R80(アールエイティー)とは、2016年に考案された新しいアクティブラーニングの手法です。
「R」は振り返り(Reflection)と再構築(Restructure)を表し、「80」は80字以内で文章をまとめることを意味します。
最近では、多くの教育現場でこの手法が注目を集めています。
なぜR80が注目されているのでしょうか。
それは、2つの文を接続詞でつなぐ明確なルールがあり、誰でも取り組みやすいからです。
また、どの教科でも活用できる汎用性の高さも、特徴の一つです。
本記事では、R80の基本的な書き方から実践例まで、具体的に解説します。
授業での活用方法や、効果的な指導のポイントも詳しく紹介しているので、R80の導入を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
アクティブラーニングをより効果的に実践するために注目されているのが、R80(アールエイティー)です。
2016年に当時茨城県立並木中等教育学校校長だった中島博司氏が提唱したこの手法は、振り返り(Reflection)と再構築(Restructure)の2つのRを組み合わせた取り組みを指します。
R80の基本的な仕組みはシンプルです。
授業の最後に80字以内の文章を書き、その中で学んだ内容を整理します。
ただし、単なる感想を書くのではありません。
2つの文章を接続詞でつなぎ、論理的にまとめることがポイントです。
実際の教育現場では、国語や社会、理科、数学など、さまざまな教科でR80が活用されています。
例えば、理科の実験後に考察をまとめる際や、社会科で歴史的事象の因果関係を説明する際など、幅広い場面で効果を発揮しています。
R80は生徒の思考力と表現力を育てながら、授業内容の理解を深める効果的な手法として、アクティブラーニングの実践に新たな可能性を広げてくれるでしょう。
参照:「(中島博司氏)ALを学力向上につなげる「AL指数」と「R80(アールエイティ)」
「R80」の名称には、2つの意味が含まれています。
「R」は「振り返り(Reflection)」と「再構築(Restructure)」を指し、「80」は文章を80字以内で表現することを意味します。
それぞれの意味をまとめると以下のとおりです。
Reflection(振り返り) |
授業内容や話し合いの内容を振り返る |
Restructure(再構築) |
学んだ内容を自分の言葉で整理し直す |
実際の授業では、この2つのRを順番に行います。
例えば理科の実験後、まず実験の手順や結果を振り返ります。
次に、なぜそうなったのかを自分なりの言葉で説明し直すという具合です。
この2段階の作業によって、学習内容への理解が深まります。
80字という文字数は、大学入学共通テストの記述式問題で求められる文字数と同じです。
日々の授業でこの形式に慣れることで、入試本番での記述にも自信を持って取り組めるでしょう。
2016年5月、当時のアクティブラーニング型授業には、いくつかの課題が見られました。
中島博司氏は、特に次の4つの点に着目してR80を考案しました。
授業が形だけになっている
能動的な学習者の育成につながっていない
ペアワークやグループワークだけで学力が向上するのか不明確
講義形式との二項対立的な議論になっている
これらの課題を解決するため、R80は以下の3つの目的を掲げて開発されました。
①思考力の育成 |
授業内容を振り返り、自分の言葉で表現することで、深い思考力を養う |
②表現力の向上 |
80字という制限の中で、的確に考えを伝える力を磨く |
③論理力の強化 |
2つの文を接続詞でつなぐことで、論理的な文章力を身につける |
このように、R80は単なる振り返りツールではなく、具体的な学力向上を目指した実践的な手法として生まれました。
R80を効果的に活用するためには、基本的なルールの理解が必要です。
「2文で書く」「接続詞を使う」「80字以内でまとめる」という明確な枠組みがあることで、生徒は自分の考えを整理しやすくなります。
書き方のルールを知ることで、教科を問わずさまざまな場面で活用できるようになるでしょう。
ここでは、R80を書く際の具体的なルールと、それを使いこなすためのポイントを詳しく説明します。
R80には、誰でも取り組めるよう明確な2つの基本ルールが設定されています。
このルールに従うことで、論理的な文章力と簡潔な表現力を同時に育てられるでしょう。
R80の2つの基本ルールは、以下のとおりです。
80字以内で書く |
新テストの記述式問題を意識した文字数 1文を40字前後に収める習慣をつける 簡潔に要点をまとめる力が身につく |
必ず2文で書き、接続詞でつなぐ |
1文目:事実や学んだ内容を書く 2文目:感想や考察、理由を書く 2文を適切な接続詞で論理的につなぐ |
例えば、理科の実験後なら「実験で水溶液に温度変化があることを確認した。したがって、この化学反応では熱が発生することがわかる」といった具合に書きます。
社会科では「鎖国政策により外国との交流が制限された。しかし、長崎出島では制限付きで貿易が認められていた」というように、事実と解釈を分けて書くことができるでしょう。
このように、明確なルールのもとで書く練習を重ねることで、論理的な思考力と表現力を無理なく身につけられます。
接続詞の選び方は、R80を書く上で大切なポイントです。
適切な接続詞を使うことで、2つの文章が論理的につながり、説得力のある表現が可能になります。
よく使う接続詞と使い方のポイントは、以下のとおりです。
因果関係を示す |
したがって(結果から結論を導く) なぜなら(理由や根拠を説明する) そのため(原因と結果をつなぐ) |
対比を示す |
しかし(異なる視点や例外を示す) 一方(別の側面を説明する) ところが(予想と異なる結果を示す) |
実際の使用例を見てみましょう。
数学の問題解決では「この公式を使って方程式を解いた。したがって、xの値は5になることがわかる」といった具合です。
