現代の企業運営においては、ITによる消費者ニーズの多様化やグローバル化など、急速に変化し続ける市場に対応しなければなりません。
このような社会で、企業が競争に勝ち残るためには、競合他者に負けない自社の強みを発揮できる事業展開が求められます。
そこで重要となるのが、企業運営の基本的な考えである「経営戦略」です。
企業は経営戦略を基に事業を展開し、競合に負けない事業戦略や機能戦略へと戦略内容を落とし込み、事業の成功へと導きます。
今回は、経営戦略の基本的な概念と共に、経営戦略の目的や必要性、戦略立案と実行に向けた8つのステップを詳しく解説します。
これから起業する方はもちろん、既存のビジネスを改善したい方も、ぜひ参考にしてください。
経営戦略とは、自社の事業を成長させたり、企業の目標を達成したりするために必要となる包括的な行動計画を意味します。
経営戦略を策定する目的は、企業が目指す成果や目標を達成するために、意思決定、人材、財務など、すべての経営資源を適切に配置・管理することにあります。
このように、経営戦略の立案は、企業の成長と持続可能性を高めるために不可欠な指標と言えるでしょう。
経営戦略では、企業の目標と目的を明確にし、実行すべきリソースとタスクを特定しながら、望ましい結果をどのように達成するかを明確にします。
また、企業にとって望ましい結果を達成するために必要なタスクの概要を示すことで、スタッフを組織して動機付けし、投資に対するリターンを最適化するための資源の配分を行います。
経営戦略の主な目的は、組織が利用できる資源を最も効果的な方法で配備・管理できるようにすることです。
明確に定義された経営戦略は、ビジネス上のオペレーションを改善し、投資収益を最適化します。
さらに、効果的な戦略によって組織が市場の変化を予測できるようになり、競合他社との競争に打ち勝つためにも役立つでしょう。
経営戦略が必要となる理由は、業務を円滑に進め、目標達成を支援し、企業組織を予期せぬ混乱や変化から守るために、企業にとって不可欠な指針だからです。
実際に2020年の新型コロナウィルスの蔓延以降は、働き方改革などの影響もあり、国内の市場だけを見ても、これまでに類を見ないほどの大きな変化が起きています。
それ以外にも、国際紛争による食糧やエネルギーの供給不足に加え、急激な円安による物価の高騰など、先行きが不透明な情勢が続いているのが現状です。
そのため経営戦略は、意思決定のためのフレームワークを提供し、タスクとリソースの優先順位の付け方を具体的に表わすものでなければなりません。
また効果的な経営戦略は、社内スタッフだけでなく、社外のステークホルダーにも明確な情報を提供するため、企業を運営する上での意思決定にも大いに役立ちます。
経営戦略を立てる際は、次の5つの手順を踏むことで、具体的な戦略の立案がしやすくなります。
それぞれ解説します。
企業が目指す目標は、企業ごとにそれぞれ異なります。利益を追求する企業もあれば、利益よりも顧客満足(CS)度を上げたい企業もあるでしょう。
そのため経営戦略を立てる際は、まず自社が目指す目標を明確にしなければなりません。なぜなら「売上を○○億円にしたい」や「自社製品の市場シェアを○○%以上にしたい」など、企業が目指す目標によって次の事業戦略や機能戦略へ落とし込む情報やリソースが大きく変わるからです。
企業目標を立てる際は、売上金額などの現実的な目標値を決めたら、最低でも2割増しで設定することが大切です。
そもそも経営戦略の上にある目標は、短期ではなく長期的な戦略目標となります。そのため低い目標値を設定してしまうと、将来的な成長に繋がらない可能性が高くなります。
今後の国内市場は、仕入れ原価の高騰に金利や税率の上昇など、企業運営にとって厳しい現状が続くと予想されます。このような状況の中で強力なリーダーシップと意思決定が必要となる経営陣においては、高い目標を設定し、どんどんクリアしていく実行力が必要です。
企業の目標が決まれば、次に自社にある「課題」をあげてみましょう。
ここでのポイントは「目標をあげる前に課題をあげないこと」です。なぜなら、課題解決を前提に目標を設定してしまうと、最終的な目的がブレるからです。
企業の目標や目的は、決して課題の解決ではありません。あくまでも、目標に向かう過程で障害となる課題を解決し、最終的に目標を達成することが重要です。
