コンピテンシーは、多くの企業で従業員の能力評価や人材育成の具体的な基準として活用されています。
なぜなら、コンピテンシーを活用することで、抽象的な能力ではなく、具体的な行動や成果を評価できるからです。
例えば、「リーダーシップ」というコンピテンシーでは、「チームメンバーの意見を積極的に聞き、適切な方向性を示す」といった具体的な行動が評価対象となります。
しかし、コンピテンシーの効果的な導入や活用方法については、多くの企業が課題を抱えているのが現状です。
本記事では、コンピテンシーの基本概念から実践的な導入手順、活用時の課題まで詳しく解説します。
コンピテンシーを理解し、具体的な活用の仕方の参考にしてください。
コンピテンシーとは、優れた成果を生み出す個人の能力や行動特性のことです。
単なる知識やスキルだけでなく、それらを実践で活かす力を指します。
コンピテンシーの特徴は、具体的な行動レベルで表現される点です。
例えば「リーダーシップ」のコンピテンシーは「チームメンバーの意見を積極的に聞く」「明確な目標を設定し、共有する」といった具体的な行動で示されます。
人事評価や人材育成にコンピテンシーを活用する企業が増えています。
コンピテンシーは、知識、スキル、態度の3つの要素から構成されています。
これらの要素が相互に作用し、高い成果につながる行動を生み出します。
コンピテンシーの3つの要素をまとめると以下のとおりです。
要素 |
概要 |
具体例 |
知識 |
仕事に必要な情報や専門的理解 |
業界動向、専門用語 |
スキル |
業務を遂行するための技術や能力 |
PC操作、プレゼンテーション能力 |
態度 |
仕事に対する姿勢や価値観 |
積極性、チームワーク精神 |
3つの要素が揃うことで、コンピテンシーが発揮されます。
例えば、営業職であれば、商品知識(知識)や交渉技術(スキル)、顧客志向の姿勢(態度)が組み合わさることで、高い成果につながるでしょう。
コンピテンシーを向上させるためには、各要素の特性を理解し、適切な方法で継続的に学習や実践を行うことが必要です。
コンピテンシーの重要性は、ビジネス環境の急速な変化と労働人口の減少という現代の課題から見直されています。
1990年代に日本で注目され始めたコンピテンシーは、当初、成果主義による人事評価の一環として導入されました。
しかし、近年ではその意義がさらに拡大し、さまざまな場面で活用されるようになりました。
コンピテンシーが重要視されるのは、以下の3つの理由が挙げられます。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
コンピテンシーは、キャリア開発を支える大切な要素です。
具体的な行動指標を提供すれば、キャリアの方向性を明確にできるからです。
多くの人が自分のキャリアの築き方に悩みます。
コンピテンシーは、この悩みに対する有効な指針となります。
営業職を例に挙げましょう。
成功している営業担当者のコンピテンシーには「顧客のニーズを的確に把握する」「効果的なプレゼンテーションを行う」といった具体的な行動が含まれます。
これらの指標を知ることができれば、目指すべき方向性が明確にできます。
コンピテンシーを活用したキャリア開発の主なメリットは、以下のとおりです。
コンピテンシーを意識すれば、漠然とした「スキルアップ」から、具体的な「行動改善」へと焦点が移るため、より効果的なキャリア開発が可能になります。
コンピテンシーは、効果的な人材育成を実現する上で欠かせない要素です。
具体的な行動指標を提供し、組織の期待と個人の成長目標を明確にするからです。
コンピテンシーを活用した人材育成では、各職務に必要な能力や行動が具体化され、従業員は自身の成長目標を明確に設定できるようになります。
上司や人事部門にとっても、個々の従業員の強みと弱みを正確に把握し、適切な育成計画を立てやすくなるメリットがあります。
コンピテンシーを用いた人材育成の主なメリットは、以下のとおりです。
コンピテンシーの活用により、組織全体の人材育成戦略が強化されるでしょう。
