プレゼンテーションとは、相手に対して自社のアイデアや企画、商品、テーマなどを効果的に説明するための技法で、企業の売上に直結する重要な要素の1つです。仕事上のコミュニケーションのほとんどがプレゼンテーションであると言われており、ビジネスに関わるすべての企業や人にとって無縁ではありません。
プレゼンテーションの目的は、自社の売り込みたい企画や商品、訴えかけたいテーマなどの内容を、相手に対して理解してもらうことです。そのためには、相手に伝わる資料作成と構成、伝え方が重要です。
そこで今回は、相手に伝わるプレゼンテーションの構成や、プレゼンテーション資料を作成する際のコツを、自社の社員に浸透させるためのポイントなどについて解説します。これからプレゼンテーション研修を行う方や、プレゼンテーションが苦手な方も、ぜひ参考にしてください。
プレゼンテーションは、相手に行動を起こさせることが目的です。そのため、プレゼンテーションを行う相手に対して自社の情報を一方的に提供するだけでは、プレゼンテーションの目的を達成することはできません。
プレゼンテーションを成功させるには、まず相手の要望や悩みを知り、状況を分析し、最適な解決策を提示する必要があります。また、プレゼンテーションを効果的に行うプロセスとして「理解」「納得」「行動」の3つがあり、順を追って適切に情報を伝えることで相手が理解し、納得した上で、最終的に行動を起こしてもらうことが重要です。
そこで、プレゼンテーションを行う際は相手のニーズに合わせた準備を行い、相手に伝わる説得力のあるプレゼンテーションを実施することが大切です。
相手に伝わるプレゼンテーションには、次のような構成要素が必要となります。
それぞれ解説します。
まずは、プレゼンテーションの目的を明確に示すことが重要です。プレゼンテーションの目的は、相手に必要な情報を伝え、アクションを起こさせることにあります。
例えば、相手の悩みや課題を理解した上で、自社の商品やサービスを導入することで解決できるなどのメリットを示し、購入してもらうといった目的を明確にします。
このように、プレゼンテーションの目的を明確にすることで、内容がブレることなく、スムーズでわかりやすいプレゼンテーションを行うことができるでしょう。
プレゼンテーションで相手に伝えたいことは、できるだけシンプルで分かりやすく表現することが重要です。語彙や表現を、聞き手が理解しやすいものに絞るために、わかりにくい専門用語や社内用語を省く必要があります。
近年はITが浸透したことで、わかりにくいカタカナ用語や、英語の頭文字を使った略語が頻繁に使われています。しかし、自分や社内で使っている用語が、必ずしも他社で通用するとは限りません。
そこで、プレゼンテーションで話す場合はできるだけ一般的に使われている言葉を使い、相手に分かりやすい表現を使うようにしましょう。
プレゼンテーションは、あくまでも「相手の知りたい内容」であることが重要です。もし、相手にメリットの少ない内容をプレゼンテーションしても、自らの目標である成約や購入といったゴールに至ることはまずありません。
よくある失敗例として、自社の商品やサービスの詳細を一方的に話してしまい、相手にどのようなメリットがあるかが伝わっていないケースがあります。
顧客にとって必要な商品やサービスは、自社の課題や悩みを解決できるかどうかが重要です。そのため、価格や特典などをいくらアピールしても意味がありません。付加価値を提案する際は、競合他社の製品と比較検討される段階になってからで十分です。
まずは、相手の知りたい情報を整理するところから始めましょう。
プレゼンテーションにストーリー性があることも大切な要素の1つです。ストーリー性のあるプレゼンテーションは、聞き手に共感や感情移入を促し、プレゼンの内容をより深く印象づけることができます。
プレゼンテーションにストーリー性を持たせるためには、提案する内容にたとえ話や理由をわかりやすく織り交ぜることがポイントです。そこでよく使われる手法が「ストーリーテリング」で、物語を使って伝える手法を指します。ビジネスの経験談などを利用することで、自身の主張を相手により明確に伝えることが可能です。
以下では、近年流行りのスチームトースターのプレゼンテーションを例にしてみましょう。
