っている組織は絶対伸びます。それはどういうケースで見てきたかと言うと、ソニーの例があります。社員さんが集まると、みんな目を真っ赤にして森田さんのことや井深さんのことを言い続けるんですね。ソニーの役員を観察していると、ずっとその話しかしないんですが、とても居心地がいいんです。同じようなことがソフトバンクでもありました。みんな創業者のことを、「こんなことで苦しんだ」って悪口言いながらも目はウルウルしていて、大好きっていうオーラを出すんですよね。だから、もし機会があれば、創業者の本なんかを紹介という形で改めて読むとすごく発見があると思います。
主:業界的にはちょっと厳しい頭打ちの業界にいるので、そのあたりの何かヒントが見つかるような読書会ができるといいなと思いました。
主(Cさん):ひとつ神田先生に質問があります。私はちょうどSDGsの11番・まち作りのところを考えています。その行動変容に繋げるところで、いろんな理論・思いやりが大切だと思うのですが、個人の行動変容に繋げるとか、組織を前向きに変えていくために、何か秘訣があればお聞かせ願えればと思っております。
神:素晴らしいですね。こういう質問は組織全体のことを考えていないとできないですからね。一番簡単なことは、「人」ですよね。人が誰かっていうので組織も大きく違ってきますね。
わかりやすく言ってしまえば、「人の力」を活かすという点において、リーダーとしては「コミュニケーションの仕組み」をどうやって作っていくかが非常に重要なわけです。今、いろんな学校や組織で「これはやっちゃいけない」「これについては前例がない」って言うのですが、それはどこの組織だって同じなんですよね。もちろん読書会だって前例がないわけですよ。でも、やること自体はそれほどリスクがなくて、実はお金も掛からないわけでしょう。そうすると、「やってみました、良かったですね」というのが前例になるんですよ。
さらに面白いのは、変化は周辺からしか起こらないということ。本体からは起こらないんですよ。だから、変化が起こるとしたまさに「子会社から」なんです。本体が大きくなれば大きくなるほど官僚的なってしまうから、どんどんDNAが薄れていくんですよ。一方で、創業当時の人や創業当時のDNAが息づいているのは子会社だったりする。そこでもう1回変革が起こるときには、子会社初の変革が、結果大手・中央の方にどんどんどんどん伝染していくんですね。そういうことを作り上げるとすれば、個人の行動変容を起こしたり、組織を前向きに促したりする秘訣というのは、子会社から変わりましょう、面白いと思ったことをやりましょう、ということです。
もっと言えば、今の大人たちは形になっちゃって動けなくなっているから、子どもが良いですね。子どものことはみんな敵にできないですからね。だから「小学校でこういうこと言っています」「小学校の現場で子どもたちがこれを求めています」「こういうような発案がありましたが、いかがでしょうか」って言うと、本社の人たちも「そうか、何とかしよう」となってくれるところがあります。
主:ありがとうございます。では続いて、Hさんお願いいたします。
主(Hさん):僕は前職で漢方をずっとやっていたのですが、漢方も良いものとそれを緩和させるものの組み合わせで出来ているので、これも対という構造の考え方なのかなと思いました。それで今、9章と18章が対構造であることを聞いたので、適材適所と未来実現っていうところを絡ませるヒントは、9章にあると捉えていいのかなと思ったのですがいかがでしょうか。
神:僕はそこまで思い及ばなかったのですが、おそらくHさんがそのように感じてくださっているのであれば、まさにその通りだと思います。キーワードとしては本当に「適材適所」というところなので、新規事業の適材適所というのは一つのテーマとして面白いんじゃないかなと思いますね。アフターコロナの時代に新規事業を発案するチームで適材適所をやっていくのは、とても意義あることです。
主:では、最後にこの「らせん構造」繋がりで、Sさんご質問をお願いいたします。
主(Sさん):らせん構造の話は初めて伺ったんですが、ふと「物事はゴールから考えろ」ということを私の中で思い出しました。そういった考え方とらせん構造が、同じものなのか否なるものなのか、そういったところをお聞かせいただければと思いまして質問しました。
神:ライフサイエンスというか、生命という観点からの非常に哲学的な質問じゃないかなと思いますね。始めが終わり、終わりが初めであると。まさに人生ってそうですよね。やっぱり走馬灯のように亡くなるときに思い出すのは、お母さんのことじゃないですか。お父さんのことを思い出して亡くなる人は誰もいなくて、必ずお母さんだという、そういう行動をしているんですよ。物語の原則も全く同じで、物語の最初に出てくるモチーフは、物語の最後に出てくるモチーフなんですよね。つまり、必ず物語というのは前後が一致するような構造になっている。また、古今東西の神話の歴史を振り返ってみても、そのような構造になっているわけなんですね。これを踏まえると、問いを知りたければ最後がどうなるかっていうのを知れば、一番初めに何を起こすのかがわかります。初めに何をやるかっていうことがわかれば、最後にどのような結果になるのかというのもわかるんですね。
そういった面では、会社というのも、創業者が将来どういうふうになりたかったのか、ここを踏まえたはじめの一歩を踏めるかどうかがとても大事です。こういうのはつい失われがちなんですが、リーダーというのは、未来を見ながら個別の視点に応じて「未来の中で、今僕らはここにいる」と働く意味を伝えられる人ではないかなと思うんですよね。
今日皆さんとお話して、私がすごく感じたのは「皆さんは自分自身が働く意味を知っている」ということ。これはなかなかない会社ですから、素晴らしい会社だと知っていただきたいですね。
今の会社のキーワードは、ウェルビーイングだと思うんです。ただ、ウェルビーイングの会社というのは、実際のところほとんどない。そう考えると、やっぱり貴社の場合は違った雰囲気・空気感があると思うんですね。ほとんどの会社は、みんな目も合わせないし、自分の言葉で自分の意見を語るっていうこと自体が不自由な会社ばかりですが、その中で皆さんの一言にはすごく血が通っているので、一人一人を大切にしている会社だと伝わってきます。今日は皆さんとお話できて、私が元気をもらいました。本当にありがとうございます。
主:神田先生ありがとうございました。では、こちらで読書会を終了したいと思います。
●リードフォーアクションとは?
今回は、企業内読書会での質疑応答シーンを抜粋して、皆様にお届けしました。
リードフォーアクションとは、「世界最大級の行動するための読書会」。この会に参加する最大のメリットは、読書を通して仲間と共にダイアログをし、新しい自分に出会うための経験ができる点にあります。
リードフォーアクションに興味を持たれた方は、ぜひこの機会に「未来実現マーケティング読書会」に参加してみませんか?
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