ただし、ここであげる課題は、目標をクリアするための課題だけでは足りません。企業の目的を達成するための課題はもちろん、自社にある問題や、今後直面する可能性のある課題(人手不足やDXに対する遅れなど)を想定し、できるだけ早い段階から解決法を導き出しておくことが大切です。
そこで課題を抽出する際は、経営陣だけでなく、各部署の現場の意見も重視しながらしっかりと分析する必要があります。
次に、先にあげた課題に対する解決策を考え、実行します。
課題が多い場合には、まず先に解決すべき課題の優先順位を付けるところから始めましょう。
特に優先度の高い課題を解決できれば、それ以下の課題が芋づる式に解決できるケースもあるため、闇雲に課題解決に取り組むのは危険です。
また、課題の抽出や解決には、さまざまな書籍が役立ちます。ビジネスの課題解決に関しては、難しく考える前に、まずは解決の糸口がないかを探ることから始めましょう。
課題解決に無駄な時間とリソースを使い、本来注力すべきコア業務に影響が出ないように注意しましょう。
課題の解決法を発見したら、すぐに実行する前に、課題解決に至るまでのリスク管理を行いましょう。
もし、課題を解決する際に社内のリソースを必要とする場合は、まず人材や費用を工面しなければなりません。また、時間が必要な場合には、しっかりとした計画を立てる必要があります。
このように、課題を解決する際は、まずどのようなリスクがあるのかを明確にして、しっかりとしたシミュレーションを行い、最小のコストで効率良く課題を解決できるように準備することが大切です。
上記で解説した準備が整えば、いよいよ目標達成へ向けた戦略を社内に共有していきます。
企業の目標を達成するためには、経営陣はもちろんのこと、社内全体で意識を統一しなければなりません。
そこでまずは、社内全体で目標を達成できる戦略を共有し、各事業部所で実施すべき事業戦略への落とし込みと、更なる機能戦略へ浸透させて行きます。
戦略の共有を実現するためには、各部署の上長のリーダーシップとプレゼン能力、各スタッフのコミュニケーション能力も非常に重要です。
経営戦略を実行するためには、下記の図のように、企業レベルの経営戦略を事業レベルの事業戦略、機能レベルの機能戦略へと順に落とし込み、具体化していく必要があります。
以下では、それぞれの戦略について解説します。
経営戦略は、企業の長期的な目標を実現するために、社内外へのビジョンの策定や浸透を目的とした戦略を指します。
経営戦略では、自社の基本となる事業を明確に定め、市場や競争、サービスなどの分析を行い、各事業部などへ経営資源の配分を行います。
経営戦略においては、事業を多角化するために経営資源を拡大すべきか、それとも自社の強みを生かした事業に経営資源を集中するかという、経営資源の配分の仕方が特に重要です。
事業戦略とは、経営戦略で配分された経営資源を基に、経営目標を達成するための事業部や事業責任者が考える戦略です。
具体的には、市場や顧客にどのような価値を提供するか、また競合他社との差別化といった「市場や顧客」「商品やサービス」などに関する営業戦略などの策定を行います。
事業戦略では、自社事業における具体的な営業戦略を提案し、ビジネスモデルを作ることも重要です。
事業戦略についての詳しい解説は「事業戦略の立て方と策定手順|効果的なフレームワーク7選を解説」をぜひご参照ください。
機能戦略とは、事業戦略の目標を実現するために考える、事業の現場を意識した戦略のことです。
経営戦略や事業戦略は、どのような業種であれ最終的な機能戦略に影響を及ぼし、事業の現場で実行されます。
機能戦略は、大きく生産戦略、マーケティング戦略、営業戦略、人事戦略、財務戦略などに分類されます。また、具体的な機能については企業ごとに異なるのが一般的です。
VRIO(ブリオ)分析とは、企業の内部環境の分析から「自社にある価値」を客観的に探るためのフレームワークです。
企業価値は、次の4つの観点で計量可能です。
企業の経営資源に対し、上記の4つが多いほど競争で優位となり、顧客満足度を高めることで市場におけるシェアを拡大できます。
自社にとって「V・R・I・O」のどこに強みと弱みがあるかを明確にすることで、強みをさらに伸ばし、弱点を最小にするための経営戦略を立案します。
VRIO(ブリオ)分析は、おもに製造業で用いられるフレームワークで、サービス業でも応用可能です。
サービス・プロフィット・チェーン(SPC)は「従業員満足」⇒「顧客満足」⇒「企業利益」の好循環を目指すフレームワークです。