コンピテンシーは、適材適所の人員配置を実現するための基準となります。
各職務に必要な能力や行動特性を具体的に定義すれば、個人の強みと職務要件のマッチングが明確になるからです。
コンピテンシーに基づく人員配置では、スキルや経験だけでなく、個人の行動特性や潜在能力も考慮に入れます。
従業員の適性をより深く理解し、最適な配置を行うことが可能となりました。
適材適所の人員配置がもたらすメリットには、以下のようなものが挙げられます。
コンピテンシーを活用すれば、組織は人材の能力を最大限に引き出し、効果的なチーム編成を実現できるでしょう。
コンピテンシー評価の導入は、企業の人事評価や人材育成を変える大切な取り組みです。
しかし、ただ導入するだけでは効果は限定的です。
適切な手順に従って進める必要があります。
ここでは、コンピテンシー評価を企業に導入する際の実践的な手順を説明します。
各ステップを着実に実行すれば、自社に最適なコンピテンシー評価システムを構築できるでしょう。
主な導入ステップは以下のとおりです。
各ステップの詳細を見ていきましょう。
ハイパフォーマーへのヒアリングは、コンピテンシー評価項目作成の第一歩です。
ハイパフォーマーとは、組織内で特に高い成果を上げている優秀な人材のことを指します。
自社のハイパフォーマーから、成功につながる具体的な行動や思考パターンを抽出します。
単に結果だけではなく、その背後にある行動や意思決定の理由も探ることが大切です。
職種や役割ごとにヒアリングを行えば、より詳細で適切な評価項目を設定できるでしょう。
ハイパフォーマーにヒアリングする際には、以下のような項目を質問してみてください。
それぞれの情報を分析すれば、ハイパフォーマーに共通する思考や行動の特徴が明らかになります。
詳細な分析が、効果的なコンピテンシーモデル構築の基盤となり、組織全体の生産性向上につながります。
コンピテンシーモデルの作成は、ハイパフォーマーへのヒアリング結果を基に行います。
コンピテンシーモデルは、組織の評価基準となる指標です。
コンピテンシーモデルには、主に以下の3つのタイプがあります
理想型モデル |
企業理念や事業内容に基づいた理想的な人物像 |
実在型モデル |
実際のハイパフォーマーの特性を反映したモデル |
ハイブリッド型モデル |
理想型と実在型の長所を組み合わせたモデル |
モデル選択の際は、組織の現状と目標を考慮します。
理想型は高い目標設定が可能ですが、現実との乖離に注意が必要です。
実在型は再現性が重要なポイントです。
ハイブリッド型は柔軟性が高く、多くの場合に適しているでしょう。
組織の現状をしっかりと把握した上で、自社のニーズに合ったコンピテンシーモデルを作成してください。
コンピテンシー評価を効果的に行うためには、適切な評価項目の設定が不可欠です。
評価項目設定の段階で、組織の目標と個人の行動を結びつける具体的な指標を決定します。
評価項目は、全社共通の項目と職種・役割ごとの項目に分けて設定しましょう。
全社共通と職種別の項目設定により、組織全体の方向性と各職務の特性を両立させられます。
評価項目設定の際には、以下のポイントを意識すると良いでしょう。
参考モデルとして、スペンサー夫妻が1993年に開発した「コンピテンシー・ディクショナリー」があります。
コンピテンシー・ディクショナリーは、広範な職種や業界で共通して重要とされる20のコンピテンシーを以下の6つのカテゴリーに分類しています。
カテゴリー |
含まれるコンピテンシー例 |
達成・行動 |
達成思考、イニシアチブ |
援助・対人支援 |
対人理解、顧客支援志向 |
インパクト・対人影響力 |
組織感覚、関係構築 |
管理領域 |
他者育成、チームリーダーシップ |
知的領域 |
分析的思考、概念的思考 |
個人の効果性 |
自己管理、柔軟性 |
各コンピテンシーには、具体的な行動指標が詳細に記述されているため、最初はこのモデルを基に自社のコンピテンシー評価項目を設定すると良いでしょう。
コンピテンシー評価システムの導入後は、実際の活用と継続的な改善が大切です。
