業務を進める中で「KPI」という言葉を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。実際にKPIを管理して報告してほしいと上長から頼まれ、何をどうすれば良いのかわからないと言ったお悩みを抱えている方がいるかも知れません。
KPIを使うことで、業務の進捗状況を正確に把握し、目標達成に向けた計画の最善案の立案や施策の実行がスムーズに行えます。
そこで今回は、業務における達成度合いを中間測定する指標である「KPI」について、詳しく解説します。
企業の営業担当者やマーケターの方はもちろん、業務の遂行に関わるすべての方に、ぜひ参考にしていただければ幸いです。
KPI(重要業績評価指標)とは、ある事業で立てた計画目標を達成するまでの「達成度合い」を中間測定する指標です。
KPIでは月、週、日などの単位で事業の進捗度合いを測定し、期間ごとにパフォーマンスを評価します。そして業績が計画通り遂行できていなければ、業務の改善策を立案し実行します。
このように、KPIは事業の目標を達成するまでの過程において、現在の行動が正かどうかを確認するための重要な指標です。
たとえば営業部門におけるKPIでは「今月の訪問件数」や「リードの獲得件数」などがあります。訪問先やリードの数が増えることにより、最終的なゴールとなる成約数や売上の向上に繋がります。そこで、業務の進捗状況を把握するための中間指標であるKPIが重視されています。
このように、KPIは個人や組織が業務を進める中で、その達成度合いを具体的な数値で測定し目標に対する現在値を表わす指標です。
KPIは基本的に数値で表し、次に解説する「KGI(重要目標達成指標)」の中間指標としての役割を果たします。
KGI(重要目標達成指標)とは、ある事業を遂行する際に、定めた期間中に達成する「最終目標」を数値で表し、指標化するものです。
このKGIは、事業目標を具体的に数値化することで作成できます。例えば「売上を昨年度の2倍にする」や「売上高を1億円にする」といった具体的な数値をKGIとして設定します。
KGIを設定することで、社員や従業員が目指すべき目標が明確になります。そして「自分が何をしなければいけないか」を具体的に計画できるでしょう。
このように、中間指標であるKPIと最終目標であるKGIを設定することにより、売上や利益、必要な顧客数や販売量などを設定できます。
KPIとKGIの違いは、中間と最終の目標達成指標の違いです。KPIが中間指標であるのに対し、KGIは最終的な目標値となります。
KGIの達成には、KPIの中間指標が欠かせません。なぜなら、KPIを達成できていない事業においては、KGIの達成も難しくなるからです。このように、KPIとKGIは密接に関わる指標です。
KPIの設定する際に重要となる項目に「KFS」があります。このKFSは、KPIの設定に欠かせない重要な要素となるため、以下で解説します。
KFS(重要成功要因)とは、KPIに類似した言葉で、事業を成功へ導くための重要な鍵となる要素です。
わかりやすく表現すると「KFS」を数値化した指標が「KPI」です。
KFSとは、ビジネスを成功に導くための成功要因であるため、KPIやKGIとは根本の意味あいが異なります。KFSは「要因」であるため、数値化ができません。一方で、KPIやKGIはKFSを数値化した指標であるため、相互に密接に関わりながらも性質が異なります。
KPIの導入には様々なメリットがあります。ここでは、KPIをビジネスに活かすことで、どのようなメリットがあるのかを解説します。
KPIのメリットは、以下のようなメリットがあります。
KGIの目標を達成するまでのプロセスを可視化できることは、KPIを設定する最も大きなメリットです。
KPIは、KGIに至る中間実績を数値化するため、目標達成までの進捗度合いを明確にできます。
KPIを設定することで目標達成までの進捗度合いを可視化できるため、スタートからゴールまでの進み具合を常に把握し、コントロールできます。
KPIの設定により、目標までの進捗状況が可視化されるため、実行すべき行動が明確になります。
目標を設定するだけでは、具体的なアクションに繋がりません。そこでKPIによって「目標予算の達成率、現在のアポイントメントの獲得件数、契約予定件数」などの目標達成までの具体的な数値を示すことで、やるべき行動を明確にできます。
KPIの設定により、人事の評価基準を統一できます。KPIでは、客観的な数値に基づいた評価を行うため、組織内での評価基準から不公平な要素を排除できます。事業における公平性を保つことは、従業員のモチベーションとレベルアップに繋がります。
それ以外にも、KPIを設定することにより、組織ごとに異なる業務の進捗状況を評価・比較できます。例えば、担当する業務が異なる営業部門と製造部門の進捗度合いを、KPIによって数値化できるため、どの業務でも公平に比較できます。
KPIの設定により、KGIに向かう行動が数値で可視化できるため、業務改善のPDCAを回しやすくなります。
KPIを設定しなければ、結果に対する根拠の裏付けができないため、改善策を明確にできません。
KPIを設定することで業務内容も明確になり、プロジェクトを正しい方向へ導くことができます。
KPIの設定により、業務内容に優先順位を付けることができます。業務に優先順位を付けることで、無駄な作業を減らし、業務の効率化が可能になります。
