日常生活や仕事の中で、直感的に判断した結果が後に後悔に繋がった経験は誰にでもあるでしょう。
実は、こうした判断の歪みは、「認知バイアス」と呼ばれる思考の癖が原因だったのかもしれません。
本記事では、誰もが陥りやすい認知バイアスの種類と具体的な例を解説し、さらに、3つのステップで克服する方法までわかりやすく解説します。
認知バイアスを理解し、適切な対策を講じることで、より客観的で的確な判断を下せるようになるでしょう。
そもそもバイアスとは「偏り」や「ゆがみ」を意味します。
認知バイアスとは、過去の経験や先入観、固定観念、思い込みなどによって、物事を客観的に判断できず、合理的な思考が妨げられる心理現象のことを指します。
認知バイアスは、私たちの脳が情報を処理する過程で生じる誤りです。
脳は膨大な量の情報を処理するため、常に効率的な方法で情報を処理しようとします。
その結果、過去の経験や先入観などに基づいて情報を処理し、誤った判断をしてしまう可能性があります。
認知バイアスは、誰にでも起こり得るものです。
認知バイアスの影響を減らすためには、まず自分の思考パターンを客観的に分析する姿勢が求められます。
自分の思考パターンを分析し、どのような認知バイアスの影響を受けやすいのかを気付くところから始めてみましょう。
人間は、膨大な情報量を処理するために、以下の二つの思考システムを使い分けています。
システム① |
素早く直感的に情報を処理するシステム 感情や過去の経験に基づいて判断を下す |
システム② |
時間をかけてじっくりと論理的に情報を処理するシステム 客観的な判断を下す |
認知バイアスは、主にシステム①の思考過程で発生します。
システム①は、情報を処理する際にエネルギーを節約するために、過去の経験や先入観などに基づいて情報を処理します。
そのため、必ずしも論理的に正しい判断とは限りません。
認知バイアスの影響を減らすためには、システム②の思考過程を意識的に使うことが重要です。
システム②は、時間をかけてじっくりと情報を処理するため、認知バイアスの影響を受けにくいからです。
認知バイアスには、さまざまな種類があります。
ここでは、認知バイアスの中でも代表的な認知バイアスと具体例を紹介します。
確証バイアスとは、自分の思い込みや信念を裏付ける情報ばかりを集めてしまう傾向のことです。
思考や願望にぴったりの情報をフィルターで探し出すようなイメージです。
例えば、「このレストランは美味しいはずだ」と思い込みがあると、口コミサイトで良いレビューばかり探してしまうでしょう。
逆に、悪いレビューは「たまたまハズレだったのだろう」と軽視してしまいます。
SNSの普及によって、確証バイアスはさらに強まりやすくなっています。
SNS上には、自分の意見に共感してくれる人ばかりが集まりやすく、反対意見に触れる機会が減ってしまうからです。
確証バイアスは、思い込みや偏見を強め、視野を狭めてしまいます。
異なる意見に耳を傾けることが難しくなり、コミュニケーションの阻害にもつながります。
フレーミング効果とは、情報の提示方法によって、人の判断や意思決定が大きく変化してしまう心理傾向のことです。
情報の「枠組み」によって、思考の方向性が変わってしまうようなイメージです。
例えば、「90%の人が満足」と「10%の人が不満」の2つの表現を見てみましょう。
内容は同じ情報のはずなのに、「90%の人が満足」の方が、「10%の人が不満」よりも、商品やサービスに対して良い印象を抱く人が多いでしょう。
フレーミング効果は、情報の捉え方を変えることで、人の感情や意思決定に影響を与える可能性があります。
広告やセールストークでは、フレーミング効果を巧みに利用して、消費者の購買意欲を高めようとするケースがよく見られます。
数字だけを見て「お得そう」と感じても、冷静に他の情報と比較検討したり、別の視点から考えてみることが大切です。
ハロー効果とは、対象や集団の一部の特徴に引っ張られて、全体的な評価を歪めてしまう心理傾向のことです。
目立つ特徴に惑わされて、本来の姿が見えなくなってしまうようなイメージです。
例えば、好きなタレントがCMをしている商品を見ると、その商品に対して良い印象を抱きやすくなります。
これは、タレントへの好印象が商品全体にまで広がってしまうハロー効果の典型的な例です。
同様に、面接官が応募者の第一印象で良い印象を持った場合、その後の評価も高くなりやすくなる傾向があります。
これは、第一印象が、応募者の能力やスキルなどの本来の評価に影響を与えてしまうハロー効果の一種です。
ハロー効果は、ビジネスや対人関係など、さまざまな場面で活用できます。
