デジタルトランスフォーメーション(DX)は、企業が直面する最大の課題の一つです。しかし、この変革を成功させることができれば、業務の効率化、顧客体験の向上、そして競争力の強化につながります。
多くの企業がDXを推進する中で、成功事例は貴重な学びの源となります。企業の経営者の方にとって、これらの事例から得られる知見は、自社のDX推進において大きなヒントとなるでしょう。しかしその一方で、導入時の課題や推進方法には、業種ごとに異なるポイントがあるため、注意が必要です。
そこで今回は、DXの7業種14社の成功事例と導入時の課題や推進方法を解説します。これからDXに取り組もうとお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用してビジネスモデルや業務プロセス、組織文化などを変革し、企業が競争上の優位性を確立することです。
DXは、単に技術の導入にとどまらず、企業文化の変革や新たなビジネスチャンスの創出にもつながります。
DXの推進は、以下のような理由で注目されています。
古いシステムを最新の技術に置き換えることで、効率化とイノベーションを促進します。
デジタル技術を通じて顧客のニーズに応え、より良いサービスを提供します。
デジタル技術を活用して、新たな収益源や市場を開拓します。
デジタル化により、市場の変化に迅速に対応する柔軟性を企業にもたらします。
DX(デジタルトランスフォーメーション)の成功事例は、さまざまな業種で見ることができます。以下では、国内の代表的な7業種14社の成功事例を紹介します。
ブリヂストンは、独自のソリューションプラットフォーム「Bridgestone T&DPaaS」を掲げ、DXを推進しています。このプラットフォームは、タイヤや化工品などの製品開発・製造技術とデジタル技術を組み合わせ、新たな価値を創造することを目指すものです。
例えば、タイヤに取り付けたIoTセンサーから得たデータを分析し、摩耗や空気圧、路面状態などの情報を提供することで、事故防止や燃費向上に貢献しています。
また、世界初のタイヤセンシング技術「CAIS®」を実現し、路面状態を7つのカテゴリーに分類してドライバーや対策本部に情報を提供しています。
味の素は、DXを経営戦略の中核に位置付け、企業価値の向上に取り組んでいます。DXの推進により、過去の成功体験にとらわれず、新しいビジネスモデルやサービスを創出するのが目的です。
例えば、経営と担当者が密に連携し、外部の力も借りて新しいアイディアを素早くビジネスの形にすることができました。これにより、危機的状況にあった味の素社を変革し、新たな成長を遂げています。
これらの事例は、DXが単なる技術の導入ではなく、ビジネスモデルや組織文化の変革をもたらすことで、企業の持続可能な成長に寄与していることを示すものです。製造業においても、DXは競争優位性を確立し、新たな価値を創造する重要な要素となっています。
セブン&アイ・ホールディングスは、総合流通グループとしてDXを推進し、「DX銘柄2021」に選定されました。この選定は、グループ全体でのDXを加速させるためのさまざまな施策が評価された結果です。
主な取り組みとしては、以下のような活動があります。
ユニクロは、RFID技術を活用して大量の商品・データ管理を変革し、顧客体験の向上や商品開発の効率化を実現しているのが特徴です。
ファーストリテイリングの会長兼CEOである柳井正氏は、DX化を進めることを最重要課題として掲げ、「製造小売業」から「情報製造小売業」への変革を目指しています。
これらの事例から、セブン&アイ・ホールディングスとユニクロは、それぞれの企業が顧客のニーズに応え、効率化とイノベーションを推進するために、DXを積極的に取り入れていることがわかります。これにより、小売業界における競争力を高め、新しい価値を創造している点に注目です。
NTTでは、顧客接点の強化を目的としたDXを推進しています。具体的な事例としては、ハイブリッドワークの課題解決やセンター運営の改善などが代表的です。
また、自治体DXにおいては、綾瀬市でのBPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)の自立・自走化と住民サービスの向上に成功しています。
