探究的な学習は、これからの時代を生きる高校生にとって欠かせないスキルです。
単なる暗記や反復練習だけではなく、自ら課題を見つけ、解決策を探る力を養うことができます。
本記事では、探究的な学習が推進される理由から、理系・文系・社会的分野における具体例、成功のポイントまでわかりやすく解説します。
探究的な学習のアイデアが浮かばない方やどんな学習があるのか具体例を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
探究的な学習は、近年の教育界で注目を集めています。
なぜ、このような学習方法が推進されているのでしょうか。
その理由には、変化の激しい現代社会に対応できる力を育成する狙いがあります。主な理由としては、以下の3つが挙げられます。
推進される理由をそれぞれ確認していきましょう。
探究的な学習は、生徒の思考力を高める効果が期待されています。
探究的な学習では、与えられた問題を解くだけではなく、自ら課題を設定し、解決策を考え出す過程が重視されるからです。
具体的に向上が期待できる思考力には、以下のようなものが挙げられます。
例えば、環境問題をテーマにした探究的な学習では、まず問題の本質を理解し、さまざまな角度から解決策を考えます。
そして、案のメリットとデメリットを論理的に分析し、最適な解決策を導き出します。
この学習を通じ、さまざまな思考力が高められるでしょう。
探究的な学習のもう一つの特徴は、実践的なスキルが身につくことです。
教科書の知識だけではなく、実際の社会で役立つスキルを習得できます。
探究的な学習で身につく実践的スキルには、以下のようなものが考えられます。
例えば、地域の課題解決をテーマにした探究学習では、地域住民へのインタビューや統計データの分析、解決策の提案と実践など、一連のプロセスを経験します。
これらの活動を通じて、社会人になってからも役立つ実践的なスキルを学べます。
現代社会では、デジタル技術の活用は避けて通れません。
探究的な学習は、デジタルリテラシーを強化する絶好の機会です。
探究的な学習を通じて強化されるデジタルリテラシーには、以下のようなものが挙げられます。
例えば、SDGsに関する探究学習では、世界各国のデータをオンラインで収集し、グラフ化して分析します。
その結果をオンラインプレゼンテーションツールを使って発表するといった具合です。
こうした活動を通じて、現代社会に不可欠なデジタルリテラシーが自然と身につくことが期待できます。
探究的な学習の範囲は、1つの教科だけではなく、横断的な範囲が適用されています。
そのため、具体例も教科によって探究内容も変わってきます。
ここでは、理数分野における探究的な学習の具体例を3つ紹介します。
神奈川県内の高校で実施された、水と石けんを使った表面張力の探究学習は、理系分野における探究的な学習の好例です。
この取り組みは、2年生を対象に2時間程度で行われ、数学と理科の二つの観点から探究できるよう計画されました。
学習のねらいは、探究の過程を通して、課題を解決するために必要な資質・能力の育成でした。
具体的な探究の流れは、以下のとおりです。
この過程で、生徒たちは「表面張力」「浮力」「親水基」「親油基」などの概念を学びました。
最終的には、石鹸が汚れを落とす仕組みをグループで探究し、まとめとしました。
この事例は、身近な題材を用いながら、高度な科学的概念を探究的に学ぶことができる優れた例といえるでしょう。
常葉学園橘高等学校と京都教育大学附属高校のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)で実施された探究的な学習の優れた事例です。
このプロジェクトは2年生を対象に、7日間(14コマ)にわたって行われました。
学習のねらいには、以下のようなものが挙げられます。
プロジェクトでは、以下の5つのテーマから1つを選択し、設計製作または調査を行いました。
A |
明暗を光で知らせるセンサーシステム作り |
B |
明暗を音で知らせるセンサーシステム作り |
C |
熱いことを光で知らせるセンサーシステム作り |
D |
デジタル温度計作り |
E |
光の急激な変化を調べる |
実験の結果は班ごとにまとめ、最後に発表を行いました。
このプロジェクトは、生活に身近なセンサーを扱うことで、生徒の関心を高め、学習と生活の関連性を実感させることに成功しました。