改善する際のポイントは、以下のとおりです。
評価結果の分析 |
組織全体のコンピテンシー傾向を把握 |
フィードバックの収集 |
評価者・被評価者双方から意見を集める |
定期的な見直し |
業務環境の変化に合わせた評価項目の更新 |
コンピテンシーを活用した評価システムを導入する場合は、組織の目標達成と個人の成長を支援するツールとして、継続的に進化させることが大切です。
コンピテンシーの活用は組織の人材育成や評価に大きな効果をもたらしますが、同時にいくつかの課題も存在します。
課題の内容を理解し、適切に対処することが、コンピテンシー活用の成功につながります。
主な課題には、以下のようなものが挙げられます。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
課題の一つが、適切な評価項目の選定です。
項目の選定が抽象的すぎると、解釈の違いが生じる可能性があるからです。
例えば「リーダーシップ」の項目だけでは、評価者によって異なる解釈が生まれかねません。
ある評価者は強いカリスマ性を重視し、別の評価者はチームワークを重視するかもしれません。
このような問題を解決するには、具体的で観察可能な行動を項目として設定する必要があります。
「チームメンバーの意見を積極的に聞き、適切なフィードバックを提供する」といった具体的な記述が効果的です。
コンピテンシーの活用には長期的な視点が不可欠です。
短期間では効果が現れにくく、継続的な取り組みが求められるからです。
例えば、リーダーシップ能力の向上を目指す場合、1回の研修だけでは十分な成果は得られません。
日々の業務での実践と、定期的なフィードバックを通じて、徐々に能力が向上していきます。
長期的視点での運用のポイントには、以下のようなものが挙げられます。
ポイントを押さえることで、着実なコンピテンシーの向上が期待できます。
組織全体の理解と協力を得ながら、粘り強く取り組む姿勢が大切です。
短期的な成果にとらわれず、持続可能な人材育成システムの構築を目指しましょう。
コンピテンシーを効果的に活用するには、定期的な見直しと改善が欠かせません。
ビジネス環境や組織の目標は常に変化するため、コンピテンシーモデルも適宜更新する必要があるからです。
例えば、デジタル化が進む業界では、新たなIT関連のコンピテンシーが重要になるかもしれません。
変化に対応するため、定期的にコンピテンシーモデルの見直しなどを忘れずに行いましょう。
上記項目を参考に見直していけば、コンピテンシーモデルを常に最適な状態に保てます。
見直しの過程で従業員の意見を取り入れることで、モデルの受容性も高まるでしょう。
コンピテンシーを効果的に活用するためには、組織全体の理解と協力が不可欠です。
一部の部署や管理職だけではなく、全従業員がコンピテンシーの意義を理解し、積極的に取り組む必要があるからです。
例えば、評価制度にコンピテンシーを導入しても、その目的や効果が従業員に浸透していなければ、形骸化してしまう恐れがあります。
組織全体の理解と協力があってこそ、コンピテンシーはより効果的に活用できます。
本記事では、コンピテンシーの基本概念から導入手順、活用時の課題まで幅広く解説しました。
コンピテンシーは知識、スキル、態度の3要素から成ります。
コンピテンシーをうまく活用すれば、キャリア開発や効果的な人材育成、適材適所の人員配置につながります。
導入には、ハイパフォーマーへのヒアリングやコンピテンシーモデルの作成など、段階的なアプローチが必要です。
適切な評価項目の選定や長期的視点での運用、定期的な見直しなど、いくつかの課題もありますが、これらを克服すれば組織全体の成長が期待できます。
コンピテンシーの理解と実践は、個人のキャリア発展と組織の競争力強化の両方につながります。
ぜひ、記事内容を参考に、自身のコンピテンシー向上や組織への導入を検討してみてください。
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