タイトル:学習する組織 ― システム思考で未来を創造する
著者:ピーター・M・センゲ
著者略歴
マサチューセッツ工科大学(MIT)経営大学院上級講師、組織学習協会(SoL)創設者。MIT スローンビジネススクールの博士課程を修了、同校教授を経て現職。旧来の階層的なマネジメント・パラダイムの限界を指摘し、自律的で柔軟に変化しつづける「学習する組織」の理論を提唱。20 世紀のビジネス戦略に最も大きな影響を与えた1人と評される。その活動は理論構築のみにとどまらず、ビジネス・教育・医療・政府の世界中のリーダーたちとさまざまな分野で協働し、学習コミュニティづくりを通じて組織・社会の課題解決に取り組んでいる。
ファシリテーターの感想・おすすめのポイント
自律的かつ柔軟に進化しつづける「学習する組織」のコンセプトと構築法を説いた本書は、世界100万部を超えるベストセラーとなり、90年代のビジネス界に一大ムーブメントを巻き起こした。著者ピーター・センゲの深い人間洞察と豊富なケーススタディに裏打ちされた本書を通じて、管理ではなく学習を、正解への固執ではなく好奇心を、恐怖ではなく愛を基盤とする、新たな「マネジメント」のあり方が見えてくる。
第I部 いかに私たち自身の行動が私たちの現実を生み出すか……そして私たちはいかにそれを変えられるか
第1章 「われに支点を与えよ。さらば片手で世界を動かさん」
第2章 あなたの組織は学習障害を抱えていないか?
第3章 システムの呪縛か、私たち自身の考え方の呪縛か?
第II部 システム思考――「学習する組織」の要
第4章 システム思考の法則
第5章 意識の変容
第6章 「自然」の型―出来事を制御する型を特定する
第7章 自己限定的な成長か、自律的な成長か
第III部 核となるディシプリン――「学習する組織」の構築
第8章 自己マスタリー
第9章 メンタル・モデル
第10章 共有ビジョン
第11章 チーム学習
第IV部 実践からの振り返り
第12章 基盤
第13章 推進力
第14章 戦略
第15章 リーダーの新しい仕事
第16章 システム市民
第17章 「学習する組織」の最前線
第V部 結び
第18章 分かたれることのない全体
第I部 いかに私たち自身の行動が私たちの現実を生み出すか……そして私たちはいかにそれを変えられるか
第1章 「われに支点を与えよ。さらば片手で世界を動かさん」
ー学習する組織のディシプリン
真に「学習する」ことができ、自らの最高の志を実現する能力を継続的位に高めていくことができる組織を築き上げる上では、五つの一つ一つが不可欠な特質となる。
システム思考
システム思考は、パターンの全体を明らかにして、それを効果的に変える方法を見つけるための概念的枠組みであり、過去五〇年にわたって開発されてきた一連の知識とツールである。
自己マスタリー
自己マスタリーというディシプリンは、継続的に私たちの個人のビジョンを明確にし、それを深めることであり、エネルギーを集中させること、忍耐力を身につけること、そして、現実を客観的に見ることである。
メンタル・モデル
メンタル・モデルとは、私たちがどのように世界を理解し、どのように行動するかに影響を及ぼす、深く染み込んだ前提、一般概念であり、あるいは創造やイメージでもある。
共有ビジョン
リーダーシップの分野で何千年にもわたって組織に刺激を与え続ける考えがあるとしたら、それは、私たちが創り出そうとする未来の共通像を掲げる力である。
チーム学習
チーム学習はきわめて重要である。なぜなら、現代の組織における学習の基本単位は個人ではなくチームであるからだ。
第2章 あなたの組織は学習障害を抱えていないか?
①「私の仕事は〇〇だから」
組織内の人たちが自分の職務にだけ焦点を当てていると、すべての職務が相互に作用したときに生み出される結果に対して、責任感をほとんどもたない。
②「悪いのはあちら」
私たちが自分の職務にだけ焦点を当てていると、自分自身の行為が、その職務の境界を越えてどのように影響するかが見えなくなる。
③ 先制攻撃の幻想
ビジネスであれ、政治であれ、「あちらにいる敵」と戦おうとして攻撃的になるとき、私たちはー私たちがそれを何と呼ぼうとー受身なのである。
④ 出来事への執着
出来事に焦点を当てている場合、できてせいぜい、事前に出来事を予測して、最適な反応をすることぐらいだ。しかし、未来を創造するための学びは起こらない。
⑤ ゆでガエルの寓話
企業の失敗に関するシステム研究において、徐々に進行する脅威への不適応が非常に多いことから、「ゆでガエル」の寓話が生まれた。
⑥「経験から学ぶ」という幻想
私たちにとって、最善の学習は経験を通じた学習なのだが、多くの場合最も重要な意思決定がもたらす結果を私たちが直接には経験できないのだ。
⑦ 経営陣の神話
経営陣は日常的な問題に対しては、十分に機能するだろう。だが、きまりが悪かったり、脅威を感じるような複雑な問題に直面すると、「チーム精神」は荒れ果てるようだ。
第3章 システムの呪縛か、私たち自身の考え方の呪縛か?
