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企業内大学と研修の違いとメリット|設立のポイントや導入事例を解説

作成者: 水落康稀|2022.12.14

近年は、労働人口の減少による人手不足のため、企業が優秀な人材を確保することが難しくなっています。

そこで社員が積極的に学べる環境を提供し、自主的にカリキュラムを選んで受講できる「企業内大学」を設立する企業が増えています。

企業内大学とは、社員が自主的に学習できる環境を整え、社員自らが知識や能力の向上を目指す制度です。

企業内大学は、従来の社内研修とは目的や学べる内容が異なり、企業が期待できる成果にも違いがあります

そこで今回は、企業内大学と研修の違いやメリットだけでなく、設立のポイントや導入事例などを徹底解説します。

これから企業内大学の設立をお考えの方は、ぜひ参考にしてください。

 

企業内大学とは?

企業内大学とは、会社の中に、社員が自主的に学べる場を提供する制度です。近年は、社内研修の新しい在り方の1つとして注目されています。

企業内大学は、公的に認められている学校法人が設立する大学とは制度が異なり、あくまで企業における社員教育の一環として設けられているのが特徴です。

社内研修との4つの違い

企業における学びの場としては一般的に社内研修が主流となっています。以下では、企業内大学と社内研修の3つの違いを比較します。

  企業内大学 一般研修

目的

  • 社員のキャリアアップが目的。
    業務の専門性を深める。
    企業の次世代リーダーの育成を目指す。
通常業務に必要なスキルの習得が目的。
業務に必要な知識や技術の教育。
主催者 人事部が主体 人事や企業の各部署
内容 社員の要望に合わせるのが一般的 企業の課題解決がメイン
講師 外部講師や社内の優秀な社員が担当 基本的に外部講師が担当

 

企業内大学設立のメリット

企業内大学を設立するメリットには、次の5つがあります。

  • ・社員の能力の向上に役立つ
  • ・社員の仕事に対するモチベーションの向上
  • ・従業員を客観的に評価できる
  • ・次世代のリーダーを育成できる
  • ・求職者にアピールできる
  •  

それぞれ解説します

社員の能力の向上に役立つ

企業内大学は、基本的に社員が自主的に学ぶ場であり、一般的な研修のように参加を強制しません。そのため、能動的に学びたいと考える社員が自ら興味のある専門性の高い知識やスキルを習得でき、個々の能力向上に役立つでしょう。

企業内大学では、社員自身の将来に向けたキャリアアップに繋がるのも特徴です。講師となる社員は、日々の業務の中でインプットした知識やスキルをアウトプットすることで、将来のリーダーとなる資質を養えるのも大きなメリットの1つとなります。

社員の仕事に対するモチベーションの向上

企業内大学で積極的に学べる機会があることで、社員の仕事に対するモチベーションの向上にも期待ができます。

普段の業務の中では、社員一人ひとりがどのように機能し、会社だけでなく社会に対して貢献しているのかが分かりにくいことでしょう。しかし、企業内大学でより深く仕事への関わり方を学ぶことで、自分の立ち位置や仕事への取り組み方を見直すきっかけができるのも魅力です。

従業員を客観的に評価できる

企業内大学を受講できるのは、社員だけにとどまりません。パートやアルバイトなどの非正規雇用者にも積極的に受講してもらい、学んだ内容や感じたことをレポートなどでアウトプットしてもらうことで、受講者を客観的に評価できます。

社員よりも企業理念を深く理解し、仕事に対する意識やスキルが高い人材がいれば、正社員として採用するのも良い方法です。

人材不足が問題となっているいま、全ての従業員を平等に評価し、優秀な人材を積極的に活用できるのも企業内大学のメリットです。

次世代のリーダーを育成できる

企業内大学では、企業理念や経営戦略に基づいた講義内容をカリキュラムに導入できます。

経営理念を深く理解できる人材の育成を行うことで、自社の次世代を担うリーダー的な人材が見つかるかもしれません。年功序列や終身雇用制度が破綻した現代では、学歴や就業年数で役職をきめるのはナンセンスな方法です。

