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メンタリングとは?導入のメリット・デメリットや注意点を徹底解説

作成者: 水落康稀|2025.1.30

人材育成の手法として注目を集めるメンタリングですが、導入に踏み切れない企業も少なくありません。

特に、メンターの選定基準や具体的な実施方法、さらには費用対効果の面で、多くの企業が課題を抱えているのが現状です。

本記事では、メンタリングの基本的な考え方から、導入のメリット・デメリット、そして効果的な実施のための注意点まで、実務で役立つ情報を解説します。

具体的な運用方法や評価の仕方など、現場で活用できる内容も紹介しています。

メンタリング制度の導入を検討している企業の方に、ぜひ参考にしてください。

メンタリングとは?

メンタリングとは、指導する側の社員(メンター)と指導される側の社員(メンティー)が一対一で対話し、メンティーのキャリア支援や社会生活、心理的なケアをおこないながら、成長を支援する人材育成手法です。

メンタリングの特徴は、単なる業務指導にとどまらない幅広いサポート体制にあります。

メンターはメンティーに明確な答えを与えるのではなく、対話を繰り返しながら気付きを与え、自発的な成長を促します。

対話のテーマは、実務に関することだけではなく、職場の人間関係や心理的な不安の解消、キャリアに関する悩みなど、さまざまです。

メンタリングは「メンター(先輩)とメンティー(後輩)が自由なコミュニケーションを図ることで、お互いの成長を促すこと」とも定義されています。

この点が大切で、メンティーだけではなく、メンター自身の成長も目的とした育成手法です。

企業や組織でメンタリングを実施する仕組みを、メンター制度と呼び、計画的かつ継続的な人材育成に役立っています。

参考:厚生労働省「メンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル

メンタリングの形式別分類

メンタリングは、企業のニーズや目的に応じてさまざまな形式で実施できます。

主なメンタリングの形式と特徴は以下のとおりです。

 

主な特徴

適している場面

1対1形式

  • メンター1人がメンティー1人を担当
  • 信頼関係を築きやすい
  • きめ細かな支援が可能
  • 新入社員の育成
  • 次世代リーダーの養成
  • キャリア開発支援

グループ形式

  • 1人のメンターが複数メンティーを担当
  • 多様な視点から学べる
  • メンター不足の解消に効果的
  • 若手社員の集合育成
  • 部署間交流の促進
  • 組織活性化

リバース形式

  • 若手社員が上司のメンターに
  • 世代間ギャップの解消
  • 相互理解の促進
  • デジタルスキル共有
  • 組織の意識改革
  • 双方向の学び合い

それぞれの形式は、組織の状況や育成目標によって使い分ける必要があります。

例えば、新入社員の早期戦力化を目指す場合は1対1形式が効果的でしょう。

一方、部署を超えた交流を促進したい場合は、グループ形式が適しているはずです。

組織の課題や目的を明確にした上で、最適な形式を選択すれば、より効果的なメンタリングが実現できるでしょう。

コーチングやカウンセリングとの違い

メンタリングとコーチングは、一見似た特徴を持つ育成手法に見えます。

両者とも対話を重視し、一方的な指導ではなく、相手の成長を支援する点で共通しています。

しかし、その本質や目的には明確な違いがあるため、違いを理解しておきましょう。

メンタリングの特徴は以下の点にあります。

 