ビール・ゲームの教訓
1構造が挙動に影響を与える
人が替わっても、同一の構造の中では定性的に同じような結果を生み出す傾向がある。
2人間のシステムにおける構造はとらえにくい
「構造」は個人に対する外的制約だと私たちは考えがちだ。人間のシステムにおける構造には、人々がどのように意思決定を行うかー認識や目標やルールや規範を行動に移す拠りどころにする「行動方針」ーが含まれる
3レバレッジは往々にして新しい考え方によってもたらされる
人間のシステムの場合、人々はたいてい潜在的なレバレッジをもっているにもかかわらず、自分自身の意思決定ばかりに着目して、その決定がほかの人にどのような影響を与えるかをみないために、そのレバレッジを行使できない。
第II部 システム思考――「学習する組織」の要
第4章 システム思考の法則
1 今日の問題は昨日の「解決策」から生まれる
2 強く押せば押すほど、システムが強く押し返してくる
3 挙動は、悪くなる前に良くなる
第5章 意識の変容
世界を新たな視点から見る
システム思考は全体を見るためのディシプリンである。
物事ではなく、相互関係を見るため、そして静態的な「スナップショット」ではなく変化のパターンを見るための枠組みだ。
システム思考を実践するには、まず、行動がどのように互いを強めたり、打ち消したり(バランスをとったり)するかを示す、「フィードバック」と呼ばれるごく単純な概念を理解することだ。
これが、何度も繰り返し生じる「構造」の型を見ることを学ぶ基礎となるのだ。
第6章 「自然」の型―出来事を制御する型を特定する
システム原型を見れば、マネジメントの問題が抱えている複雑性の根底にある、信じられないほどすばらしい単純さが理解できる。
原型①成長の限界
定義
自己強化型(増強型)のプロセスが望ましい結果を生み出すように働いている。成功の好循環を作り出すが、気づかないうちに、やがてその成功を減速させる(バランス型のプロセスで明示される)副次的な影響も生み出している。
マネジメント原則
成長を無理に加速させない。成長の制約要因を取り除く。
原型②問題のすり替わり
定義
根底にある問題が、注意を引く症状を生み出す。だが、根底にあるその問題に人々が対処するのは難しい。なぜなら、その問題が漠然としているか、または取り組むことの犠牲が大きいからである。
そこで、人々は、問題の負担を他の解決策ー非常に効果的に思える、善意から出た簡単な応急処置ーをとることに「すり替える」。
マネジメント原則
対症療法的な解決策に注意しよう。問題の根本的な原因ではなく症状だけに対処する解決策は、せいぜい短期的な利益をもたらすばかりだ。
原型は、システム思考を習得するプロセスの始まりである。原型を使うことによって、私たちは、自分たちの日常の活動を取り囲む因果関係のループにますますよく目を向け始める。
第7章 自己限定的な成長か、自律的な成長か
木も見て森も見る
基本原型を習得することは、木も見て森も見るー広範なパターンと詳細なパターンの両方に関する情報を見るー能力を開発するための一歩である。
両方を見ることによってのみ、複雑性と変化の難題に力強く対処することができる。
第III部 核となるディシプリン――「学習する組織」の構築
第8章 自己マスタリー
「学習する組織」の精神
「自己マスタリー」は、個人の成長と学習のディシプリンを指す表現である。
高度な自己マスタリーに達した人は、人生のおいて自分が本当に求めている結果を生み出す能力を絶えず伸ばしていく。
学習する組織の精神は、こうした人々のたゆまぬ学びの探究から生まれるのだ。
自己マスタリーのディシプリン
自己マスタリーが一つのディシプリンでなければならない理由はここにある。それは、人が心からめざしたいもの、すなわちビジョンに絶えず焦点を当てたり、新たに焦点を当て直したりするプロセスなのだ。
第9章 メンタル・モデル
最上の考えがうまくいかないのはなぜか
「あとい一息というところでの失敗」は、意思の弱さやためらい、システム的な理解の不足が原因なのではなく、メンタル・モデルが原因なのだという認識が次第に広まっている。
だからこそ、メンタル・モデルを管理するディシプリンー世界はこういうものだという頭の中のイメージを浮かび上がらせ、検証し、改善するーが「学習する組織」の構築にとって画期的な大前進となる。
第10章 共有ビジョン
共通の関心
共有ビジョンとは「自分たちは何を創造したいのか?」という問いに対する答えである。
個人ビジョンが人それぞれの頭や心の中で描くイメージであるのと同じように、共有ビジョンも組織中のあらゆる人々が思い描くイメージである。
なぜ共有ビジョンが重要か
企業において、共有ビジョンは社員と会社の関係を変化させる。
もはや「あの人の会社」ではなく「自分たちの会社」になるのだ。
第11章 チーム学習
チームに眠る知恵