また、他の業務と連携した相乗効果も期待できます。営業部門と製造部門がKGIに向けたプロセスを共有することで生産性が向上するなど、KPIによる業務改善も容易になるでしょう。
KPIの設定によってKGIへのプロセスが可視化されると、個々のスタッフがとるべき行動が明確になります。そして、KPIの達成のために何を優先して対応すべきかといった個人のスキルアップにも良い影響を与えます。
以下では、KPIを設定する流れを詳しく解説します。
まず最初に、最終目標となるKGIを設定しましょう。KGIをできるだけ具体的に設定することで、中間目標であるKPIの精度が向上します。
そのためには、KGIを現実的な数値で示し、達成目標を可視化することが重要です。イメージしやすい数値でKGIを定義すれば、KPIを明確に設定できます。
KGIを設定したら、KGIの重要成功要因であるKFSを抽出します。KFSを抽出するためにKGIを細分化し、具体的な作業内容を分析できます。
次に、KFSによって抽出した成功要因を数値化することでKPIを設定します。ただし、KPIを多く設定し過ぎると、業務管理にかかる手間とコストが膨大となり、逆に作業効率が落ちる可能性があります。そこで、重要なプロセスだけをKPIに設定しましょう。
KPIを設定する際には「SMARTの法則」がおすすめです。
KPIの設定内容を間違えると、その効果が発揮できません。そこで「SMARTの法則」に沿って目標値を設定することで、失敗するリスクを軽減できます。
「SMARTの法則」は以下の5つの頭文字から作られた造語です。
それぞれを解説します。
KPIで設定する目標は、具体的で分かりやすいことが絶対条件です。
KPIでは、複数のスタッフで目標を共有し、協力し合いながら達成します。しかし、KPIが曖昧であれば、業務に携わるスタッフの解釈がバラバラになります。
そこでKPIで設定する目標は、分かりやすく、具体的であることが大切です。
KPIの目的は、中間過程の達成度合いを可視化することにあります。そのため、数値化できない目標を設定した場合は、効果的な評価ができず業務改善に役立ちません。
また、KPIは単に目標を数値化すれば良いというわけではありません。他の業務の指標と比較できるように、横断的な数値基準を統一化することも重要です。
そこでKPIには「件数」「率」「回数」などの数値化しやすい指標を使うのが一般的です。
KPIに設定する目標は、達成可能な数値であることが大切です。高いKPIを設定しても、達成不可能な目標であれば意味がありません。あまりにも現実離れしたKPIを設定すると、逆にスタッフのモチベーションを下げてしまう可能性もあります。
KPIの設定には、現実的かつ理想的な数値を模索し、業務の改善と努力によって達成できる値を設定しましょう。
KPIは、最終目標であるKGIと関連していなければなりません。KGIとの関連性が低いKPIの場合は、KPIを達成しても、KGIの成果に結びつかない可能性があります。
KPIの効果を高めるためには「いつまでに」「どれだけの成果を上げるか」といった期限を設けることが重要です。
そもそもKGIに期限があるため、KPIは更に短い期間でその効果測定を行わなければなりません。企業活動は、時間がかかりすぎると費用対効果も悪くなります。そこで、1ヶ月ごとや四半期といった周期で効果を測定しながらKPIの測定を実施しましょう。
KPIの具体例を挙げるにはKGIの設定も必要となります。それはKPIがあくまでKGIの途中経過の評価であるからです。
以下では、下記の3つのKPIの設定方法を具体的に紹介します。
まず、KPIとKGIの設定のポイントは、具体的かつ現実的であることが重要です。直近のデータを参考にして数値を設定しましょう。
KPIの設定手順は、最初にKGIを設定し、そこから逆算して各業務のKPIを算出します。
ここでは現在の月商が6,000万円で、自社サイトへの新規ユニークユーザー数40,000人、新規問い合わせ件数600件、新規商談件数120件だった場合で試算します。
KPIを2倍にすることで月商を2倍にできないかを検討します。実現可能と判断された場合、設定されるKGIは月商12,000万円となり、KPIは自社サイトへの新規ユニークユーザー数が80,000人、新規問い合わせ件数1200件、新規商談件数240件と設定されます。
人事採用でKPIを設定する場合は、採用人数を倍にするからと言って単純に2倍の内定をだせば良いわけではありません。なぜなら、内定後の辞退率や他部門への移動など、様々な要因を加味する必要があるからです。
人事採用でのKPIについては、過去の事例を参考に、できるだけ正確な数値を算出しましょう。
営業職でKPIを設定する場合は、成約が見込める営業機会数や見込み客の成約率、営業案件数、顧客単価などを詳細に分析することで、明確な数値目標を立てることが可能となります。
営業では他の業務との連携も必要となるため、より横断的で分かりやすい数値を算出しましょう。
企業における業務の目標をクリアするには、KGIとKPIの設定が欠かせません。
なぜなら、企業にとって最も重要となる売上目標の達成には、プロセスの可視化が必要だからです。
今回ご紹介したKPIは、最終的な目標値となるKGIを達成するためのプロセスを評価する指数です。KPIを組織全体で共有して社内の意思の統一を図ることで、業績とともにチームのモチベーション向上にも期待できます。
そこでKPIとKGIを適切に活用し、企業目標をクリアしていきましょう。