「普通のオーブントースターでパンを焼くと、加熱する際に水分が失われてパサパサしがちです。しかし、スチーム機能があればしっとり感をキープできます」
というのが、単なる説明です。一方
「毎朝トーストを食べる際に、同じパンを食べているにも関わらず、美味しく感じる日と美味しく感じない日があることに気づきました。そこで、美味しいと感じた日の特徴を観察したところ、雨の日にトーストが美味しく感じていたことがわかりました。この湿度の高い雨の日の状態を再現できるスチーム機能を付けたことで、毎日しっとりとした美味しくパンが焼けるトースターの開発に成功しました」
といった具合に、話にストーリ性を持たせることで、相手にわかりやすくイメージできるプレゼンテーションが可能となります。
ただし、すべての説明にストーリー性を持たせるとプレゼンテーションが長くなりすぎてしまい、かえってわかりにくくなる可能性があります。そこで、相手に最も伝えたい重要な内容にストーリー性を持たせるといった工夫が必要です。その他の内容は「起承転結」や「PREP法」などを活用すると良いでしょう。
プレゼンテーションでは、視覚的な情報を効果的に使うことが重要です。プレゼンテーションで視覚的な情報を効果的に使うためには、スライド画像を積極的に使うのが一般的です。
近年は、パワーポイントなどのソフトを使うことで、比較的簡単に見やすいスライド資料を作成できます。
スライド資料で効果的なプレゼンテーションにするためには、以下の点に注意しましょう。
上記のポイントを押さえることで、相手に伝わるプレゼンができるようになるでしょう。
プレゼンテーションを効果的に行うためには、適切な構成を組み立てることが重要です。そこで、プレゼンテーションの基本的な構成ポイントを解説します。
プレゼンテーションの構成は、まず「序論→本論→結論」の3つのパートに分けることが基本です。また「SDS法」「PREP法」「DESC法」の3つも、汎用性の高いプレゼンテーションの構成手法として用いられます。
以下で、それぞれの特徴を解説します。
序論では、自己紹介やテーマの説明、資料の目次などを紹介します。次に、本論ではテーマに関する詳細な情報やデータなどを説明して説得力を高めます。そして結論では、まとめや提言、アクションアイテムなどを述べ、相手にメッセージを伝えます。
SDS法は、汎用性の高い、結論を端的に伝える際に最適な構成手法です。
上記の手順に沿って、まず初めに全体の要約を伝え、詳細な説明を行い、最後にまとめます。
PREP法は、相手に問題意識を持たせて、説得力のある解決策を提案するのに効果的な手法です。
上記のように、まず結論を紹介し、結論を理由づけることで、相手に「なるほど!」と思わせるのがポイントです。
DESC法は「相手の立場や立ち位置」を尊重しながら、自らの主張や思いを伝える手法です。
上記のプロセスに沿うことで、相手に自らの主張を受け入れざるを得ない方向に導くことが重要です。
以上が、プレゼンテーションの基本的な構成として挙げられます。プレゼンテーションを行う際には、目的や相手に応じて、適切な構成法を選ぶことが重要です。
上記のように、プレゼンテーションの構成にはさまざまなフォーマットがあり、それぞれの特徴を活かすことで効果的なプレゼンテーションを行うことができます。
ただし、各フォーマットを使いながらプレゼン資料となる提案書や企画書を作成する際には、人を動かす文章の基本構造である「PASBECONA(パスビーコーナ)」に沿った内容で書くことが重要です。
PASBECONAとは、次の9要素から成り立つ、文章の基本構造です。
この「PASBECONA」を活用することで、プレゼンテーションに必要となる要素が、漏れなく、そして早く書けるようになります。
PASBECONAは「人を動かす原理原則」であるため、セールスプレゼンテーションだけでなく、企画書や提案書にも活用可能です。
プレゼンテーション資料を作成する際に気をつけることは「誰にプレゼンテーションを行うか」を明確にすることです。プレゼンテーション資料は、クライアントとなる社外の担当者や責任者に見てもらうための資料であるため、自らの提案を採用することで「どのようなメリットを得られるか」や「どのように問題を解決できるか」を伝えなければなりません。
そこでおすすめしたいのが「PASBECONA」の法則に則って資料を作成する方法です。
