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『ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代』の要約|書籍紹介

タイトル:ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代

著者:アダム・グラント(Adam Grant)

 

▲引用:ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代

 

著者略歴

ペンシルベニア大学ウォートン校教授。組織心理学者。1981年生まれ。同大学史上最年少の終身教授。『フォーチュン』誌の「世界でもっとも優秀な40歳以下の教授40人」、世界でもっとも重要なビジネス思想家50人(「THINKERS50」)のうち一人に選ばれるなど、受賞歴多数。

 

ファシリテーターの感想・おすすめのポイント

これは一人ひとりの人生を変えてしまう、すごいアイデア

まえがきについては、フェイスブック最高執行責任者シェリル・サンドバーグが執筆しています。

生まれつき独創的な人もいるが、ほとんどの人は自分のオリジナリティ(独創性)に自信がないというのが世間一般でいわれていることであろう。 

アダム・グラントは本著で、このような思い込みをひとつ残らずつぶしていくとともに、誰もが創造力を高めることができるのだということを示してくれる。 

また、本当に耐震なアイデアを見分ける方法や、そのうちどのアイデアが大きく実を結ぶかどうかを予想する方法についても。 

自分の直感を信じた方がいいのか、または、ほかの人に頼って意見を聞いた方がいいのか。それは、どういうときか。

子供の個性を育んであげることで、私たちもいかにより良い親になれるのか。

「言うことを聞かせる子育て」ではなく「思考の多様化を図る子育て」をすることで、大人たちは職場においても、いかによりよい上司になれるのか。

本当の意味での友とは、自分自身がわかっているよりも多くの可能性を見出してくれる人のことをいう。「最高の自分」になれるよう手助けしてくれるのだ。

これはまるで魔法のような本だ。この本を手に取るみなさんの親友に、アダムがなってくれるのだから。 

疑いや恐れをどう乗り越えればいいか。

発言やプレゼンテーションは、うまくやればよいか。

思いがけない場面で味方を見つけるにはどうすればよいか。

こういった疑問に、きっと多くのアドバイスをくれるだろう。 

じつに、実践的なガイドラインが満載である。 

パワフルでびっくりするようなアイデアが溢れている。

世界の見方だけではなく、生き方さえも変わってしまうかもしれない。

さらには、 この世界を変えていこうと決意するきっかけになるかもしれない。 

 

目次

まえがき

これは一人ひとりの人生を変えてしまう、すごいアイデア

 

Part1 変化を生み出す「創造的破壊」

「最初の一歩」をどう考えるか

変わりようがない業界に激震をもたらした4人

あなたが「今、使っているネットブラウザ」からわかること

”神童”が行き着いた先

「オリジナルな人」とは

本当のリスクは何なのか

 

Part2 大胆に発想し、緻密に進める

キラリと光るアイデアとは?

名だたる起業家でも見抜けなかった「歴史的失敗」

自信過剰のベートーベン

成功したいなら、カエルにキスしろ

なぜ「有望な企画」は却下されがちなのか

経験は裏目に出ることがある

自分の”勘”は、いつあてになるか

こうして人は「見せかけの熱気」にだまされる

天才の打率でも「たった3割」

 

Part3 ”無関心”を”情熱”へ変える法

まわりを巻き込むタフな説得力

時代はこうして追いついてくる

地位と権限の法則

弱点をさらけ出しながら、事を有利に運ぶー「サリック効果」

さりげなく「いいイメージ」を刷り込む法

「やさしい上司」より「気むずかしい上司」に

重要視される人になる確実なルート

スティーブ・ジョブズに猛反対して、大成功を納めた社員

 

Part4 賢者は時を待ち、愚者は先を急ぐ

チャンスを最大化するタイミング

あのキング牧師の「締め切りとの戦い」

いいアイデアは”放置”から育つ

問題解決力が高い人ほど、実践していること

より多く素材を集め、一瞬で組み立てる法

イノベーターかフォロワーか ー ビジネスの優位性

「若き天才」と「経験豊富なエキスパート」

 

Part5 「誰と組むか」が勝敗を決める

パワフルな結束をつくる人の見分け方

「ゴルディロックスの理論」から学ぶべきこと

”似たもの同士”だから、敵意を抱く

「ソフトな過激派」がうまくいく

誰を見切り、誰を味方につけるか

『ライオンキング』をお蔵入りから救ったひと言

相手を説得するな、共通項を探せ

交渉は誰がやるべきか

 