企業内大学で、自社が本当に必要とする人材を発見・育成できれば、自社の発展にも大きく寄与することでしょう。

求職者にアピールできる

企業内大学の設置を社外にアピールすることで、求職者から見た企業イメージが向上し、採用活動にも良い影響がでる可能性があります。

現代では、求職者が入社後に成長できる環境を求める傾向があるため、企業内大学という教育制度が充実している企業への応募が増えています。

優秀な人材の獲得を目指す企業にとって、企業内大学は、採用活動の効果的な施策の1つでもあるのです。

 

企業内大学を設置する際の5つの課題

  • 以下では、企業内大学を設置するにあたり、多くの企業がぶつかる主な課題を5つ紹介します。

  •  
  • ・導入や運営のコストがかかる
  • ・導入や運営のノウハウがない
  • ・講師にかかる負担が大きい
  • ・講師や社員の時間の確保が難しい
  • ・カリキュラムの構築

  • それぞれ解説します。

  • 導入や運営のコストがかかる

  • 企業内大学を設立する際には、導入コストや運営コストがかかります。しかも、企業内大学で学ぶ内容は一般的な研修とは異なり、成果が見えにくいケースもあります。

  • そのため、企業内大学にかかるコストは、あくまで企業や従業員に対する将来への投資と割り切る必要があるかもしれません。

  • ただ上記でも解説したように、企業内大学の設立による従業員の仕事への姿勢や、求職者のイメージ向上といったメリットがあるのも事実です。そのため、企業の将来を担う人材の獲得や育成に役立つ企業内大学は、コストをかけるだけの価値がある投資と言えるのではないでしょうか。 

  • また社内の人材育成に関しては、厚生労働省が「キャリア形成促進助成金」で支援を実施しているため、積極的に活用しましょう。 

  • 導入や運営のノウハウがない

  • 企業内大学の設置にあたっては、ノウハウがないためになかなか導入できない企業もあるでしょう。そのため、企業内大学のカリキュラムや講師を選ぶ際は、どうしても外部の専門企業に頼らざるを得ないケースが多いのも現実です。

  • 企業内大学には、確立した制度があるわけではありません。そこで、まずはできる範囲からスタートし、充実させていくようにしましょう。

  • また企業内大学に関する疑問などがあれば、ぜひアルマ・クリエイションにご相談ください。
  •  

    講師にかかる負担が大きい

  • 企業内大学では、自社の優秀な社員が講師となるケースが多いため、講師となる社員の業務への負担が大きくなる可能性があります。

  • そこで、講師となる社員だけで講義をするのではなく、全社で協力して制度を構築していかなければ成功できません。

  • 一方これまでにない新しい企業内大学の制度を設けることで、社員同士のコミュニケーションが活発化し、業務がかえって円滑に進むようになったというケースもあります。

  • 講師や社員の時間の確保が難しい

  • 企業内大学は、あくまでも社員教育の一環として実施されるため、講師や社員の時間を確保するのが難し企業があるかもしれません。

  • どの企業においても、リソースに余裕がないという課題を抱えている場合には、時間の確保が難しいのは当然です。

  • そこで、企業内大学の講義をオンライン化するのもおすすめです。オンライン化することで全国どこからでも気軽に参加でき、講師もパワーポイントなどで資料を作りやすく、運営コストも最小限に抑えることができるでしょう。

カリキュラムの構築が難しい

企業内大学のカリキュラムは、企業が一方的に決めるのではなく、社員が学びたいと思う内容をピックアップして構築します。

そこで、従業員の意見や他社の事例などを参考に、自社で独自のカリキュラムを作りましょう。

企業内大学の講義内容は、あくまで自由です。業務に即した講義はもちろん、社員の健康管理やいま注目のSDGsに関する題材など、幅広い視点からの構築を目指しましょう。

 

企業内大学を設立する際の5つのポイント

以下では、企業内大学を設立する際のポイントを紹介します。

  • ・目的を明確にする
  • ・優秀な社員に講師を担当してもらう
  • ・従業員の誰もが参加できる仕組みを作る
  • ・多様性のあるカリキュラムを構築する
  • ・受講者のキャリアアップを支援する
  •  

それぞれ解説します。

  • 目的を明確にする

  • 企業内大学を設置する際は、まず何を目的とするかを決めましょう。実際に講義をする際のカリキュラムを決める際も、従業員の意見を一旦まとめてから、社内全体のニーズに即した内容を選ぶことが大切です。