メンタリング

コーチング

支援範囲

仕事、キャリア、人生全般

特定の課題や目標

関係性

人生の先輩として総合的な支援

特定テーマの支援者

期間

中長期的な関係性

課題解決までの期間

目的

総合的な成長支援

具体的な問題解決

メンタリングはコミュニティでの包括的な人材育成の仕組みです。

一方、コーチングは現状の課題解決や目標達成に向けた具体的なアプローチ方法です。

コーチングはメンタリングの一要素として位置づけられ、より専門的な問題解決手法として活用できるでしょう。

メンタリングを導入するメリット

メンタリングの導入は、企業の人材育成に効果をもたらします。

人材不足が深刻化する昨今、若手社員の早期戦力化や定着率向上は多くの企業の課題となっているでしょう。

メンタリングは、こうした課題に対する有効な解決策の一つです。

具体的なメリットには、以下のようなものが挙げられます。

  • 従業員の育成につながる
  • 社内コミュニケーションが円滑に進む
  • 職場の定着率を向上させる

それぞれ詳しく説明します。

従業員の育成につながる

メンタリングによる従業員育成は、従来の研修やOJTとは異なる効果を生み出します。

その理由は、メンタリングならではの特徴にあります。

主な理由は、以下のとおりです。

実践的スキルの習得

  • 実務に即したアドバイス
  • 豊富な経験に基づく指導
  • 即座のフィードバック

主体的な成長意識

  • 自発的な課題発見
  • 解決策の主体的検討
  • 継続的な学習意欲

精神面のサポート

  • 心理的な支援
  • 不安や悩みの解消
  • 自己効力感の向上

メンタリングは実務スキルの向上だけではなく、従業員の総合的な成長を支援できる育成手法といえるでしょう。

社内コミュニケーションが円滑に進む

メンタリングは、世代を超えた社内コミュニケーションの活性化に効果を発揮します。

定期的な対話の機会を通じて、以下のような効果が期待できます。

部門間の連携強化

  • 異なる部署への理解促進
  • 横断的な情報共有の活性化

心理的安全性の向上

  • 相談しやすい環境の形成
  • 率直な意見交換の促進
  • 職場の信頼関係構築

例えば、日常業務では接点の少ない部署間でメンタリングを実施すれば、部門を超えた相互理解が深まります。

入社時期の異なる社員同士の交流により、世代を超えた価値観の共有も可能でしょう。

メンタリングを通じた対話は、組織全体のコミュニケーション基盤を強化する役割を果たします。

職場の定着率を向上させる

メンタリングは、若手社員の職場定着に効果的な手法です。

特に入社1-3年目の社員にとって、以下のような支援が定着率向上につながります。

キャリアビジョンの明確化

  • 将来の成長イメージ構築
  • 目標設定のサポート
  • モチベーション維持

職場への適応支援

  • 業務スキルの習得
  • 企業文化への理解
  • 人間関係の構築

不安や悩みの解消

  • 相談窓口の確保
  • ストレス軽減
  • 孤立感の解消

例えば、業務の進め方に不安を感じる新入社員も、メンターとの定期的な対話を通じて具体的なアドバイスを得られます。

職場の人間関係に悩む若手社員も、メンターを介して徐々に職場に溶け込めるようになるでしょう。

このように、メンタリングを通じた継続的な支援は、若手社員の安定的な成長と職場定着を支援する役割を担います。

メンタリングを導入するデメリット

メンタリングには数々のメリットがある一方で、導入・運用での課題も存在します。

具体的なデメリットには、以下のようなものが挙げられます。

  • メンターの選定と教育に手間がかかる
  • 業務負担が増加するリスクがある
  • コストに見合う成果を得られない場合がある

これらの課題は適切な準備と対策により、十分に克服できるものです。

まずは想定されるデメリットを把握し、その対応策を検討していきましょう。

メンターの選定と教育に手間がかかる

メンターの選定と教育には、多くの労力と時間が必要です。

具体的には、以下のような課題があります。

  • コミュニケーション能力の確認
  • 指導方法の確認
  • 面談スキルの習得
  • 教育時間の確保
  • 通常業務との両立

メンターには実務経験だけではなく、指導方法や面談の進め方など、新たなスキルの習得が求められます。

メンターとしての適性を判断する基準の設定も必要となるでしょう。

これらの課題は、準備期間と実施計画を十分に設けることで対応できます。

業務負担が増加するリスクがある

メンタリングの導入により、メンターとメンティー双方の業務負担が増加します。

具体的な負担には、以下のようなものが挙げられます。

 

発生する負担

業務への影響

メンター

  • 定期的な面談時間
  • 指導内容の準備
  • 報告書の作成
  • 本来業務の遅延
  • 残業の増加
  • 業務優先順位の調整

メンティー

  • 面談への参加
  • 課題への取り組み
  • 振り返りの実施
  • 習得時間の確保
  • 業務時間の調整
  • 優先順位の見直し

例えば、週1回1時間の面談だけではなく、その準備や記録作成にも時間が必要です。

メンティーも面談で設定した目標に向けた取り組みに時間を割く必要があるでしょう。

時間的負担は、適切な業務計画と時間管理により軽減できます。

コストに見合う成果を得られない場合がある

メンタリング制度の導入と運用には、さまざまなコストが発生します。

主なコストと課題は以下のとおりです。

 

発生するコスト

主な課題

制度設計

  • 外部コンサルタント費用
  • マニュアル作成費用
  • 運用ツールの導入
  • 予算規模の設定
  • 費用対効果の測定
  • 継続的な改善

研修実施

  • 講師料
  • 会場費
  • 教材費
  • 適切な研修頻度
  • 効果の検証
  • 品質の維持

人的コスト

  • 担当者の人件費
  • 面談時間の工数
  • 事務処理の工数
  • 工数の適正化
  • 負担の分散
  • 効率化の検討

例えば、メンター1人当たりの面談時間を月4時間とすると、その分の人件費や機会損失が発生します。

成果の測定が難しく、投資対効果の判断も簡単ではないでしょう。

コストと成果のバランスは、適切な計画と定期的な見直しにより調整できるはずです。

導入して終わりではなく、継続的な見直しを積極的に実施していきましょう。

メンタリングを導入する際の注意点

メンタリングの導入には、適切な準備と計画が必要です。

メンタリングは一度導入すれば自然と機能する制度ではありません。

導入前の入念な準備、導入時の細やかな配慮、導入後の継続的な改善が求められます。

具体的な注意点は、以下のとおりです。

  • 明確な目的とゴールを設定する
  • メンターとメンティーを適切にマッチングする
  • 実施スケジュールを無理なく設定する
  • プログラムの効果を定期的に評価する

