インターネットの発展により、さまざまな商品やサービスがECサイトやWebサイトで取引されています。
しかしBtoBビジネスでは、提案営業が欠かせません。なぜなら、BtoBビジネスで取引される商品やサービスは一般市場にでまわることが少なく、オンラインで決済に至るケースがほとんどないからです。
そこで問題となるのが、提案営業で欠かすことのできない『提案書』の作成です。提案書の書き方は、学校で習うこともなければ、文具屋で履歴書のようなテンプレートを購入できるわけでもありません。
せっかく時間をかけて書いた提案書が、クライアントに採用されず、大きな喪失感を味わったことのある方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、現役コンサルタントが『売れる提案書の書き方』と、採用される提案書とされない提案書の違いについて徹底解説します。
これから提案書を作成する方は、ぜひ参考にしてください。
提案書とは『クライアントの課題を解決する方法』をわかりやすく提案する資料です。
一般的な提案書では、クライアントの課題解決に向けて、自社の商品やサービスの購入を促すための提案をするのがほとんどです。
これまでの営業提案では、クライアントのニーズに合わせた商品やサービスを提案するだけで『売れた』時代でした。
しかし、インターネットが整備されて情報過多となった現代では、クライアントの顕在化されたニーズを満たす商品やサービスをいくら売り込んでも『売れない』時代となっています。
現代の提案営業に求められる提案書は、顧客自身が気づいていない『潜在的な課題や痛み』をサプライヤーである営業担当者が見つけ出し、顧客がまだ気づいていない問題を『顕在化して解決に導く』提案です。
今後はこれができなければ、営業担当者だけでなく、サプライヤー企業そのものも淘汰される時代と言えるでしょう。
クライアントが採用したくなる提案書には、いくつかの特徴があります。
詳しくは別項で紹介しますが、端的に言えば「クライアントが気づいていない課題を指摘し、解決策を具体的に提案している提案書」や「クライアントの顧客(消費者)や市場に対する調査を徹底的に行い、クライアントの顧客に対してベネフィットを提供できる提案書」です。
なぜなら、このような提案書を作成することができれば、クライアントが『採用したくなる』だけではなく『断わる理由』がなくなるからです。
このように『クライアントが断れない提案書』を書くには、クライアントの向こう側にいる消費者に対してベネフィットのある施策を立案することが重要です。
提案書の書き方については、相手に伝わりやすく書くのがポイントです。これができていなければ、まず採用されることはないでしょう。
そこで提案書を書く際は、まず下記の6つのポイントを押さえておきましょう。
それぞれ解説します。
提案書は、クライアントの課題を解決できる施策について説明する資料です。
そのため、提案書の最終目的は「クライアントに自分が提案する解決策を採用してもらい、課題を解決する」ことにあります。
ただし、提案を採用してもらうためには、クライアントにとって魅力的な内容であることが必要です。なぜなら、提案書をだす場合は、競合他社の提案書と比べられるケースがほとんどだからです。
そこで、自社の解決策が他社よりも優れていることをしっかりとアピールできなければなりません。
クライアントの課題を解決するためには、クライアントのマーケット状況や課題についての調査をしっかりと行う必要があります。
取引先の業種によって、その企業が抱える課題は千差万別です。そこで営業担当者だけでなく、マーケティングチームとも連携しながら調査しましょう。
提案書を書くときは、提案後の流れも明確に示しましょう。
提案した企画が通ってから、施策を実行するまでの期間や、最終的な目的達成がいつになるのかなど、スケジュール管理も徹底して行います。
また予算計画も必要ですが、実際にかかる経費よりも安く書きすぎて後からトラブルにならないよう、しっかりと精査しましょう。
提案書に記載する内容は、信頼性の高い内容でなければなりません。
具体的な数値を記す場合には、どの資料を参考にしたのか。またマーケットの調査をいつどこで行い、誰が発表したのかなどを明示しましょう。
提案書を書く際は、まず自社の企画する提案を採用してもらうことが目的となりますが、クライアントにとっての採用目的は「その企画を実施することで得られるメリット」です。
そこで自社の企画を採用することによって「どのようなメリットがあるか」を、できるだけ明確に、わかりやすく記載しましょう。
提案書の書き方として、難しい表現や専門用語、ビジネス英語などを多用する必要はありません。まず大前提として、相手にわかりやすく伝えることを第一に考えましょう。
とくに新しいツールやスキルなどのビジネス英語は、使いやすい反面、相手に伝わらないリスクがあります。
どうしても使用せざるを得ない場合は、その概要を記しておくと親切と受け取られ、相手方へ好印象を与えられるでしょう。
また、見やすいグラフなどを積極的に使いながら、見やすい提案書を作ることも大切です。
冒頭でも触れたように、採用される提案書に特徴がある一方で、採用されない提案書にもいくつかの特徴があります。
採用される提案書は、クライアントに『信用されやすい書き方』で書かれており、逆に採用されにくい提案書は、いまいち『信用できない書き方』で書かれているのが特徴です。