Part6 「はみ出す人」こそ時代をつくる

どこに可能性が隠されているか

盗塁王の「一歩踏み出す勇気」

出生順が物語る、驚きの真実

「競争しない」という競争

「厳しいしつけ」の落とし穴

「妥当性の理論」について

「行い」よりも「人柄」を褒める

「最高のお手本」の見つけ方

 

Part7 ダメになる組織、飛躍する組織

風通しよく、進化を遂げるしくみづくり

「強い集団」が、なぜ足下をすくわれるのか

ポラロイドとコダックの違い

道を誤るCEOの特徴

「社長、今日のあなたは最悪でした」

「悪魔の代弁者」を探せ

部下に解決策を求めるな

改善へのアイデアはあ、新入社員に聞く

採用すべきものはどれか

新しい価値観を生み出す人の「3つの特徴」

 

Part8 どんな「荒波」も、しなやかに乗りこなせ

あらゆるものをエネルギーにする方法

いざ、氷の海に飛び込む瞬間

大勝負にはどんな思考が役に立つのか

「落ち着け」というアドバイスは間違い

一瞬で「自分のなかのスイッチ」を入れる方法

誰もが、つい多数派にしたがってしまう

明日の夢に向かう準備

熱くなること、冷静になること

「爆発的なエネルギー」に火をつけろ!

菅役者のことば

「いわれてみれば当たり前」の妙味  楠木建

 

本書の要点

Part1 変化を生み出す「創造的破壊」

「最初の一歩」をどう考えるか



心理学者の研究により、業績の達成には「コンフォーミティ」(同調性)と「オリジナリティ」(独自性・独創性)という二種類の方法があることが分かっている。

コンフォーミティ とは、多数派にならって従来の方法を踏襲し、 現場を維持することだ。

他方で、 オリジナリティとは、未開発の方法を取り、流れに逆らう新しいアイデアを推し進めつつ、最終的により良い状況を生み出すことだ。

 

私のいう「オリジナリティ」とは、ある特定の分野において、その分野の改善に役立つアイディアを導入し、発展させることを意味する。

 

オリジナリティそのものは、創造性(クリエイティビティ)に端を発する。

まず何より、斬新で実用的なコンセプトを考え出すことだ。

だがそれだけで終わらない。

 

オリジナルな人とは、「自らのビジョンを率先して実現させていく人」である。

本書では、誰もが「オリジナル」になれるのだということを立証していく。 



あなたが「今、使っているネットブラウザ」からわかること

 

経済学者のマイケル・ハウスマンは、顧客サービス係の勤務が長く続く人とそうでない人がいるのがなぜかを解明するプロジェクトを指揮していた。

 

従業員がどのブラウザを使うのか調べてみたところ、

FirefoxまたはChromeを使っていた従業員は、Internet Explorer、Safariを使っていた従業員よりも15%長く勤務していたのだ。

 

FirefoxまたはChromeを入手するには、別のブラウザからダウンロードしてこなければならない。

「今あるもの」をそのまま使うのではなく、みずから行動を起こして、より良い選択肢がないかを探し求めるわけだ。そしてこの自発的な行動が、どれほど小さいとしても、職場での行動を決定づけるヒントとなる。

 

既存のシステムを正当化すると、心が落ち着くという効果がある。「感情の鎮静剤」なのだ。

しかし、何かにしたがっていると、世界をよりよい姿に変える前向きな意志が奪われていくことになる。



オリジナリティの最たるポイントは、「既存のもの」を疑い、よりよい選択肢を探すことだ。

そもそも、なぜ既存のものが存在するのかということを考えてみる。

「デ・ジャ・ブ」ならぬ「ブ・ジャ・ブ」を体験すると、今当たり前に存在することが疑問に思えてしかたなくなる。

「ブ・ジャ・ブ」とは、その反対で、既知のものを目の前にしながら、新たな視点でそれを見つめ、古い問題から新たな洞察力を得ることだ。



「オリジナルな人」とは

オリジナルな人間になるには、極端なリスクを冒さなければならないという認識は、文化的にあまりにも深く根付いていて、多くの人は疑問に持つことすらしない。

 