例えば、新商品の発売イベントに人気タレントを招くことで、商品の注目度を高めたり、顧客対応で笑顔や丁寧な言葉を心がけることで、顧客満足度を向上させたりできます。
しかし、採用活動のような、人材を客観的に評価する必要がある場面では、ハロー効果に惑わされないことが重要です。
正常性バイアスとは、自分にとって都合の悪い情報や危険を無視し、「自分は大丈夫」と認識してしまう心理のことです。
目の前の危険を過小評価し、楽観的なフィルターを通して見てしまうようなイメージです。
例えば、地震や火事、事故などの危険が迫っていても、「自分は大丈夫だろう」と楽観的に考えてしまい、避難を遅らせてしまうことがあります。
これは、正常性バイアスによって、危険を過小評価し、適切な行動が取れなくなってしまう典型的な例です。
また、病気の兆候を感じていても、「ただの疲れだろう」と放っておいたり、経済的な危機が迫っていても、「なんとかなるだろう」と楽観的に考えて、対策を怠ったりしてしまうのも、正常性バイアスによる影響です。
正常性バイアスは、人間が不安や恐怖を感じないようにするための自然な防衛本能と考えられています。
しかし、災害時や緊急時などでは、適切な判断を妨げ、命に関わる危険にさらされる可能性もあるため注意が必要です。
サンクコスト効果とは、すでに費やしたコストや時間にこだわり、損失が確実な状況でも、投資や事業を止められない心理のことです。
「ここまで投資したのだから、今更やめられない」「もったいない」の気持ちが、合理的な判断を曇らせてしまう事により起こり、コンコルド効果とも呼ばれます。
例えば、事業の撤退を検討している経営者が「これまで多額の投資をしてきたのだから、なんとか続けなければいけない」と考えるのも、サンクコスト効果の影響です。
すでに失ってしまったコストや時間は取り戻せません。
重要なのは、現在の状況と将来の展望を冷静に分析し、最善の決断を下すことです。
サンクコスト効果に陥っているかどうかを判断するには、「この投資を続けたら、将来的にどれだけの利益が得られるのか?」と冷静な視点で考えることです。
過去の投資や労力に執着せず、客観的な視点で状況を分析すれば、より冷静な決断を下せるようになるでしょう。
内集団バイアスとは、自分が所属する集団(内集団)のメンバーを、別の集団(外集団)のメンバーよりも優れていると評価し、好意的に感じる心理傾向のことです。
仲間意識のフィルターを通して、内集団のメンバーを特別に見てしまうようなイメージです。
例えば、同じ学校に通っている人や、同じ趣味を持つ人、同じ出身地の人などを、つい贔屓してしまうのも、内集団バイアスの影響です。
内集団バイアスは、人間が仲間意識や帰属意識を感じるために自然に働く心理です。
しかし、強くなりすぎると、外集団への偏見や差別につながってしまう問題もあります。
内集団バイアスは、人間が持つ自然な心理傾向ですが、無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)につながるため注意が必要です。
ダニング=クルーガー効果とは、自分の能力を正しく認識できず、実際よりも高く評価してしまう心理のことです。
自分の能力に過剰なフィルターをかけて見てしまうようなイメージです。
例えば、勉強があまり得意ではない学生が、「自分は頭が良い」と勘違いしていたり、スポーツの経験がない人が、「自分は運動神経が良い」と自信を持っていたりするのは、ダニング=クルーガー効果の影響です。
ダニング=クルーガー効果は、経験や知識が浅い人に特に起こりやすいとされています。
なぜなら、自分の能力を客観的に評価する経験や知識が不足しているためです。
一方、能力の高い人は、自分の能力を過小評価してしまう傾向があります。
これは、常に自分の能力を向上させるために努力しているため、自分の弱みにばかり目が行きがちだからです。
権威バイアスとは、専門家や権力者などの「権威」を持つ人物や組織の情報や意見を、その内容の正しさよりも、その人物や組織の権威性に基づいて鵜呑みにしてしまう心理的な傾向です。
具体例としては、以下のようなものが挙げられます。
専門家や権力者は、豊富な知識や経験を持っていることが多く、信頼できる情報源である場合も多いです。
しかし、必ずしも全ての人が正しい情報を提供しているわけではありません。
中には、自身の利益のために虚偽の情報を発信したり、専門外の分野に関して誤った情報を発信したりする人もいます。
権威バイアスの影響で、このような誤った情報に惑わされてしまう可能性があります。
権威は、情報を判断する上で参考になる一つの要素ですが、唯一の判断基準ではありません。