生徒が「自分ごと」として取り組みやすい題材を選ぶことで、より深い学習体験につながることを示す優れた事例といえるでしょう。
この探究学習は、身近な「畳」を題材にして「数列」「整数の性質」を発展させ、現代数学のフィボナッチ数列に触れる興味深い事例です。
わずか40分の短時間で、高度な数学概念を楽しく学ぶことができる工夫が施されています。
学習の流れは以下の4つのステップで構成されています。
ステップ1(5分) |
「四畳の部屋に畳を敷く方法は何通りあるか」の問題に、畳カードを使って取り組む |
ステップ2(10分) |
「n畳の畳の敷き方は何通りあるか」の問題から、「Fn=Fn-1+Fn-2」式を推測する |
ステップ3(15分) |
「なぜ、畳の敷き方にFn=Fn-1+ Fn-2という関係性があるのか」を考察する |
ステップ4(10分) |
現代数学の講義を受ける |
結果として、この学習を通じて生徒の「数学の有用性に対する意識」が全体的に向上したことが報告されています。
この事例は、難しい数学の概念でも、日常生活との結びつきを実感できるようにすれば、生徒が意欲的に取り組めることを示しています。
「勉強が何の役に立つの?」のような疑問に対する一つの答えとなる、優れた探究的学習の例といえるでしょう。
ここでは、文系分野における探究的な学習の具体例を3つ紹介します。
名古屋大学教育学部附属高等学校の2年生を対象に行われた、清少納言に関する探究学習は、古典文学への理解を深めるユニークな取り組みです。
この学習は6時間にわたって実施されました。
「枕草子」で有名な平安時代の歌人・清少納言に対する異なる評価を比較・分析し、多角的な視点を養うことを目指しました。
具体的な学習の流れは、以下のとおりです。
1~4時間目 |
『十訓抄』(好意的評価)と『紫式部日記』(批判的評価)の読解 |
5時間目 |
評価が異なる要因の個別探究とグループディスカッション |
6時間目 |
グループ発表、教員による補足説明、2回目の個別探究 |
結果として、2回目の個別探究では、複数の意見を関連づけて考察する生徒が増加しました。
この事例は、古典文学の学習を通じて、批判的思考力や多角的な視点を養う優れた探究的学習の例といえるでしょう。
グループディスカッションや発表を通じて、対話的で深い学びを実現し、古典への理解を現代的な文脈でも深められる可能性を示しています。
神奈川県立荏田高等学校と文教大学情報学部が協力して行った、3年生を対象とした日本近代史の探究学習は、生徒の主体的な学びを促す興味深い事例です。
この学習は11時間にわたって実施され、満州事変から第二次世界大戦までの範囲で生徒自身が課題を設定し、探究を行いました。
具体的な学習の流れは、以下のとおりです。
テーマ選び(1時間) |
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大きな「問い」立て(2時間) |
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レポート提出(1時間) |
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発表資料の作成(6時間) |
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発表(1時間) |
|
この探究学習の結果、以下のような成果が見られました。
一方で、発表に関しては難しいと感じる生徒も多く、伝え方の指導での課題も見られました。
この事例は、生徒が主体的に問いを立て、情報を収集・分析し、まとめて発表する探究学習の基本的なプロセスを実践しています。
また、図書館との連携により、十分な情報収集に基づいた調査が可能となっている点も特徴です。
和歌を通じたジェンダーに関する探究学習は、古典文学とSDGsを結びつけた興味深い取り組みです。
京都学園中学高等学校(現:京都先端科学大学附属中学校高等学校)の1年生を対象に行われました。
この学習は、SDGsのゴール5「ジェンダー平等を実現しよう」をテーマに実施されました。
具体的な学習の流れは、以下のとおりです。
探究学習の成果には、以下のようなものが挙げられます。
時代によるジェンダー観の変化の理解 |
古典和歌と現代のジェンダー観を比較し、価値観の変遷を把握 |
現代のジェンダー課題への気づき |