  • せっかく深い学びを得られる企業内大学を、形骸化させないためにも、まずしっかりとしたビジョンを持って取り組みましょう。

  • 優秀な従業員に講師を担当してもらう

  • 企業内大学の講義を行う際は、できるだけ社内の優秀な人材を活用するのがおすすめです。ここで言う優秀な社員とは、成績が良いとか、地位が高いということではありません。

  • 普段から目立つことが少ない業務を日々コツコツと行っている社員や、毎日笑顔で社内を掃除してくれるパート従業員の中にも、優秀な人材がいるかもしれません。

  • 企業内大学は、このような普段の業務で気づかない優秀な人材の発掘にも役立ちます。その点において、経営陣はもちろん、全社で企業内大学の体制を構築していく姿勢が重要です。

  • 従業員の誰もが参加できる仕組みを作る

  • 企業内大学は、社員だけが参加できるのではなく、非正規雇用者を含めた全従業員を参加の対象とするのがポイントです。

  • 誰もが参加できることで、社内全体に企業理念が浸透するだけでなくコア業務へのモチベーションが向上し、優秀な人材の発掘にも役立つことでしょう。

  • また講義をオンライン化することで、より多くの従業員に参加を促すことができます。

  • 多様性のあるカリキュラムを構築する

  • 企業内大学のカリキュラムは、一方的な座学だけにとどまる必要はありません。

  • オンラインによるeラーニングや、ディスカッション形式の講座など、参加者が積極的に学べる場を提供できるのも、一般的な研修との大きな違いであり、メリットです。

  • 受講者のキャリアアップを支援する

企業内大学を運用するにあたり、受講者のキャリアアップの支援を同時に行うのも大切な取り組みです。企業内大学で学んだことがキャリアアップに繋がることで、受講者の仕事へのモチベーションの向上や、離職の防止にも役立つからです。

そこで、従業員が受講した内容に合わせて1on1ミーティングやキャリア面談を行い、的確なアドバイスをできる仕組みを構築しましょう。

 

企業内大学の成功事例

それでは最後に、企業内大学を取り入れた企業と、その成功事例を紹介します。

日本マクドナルド株式会社「ハンバーガー大学」

1955年に創業のマクドナルドでは、1961年から企業内大学を設立し、長きにわたり人材育成に取り組んでいます。

日本国内でも、銀座1号店が開店する1ヵ月前からハンバーガー大学を開講し、人材育成に重きをおいています。

ハンバーガー大学では、最新の教育理論や手法を用いて人材育成に取り組む専門教育機関として、東京を含む世界9ヵ国に企業内大学を設置しています。

ソフトバンク株式会社「ソフトバンクユニバーシティ」

ソフトバンク株式会社では、企業内大学「ソフトバンクユニバーシティ」を2010年に設置しました。ソフトバンクユニバーシティでは、約9割の研修を内製化し、実務経験者が実践的な学びを提供しています。

80コース以上のビジネスプログラムを用意し、社員の主体的な受講を促進。階層別プログラムにより、役職や年代を問わず、誰もが学べる学習環境となっています。

博報堂「HAKUHODO UNIV.」

「HAKUHODO UNIV.」は、クリエイティブな博報堂をビジョンとして、2005年に設立されました。

「粒ぞろいよりも粒違い」という言葉を大切にしている博報堂では、若年層向けのプラグラムからプロフェッショナルとして専門領域を極めるものまで、年間200講座以上を提供しています。

「HAKUHODO UNIV.」では、社員が自らの気づきによって成長し、顧客の期待を超えるクリエイティビティが生まれる「発育のための場」として期待されています。

企業内大学のまとめ

このように、企業内大学は一般的な社内研修とは目的やビジョンが異なり、企業理念や経営戦略を浸透させながら、自社の従業員を育成・成長できる場として期待されています。

現代は、多くの企業で人材不足や離職率の高さが課題となっています。そんな中、企業内大学の設立によって期待できる効果は、企業にとって非常に大きなメリットとなるでしょう。

もし企業内大学の設立に興味がある、また設置を検討しているけど、どのようにすべきかわからない方は、ぜひアルマ・クリエイションにご相談ください。貴社に合わせた的確なアドバイスを提供いたします。

 

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