私は本書で、この通説をくつがえし、オリジナルな人たちは私たちが思うよりもずっとふつうの人たちなのだ、ということを示していきたいと思う。

 

本当のリスクは何なのか

 

半世紀前、ミシガン大学の心理学者クラウド・クームスは、 リスクに関する革新的な理論を編み出した。

リスクの高い株式投資をしようとしている人は、その他の投資では安全策を選んで身を守ろうとする、というものだ

 

日常生活においても、成功を収めている人はこれと同じようにリスクに対処している。

ある分野で危険な行動をとろうとするのなら、

別の分野では慎重に行動することによって全体的なリスクのレベルを弱めようとするのだ。

 

つまり、ある分野において安心感があると、別の分野でオリジナリティを発揮する自由が生れる。

 

オリジナルなことを実現して成功してる人達の中身は、

私たちとするほど変わるものではない。彼らも、皆と同じような恐怖や不安を感じている。

 

しかし、何が違うかといえば、「それでも行動を起こす」ということだ。

「失敗することよりも、やってみないことの方が後悔する」

彼らはそのことを、身をもって分かってる人たちなのである。 




Part2 大胆に発想し、緻密に進める

キラリと光るアイデアとは?

 

私たちは世界にオリジナリティが欠けていることを憂い、それは人々に創造性が欠けているからだという。

 

新しいアイデアを出すことさえできていれば万事うまくいくと思っているのだ。

だが、実際は、オリジナリティを阻む最大の障害はアイデアの「創出」ではない

ーアイデアの「選定」なのだ。

 

斬新なアイデアのなかから、適切なものをうまく選び出せる人がいないことが問題なのだ。

 

本パートでは、ヒットが予測されたものが失敗に終わったセグウェイのケースや、失敗すると思われていたものが最終的に成功した、テレビ放送局「NBC」社の事例を紹介。



なぜ「有望な企画」は却下されがちなのか

管理職は、一般にリスクを回避しようとしすぎる傾向にある。

新しいアイデアを実行して得られる利益ではなく、悪いアイデアに投資して失敗する方に目を向けがちだ。

 

専門知識と経験が深まるほど、世界の見方がある一定の状態に固定されてしまう。

 

オリジナリティを正確に評価するには、自分自身で判断しようとしたり、上司に意見を求めたりするのではなく、同じ分野の仲間の意見をもっと求めていくべきだ。

 

同業者の判断が、一番信憑性が高いからである。



自分の”勘”は、いつあてになるか

直感は、自分の経験が豊富にある分野においてのみ正しい。

 

ある特定の分野において経験がある先駆者であっても、他の分野での予測にも長けているかというと必ずしもそうではない。 

知識がない場合は、じっくりと分析したときの方がより確実な判断ができる。

 

Part3 ”無関心”を”情熱”へ変える法

さりげなく「いいイメージ」を刷り込む法

自分のオリジナルのアイデアを取り入れてもらいたいなら、いったん発言してみて、

その後に時間をおいてまた話す、ということをくり返し行わなければならない。 

 

たいていの人は、ある対象にくり返し接するほど、 その対象をもっと好きになる。

心理学者のロバート・ザイアンスは、この現象を「単純接触効果」と名付けている。

 

この効果の説明として、接触することによって物事を処理しやすくなるからということができる。

馴染みのない事は理解するのにより多くの努力を必要とする。何度も見たり、聞いたり、触ったりすればするほど、より安心感を覚え、恐れなくなる。

 

また、アイデアを提示してからそのアイデアを評価するまでのあいだに、少し時間を置くとさらによい。時間を置くのは、アイデアを頭に染み込ませるためだ。

 

例えば上司に何か提案したいなら、まずは火曜日にエレベーターの中で30秒ほど話し、翌週の月曜日にその話題に再度簡単に触れ、その週の終わりに意見をもらうのがいいかもしれない。



「やさしい上司」より「気むずかしい上司」に

経済学者のアルバート・ハーシュマンの著書によると、

満足のいかない状況に対処する方法は四通りあるそうだ。 

「離脱」その状況から完全に身を引く

「発言」状況を積極的に改善しようと行動する

「粘り」歯を食いしばって我慢する

「無視」現状に留まるが、努力はしない

 