効果的なメンタリング制度を構築するために必要な具体的な注意点を確認していきましょう。

明確な目的とゴールを設定する

メンタリングの効果を高めるには、目的とゴールの明確化が必要です。

組織として達成したい目標は、以下のような項目から具体的に設定する必要があります。

 

具体例

評価指標

短期目標

  • 新入社員の早期戦力化
  • 業務スキルの向上
  • 職場環境への適応
  • 業務習熟度
  • スキルテスト

中期目標

  • 部門間連携の強化
  • キャリア意識の向上
  • 部門間プロジェクト数
  • キャリアプラン策定率

長期目標

  • 定着率の向上
  • リーダー人材の育成
  • 離職率の変化
  • 昇進・昇格率

目的とゴールが曖昧なまま導入すると、活動の方向性が定まらず、効果測定も難しくなります。

具体的な指標を設定し、定期的に進捗を確認できる仕組みを整えましょう。

メンターとメンティーを適切にマッチングする

メンタリング制度の効果は、メンターとメンティーの組み合わせによっても変わります。

適切なマッチングのためには、以下の要素を踏まえて考えると良いでしょう。

 

確認ポイント

留意するポイント

業務関連性

  • 職種や専門分野
  • 必要なスキル
  • 業務経験
  • 直属上司は避ける
  • 部署横断も検討
  • スキルレベルの差

性格適性

  • コミュニケーション傾向
  • 価値観
  • 仕事への姿勢
  • 相性の考慮
  • 世代間ギャップ
  • 指導スタイル

物理的条件

  • 勤務地や時間帯
  • 面談可能な時間
  • コミュニケーション手段
  • 定期的な面談
  • 場所の確保
  • 時間の調整

例えば、同じ部署でも直属の上司ではない先輩社員をメンターに選ぶことで、より率直な対話が可能になります。

部署を超えたマッチングにより、幅広い視点での学びも期待できるかもしれません。

相性を考慮した適切なマッチングにより、円滑なメンタリングのために必要です。

実施スケジュールを無理なく設定する

メンタリング実施のスケジュールは、参加者の業務状況を考慮して設定する必要があります。

効果的な実施のためには、以下のような設定例や配慮事項を確認すると良いでしょう。

 

具体的な設定例

配慮事項

面談頻度

  • 月2-4回程度
  • 1回60分程度
  • 定期開催
  • 繁忙期の調整
  • 業務との両立
  • 柔軟な日程変更

実施期間

  • 半年から1年
  • 四半期での見直し
  • 段階的な目標設定
  • 期間の妥当性
  • 継続判断
  • 目標達成度

準備時間

  • 面談前の資料確認
  • 振り返りの記録
  • 報告書作成
  • 負担の軽減
  • 効率的な記録
  • ツールの活用

例えば、月4回の面談では業務への負担が大きすぎる場合、月2回に調整し、その分メールでのフォローを充実させるなどの工夫も有効です。

無理のない計画により、継続的なメンタリングの実施が可能になります。

プログラムの効果を定期的に評価する

メンタリングの効果は、定期的な評価と改善により効率的に進められます。

効果測定の具体的な方法は以下のとおりです。

評価項目

測定方法

定量的指標

  • スキルテストの点数
  • 目標達成率
  • 面談実施回数

定性的指標

  • アンケート結果
  • 面談記録の内容
  • 上司からの評価

例えば、四半期ごとにメンターとメンティー双方へのアンケートを実施し、その結果を基に面談方法や頻度を調整します。

四半期ごとの定量指標の確認により、プログラム全体の見直しも可能です。

定期的な評価により、メンタリングの質を維持し、改善につなげるなどの施策も大切です。

定期的に効果を測定しながら、メンタリングの実施を判断すると良いでしょう。

まとめ

メンタリングは、企業での効果的な人材育成手法として注目を集めています。

従業員の育成と成長支援、社内コミュニケーションの活性化、職場定着率の向上など、組織にさまざまなメリットをもたらしてくれます。

一方で、メンターの選定や教育、業務負担の増加など、いくつかの課題が存在する点も見落としてはいけません。

それぞれの課題に対しては、明確な目的とゴールの設定、適切なメンターとメンティーのマッチング、無理のないスケジュール管理、そして定期的な効果測定と改善により対応できるでしょう。

組織の状況や目的に応じて適切な準備と計画を行えば、効果的なメンタリング制度を構築できます。

メンタリングの導入を検討している企業は、本記事で解説した注意点を参考に、自社に合った制度設計を進めていきましょう。

そこでもし、メンタリングに関する疑問や質問のある方は、いつでもアルマ・クリエイションにご相談ください。貴社に最適なソリューションを提供いたします。

 

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