タイトル:問いのデザイン 創造的対話のファシリテーション
著者:安藤勇樹 塩瀬隆之
▲引用:問いのデザイン
著者略歴
安藤勇樹
株式会社MIMIGURI代表取締役Co-CEO。東京大学大学院情報学環特任助教。ウェブメディア『CULTIBASE』編集長。1985年生まれ。東京大学工学部卒業、同大学院学際情報学府博士課程修了。博士(学際情報学)。組織の創造性の土壌を耕すワークショップデザイン・ファシリテーション論について研究している。著書に『問いかけの作法:チームの魅力と才能を引き出す技術』『問いのデザイン:創造的対話のファシリテーション』など。
塩瀬隆之
京都大学総合博物館
ファシリテーターの感想・おすすめのポイント
今回ご紹介するのは『問いのデザイン 創造的対話のファシリテーション』です。
著者は、安斎勇樹(あんざいゆうき)氏と塩瀬隆之(しおせたかゆき)氏の共著
メンバーを本気にさせ、チームの成果を引き出す、ワークショップの極意
商品開発・組織改革・学校教育・地域活性の現場を変える戦略&スキル
序論
なぜ今、問いのデザインなのか
1.はじめに
2.「認識」と「関係性」の固定化の病い
3.企業、学校、地域を揺さぶる問の技術
4.本書の構成:課題とプロセスのデザイン
PartⅠ 問いのデザインとは何か
1章 問いのデザインとは何か
1.1. 問いとは何か
問いの基本性質を探る
問いかけによって刺激される思考と感情
1.2. 創造的対話とは何か
問いが誘発するコミュニケーションタイプ
対話によって揺さぶられる個人の認識
共通の意味づけを探る中で、関係性が編み直される
新たなアイデアを早発する創造的対話
問いは新たな問いを生み出す
1.3. 基本サイクルとデザイン手順
問いの基本サイクル
問いのデザインの手順
PartⅡ 課題のデザイン
2章 問題を捉え直す考え方
2.1. 問題と課題の違い
問題とは何か
洞察問題の解決を阻む固定概念
当事者の認識によって、問題の解釈は変化する
関係者の視点から問題を捉え直す
問題と課題の違い
2.2. 課題設定の罠
課題設定の罠(1)自分本位
課題設定の罠(2)自己目的地
課題設定の罠(3)ネガティブ・他責
課題設定の罠(4)優等生
課題設定の罠(5)壮大
2.3. 問題を捉える思考法
問題を捉える思考法(1STEP5:課題の定義)素朴思考
問題を捉える思考法(2)天邪鬼(あまのじゃく)思考
問題を捉える思考法(3)道具思考
問題を捉える思考法(4)構造化思考
問題を捉える思考法(5)哲学的思考
3章 課題を定義する手順
3.1. 目標を整理する
課題を定義する手順
STEP1:要件の確認
STEP2:目的の精緻化(せいち)
3.2. 目標のリフレーミング
STEP3:阻害要因の検討
STEP4:目標の再設定
3.3. 課題を定義する
PartⅢ プロセスのデザイン
4章 ワークショップのデザイン
4.1. ワークショップデザインとは何か
現代社会とワークショップ
ワークショップの基本的特徴
なぜ、ブレストからアイデアが生まれないのか
ワークショップデザインにおける問いの重要性
ワークショップとは経験のプロセスをデザインすること
プログラムの基本構造
4.2. ワークショップの問いをデザインする
ワークショップの問いをデザインする手順
手順(1)課題解決に必要な経験のプロセスを検討する
手順(2)経験に対応した問いのセットを作成する
手順(3)足場の問いを組み合わせてプログラムを構成する
4.3. 問いの評価方法
ワークショップにおける良い問いとは何か
問いの「深さ」を設定する
問いを因数分解する
アイスブレイクこそ問いが肝心
5章 ファシリテーションの技法
5.1. ファシリテーションの定義と実態
ファシリテーションとは何か
ファシリテーションはなぜ難しいのか
ファシリテーションを妨げる六つの要員
プログラムデザインとファシリテーションの補完関係
ファシリテーターの本当の役割とは何か
5.2. ファシリテーターのコアスキル
ファシリテータのコアスキルとは
コアスキル(1)説明力
コアスキル(2)場の観察力
コアスキル(3)即興力
コアスキル(4)情報編集力
コアスキル(5)リフレーミング力
コアスキル(6)場のホールド力
5.3. ファシリテーターの芸風
ファシリテーターの芸風とは
芸風(1)場に対するコミュニケーションスタンス
芸風(2)馬を握り、変化を起こすための武器
芸風(3)学習と創造の場づくりに関する信念
5.4. 対話を深めるファシリテーションの技術
「導入」のファシリテーション
「知る活動」のファシリテーション
「創る活動」のファシリテーション
「まとめ」のファシリテーション
5.5. ファシリテーションの効果を高める工夫
4タイプに即興の問いかけてを駆使する