会社が従業員を大切にすることでサービスの質が向上し、リピーターが増え、結果として企業利益につながるという考え方で、おもに飲食業、理美容業、観光・娯楽業などのサービス業の経営戦略の立案に用いられます。
サービス業では、従業員と顧客が直接関わることが多く、従業員の満足度が顧客満足に直接影響を及ぼします。そこで、従業員の満足度を上げるための待遇を改善するだけなく、従業員を大切にする企業風土を創ることが重要です。
PEST分析とは、次の4つの要因からマクロ環境を分析するフレームワークです。
これらの要因は、自社でコントロールできません。このような外部的な要因を分析するのがPEST分析の役割です。
PEST分析によって、世の中の動向やトレンドに合わせた事業展開が可能となります。近年では新型コロナウィルスの蔓延により、さまざまなオンラインツールをはじめとするWebサービスが急進しました。
企業環境はこのような外部環境の変化による影響を受けやすいため、常にマクロ環境を調査・分析し、必要に応じて自社の経営戦略を見直すことが重要です。
3C分析は「市場・顧客(Customer)」「競合(Competitor)」「自社(Company)」を客観的に分析するためのフレームワークです。
このような3つのCを分析することで、成功要因の発見に繋げるのが目的です。
どの分析でも言えることですが、自社と競合を分析する際は「客観的な視点」でデータを観察することが重要です。そこで企業経営に携わる方は、正確な情報とデータを基に分析を行い、戦略設計しなければなりません。
SWOT(スウォット)分析とは、次の4つの視点から分析を行うフレームワークです。
SWOT (スウォット) 分析は、自社のビジネス全体や特定のプロジェクトにおいて、強み、弱み、機会、脅威となる要因を特定するための手法で、事業の規模や形態を問わずさまざまな組織で幅広く利用されています。
SWOT分析では、市場を取り巻く外部環境と自社の商品やサービスの価格や品質などの内部環境について、プラス要因とマイナス要因の両面から客観的に分析可能です。
5F(ファイブフォース)分析とは、次の5つの競争要因から業界内の構造を分析するフレームワークです。
上記5つを分析し、自社に対する脅威を明確化するのが5F分析の目的です。
現代では、商品やサービスに対する顧客のニーズやウォンツの変化が早く激しいため、新サービスをリリースしてもすぐに代替品が出るのが普通です。そこで自社プロダクトに対する5F分析を常に行い、脅威を明確にしておくことが大切です。
上記のように、フレームワークにはさまざまな種類があるため、それぞれを自社に合わせて効果的に使わなければなりません。
そこで以下では、効果的にフレームワークを使うための注意点を紹介します。
フレームワークを活用する際は、自社の特性に合ったフレームワークを選ぶことが重要です。
フレームワークには非常に多くの種類があるため、まずは自社にある課題や問題を抽出し、客観的な分析が可能なフレームワークを選びましょう。
また1つのフレームワークで企業全体を分析できるケースはほとんどないため、複数のフレームワークを同時に活用するスキルや知識も必要となります。
フレームワークを最大限に活用するには、分析のプロであるマーケターなどに依頼すると良いでしょう。
もしマーケターが自社にいない場合は、お気軽にアルマ・クリエイションにご相談ください。
フレームワークを使うことで、これまで気づけなかった自社の課題や新しい顧客ニーズを発見し、経営戦略の立案に役立つ情報を得られるでしょう。
しかし、分析によって得られたデータを、すぐに現場のスタッフや作業に落とし込むためには、相当な実務経験が必要です。
また、立案した経営戦略を事業戦略や機能戦略へと浸透させるためには、大きな決断や実行力が伴わなければなりません。
そこでフレームワークを柔軟に使いこなし、自社の企業風土に合わせた活用法を見出すことが、自社の改革改善を成功させるポイントです。
今回は、経営戦略の概念や必要性、立案方法やフレームワークなどを解説してきました。
経営戦略の立案は、企業理念とも紐づいた「最も大きな企業の指針」であるため、社内全体で理解・共有すべき重要な施策と言えるでしょう。
そこで経営戦略を構築、立案できていない企業においては、ぜひこの記事を参考にして、自社の分析から始めてみてください。
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