根本的に、どれを選ぶかは「コントロール(状況の決定権が自分にあるという気持ち)」「コミットメント(状況に関与したいという前向きな気持ち)にかかっている。 

 

現状は変えられないと思っているのなら、コミットメントがなければ無視するだろうし、コミットメントがある場合は我慢するだろう。

 

変化をもたらすことができると感じはするけれども、対象の人物や国や組織に対するコミットメントがない人は、離脱する。発言しようと考えるのは、自分の行動が重要だと信じており、かつ深い関心を持っているときだけだ。

 

職場におけるコミットメントとコントロールの意識は、直属の上司によるところが大きい。

自分を支えてくれる上司がいると、組織との結びつきが強化され、自分には大きな影響があるのだと感じられる。

 

自信を与えてくれる上司とは、どんな人物か。

多くの人は、温厚で親しみやすい人を思い浮かべるだろう。

しかし、親しみやすい人は 、周りと協調し、基準に従うことを重視しているため、

ことを荒立てて対人関係を満たすのは避けたがるものだ。

他社や慣習に立ち向かうことをいとわないのは、えてして「トゲのある人」だ。

 

気難しい上司というのは、ふつうならピンチの時に助けを求めたいと思う人物ではけっしてないが、場合によっては最高のサポーターになってくれる。 

 

親しみやすい人が最も幸せを感じるのは、褒められたり賞賛されたり他者を安心させるとき、反対に、気難しい人がもっともうれしい瞬間は、他者を批判してやりこめたり、他者と対立したり、反論したりしたときだった。

 

発言しようとする際に、誰に訴えかけるかというのは、どのように主張を伝えるかと同じぐらい重要だ。

 

いつもウンウンとうなずいてくれる人に向かって訴えるよりも、ユニークな行動をとるとして知られている人物に提案したほうがうまくいく可能性が高い。






Part4 賢者は時を待ち、愚者は先を急ぐ

チャンスを最大化するタイミング



いいアイデアは”放置”から育つ

 

先延ばしにするという行為が、オリジナリティにつながる。

 

実験の結果、先延ばしにする従業員は、より多くの時間を思考することに費やしており、創造性が極めて高いと評価されていた。ただし、大きな課題を解決する意欲をもたない従業員は、先延ばししても問題解決が遅れただけだった。

先延ばしは「生産性の敵」かもしれないが、「創造性の源」にはなる。

 

また、先延ばしは、クリエイティブな仕事にはとくに有益であることがわかった。

 

「先延ばし屋」の最たる例がレオナルド・ダ・ヴィンチだ。

批評家たちは、ダ・ヴィンチは光に関する実験やそのほかの「余計なこと」をして時間をムダにし、絵画をなかなか完成できなかったと考えていた。だが、そのような数々の「余計なこと」こそが、オリジナリティにとって欠かせなかったのだ。



イノベーターかフォロワーか ー ビジネスの優位性

 

先発者となることは、利点よりも不利な面が大きいことがままある。

 

実際、家庭用テレビゲーム機の分野では、先発企業の「マグナボックス」社が1972年、ゲーム機「オデッセイ」を発売した。しかし、後発企業である「任天堂」が「ファミリーコンピュータ」を製作し、マグナボックスを打倒した。

 

任天堂のゲームは、使いやすいコントローラと、洗練されたキャラクター、対戦型ロールプレイングゲームで家庭用ゲーム業界に変革をもたらした。

 

オリジナルであるには、先発者である必要はない。

オリジナルであるというのは、ほかとは異なる、ほかよりも優れているという意味である。

 

後発企業が参入するころには市場がある程度確立しているため、そもそも「何を」提供するべきかを考えるのではなく、「優れた品質を」提供することに焦点をあてることができる。

 

最初に行動を起こすことが、絶対によくないといっているわけではない。先駆者が優位になりやすいものもある。しかしほとんどの場合、最初に行動を起こしたからといって成功の確率が高くなるわけではない。

 

注意しておきたいのは、オリジナルなアイデアがある場合、競合他社よりも先にゴールへたどりつくことだけを目的に、行動を急ぐのは誤りだということだ。



「若き天才」と「経験豊富なエキスパート」

オリジナリティがピークに達する時期とその持続期間は、個人の思考スタイルにかかっている。

 

