マーケティングに関する営業提案を行う際には、一般的な提案書を書くよりも具体的な分析結果に沿った戦略立案が必要となります。
現代は、さまざまな市場において顧客の多様化が進んでいます。そのためマーケティング施策の立案においても、それぞれに細分化された市場のトレンドを掴んでいなければ、クライアントに受け入れられにくいのが現状です。
そこで『提案書』を書く際の、ポイントと手順が重要となります。
提案書の書き方にはこれといった決まりがないため、作成される提案書は十人十色です。実際にビジネスパーソンの多くに提案書を書く機会がありますが、採用される提案書を書ける人材は一握りしかいません。
そこで今回は、採用される提案書の書き方をベースに、マーケティング戦略の立案方法と提案書に落とし込むための手順を徹底解説します。ぜひ参考にしてください。
提案書とは『クライアントの課題を解決する方法』をわかりやすく提案するための資料のことです。
一般的な提案書では、クライアントの課題解決に向けて、自社の商品やサービスの購入を促すための提案をするのがほとんどです。
これはマーケティング戦略における提案でも同じで、これまではクライアントのニーズに合わせたマーケットの戦略を施策に落とし込んで提案すれば『売れた』時代でした。
しかし、インターネットが整備されて情報過多となっている現代では、クライアントの市場にある顕在化されたニーズを満たすサービスをいくら売り込んでも『売れない』時代となっています。
現代の提案営業に求められる施策は、クライアントが気づいていない『潜在的な課題』をサプライヤーである営業担当者が見つけ出し、クライアントが気づいていない問題を『顕在化して解決に導く』マーケティング施策を提案しなければなりません。
そのためにも、企業の営業担当者だけでなく、マーケティングチームやマーケターが一致団結して市場分析やマーケティング施策の立案に取り組むことが必要です。
クライアントが採用したくなる提案書には、いくつかの特徴があります。
それは「クライアントが気づいていない市場にある課題を発掘し、解決策を具体的に提案できる提案書」や「クライアントの顧客(消費者)や市場に対する調査を徹底的に行い、クライアントの顧客に対してベネフィットを提供できる提案書」です。
なぜならこのような提案書は、クライアントにとって『採用したくなる提案書』なだけでなく『断わる理由がない提案書』となるからです。
このように『クライアントが断れない提案書』は、クライアントの向こう側にいる消費者に対してベネフィットのある提案書です。
マーケティングとは「市場におけるニーズへの理解を深め、そのニーズに合った商品やサービスの製作、広報活動を行うこと」を意味します。
そのためマーケティング活動は、業種や業態、取り扱う商品やサービスの種類に関係なく、ビジネスにおいて必要不可欠と言えます。
その中でも、まず最初に行う「マーケティング戦略の立案」においては「誰に」「どんな価値を」「どのように提供するか」を決める最も基本的で重要な取り組みです。
具体的には、競合他社に対して自社製品の優位性を図りつつ「どのような顧客に」「どのような価値を」「どのように提供するか」を考えます。
そして企業の最終目的として、顧客のLTV(顧客生涯価値)の向上を目指すのがマーケティングと言えるでしょう。
マーケティング戦略が重要視される理由は、企業のリソースを最適化することで、収益の最大化を見込めるからです。
経営者の経験値や勘に頼ったビジネス展開を行っているうちは、企業の経営資源(ヒト・モノ・カネなど)を浪費しているケースも少なくありません。
そこで、これらの経営資源を最大限に有効活用するために、マーケティング戦略の立案が必要となるのです。
また収益の最大化以外にも、マーケティング戦略の立案過程において、企業の商品やサービス、もしくは会社そのものの立ち位置が明確化できるメリットもあります。
それは、マーケティング戦略を立案するプロセスにおいて業界全体や競合分析を行う中で、自社の強みや目指すべき方向、現在の立ち位置を可視化できるからです。
その他にも、マーケティング戦略は社外のステークホルダー(投資家や銀行などの利害関係者)と対等なコミュニケーションをとるためにも重要な役割を果たします。
なぜなら、マーケティングによる市場の分析結果を基にして、説得力のある交渉ができるからです。市場分析による具体的な数値や指標を示すことで、より多くの資金提供や金利の引き下げといった交渉材料の1つとなる可能性があります。
マーケティング戦略の立案においては、次の5つのポイントを押さえておく必要があります。
以下で、それぞれについて解説します。
まず最初に、クライアントとクライアントの商品やサービスが現在置かれている環境の分析を行います。
具体的には、クライアントの顧客と市場、競合といった外部環境からの分析が必要です。また一方で、内部環境としてクライアントの企業分析も行います。
この段階では「3C分析、PEST分析、SWOT分析」といった市場分析のフレームワークを活用します。(※各フレームワークは次の章で解説します)
次に、顧客の「ターゲティング」を行います。
現代のマーケティングでは、できるだけ詳細にペルソナ設定することがマーケティング成功のポイントといっても過言ではありません。
狙う顧客層の性別や年齢はもちろん、職業や居住地域、趣味嗜好など複数の軸でターゲットを設定しましょう。またBtoBの場合は、業種や業態、企業規模などを考慮します。