権威バイアスに惑わされず、自分の頭で考え、情報を精査する姿勢を大切にしましょう。
認知バイアスは、人間が合理的に判断しようとするときに生じる、いわば「思考のクセ」のようなものです。
種類もさまざまで、それぞれ異なる影響を与えます。
ここでは、認知バイアスが私たちの生活にどのような影響を与えるのかをわかりやすく解説します。
認知バイアスの影響により誤った判断をしてしまう可能性があります。
具体的には、以下のような影響が考えられます。
認知バイアスは私たちの日常生活さまざまな場面で影響を与え、場合によっては深刻な問題を引き起こす可能性があるため注意が必要です。
認知バイアスはコミュニケーションに大きな影響を与えます。
相手の発言を誤って解釈したり、自分の考えを押し付けたりする原因につながったり、固定観念や偏見によって相手の真意を見逃すこともあります。
さらに、自分に都合の良い情報だけを選んで聞く傾向があるため、議論が平行線をたどることも少なくありません。
このようなバイアスは、誤解や対立を生み、人間関係を悪化させる可能性があるため注意が必要です。
職場や家庭での円滑なコミュニケーションを妨げ、チームワークや問題解決能力の低下にもつながります。
認知バイアスは意思決定に大きな影響を与え、失敗を招く可能性があります。
具体的には、以下のような影響が考えられます。
認知バイアスは、私たちの思考や判断の癖であり、完全になくすことはできません。
しかし、認知バイアスの存在を知り理解すれば、冷静に判断を下せるようになるでしょう。
認知バイアスは私たちの思考をゆがめ、誤った判断や行動に導く厄介な存在です。
しかし、克服できないわけではありません。
ここでは、認知バイアスの克服に向けた3つのステップを紹介します。
認知バイアスは、私たちの思考や判断をゆがめてしまう心理的な傾向です。
誰にでも起こり得るものであり、必ずしも悪いものではありません。
しかし、認知バイアスを理解していないと、誤った判断をしてしまう可能性があるため注意しなければいけません。
認知バイアスを理解するために、それが自然な脳の働きであると自覚する必要があります。
私たちの脳は、膨大な量の情報を処理するために、さまざまな短絡的な思考方法を使っています。
短絡的な思考方法は、通常であれば効率的に情報を処理するのに役立ちますが、状況によっては誤った判断に繋がる可能性を考慮しておきましょう。
認知バイアスを理解するもう一つのポイントは、それが個人の経験や価値観によって影響を受ける点です。
同じ状況でも、人によって異なる認知バイアスが働きます。
これは、過去の経験や、自分が重要だと考えている価値観によって、認知する情報が異なってくるためです。
認知バイアスは、私たちの思考や判断に大きな影響を与えます。
しかし、その仕組みを理解しておけば、影響を最小限に抑えられます。
認知バイアスを克服するためには、自分の思考の前提条件に疑問を持つことが重要です。
私たちは、普段無意識のうちにさまざまな前提条件を持っています。
例えば、「高額な商品は質が高い」、「有名人は信頼できる」などです。これらの前提条件は、必ずしも正しいとは限りません。
認知バイアスを克服するためには、自分の思考の前提条件に疑問を持つことが重要です。
本当にそうなのかどうか、他の可能性はないのかどうか、常に考えるようにしましょう。
認知バイアスの影響を減らすためには、情報を多角的に収集・分析する必要があります。
これは、一つの情報源だけに頼らず、さまざまな視点から情報を集めることで、偏った見方を防ぐことができるからです。
具体的には、以下のような方法があります。
また、自分の考えや思い込みに固執しないことも必要です。
新しい情報にオープンな姿勢で接し、自分の考えを改めることも意識していきましょう。
情報を多角的に収集・分析すれば、認知バイアスの影響を少なくし、より客観的な判断せます。
認知バイアスは私たちの日常生活や意思決定に大きな影響を与える重要な心理現象です。
本記事で紹介したさまざまな種類のバイアスや、その影響、克服法を参考に、自分の思考や行動を振り返ってみることをおすすめします。
日々の生活で、自分がどのようなバイアスに陥りやすいか意識してみましょう。
重要な決定を行う際には、自分の考えに疑問を投げかけ、多角的な視点から情報を集めることが有効です。
また、他者とのコミュニケーションでは、相手の立場や背景を考慮し、偏見にとらわれないよう注意すれば、より良い関係構築につながるかもしれません。
この機会に、自分の思考や行動のパターンを見直してみてはいかがでしょうか。
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