PASBECONAとは、以下の単語の頭文字をとった造語で、それぞれに次のような意味があります。
このように『P・A・S・B・E・C・O・N・A』に沿うことで、わかりやすく、提案力のあるプレゼンテーションを構成できます。
以下では、さらに詳しく事例を挙げながら解説します。
まずは、相手の仕事上にある問題や課題を特定し「痛みや悩み」を明確化します。そして「その痛みや悩みの解消法」を相手に提示しましょう。
ここで明確化する内容は、この件についてリサーチした中から、最も大きな悩みを提示することが重要です。なぜなら提示した最大の問題解決法は、提案書の訴求ポイントとなるため、重要度の低い問題を指摘しても相手の興味を引くことができないからです。
そのため、最も大きな悩みや問題について、ピンポイントで改善方法を指摘することを意識しましょう。
次に、提示した最大の問題点を明確にして、相手の気持ちに寄り添います。
さまざまな資料やグラフを用いてデータの信用性を確保して、相手に同調しながら親近感を持ってもらえるように働きかけることが大切です。
相手の問題や課題をはっきりさせた上で、その問題や課題の解決方法を具体的に提示します。
プレゼンテーションを行う上で、このSolutionが最も相手にアピールできるポイントとなります。
例えば「貴社の課題について、弊社の〇〇を活用することで解決可能です」や「問題を解決できる根拠となる資料として、自社商品の〇〇を実際にご活用いただいて業績がV字回復した△△社のデータがあります」など、自社の商品やサービスがクライアント企業の問題解決に役立つことを積極的にアピールすることが大切です。
Benefitでは、上記にある問題を解決することで、相手にどのような利益やメリットがあるかを提示します。
例えば「◯◯を解決することで、年間で△△%の経費を削減できる可能性があります」など、できるだけ具体的に記すことが大切です。
Evidenceとは、証拠を示すことで、上記の利得に対する根拠を示します。
上記の「◯◯を解決することで、年間△△%の経費を削減できる可能性があります」の根拠となる部分です。
「〇〇のデータをもとに試算したところ、実際に年間△△%の経費を削減できるという結果がでました」など、信頼できるデータを用いるようにしましょう。
Contentsは、具体的に販売する商品やサービスを説明します。上記であらかじめ示した内容を含め、より詳細に紹介しましょう。
Offerでは、具体的な商品やサービスを購入する際の条件を「提案」します。例えば「1年間の無料サポートが利用できます」といった内容が該当します。
具体的な解決策を提案した後は、その解決策を提供できる期間や数量が限定されていることを伝えましょう。
提案した内容に、限定や緊急といった要素を持たせることで、成約の可能性が高い顧客を絞り込みやすくなります。
例えば「この〇〇という商品は、諸事情により供給できる数が限定となります」や、提案する業務に緊急性を持たせたい場合などは「今、この商品の市場が成長時期にある」といった具合に、ライバルが少ない今のうちに参入することで市場の優位性を確保できるといった提案を行います。
もし「自社の商品やサービスに限定性が当てはまらない」場合には、営業マンのサポートやアフターサービスといった付加価値に対して限定性をかけることも可能です。
アクション(行動)では、相手に対して成約する際の具体的な行動施策を提示します。
例えば、オンラインによる商談や、Web上での契約が可能など、できるだけ費用や時間をかけずに契約できるといった内容を具体的に示すことが大切です。
このように、クライアントとの商談を成功させるには、良いプレゼンテーション資料の作成が必須となります。そこで、本記事で紹介した内容を十分に理解し「PASBECONA(パスビーコーナ)」を取り入れることで、競合他社に差をつけることができるでしょう。
プレゼンテーション能力は独学で学ぶよりも、社内全体で研修制度として取り組み、企業内全体でスキルアップを目指すのが効果的です。
質の高い研修により営業力がアップし、売上や顧客満足度の向上はもちろん、クレームが減るといったメリットもあります。
もし、プレゼンテーションに関する疑問や質問がある方は、いつでもアルマ・クリエイションにご相談ください。それぞれの企業に合わせたソリューションを提供いたします。