企業の成長には、経営戦略やビジネスモデルを構築する経営者の視点だけではなく、それを実行する社員への教育が欠かせません。
優秀な社員を育てるために人材を確保し、育成するための教育を行うことは、企業の生命線となる重要な課題です。
ただし、優秀な人材を確保して育成することは容易ではなく、自社で教育した人材が高い能力を身につけてから転職してしまうケースも少なくありません。
そこで、自社で活躍し続けてくれる優秀な人材を育てるためには、愛社精神の高い社員を育てる「質の高い社員教育」が必要となります。
今回は、人材の育成でお悩みの企業経営者の方や管理職の方に、社員教育の考え方や、やり方の参考となる本7選と使い方を徹底解説します。ぜひ参考にしてください。
社員教育の目的は、企業の成長と発展のために貢献できる人材として、自社の社員を育成することです。
社員教育によって、社員のパフォーマンスの向上に繋がるため、業務のスムーズな運営にも必要不可欠となるスキームの1つです。
また社員教育を内製化すれば、人材を指導する側にもメリットが産まれます。それは人材の教育の経験を通じて教育者自身の成長に繋がるだけでなく、社員教育を成功させるうえで愛社精神や社内風土も構築できるからです。
社員教育には、新入社員や中堅社員、管理職など、育成対象に応じたいくつかの種類があります。
また、社内で先輩などの指導を受けながら職場で業務を学ぶ「OJT(On the Job Training)」や、職場を離れて能力開発に取り組む「Off-JT(Off the Job Training)」、自己啓発を意味する「SD(Self Development)」など、それぞれに考え方や手法が異なります。
社員教育の目的は、社員を自社の成長と発展に貢献できる人材として教育することです。社員の能力を適材適所に開花させることで、業績の向上が期待できるでしょう。
ただし、その能力を向上させるための教育を行う前に、まず企業の経営ビジョンや目的を明確にしなければなりません。
なぜなら、企業によって顧客の対象(BtoBやBtoCなど)が異なり、また商品やサービスの販売方法も違うからです。
消費財を販売する企業においては、ロングセラー商品や新しい商品の開発と販売戦略が重要となります。また、近年増えているサブスクリプション型のサービスを扱う企業では、LTV(顧客生涯価値)をどのように高めるかが重要なポイントです。
このように、自社にマッチした経営戦略と顧客のペルソナを明確に設定し、利益と社会貢献を目的としたビジョンを明確にすることが社員教育にとって重要なポイントとなります。
経営者自身がしっかりとしたビジョンを持ち、そこから社員教育のステップを踏むことで、社員の育成と教育に関する長期的な計画を設定できるでしょう。
企業の経営ビジョンが設定できたら、次は社員の育成と教育を「いつ・誰に・どのように」行うかといったプロセスを考えなければなりません。
一般的には「経営ビジョン」の設定から実際の教育を行う前に「採用」「教育」「人事」について考える必要があります。
以下では、「採用」「教育」「人事」3つの考え方について解説します。
人材採用では、新入社員や中途人材を採用する際に、自社の経営ビジョンにマッチした人材の採用を戦略的に行います。
近年は、労働人口の減少によって人材の採用が難しいのが現実です。そのため、ただ自社に足りない資格やスキルを持つ人材を採用するのではなく、入社後に成長し、自社の発展に貢献してくれるような志の高い人材を採用することが大切です。
人材教育においては、新人社員への社内研修や、中間管理職へのマネジメント研修、経営者へのヒアリングやアドバイスなど、それぞれのビジネスパーソンに合わせた育成教育を行います。
一般的には新入社員や一般社員の方に行う研修が多くなりますが、企業の分社化が進む現代では、親会社のオーナーなどが子会社の経営陣への教育をコンサルタントに依頼するケースもあります。
人事に関するコンサルティングでは、教育・育成した人材を適材適所に配置して、企業の体質改善をサポートします。
働き方改革などにより働く方の雇用形態も多様化している現代では、雇用に関する法律を理解し、遵守することも大切です。そこで、適切な人材評価と法律に則った人事を行うことで、優秀な人材の流出を防ぎ、企業の発展を妨げることがないようにしましょう。
次に、社員の育成を行う際の教育対象について解説します。
社員教育で、まず最初に思い浮かぶのが新入社員に行う研修ではないでしょうか。新入社員に行う研修では、まず企業理念や自社業務の詳しい内容などを伝えながら、ビジネスマナーといった社会人としての基本的な心得を教育します。
社員研修とは、一般的に部署ごとに行われる研修で、業務に対するロジカルな考え方やコミュニケーションスキルなどを広く教育します。
営業や人事、製造など、各部署によって教育内容が大きく異なるため、人材を適材適所に配置した上で行うことが大切です。
管理職における教育では、部下の人材教育の仕方から、自らの業務に関するマネジメント教育まで多岐に渡ります。
また管理職の方の業務は普段から非常に多いため、しっかりと教育を行うためには、管理職の業務をサポートする体制づくりも成功のポイントです。
そのため、人材育成や教育に全社をあげて取り組み、教育と実践を繰り返しましょう。
そして絶対に忘れてはならないのが、経営者教育です。なぜなら、経営者自身が自社の経営ビジョンや理念を明確に持ち、常にその目標に向かって企業をコントロールしながら企業運営を成功に導かなければならないからです。
昨今、さまざまな企業で経営者の不祥事が発覚する中で、経営者自らが学び向上する姿勢を部下に見せることも企業にとって大きなプラスとなることでしょう。
社員教育で注意すべきポイントは、教育する立場によって、それぞれ選ぶべき本が異なることです。