「イクメン」などの現代的概念に関して議論し、現代のジェンダー観に対する違和感の気づき |
論理的思考力の育成 |
根拠・理由・主張の3要素を意識した発表原稿作成を通じて養成 |
この事例は、古典文学の学習をSDGsのテーマと結びつけることで、生徒たちがジェンダーの問題を歴史的・現代的な文脈で考察する機会を提供しています。
教科の学習からSDGsに関連する話題を抽出し、探究的な学習につなげる可能性を示す好例といえるでしょう。
探究学習のテーマは、学校教育以外からも見つけられます。
ここでは、社会分野における探究学習の具体例を2つ紹介します。
北海道札幌啓成高等学校の1~2年生を対象に実施された、地域を基盤とした探究活動は、生徒の自己理解と社会性を育む独自の取り組みです。
この学習は、1年次に30時間、2年次に27時間をかけて行われました。
具体的な学習の流れは、以下のとおりです。
1年次 |
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2年次 |
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この取り組みの成果として、外部アドバイザーや学生メンターとの対話が生徒の探究心や創造力を刺激しました。
自分の認識を超えた生き方や考え方に触れることで、将来の可能性や選択肢を広げられる側面もあるでしょう。
群馬県立勢多農林高等学校で実施された、米の生産から販売までを通じた1年間の探究活動は、農業を軸に地域との連携を深める独自の取り組みです。
この活動は、地方創生や農産物輸出に挑戦する若者の育成を目指し、生徒の課題解決力や主体性を養うことを目的としています。
具体的な活動の流れは、以下のとおりです。
3月 |
農家・高校生・企業でコメ作りの打ち合わせ |
6月 |
代掻きと田植え |
8~9月 |
草刈り |
10月 |
稲刈り |
11月~12月 |
脱穀 |
12月~3月 |
精米・調理・販売、親子向けワークショップ「おむすびで結ぶるなぱあく」の実施 |
この事例は、遊休農地や地域資源を活用した実践的な探究活動が、生徒の農業への関心を喚起し、地域との絆を深める効果的な方法であることを示しています。
探究的な学習を成功させるためには、いくつかのポイントがあります。
主なポイントには、以下のようなポイントが挙げられます。
それぞれのポイントを確認していきましょう。
探究的な学習を成功させるためには、適切な情報収集と分析が必要です。
この過程を効果的に行うことで、より深い理解と洞察を得られるからです。
効果的な情報収集と分析のためのポイントには、以下のようなものが挙げられます。
それぞれのポイントを意識しながら情報収集と分析を行うことで、探究的な学習の質を高められるでしょう。
探究的な学習では、個人の努力だけではなく、チームでの協働も必要です。
効果的なチームワークとコミュニケーションスキルは、多様な視点を統合し、より深い洞察を得る助けとなるでしょう。
探究的な学習におけるチームワークとコミュニケーションの要点は、以下のとおりです。
上記のポイントを意識しながらチーム活動を進めることで、個々の能力を最大限に引き出し、チーム全体としての探究の質を高められます。
また、こうしたスキルは将来の社会生活でも役立つでしょう。
探究的な学習では、自己評価と振り返りは学習の深化と改善に必要な過程です。
自己評価と振り返りにより、学習内容の定着や課題の発見、目標設定、成長の実感、メタ認知の育成が促進されるからです。
効果的な自己評価と振り返りの方法には、以下のようなものが挙げられます。
自己評価と振り返りを定期的に行うことで、生徒は自身の学びに対する責任感を持ち、生涯学習者としての基礎を築けます。
これは探究的な学習の質を高め、持続的な成長につながります。
探究的な学習は、学生に多くの可能性を開く、貴重な経験です。
本記事で紹介した具体例や方法を通じて、生徒の成長も期待できるでしょう。
探究的な学習は、単に知識を増やすだけではなく、人間的成長を促し、将来の進路選択や社会生活にも影響を与えます。
探究的な学習に正解はありません。
失敗を恐れず、好奇心を持ってさまざまなテーマに挑戦してみる姿勢が大切です。
探究的な学習を通じて得られる気づきや経験が、生徒の将来を切り開く力となるでしょう。
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