以下では、採用される提案書と採用されない提案書、それぞれの特徴を紹介しながら解説します。
クライアントが『断れない提案書の書き方』については『顧客が断れない営業提案のコツ|ヒアリングからプレゼンの仕方を徹底解説』をぜひご参照ください。
それではここで、採用される提案書の4つの特徴を解説します。
採用される提案書の特徴は、次の4つです。
それぞれ解説しますので、ぜひ参考にしてください。
採用される提案書の特徴には、クライアントが抱える課題の解決だけではなく、その向こう側にいる消費者(クライアントからみた顧客)の痛みを共有しているという特徴があります。
例えばクライアントが新規顧客の獲得に苦戦している場合に、ただ集客するための広告手段を提示するのではなく、クライアントの市場や顧客心理を調査して最善の方法を提示することが大切です。
このような提案書は、説得力があるのはもちろん、施策の成功率も当然高くなります。そのため、採用されるためだけではなく、成功するためにも欠かすことのできない視点の1つです。
採用される提案書には、提案内容はもちろん、実施するプロジェクトの内容も具体的に記載されています。
施策が具体的に説明されている提案書には、スケジュールから予算、組織体制などが明確に記されているため、クライアントの決済者だけでなく、実働するスタッフからも共感を得やすくなるでしょう。
そこで提案書を作成する際は、できるだけ具体的に書くことを心がけましょう。
提案書を書く際は、良いことばかりを並べるのではなく、起こりうるリスクやトラブルも必ず示しておきましょう。そして、実際にトラブルが起きた時にどのように対処するか、トラブルシューティングの仕方も記載します。
どのようなプロジェクトにおいても、不確実性に備えることは大切です。常に「もしも」に備えることは、採用する側にとってネガティブな印象よりもポジティブに捉える方が多いでしょう。
また、サプライヤーとして対応できることとできないことを明確にしておくことも重要です。
提案書では、当然ながら自社が提供する商品やサービスの紹介を行います。その際に、メリットを記載すると同様に、デメリットもしっかりと説明することが大切です。
どのような製品でも、メリットとデメリットがあります。例えば「国内最速の車であるが、乗り心地は良くない」や「業界トップクラスの性能であるが、相場よりも高い」などです。
クライアントから指摘を受ける前に、クライアントからの指摘や質問を受けそうなデメリットに関しては、あらかじめ記載して説明しましょう。
次に、採用されない提案書の特徴4つを紹介します。
上記のような提案書を書かないために、ぜひ書く前と書いた後にチェックしてください。
一般消費者を対象としたECサイトなどとは違い、BtoBビジネスで取引される商品やサービスは既製品ではないことが多く、単に価格だけで比較できるものではありません。
そのため「どこでも同じ製品が手に入るケース」を除いては、価格を基準とした提案がクライアントの心に刺さることはないでしょう。
もちろん安いに越したことはありませんが、安いがゆえに提案する商品やサービスの質が低ければ何の意味もありません。それよりも大事なことは、提案する商品やサービスが実際には高額でも「安く感じるほどの質の高さ」です。
「モノ」よりも「コト」を消費すると言われる現代では、価格に見合うだけの「製品・提案書・プレゼン」それぞれ3つの質の高さが重要です。
いくら提案書の内容が良くできていても、その構成順がめちゃくちゃでは、クライアントに伝わりにくい提案書となります。
そこで提案書を書くときは、次の13項目の順に記すと「伝わりやすい提案書」になるので、ぜひ参考にしてください。(必要のない項目は飛ばしてください)
提案書を書く際にやりがちな失敗の1つに「専門用語」や「業界用語」などの難しい言葉をそのまま書いてしまうことがあります。しかし、専門用語や一部の業界だけで使われる「用語」は、だれもが理解できる言葉でない限り、本来使うべき言葉ではありません。
原則として、提案書は「誰が見ても、読んでもわかる内容」が基本です。
もし難しい用語を使わないといけない場合(他に例えようのないケース)などは、注釈を入れるなどの工夫をしましょう。
自己満足ではなく、クライアントにわかりやすい提案書を書くことが最も大切です。
上記の13項目の7番目に「提案を採用した場合のメリットなど」と記載した項目がありますが、ただメリットだけを書くのは禁物です。
「採用される提案書の特徴」で紹介したように、必ずデメリットやリスクも併記して、そのリスクに備える対処法までキッチリと解説しましょう。
そうすることで「クライアントが断れない提案書」が作成できます。ただ良いことばかりを書くと、かえって不信感が大きくなる可能性があるため、注意が必要です。
このように、採用される提案書と採用されない提案書には、それぞれに特徴があります。
良い提案書を書くには、クライアントとクライアントの顧客、それぞれにどのようなベネフィットを提供できるかが重要です。
自社のメリットはもちろん、クライアント、クライアントの顧客の3方良しとなる提案書を書き、流れるようにスムーズなプレゼンができるように心がけましょう。
そうすれば、クライアントは、あなたが作成した提案書を「断ることができなくなる」はずです。
もし提案書の作成にお悩みの時は、ぜひアルマ・クリエイションにご相談ください。