チーム学習とは、メンバーが心から望む結果を出せるように、チームの能力をそろえ、伸ばしていくプロセスである。
組織におけるチーム学習には三つの不可欠な側面がある。
第一に、複雑な問題を深い洞察力で考える必要がある。
第二に、革新的に、協調して行動する必要がある。
第三に、チームのメンバーが他のチームに対して果たす役割がある。
第IV部 実践からの振り返り
第12章 基盤
内省的な開放性
内省的な開放性は心の内側に目を向けさせてくれるので、会話をすることで、自分の考え方の偏りや限界、また、自分の考えや行動がどのように問題の一因になるかをより意識できるようになるのである。
内省的な開放性は、メンタル・モデルのディシプリンにとって不可欠なものである。
人を育てる
今振り返ってみると、五つのディシプリンの中で最も抜本的なのは自己マスタリーだった。
これは、人が人間として真に成長できる組織環境を創り出すことができるという考え方である。
第13章 推進力
「学習する組織」の構築という困難な取り組みに向かわせる動機には、重なりがあるものの、異なる三つのものがあるようだ。
変化をマネジメントし、変化を導く方法についてより優れたモデルを探究する人
変化に絶えず適応する組織の総合的な能力を構築しようと試みている人
実際的にも人間的にも優れた取り組み方、すなわち、業績を大きく改善し、かつ大半の人が心から働きたいと思うような職場を創る取り組みをマネジメントし、体系化する方法があると確信する
第14章 戦略
人がさまざまな状況で実践している八つの戦略
戦略的に考え、行動する
①学習と仕事を一体化させる
②そこにいる人たちとともに、自分のいる場所から始める
③二つの文化を併せもつ
④練習の場を創る
⑤ビジネスの中核とつなげる
⑥学習するコミュニティを構築する
⑦「他者」と協働する
⑧学習インフラを構築する
第15章 リーダーの新しい仕事
設計者としてのリーダー
組織を「生きているシステム」として理解するリーダーは、違うやり方で設計の仕事に取り組む。
彼らは、新しい評価基準や、公式の役割やプロセス、イントラネットのウェブサイトや確信的な会合といった組織の所産を創り出すことができることに気づいている
重要なことは、社員がこうした所産やプロセスを利用したり、会合に参加したりして何が起こるかである。
教師としてのリーダー
偉大なる教師の周りには学習する人がいる。
偉大なる教師は学習する場を創り出し、人々をその場に招き入れる。
これに対して、技量に欠ける教師は自分が何を教えているか、どのようにそれを教えているかに目を向ける。
執事(スチュワード)としてのリーダー
サーバント・リーダーはそもそも奉仕者である
奉仕したいという自然な感情から始まる
それから、意識的な選択が働き、導きたいと思うようになるのだ。
第16章 システム市民
システムを見る
システム市民になることは、私たちが形づくり、そして巡り巡って私たちを形づくるシステムを見ることから始まる。
システムを見るには二つの基本的な観点がある。
一つは相互依存性のパターンを見ること、もう一つは未来を見通すことだ。
自分たちが生み出してきたシステムのパターンを本当に見て、それが続けば未来にどんな困難が待っているかを理解した人たちは、必ずパターンを変える方法を見つけ出す。
第17章 「学習する組織」の最前線
次世代のリーダー
今後数十年で最も重要なリーダーたちの多くは、これまで私たちが想定してきたような人たちではなくなることだ。
物事の新たな秩序は、新しいリーダーの秩序によって前進するに違いない。
女性として指導する女性
さまざまなリーダーの地位についている女性の割合はここ数十年間で上昇してきている。
女性は、持続可能性のような、ほとんどの企業の関心の中心からはずれたところにある長期的な問題に引き寄せられ、それに対して、解決策と計画ではなく、協力と発見の観点から取り組むことだ。
若者のリーダーシップ
システムの変化に必要なリーダーシップは、若者から生まれることが徐々に増えている。
過去のしがらみも最も少ないため、現在のメンタル・モデルや組織のパターンの欠陥を見る独特の能力と何か新しいものを創造する勇気がある。
若者が基本的なリーダーシップや協働学習のスキルを伸ばせば、変化の恐ろしいほどの力となり得る。
第V部 結び
第18章 分かたれることのない全体
地球はわかたれることのない全体であり、それは私たち一人ひとりが分たれることのない全体であるのと同じである。
自然は、全体の中にある部分でできあがっているわけではない。
全体の中の全体でできているのだ。
すべての境界線は、国境も含めて、基本的に恣意的なものである。
私たちがそれを作り出し、そして皮肉なことに、自分たちがそれにとらわれて身動きできなくなっているのだ。
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