企業の経営者の方が読むべき本と管理職の方が読む本、これから人材育成を受ける方が読む本べき本の内容は、それぞれ全く異なります。
以下では、それぞれの立場の方が選びやすいように、おすすめの書籍をジャンル分けしながら紹介します。
▲出典:もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら
この本は「もしドラ」の愛称で有名となった、マネジメントをわかりやすく解説した小説風のビジネス本です。
内容については、マネジメントに関わる方が1度は読んでおくべきドラッカーの「マネジメント」を基にしているため、これからマネジメントを学ぼうとする方におすすめの1冊です。
ドラッカーのマネジメントは、内容が専門的でしかもページ数も多いことから、なかなか読破できない方が多いというデメリットがあります。しかし「もしドラ」では、文章量が抑えられており、しかも内容が分かりやすいので、マネジメントの基礎知識を習得したい方とって最適と言えるでしょう。
現役のビジネスマンはもちろん、学生や若手のビジネスパーソンなど、多くの方に読んでほしい1冊です。
ここでご紹介する本は、先ほど紹介した「もしドラ」のマネジメントのモデルとなった本です。ただ、ドラッカーの「マネジメント」は非常に内容が専門的でボリュームも多いため、ここでは少し読みやすいエッセンシャル版を紹介します。
この「マネジメント エッセンシャル版」は、ドラッカーの大著「マネジメント」のエッセンスをわかりやすくまとめた入門書と言える1冊となっており、2001年の出版以来多くのビジネスパーソンに読まれている書籍です。
「マネジメント(エッセンシャル版)」では、マネジメントのテクニックよりも、企業マネジメントのあるべき姿をわかりやすく解説しています。マネジメントについて体系的に学びたい方におすすめしたい1冊です。
▲出典:最高のリーダー、マネジャーがいつも考えているたったひとつのこと
この本は、リーダーが何をなすべきか気づかせてくれる1冊です。
この本には、リーダーシップとマネジメントとの違いを明確にし、優れたリーダーやマネジャーの役割と今すべきことが明確に記されています。それ以外にも、リーダーが個人として成長するために必要な要素も述べられているため、リーダーとして成功したい方におすすめです。
また、直接読者に語りかけるような文体にも好感が持て、読みやすいのが特徴です。
▲出典:最高のコーチは、教えない。
この本は、元メジャーリーガーでプロ野球選手のコーチも務めた著者が、メンバーを成長させるコーチングの本質を説いた1冊です。
チームの各メンバー個々の能力を引き出し、成功に導くためのコーチングの基礎や、結果を出すために必要なコーチングのルールが9つの項目でわかりやすく解説されています。
この本を読めば「コーチは教える人」という常識が覆されるでしょう。部下の指導方法に悩んでいる方や、成果を出すチームづくりに悩んでいる方におすすめの1冊です。
▲出典:最軽量のマネジメント マネジャーにすべてを背負わせるのはもうやめよう。
この本は、マネジャーを楽にする1冊です。
この本の著者は、働き方改革で先進的な取り組みを行う企業として有名な、サイボウズ取締役の山田理氏で「マネジャーはこうすべき」や「こうあるべき」といった内容ではなく、ターゲットを「マネジャーの仕事を減らす」ことに注力しています。
「上司と部下」や「企業組織と個人」といったビジネスにある体系的な仕組みの中で、一方的な期待や責任を背負わされるマネジャーを解放する内容が書かれています。
女性の活躍が叫ばれて久しい現代。実際に、女性が活躍できる企業は不景気にも強いと言われています。
この本では「日経WOMAN女性活躍する会社ベスト100」で選ばれた上位の企業が、女性の力を最大限に発揮できるようにどのような施策を実施しているかの具体例が書かれています。
本書で紹介されている企業は、さまざまな業種業態の大手企業ばかりではありますが、中小企業でも参考となる施策が多く含まれています。
特に人事や人材開発に関連する部門でマネジメントを行う際に、女性活用の成功事例を知ることができる、価値ある1冊です。
この本を読めば、女性の力を最大化できるマネジメント手法を詳しく学べるでしょう。
※本書で収録されている企業事例:日本IBM、資生堂、第一生命保険、大和証券グループ、三菱東京UFJ銀行 高島屋、パナソニック、アクセンチュア、東京海上日動火災保険、JTBグループ、イオングループ、サントリーホールディングス、花王、日立製作所、NTTドコモ、JR東日本、 日産自動車、東芝、味の素 な
▲出典:自分の頭で考えて動く部下の育て方 上司1年生の教科書
『自分の頭で考えて動く部下の育て方 上司1年生の教科書』は「自分は必死に教えているのに、一向に部下が育たない」と悩む現場のマネージャーにおすすめの1冊です。
本書では、自主的に部下が働くようになる手法を具体的に学べるでしょう。
上司としての格が上がり、部下が自然に育つ。そんな結果と流れを生み出したいと願うすべての方に、1度は読んでいただきたい書籍です。
農林水産省10大トピックス受賞の篠原信氏による、科学的マネジメントの集大成でもある本書は、ぜひご一読いただきたいと思います。
ひとことで社員教育と言っても、その取り組みを行う方の役職や年齢、キャリアはさまざまで、それぞれがとるべき行動や必要な知識も異なります。
そこで、人材育成に必要な知識やスキルを身につけるために、人材教育に関する本が役立ちます。
ただ、人材教育やマネジメントに関する書籍は無数にあるため、本屋さんの棚を眺めていてもなかなか良書に巡り会うのは難しいのが現実です。
そこで、この記事で紹介した書籍と、それぞれの目的を参考にして、ぜひあなたにピッタリの本を探してみてはいかがでしょうか。
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