KDDIは、通信を軸にDXを推進し、次世代のビジネスや生活の発展を目指しています。KDDIのDX活用事例としては、工場のメンテナンスサポートや、デジタルを活用した高齢者のデジタルデバイド解消などが代表的です。また、5GやIoTを活用した新たな映像関連ソリューションの提供も進めており、放送・メディア業界のDX推進に貢献しています。
これらの事例は、情報・通信業界におけるDXの可能性を示しており、さまざまな分野での応用が期待されています。
ソニー損害保険では、顧客の声を瞬時に分析し、見える化するソリューションを導入しています。これにより、年間3万5,000件にのぼる顧客のフィードバックを効率的に処理し、顧客志向の商品開発につながるDX推進が行われているのが特徴です。
また、自動車保険においては、事故が起きた瞬間から顧客の安心・安全をサポートできるサービスを提供しており、DXによる顧客中心の商品開発の事例となっています。
東海東京フィナンシャル・ホールディングスは、デジタライゼーションの進展、FinTech技術の進化、金融分野への異業種参入、新たな働き方の導入など、事業環境の変化に対応するためにDXを積極的に推進しているのが特徴です。
AIを活用したデータベースマーケティング、相続診断シミュレーションシステム、資産運用分析ツールなどを通じて顧客サービスの向上を図り、業務プロセスの変革を進めています。また、スマホ専業証券機能、デジタル通貨、ブロックチェーン技術などを活用し、次世代型の金融サービスツールの拡充やアライアンスパートナーとの協業を推進しています。
これらの取り組みにより、経済と社会に貢献する総合金融グループとしての成長を目指しているのがポイントです。
これらの事例は、金融・保険業界におけるDXの成功を示すものであり、顧客体験の向上、効率的な業務プロセス、新たなビジネスモデルの創出に貢献しています。
長谷工コーポレーションは、建設業界におけるDXを推進しており、特に「BIM&LIM」を活用しています。これにより、顧客のニーズに合わせた多品種大量生産が可能となっています。
また、社内のデジタル化を進めるために「DXアカデミー」を設立し、全社員の意識改革を促進しているのが特徴です。これにより、設計や施工、管理・修繕のノウハウをデジタル化し、グループ横断でデータを共有することで、事業の効率化と生産性の向上を実現しています。
SREホールディングスは、もともと不動産事業を行っていましたが、AIツールの外販を開始し、現在では利益の6割以上がAI事業から生まれているのが注目ポイントです。
同社は「DX銘柄2021」でグランプリを受賞し、AIが自動で不動産の売買価格を査定するツールや、不動産売買契約書類の作成をクラウドで行うシステムなどを提供しています。これらのツールは、不動産業界における業務効率化と顧客ニーズの多様化に対応するために重要な役割を果たしています。
これらの事例は、不動産業界におけるDXの成功を示すものであり、テクノロジーを活用して新たなビジネスモデルを創出し、業界全体の変革を牽引するものです。どちらの企業も、デジタル技術を駆使して事業の効率化と革新を実現しており、今後の発展が期待されます。
三菱ケミカルグループでは、化学プラントのDXを20代から30代の若手社員が主導しているのが特徴です。
そして、三菱ケミカルグループは社員の自発性を活かしながら、安全性の向上、業務効率化、生産性の向上、高品質の維持を目指してDXを推進しています。
具体的な取り組みとしては、以下のような活動が行われています。
旭化成では、組織の構造転換と成長事業の加速のために、全社のデジタルトランスフォーメーションに取り組んでいます。
旭化成は、研究開発、生産、品質管理、設備保全、営業、マーケティング、事業戦略、新事業創出など幅広い範囲でDXの取り組みを進め、多くの成果を出しているのが特徴です。
また、全従業員をデジタル人材に変革することを目指しており、DX戦略は展開期から創造期へと移行しています。
これらの事例は、化学業界におけるDXの推進が、単に技術の導入にとどまらず、組織文化や働き方の変革にも深く関わっていることを示しています。また、若手社員の積極的な参画と自発性が、DXを成功に導く重要な要素であることがわかります。