国語の読解では「主人公は最初、引っ込み思案だった。しかし、友人との出会いをきっかけに積極的に行動するようになった」などのように使います。
このように、場面や目的に応じた接続詞を選ぶことで、自分の考えをより正確に、より論理的に表現できます。
R80は、アクティブラーニングの効果を高める振り返りのツールとして大きな役割を果たします。
グループでの話し合いや課題解決の後、学んだ内容を整理して文章化すれば、その日の学びが確実に定着します。
単なる感想ではなく、R80の形式に沿った振り返りで、思考力・表現力・論理力を同時に育てられるでしょう。
ここでは、具体的な振り返り方法と、より効果的な活用のポイントを紹介します。
アクティブラーニングでの学びを確実に定着させるためには、段階的な振り返りが効果的です。
特に、グループでの話し合いや協働学習の後は、その場での気づきや学びを自分の言葉で整理すると良いでしょう。
R80を活用した振り返りは、以下の3つのステップで行います。
個人での整理 |
メモやノートを見直し、重要な内容をチェック グループでの話し合いで印象に残った意見を整理 学習前と後での自分の考えの変化を確認 |
R80の作成 |
学んだ事実や新しい気づきを書く その内容から導き出した自分の考えを書く 接続詞で2つの文を論理的につなぐ |
全体での共有 |
数名が作成したR80を発表 教師が良い例を具体的に解説 クラスで共有された内容を自分のR80に反映 |
個人での整理では、授業中に取ったメモを見直しながら、グループ活動で得られた新しい気づきを書き出します。この段階で学習前との考え方の違いを認識できれば、より深い理解につながるでしょう。
R80作成では、整理した内容を80字以内の2文にまとめます。
例えば、社会科で「江戸時代の経済」について学んだ後なら、「大阪と江戸を結ぶ菱垣廻船により、物流が活発になった。そのため、各地の特産品が全国に広まり、経済が発展した」といった具合です。
全体共有では、クラスメイトの多様な視点に触れられます。教師からの具体的なフィードバックも、より良いR80作成のヒントになります。
他の生徒の優れた表現や着眼点を知ることで、次回の振り返りがさらに充実したものになるでしょう。
このように段階を踏んで振り返ることで、グループ活動での学びが個人の確かな知識として定着します。
また、クラス全体での共有を通じて、多様な視点や考え方に触れることができ、さらなる学びの広がりも期待できるでしょう。
思考力・表現力・論理力を効果的に育成するためには、R80の書き方を工夫する必要があります。
単に決められた形式で書くだけではなく、教科の特性に合わせた書き方をすることで、より深い学びにつながります。
では、具体的に各教科でどのようにR80を書けばよいのか、具体例を交えて確認していきましょう。
教科 |
R80の書き方のポイント |
具体例 |
国語 |
1文目:登場人物の行動や心情 2文目:その理由や背景 |
「主人公は突然、故郷に帰ることを決意した。なぜなら、母からの手紙に家族の大切さを感じ取ったからだ」 |
理科 |
1文目:実験で観察した事実 2文目:科学的な考察 |
「食塩水を熱すると、水が蒸発して白い結晶が残った。したがって、水溶液の水分が減ると溶質が析出することがわかる」 |
社会 |
1文目:歴史的・社会的事象 2文目:影響や現代とのつながり |
「明治時代に多くの官営工場が設立された。その結果、日本の工業化が急速に進み、近代化の基礎となった」 |
上記のように教科別の特徴を踏まえたR80を実践すれば、生徒は以下の3つの力を効果的に身につけられます。
このような教科別の特性を意識したR80の実践を重ねることで、確かな学力の向上が期待できます。
例えば国語では、文学作品への深い理解力が育ち、理科では科学的な思考プロセスが身につきます。
社会科では、歴史的事象の因果関係を理解する力が養われるでしょう。
80字という制限の中で論理的な文章を書く訓練は、入試の記述問題対策としても効果的です。
R80を活用すれば、生徒が自分の考えを整理し表現する力を育てることが期待できます。
実際の授業では、グループでの話し合いの内容を80字でまとめたり、実験結果から考察を導き出したりする活動を通じて、論理的な思考力が養われていくでしょう。
ただし、形式的な文章作成だけでは効果は限定的かもしれません。より良い学習につなげるためには、生徒の主体的な思考を促す工夫が大切です。
R80を効果的に活用するポイントは、以下のとおりです。
例えば、教科書の文章をそのまま写すのではなく「なぜそう考えたのか」という理由を自分の言葉で表現させることで、学習内容への理解が深まっていくでしょう。
定期的に優れた記入例を紹介し、効果的な表現方法を共有すれば、クラス全体の文章力向上も期待できます。
R80の継続的な取り組みは、定期テストの記述問題対策としても活用できます。
「事実」と「考察」を分けて書く習慣が身につくことで、より論理的な問題解決力を身につけられるでしょう。
R80を取り入れたアクティブラーニングは、生徒の思考力と表現力を育てる具体的な手法として注目されています。
2つの文章を接続詞でつなぎ、80字以内で表現するという明確なルールがあることで、誰もが取り組みやすい特徴があります。
実際の授業では、グループワークの後の振り返りや実験結果のまとめ、読解後の考察など、さまざまな場面での活用が可能です。
特に、学習直後の振り返りでR80を活用すれば、その日の学びを確実に定着させられます。
教科の特性に合わせた書き方を工夫すれば、より効果的な学習につながるでしょう。
教師からの定期的なフィードバックを通じて、生徒たちは徐々に自分の考えを整理し、表現する力を高めていくことができます。
新しい学びのツールとして、R80の活用を検討してみてはいかがでしょうか。
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