イノベーションには根本的に異なる二つのスタイルがあることがわかった。

「概念的イノベーション」と「実験的イノベーション」だ。

 

概念的イノベーターは、大胆なアイデアを思い描いてそれを実行に移すというタイプだ。

実験的イノベーターは、試行錯誤をくり返して問題解決を行いながら学び、進化を遂げていく。あらかじめ計画するのではなく、進めていくなかで解決策を見いだしていく。

 

概念的イノベーターは一般に、ある分野にはじめて触れてからさほど時間が経たないうちに、最も重要な貢献を果たす。

飛び抜けて独創的なアイデアは、新鮮な視点で問題にアプローチした場合にもっとも発見されやすいからだ。

 

反対に、実験的なイノベーションは、必要な知識とスキルの蓄積に何年も何十年もかかるが、オリジナリティの源泉として、より長続きする。



Part5 「誰と組むか」が勝敗を決める

パワフルな結束をつくる人の見分け方



「ゴルディロックスの理論」から学ぶべきこと

オリジナルな人たちが、どのように仲間を作っていくべきか

仲間づくりはパワーのもとになるが、保守的には不安定でもある。

メンバー間の人間関係に強く依存するからだ。

 

重要なのは、仲間づくりにおける「ゴルディロックスの理論」、”ほどほどの適度な状態”である。

 

運動を始めるオリジナルな人というのは、グループのなかでも一番過激なメンバーである場合が多く、そのようなメンバーの考えや理想は、従う立場にあるその他のメンバーにとっては少々”熱すぎる”のだ

 

対立するグループと同盟を結ぶには、運動に関する主張をやわらげ、なるべく冷静に接する方がよい。だが、運動そのものに参加してもらうために必要なのは、暑すぎも冷たすぎもしない、ややソフトなメッセージだ。 




誰を見切り、誰を味方につけるか

 

人間関係は、純粋にプラスの関係と、まったくもってマイナスな関係のほかに、

プラスでありマイナスでもある関係というものがある。

心理学者はこのような関係を「両価的な関係」と呼ぶ。

「フレネミー(フレンドとエネミーを足した造語)」という呼び名なら聞いたことがある人もいるだろう。ときには応援してくれるが、またあるときは邪魔をしようとする人たちのことだ。 

 

明らかに害になる関係を断ち切り、 両価的な関係を一緒とするのが私たちの本能だ。

だが、 本能とは反対のこと、つまり「フレネミー」を切り捨て、敵を味方にするようにしたほうがいいという証拠がある。

 

現状打破しようというときに、人は敵を無視することがよくある。

だが、ずっと私たちに協力的だった人たちは、最高の味方にはならない。

 

最高の味方になるのは、はじめは反対していたが、次第に味方になってくれた人たちだ。 



Part6 「はみ出す人」こそ時代をつくる

どこに可能性が隠されているか



Part6では、子どもたちをオリジナルへの道へと導くために、

家族や環境が、 オリジナリティを獲得する上でどのような影響をもたらすかを見ていく



Part7 ダメになる組織、飛躍する組織

風通しよく、進化を遂げるしくみづくり




「悪魔の代弁者」を探せ

心理学者ジャニスは、集団思考という名の病を分析した際

、有効な治療法の一つに「悪魔の代弁者」、つまり「わざと反論する人物」を立てることをあげた。

 

人はどちらかを好んでいると、好んだものを指示する情報を探し、

それに相反する情報を見ようとしない。 

 

悪魔の代弁者を「誰かにやってもらう」のは魅力的ではあるが、本物の悪魔の代弁者を「発掘する」ほうがさらに効果的だ。

単に、悪魔の代弁者として役割を果たしているだけだと、二つの問題が発生する。

代弁者は意見を力説することもないし、一貫性も出にくいので、相手はなかなか真に受けてくれない。

 

成功の秘密は、誠実さだ。

説得力を最大限まで高めるには、物事を心から信じていることが必須だ。 

 

投資ファンドのブリッジウォーターの創業者であるレイ・ダリオは、

「建設的に意見を交わせない人々が、人間にとって最大の悲劇を生み出す」のだという。

 

ダリオは、社員が議論を戦わせることで、意見の食い違いに折り合いをつけることを望んでいる。

納得するまで徹底的に話し合うことで足並みを揃えたいのだ。

 

