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『Unlearn(アンラーン) 人生100年時代の新しい「学び」』の要約|書籍紹介

タイトル:Unlearn(アンラーン) 人生100年時代の新しい「学び」

著者

柳川 範之  (やながわ・のりゆき)(著)

為末 大 (ためすえ・だい)(著)

▲引用:Unlearn(アンラーン) 人生100年時代の新しい「学び」

 

著者略歴

柳川範之(やながわ・のりゆき)

東京大学大学院経済学研究科・経済学部 教授。

中学卒業後、父親の海外転勤にともないブラジルへ。ブラジルでは高校に行かずに独学生活を送る。大検を受け慶應義塾大学経済学部通信教育課程へ入学。大学時代はシンガポールで通信教育を受けながら独学生活を続ける。大学を卒業後、東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士(東京大学)。

主な著書に『法と企業行動の経済分析』(第50回日経・経済図書文化賞受賞、日本経済新聞社)、『40歳からの会社に頼らない働き方』(ちくま新書)、『東大教授が教える独学勉強法』

『東大教授が教える知的に考える練習』(草思社)などがある。

 

為末大(ためすえ・だい)

1978年広島県生まれ。スプリント種目の世界大会で日本人として初のメダル獲得者。男子400メートルハードルの日本記録保持者(2021年12月現在)。

現在は執筆活動、会社経営を行なう。Deportare Partners代表。新豊洲Brilliaランニングスタジアム館長。YouTube為末大学(Tamesue Academy)を運営。国連ユニタール親善大使。

主な著作に『Winning Alone』(プレジデント社)、『走る哲学』(扶桑社新書)、『諦める力』(プレジデント社、小学館文庫プレジデントセレクト)など。 --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。

 

ファシリテーターの感想・おすすめのポイント

大人にこそ不可欠な「新しい学び」アンラーン 

人生100年時代と呼ばれるようになって、「学び直し」や「生涯学習」という言葉を多くの人が意識するようになりました。

ただ、気になることが一つあります。

こういう文脈で語られる「学び」については、常に「インプット」、つまり「これから何を学ぶか?何を得るか?」だけが重要視されているということです。

学びというのはたしかに、知識や情報をどんどんプラスしていくこと、自分の中に溜め込んで行くこと、それによって思考力を高めていくことです。

しかし、 そのプロセスの中で「インプット」以上に大切なことが、実はあります。

それが「アンラーン」です。

アンラーンは、これまでに学んだ知識や身につけた技術を振り返り、更なる学びや成長に繋がる形に整理し直すプロセスです。

学びによる知識や経験をより活かし、長いスパンで活躍し続けるための、とても重要なステップなのです。

アンラーンをわかりやすく言い換えるとすれば「これまで身に着けた思考のクセを取り除く」です。 

変化に直面したときには、パターン化された「思考のクセ」が柔軟な発想の妨げになったり、自分自身の成長を止めてしまう可能性もあります。 

アンラーンも一つの成長のプロセスではありますが 、けれども学習し蓄積していくことと、忘却しリセットするアンラーンは質的に違います。

まだ何も学んでおらず成功体験もない人間にはアンラーンのインパクトは大きくありません。アンラーンがほんとうに必要なのは、何かの学びを得ていて、それなりに成功体験を持っている人です。 

変化が激しいと言われる時代におけるキャリアアップはもちろん、何歳になっても学び続けるための素養として、「アンラーン」を不可欠な考え方・技術であると感じています。




目次

はじめに 大人にこそ不可欠な「新しい学び」――アンラーン

 

「古い習慣」「見直されないルーチン」が成長を妨げる理由

「結果を出したあと」に僕(為末)が直面した“難しさ"

「アンラーン」は、これから誰でも身につけていける

 

第1章 学びの質を高める方法――「アンラーン」とは何か?

 

なぜ今、「アンラーン」が必要なのか?

コロナ禍という「強制アンラーン」――あなたはどう対応したか?

変化に対応するカギ「インプット前のアンラーン」

成長の新しい武器「アンラーン」の正体

アンラーンを今すぐやったほうがいいのは、どんな人か?