チームによるファシリテーション
組織内のファシリテーターを育てる
空間のレイアウトの工夫
対話を可視化するグラフィックレコーディング
ファシリテーションの技術を磨き続けるために
PartⅣ 問いのデザイン事例
6章 企業、地域、学校の課題を解決する
ケース1 組織ビションの社員への浸透
資生堂
ケース2 オフィス家具のイノベーション
インスメタル
ケース3 三浦半島の観光コンセプトの再定義
京浜急行電鉄
ケース4 生徒と先生で考える理想の授業づくり
関西の中高生とナレッジキャピタル
ケース5 ノーベル平和賞受賞者と高校生の対話の場づくり
京都の効率高校生とインパクトハブ京都
ケース6 博物館での問いの展示
京都大学創造博物館
おわりに
”大学の研究者”と聞くと、どんなイメージを思い浮かべるでしょうか。
特定の領域に根を張り、日夜研究室に籠って文献を読み漁り、調査と実験を繰り返しながら、唯一の心理を探求している…そんなイメージをお持ちかもしれません。
著者らの日々の仕事は、もしかすると大学の研究者のイメージとは、ちょっと違ったスタイルに映るかもしれません。2人に共通しているてんは、ある意味で「根無し草」とも言えるような、実に幅広い療育において、唯一の「答え」としての心理を求めるのではなく、さまざまな人たちを対象に「問い」を投げかけ続けてきたという点です。
「何が専門なのかわからない」と揶揄されながらも、あえて領域を定めず、求められるままに現場に足を運び、「ワークショップ」と呼ばれるゆるやかな学び合いの場を開催し、私たち自身も「答え」がまったくわからない「共に考えていきたい問い」を、投げかけ続けてきました。
こうした”脈略”のない仕事”は、唐突に著者たちのもとに舞い込んできます。
「わかったつもりになっている子どもたちに、もっと自分の頭で考えさせるにはどうすればいいか」
「地域の若者と高齢者の交流を促して、一致団結するにはどうすればいいか」
「社員たちに、組織の課題を自分ごとで考えてもらうにはどうすればいいか」
「技術の話ばかり繰り返すエンジニアに、革新的なアイデアを発想させるにはどうしらいいか」など…。
著者らは、これからの悩みに対する直接の「答え」は持っていません。
ですから、いつもやることは、依頼した当事者たちに向き合って、自分たちの素朴な疑問を出発点に「本当にそれが解くべき課題だろうか?」と疑いながら、共に考えるべきテーマを設定し、「問いかける」こと、それだけです。
2.「認識」と「関係性」の固定化の病い
ビジネスパーソンの人材育成の現場にせよ、子どもの学びの現場にせよ、組織のドロドロとした課題の真因にせよ、製品開発のイノベーションを阻害する要因にせよ、それらの課題をひも解いていくと、必ずといっていいほど、「認識」と「関係性」の固定化の病いにぶちあたる。
①認識の固定化
当事者に暗黙のうちに形成された認識(前提となっているものの見方・固定観念)によって、物事の深い理解や、創造的な発想が阻害されている状態です。
人間は、認識が当たり間のものとして固定化されていくと、その前提が「なぜこうなっているのか?」ということを、改めて考えることはしなくなっていきます。
②関係性の固定化
当事者同士の認識に断絶があるまま関係性が形成されてしまい、相互理解や、創造的なコミュニケーションが阻害されている状態です。
他者との関係性もまた、時間が経つにつれて安定し、固定化されていきます。
「先輩と後輩」「教師と生徒」「経営者と従業員」といったような明示的な上限関係や役割分担、契約関係のみならず、お互いが暗黙のうちに感じている「心理的契約」という関係性も含んでいます。
暗黙のうちに形成された関係性は、個人の認識と同様に、そう簡単に変わるものではありません。
3.企業、学校、地域を揺さぶる問いの技法
固定化された「認識」と「関係性」は、変化が求められる時代において、「変わりたくても変われない」という本質的な問題を生み出します。
著者らが放ってきた「問い」は、当事者たちが日常の中で形成してきた認識の前提を揺さぶり、新たな関係性を編み直すための「創造的対話」を生み出してきました。
4.本書の校正:課題とプロセスのデザイン
本書は、企業、学校、地域にはびこっている「人びとの認識と関係性の病い」を解決するための「問いのデザイン」の技法について、その手順を2つの段階に分け、その方法論を論じます。
第一に、「問題の本質を捉え、解くべき課題を定める」段階。
「課題のデザイン」としての問いのデザインです。
第二に、「問いを投げかけ、創造的対話を促進する」段階。
「プロセスのデザイン」としての問いのデザインです。
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最後までお読みいただきありがとうございました。