自分の意見をはっきり述べる文化をつくることができれば、集団の心配などさほどしなくてよくなるからだ。

 

部下に解決策を求めるな

「問題を持ってくるな。解決策をもってこい。」

部下には不平を漏らすだけに留まらず、自分の頭で考える責任感をもってほしいと上司たちは考える。

 

しかし、集団思考という観点から見ると、解決策を考えることにはネガティブな側面がある。組織心理学者デヴィッド・ホフマンは、「解決策に焦点を当てすぎる文化は、”弁護の文化”に偏ってしまい、探究心を削いでしまう」ということを見いだした。

 

いつも答えを用意してくるよう求められていると、人に話をする前に結論を出しているため、広い視点から学ぶ機会を失ってしまうのだ。

 

解決策を模索する前に、問題をクリアにする。問題を確実に提起するため、自分とは意見が異なる人間を探し出す力が、リーダーには求められる。



Part8 どんな「荒波」も、しなやかに乗りこなせ

あらゆるものをエネルギーにする方法

 

大勝負にはどんな思考が役に立つのか

オリジナルな人たちは、傍目には確信と自信に満ち溢れてるように見えるものだが、内心は様々な感情や自己不信が入り混じっている。

 

心理学者のジュリー・ノレムは、こういった困難に対応するために二つの戦略を研究している。

「戦略的楽観主義」「防衛的悲観主義」だ。

 

「戦略的楽観主義」とは、最高の結果を予測し、冷静を保ち、目標を高く設定することだ。

防衛的悲観主義」とは、最高の結果を測定し、不安を感じながら、起こりうるあらゆる悪い事態を予測しておく事だ。

 

ほとんどの人は防衛的悲観主義よりも、 戦略的客観主義の方がよいと思うだろう。

だが、ノレムは防衛的悲観主義者は不安が強く、分析的な課題や言語的課題、想像で課題への自信が低いが、パフォーマンスといった面では戦略的楽観主義と同じであると言っている。 

防衛的悲観主義は、不安や恐怖、心配を克服するために特定の状況下で使われる戦略だ。 

自己不信に襲われると防衛的主観主義者は、わざと大惨事を想定して不安を増幅させ、

その不安をモチベーションに変えるのだ。 

 

明日の夢に向かう準備

他者に行動を改めてもらいたいとき、「変えることの利点を強調する」ほうがよいのか、「変えないことの代償を強調する」ほうがよいのか。

イェール大学長であるピーター・サロベイの見解では、 「新しい行動を相手が安全なものと認識するか、リスクを伴うものと認識するかによる」ということだ。 

 

行動が安全だと相手が思うのなら、報道によって生じるすべての善いことを強調するべきだ。

だが、行動にはリスクが伴うと考えている場合には、相手は既に現状に満足しているため、変えることの利益を示されても魅力を感じない。 

そのため、行動を変えないことで起きる悪いことを強調する必要がある。 行動しなければ確実に損失がある場合は、リスクを冒すことに魅力を感じるようになる。

 

変化を計画する人はたいていの場合、みんなの無関心にテコ入れするために、刺激的なビジョンを示そうとする。ビジョンを伝えることも重要だが、最初に伝えてもあまり意味がない。現場の形に問題があるのかをまず示す必要がある。

安全圏から出てもらうためには、現状に対する不安やいらだち、怒りを認識させ、確実な損失を示さなくてはならない。 



「爆発的なエネルギー」に火をつけろ!

研究によると、「他者に対して」怒りを感じていると復讐心が生じるが、「他者のために」怒りを感じていると、正義がよりよいシステムを作る動機になる。

他者への不当な扱いを正したいという欲求だ。

 

私たちは、世界をより良くしたいという欲求と、そのままの世界を楽しみたいという欲求の板挟みになる。そして、私たちの多くは、幸福のために「今、ここにある世界」を享受することを選んでいる。

 

しかしオリジナルな人たちは、あえて苦しい戦いを選び、理想の世界を実現しようと取り組んでいる 。長い目で見ると、彼らは世界をもっと素晴らしい場所にするチャンスを手にするだろう。 「別種の満足感」をもたらすのだ。

それを追い求めることの幸せは何にも代えがたいのである。

 

 

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