 

コラム 柳川範之にとっての「アンラーン」

 

第2章 実践 アンラーンーー自分を「新しく学べる状態」に整える方法

 

学びの質が格段に上がる「アンラーンの技術」

「固定化した思考」を発見し、解きほぐす方法

思考の固定化から脱却することで「見えてくるもの」

「小さなアンラーン」を習慣化する

日々、小さなアンラーンを実践するための8つの方法

経験や学び――財産にするか、足枷にするかは自分次第

 

コラム 為末大にとっての「アンラーン」

 

第3章 アンラーンを阻む7つの壁と、乗り越え方

「前回と同じ」「これまで通り」がもたらす“かりそめの安心感"

アンラーンを阻む7つの壁

7つの壁を乗り越えるヒント

 

第4章「アンラーン」を人生とキャリアの武器にする方法

 

アンラーンが、「活躍し続けるための武器」である圧倒的根拠

「なんだかうまくいかない」とき、アンラーンが打開策になる

チャンスは「余白がある人」のところに訪れる

 

あとがきにかえて 僕たちがアンラーンに「前のめり」な理由

 

本書の要点

第1章 学びの質を高める方法 ―「アンラーン」とは何か?

 

アンラーン(Unlearn)って、そもそも何ですか?

「学ばない」ということですか?

 

いいえ、「アンラーン」 は「学び」の否定ではありません。

知識や経験をよりよく活かすためには、「思考のクセ」からの脱却が必要です。

そのプロセスこそが、「アンラーン」です。

 

「アンラーン」はアメリカのビジネス界では以前から注目されている概念で、

「学び」を「un」する。つまり、いったん捨て去る、取り外す、忘れる・・・

というようなイメージの言葉です。そうすることで、未来の可能性がより広がっていきます。

 

「アンラーン」とは、完成されたスキルや知識を、あえて「不完全段階」に戻して

可能性を広げることです。




なぜ今、「アンラーン」が必要なのか?

 

急速な技術革新や感染症の拡大など、世界は大きく動いています。

それに従って、新しい言葉や概念が次々と出てきます。



「未来に向かってどう成長していきたいか」を考えるとき、多くの人は、未来だけに目を向けて、そのために最大限のインプットを行い、それを溜め込んで、自分を大きくしようとするものです。

 

でも、実はこの時に大事なのは、いかにインプットするか、ではありません。

それよりも先に、 まずやらなければならないことがあります。

 

それが本書で提案するアンラーンです。

アンラーンを端的にいえば、「思考のクセを、捨てろ!」ということ。

 

本書は、アンラーンによって、まずは自分自身の足元を見つめ直し、今までに身につけてきた「こうなれば、ああなる」的なパターン化された「思考のクセ」を見直して、一旦取り払って、柔軟な発想ができるようにしておくことを目指します。 

 

過去の知識や経験は貴重な資産です。

アンラーンとは、そうした大切な資産を手放すことではありません。

むしろ、それをいつのまにか価値のないものに変えてしまわないように、時代から取り残された”お荷物”にしてしまわないようにするためのメンテナンスだと捉えてください。

 

誰もが持っている「思考のクセ」とは?

 

本書では、それを環境に適用してパターン化した意思決定プロセスのことと捉えます。

「A」という課題が与えられたら、いつでも反射的に「B」という答えを出してしまう。

しかもそれが、 ほぼ無意識に行われている。それが「思考のクセ」です。 

 

ビジネスの現場で、ある人が、効果的なプレゼンのノウハウを身につけて、思い通りに仕事を運ぶという経験をしたとします。おそらくその人は次回のプレゼンでも、前回うまくいったプレゼンを踏襲するはずです。そうやって前例踏襲を繰り返していくうちに、いつのまにか「プレゼンのやり方はこうだ」というパターン化が起こります。

 

しかし、ある日、そのプレゼンではうまくいかないタイミングが訪れます。

議題によっても、 相手によっても、対象とするマーケットによっても、本来、最適解は変わるはずです。

これまでは、パターン化されたもので「たまたまうまくいっていた」としても、永遠にそれが続くということは見込めません。

 

この時必要になるのが、プレゼンの中で無意識的にしていることを意識的に認識し直し、その上で修正する。これがアンラーンです。 

 

変化に対応するカギ「インプット前のアンラーン」

 

ここで大事なことは、これまでにつくりあげてきたものや、 今、手にしているものの延長線上に、当たり前のように未来を設定しない、という姿勢です。

 

未来図を考える時に、「今までに積み上げたものの上に、さらに高く積んでいくことが正しい道だ」という発想から抜け出す必要があります。

 

なぜなら、 それが未来の選択をせばめてしまう致命的な原因になるからです。 




第2章 実践 アンラーン ー 自分を「新しく学べる状態」に整える方法

自らの成長のために、戦略的にアンラーンを使いたいです。 

何から始めればいいですか?