ポジション選定では、マーケティング戦略を立案する際に、競合他社を含めた市場全体の中でクライアントやクライアントの製品がどのポジションを狙い、ユーザーにどのような認識を持って欲しいかを決定します。
ここでは企業や製品が目指すべきゴールを明確にする必要があるため、クライアントとの綿密な打ち合わせが必要です。基本的には、市場の中で最も優位性の高いポジションを獲ることがベストとなります。
ペルソナ設定やポジション選定においては、STP分析が効果的です。
上記のペルソナやポジションの設定を踏まえ、次の段階ではユーザーにどのようなベネフィット(価値)を提供できるかを具体化します。
ここでは、ユーザーがクライアントの商品やサービスを購入するメリットや、それらが解決できる課題、競合に対する優位性などを深く検討する段階です。
「ユーザーが求める価値」「クライアントが提供できる価値」「競合が提供できていない価値」が重なる領域を見つけ出し、この領域を意識した提案を行うことが、提案成功への近道となるでしょう。
販売戦略の決定では、ここまでに見えてきた価値を、どのようにしてユーザーに提供するかを検討します。
まずはユーザーの視点に立ち、ユーザーの目につきやすく手に取りやすい、価値を享受しやすい届け方について考えましょう。
またクライアントの商品やサービスが、競合の製品よりもよりも入手しやすい提供方法を策定することも必要となるため、競合他社の分析も必要です。
販売戦略においては、4P/4C分析などのフレームワークを活用します。
前章で紹介したように、マーケティングの戦略を立案する際には、さまざまなフレームワークによって市場分析を行います。
以下では、市場分析に必要となるフレームワークを紹介します。
3C分析とは、次の3つの視点から、企業のマーケティング施策を客観的に分析するためのフレームワークです。
3つの視点
このような3つの「C」を分析することにより、成功要因の発見に繋げるのが目的です。
どの分析でも言えることですが、企業(自社)と競合企業を分析する際は「客観的な視点」でデータを観察することが重要です。
経営者の目や意見に左右されないように、マーケターや担当者の方は、正確な情報とデータをもとに意見しなければなりません。
PEST分析とは、次の4つの要因からマクロ環境を分析するマーケティングフレームワークです。
これらの要因は、企業側ではコントロールできません。このような外部的な要因を分析するのがPEST分析の役割となります。
PEST分析によって、世の中の動向やトレンドに合わせた事業展開が可能となります。
例えば近年では、新型コロナウィルスの蔓延により、さまざまなオンラインツールをはじめとするWebサービスが急進した。
このようにマーケティング戦略は外部環境の変化による影響を受けやすいため、常にマクロ環境を調査・分析し、必要に応じて企業の戦略を見直すことも重要です。
SWOT分析とは、次の4つの視点から分析を行うフレームワークです。
SWOT (スウォット) 分析とは、企業のビジネス全体や特定のプロジェクトにおいて、強み、弱み、機会、脅威となる要因を特定するための手法です。
SWOT分析は、事業の規模や形態を問わず、さまざまな組織で幅広く利用されています。
SWOT分析では、市場を取り巻く外部環境と企業の商品やサービスの価格や品質などの内部環境について、プラス要因とマイナス要因の両面から客観的に分析可能です。
STP分析とは、次の3つで構成されるフレームワークです。
STP分析では、セグメンテーションで市場の全体像を把握し、ターゲティングでその中から狙うべき市場を選定し、ポジショニングで競合他社との位置関係を決定する方法です。
あくまでもユーザー目線に立ち、ユーザーの行動を客観的に把握し、それに応じた事業展開を行うことが重要です。
4C分析は、次の4つの要素(4C)について分析するフレームワークです。
顧客目線に立って、価値のある商品やサービスがどのようなものかを把握するために活用します。
4P分析は、次の4つの要素(4P)について分析するフレームワークです。
こちらは4C分析とは逆に、企業目線で商品やサービスにフォーカスしたフレームワークです。
マーケティング戦略における提案書を書く際の手順は、次の流れに沿うことが基本となります。
それぞれ解説します。
マーケティング施策の立案について、まずは次の5つの分析結果を抽出します。
①マクロ環境の分析
②業界動向の分析
③ユーザーの分析
④競合企業の分析
⑤クライアント企業の内部分析
このように、マクロからクライアントの内部分析へと、順に環境を狭めつつ環境動向の分析を実施しましょう。
次にクライアント企業に提案する施策に必要となる市場の強みや弱み、機会や脅威を、SWOT分析によって解析します。
上記で抽出した分析結果から、クライアントに提案するマーケティング戦略のテーマを設定します。
上記のテーマに基づいて、次の6つの施策に戦略を落とし込みましょう。
この6つの流れに沿って提案書をまとめることで、クライアントに見やすくわかりやすい提案書を書くことができるでしょう。
さらに採用される提案書の書き方については『コンサルタントが提案書の書き方を解説|採用される提案書とされない提案書の違いとは?』を参考にしてください。
このように、マーケティング戦略に特化した提案書を書く際は、市場分析を中心としたデータと施策を明確にすることが重要です。
そこで、この記事や関連する提案書の記事を参考に、競合他社に負けない提案書の作成にお役立てください。
また提案書の作成にお困りの際は、ぜひアルマ・クリエイションにご相談ください。