日立物流は、広大なネットワークを持ち、DXを通じて非効率な業務を削減することに成功しました。そして、新しいシステムの導入により、営業所では年間約500万円、本社側では約5300万円の経済効果を見込んでいます。
また、1985年から情報・保管・輸配送のトータルサービスであるシステム物流(3PL)に取り組んでおり、現在は「LOGISTEED 2024」というDX戦略に取り組んでいる点にも注目です。さらに、ローコードの内製開発を通じてDXを加速し、現場力を強化しながら業務のムダを削減しています。
SGホールディングスは、経営戦略の一環として「CSR重要7課題」の中に「総合物流ソリューションによる新しい価値の創造」を掲げています。
デジタル化の推進と最新技術の導入により、業務の効率化・省力化を推進し、デリバリー事業を中心としたデータ蓄積等のリソース有効活用を図っています。また、ITを活用した経営管理と徹底した採算管理により、安定的な事業成長を実現しており、営業利益率の向上にも成功しました。さらに、複数のプロジェクトを並走し、現場従業員が使用する端末に実装されたシステムにより、業務効率化や営業支援に役立っています。
これらの事例は、運輸・物流業界におけるDXの成功を示すものであり、他の企業にとっても参考となるでしょう。どちらの企業も、デジタル技術を活用して業務プロセスを改善し、経済的な利益を生み出しています。また、顧客サービスの向上や新しいビジネスモデルの創出にも寄与しています。
DX(デジタルトランスフォーメーション)導入時には、いくつかの課題があり、それぞれに対する解決策も考えられています。
以下はDX導入時の主な課題と、それに対応する解決策です。ぜひ参考にしてください。
経営者自身がDX化の重要性を理解していない場合、DX推進は困難です。解決策としては、経営者を含む全社員がDXの意義とメリットを共有し、組織全体でデジタル化の必要性を認識することが重要です。
既存のシステムが属人化しており、新たなシステムへの移行が困難な場合があります。解決策としては、システムのドキュメンテーションを整備し、知識の共有と引き継ぎを容易にすることが挙げられます。
IT人材やデジタルスキルを持つ人材の不足は、DXを進める上での大きな障壁です。解決策としては、外部からの採用だけでなく、社内研修による既存人材のスキルアップや、デジタル人材の育成に力を入れることが必要です。
DXに必要な投資額の見積もりが不足していると、プロジェクトが中途半端な状態で停滞する可能性があります。解決策としては、初期投資だけでなく、長期的な運用コストも含めた総合的なコスト計画を立てることが大切です。
DXの目的やゴールが不明確だと、プロジェクトの方向性がぶれやすくなります。解決策としては、DXの目的を明確にし、具体的なビジョンや戦略を策定することが重要です。
これらの注意点と解決策を踏まえ、DXを成功に導くためには、組織全体でのコミュニケーションと理解を深め、適切なリソース配分と計画的な実行が求められます。
DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するためのプロセスは、企業がデジタル技術を活用してビジネスモデルを変革し、市場競争で優位な立場を確立するための戦略的な取り組みです。
以下はDXを推進するための一般的な8つのプロセスです。
これらのステップは、企業の現状や目指すべき方向性に応じてカスタマイズする必要があります。また、DXは単なる技術の導入ではなく、組織文化やビジネス戦略の変革を伴うため、全社的な取り組みと長期的な視点が重要です。
このように、DX(デジタルトランスフォーメーション)の成功事例を見ると、データとデジタル技術を活用することや、スマートファクトリー化、顧客体験の向上に重点が置かれていることがわかります。
これらのトレンドを踏まえ、企業はDXを推進する際に、これらの要素を取り入れた戦略を立てることが重要です。また、DXは単なる技術の導入ではなく、ビジネスモデルや組織文化の変革を伴うため、全社的な取り組みが成功の鍵となるでしょう。
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