 

アンラーンの最初の一歩となるのは、

自分の思考習慣を疑ってみるということです。

 

「効率ばかりを重視していないか?」

「環境になじむことを最優先にしていないか?」

など、常に思考回路や行動がパターン化されていないか、

あまり考えることなくルーチンとして対応していないか、

自分に問いかけてみてください。

 

まずはパターン化やルーティンかに気づくことが重要です。



学びの質が格段に上がる「アンラーンの技術」

①自分自身の「思考の固定化」に気つく

 

アンラーンの基本動作は、「思考や行動、動作が無自覚のままに固定化・パターン化されていないかを自問する」ことです。

 

自分がパターン化していることへの気づきは、「パターン化以前の柔軟な状態に戻ることにつながります。気づいた時点で新たに思考を組み立て直すことができれば、動作や行動はより最適なものへと変わっていくに違いありません。



②アンラーンすべき対象の見分け方




アンラーンは、やみくもにすべてを片っ端から「いったん忘れて考え直せ」などということではありません。

アンラーンの対象とすべき最大のものは、

日常の判断や習慣に大きな影響を与えている、会社や組織におけるしきたりやルールです。

 

「しきたりやルールへの過剰な適応」は頻繁に起こっています。

企画書の書き方や会議資料の作り方、

会議をセッティングする際の段取り、

決済の仕組みは何らかの申請方法 ・・・。

 

それらは、あくまでも

「その会社(あるいは組織/環境=カルチャー)においては」

という前提条件付きのスキルでしかありません。

あなた自身の個人的なスキルとは分けて考える必要があります。

ここを勘違いしないことが、とても難しいけれど大切なことです。

 

なお本書では、組織や環境に適応するために手に入れたスキルを、その人本来の「スキル」と区別して、「カルチャー対応スキル」と呼びます。 

 

これまでは安定した「カルチャー」の中にいたからこそ、

ルーチン化した発想によってうまく対応できていたのです。 



いざ、そのカルチャーが変わってしまうと、 

自分自身では何をどう変えればいいのかわからない、という状態に陥ってしまいます。

 

だからこそ、平時から、つまり変化がまだ怒っていない状況であっても、

「自分の発想や決定はルーチン化していないだろうか?」と自問することが大切なのです。 




「固定化した思考」を発見し、解きほぐす方法

①無意識にやってること洗い出す



日々の仕事や日常生活を振り返って

「朝のルーチン」や「会議の準備」と

時間帯や業務種別のテーマを決め、

その時にやっていることを全て書き出してみる。

 

その中から自動化・無意識にやっていること

(深く考えずに自然とやってること、身体が半ば自動的に動くこと)をピックアップする。 

 

アンラーンという観点に立って考えるという姿勢を今後に持つに当たっては、

時折で構わないので「このルーチンが、ほんとうに『今』も最適なのか?」ということは、見直した方がいいと思います。 

 

とくに、状況が少し変わった時(転勤/昇進/結婚/引っ越しなど)は見直しのチャンスです。また、「なぜだが分からないけれど、最近、どうもうまくいかなくなっている」と感じ始めたときにも、「無意識」に行っているルーチン行動の洗い出しが必要です。

 

アンラーンとういう考え方が身についてくれば、センサーがきちんと働いて、

「あれ?何だか会わなくなっているかもしれない」と自分で気がつくことができ、起動修正していけるようになりますが、そこにいたるまでは意識的にそれを行う必要があります。

 

だからこそ、自分自身が現時点では何ら問題を感じていないことに関しても、あえて見直すということがとても重要になるのです。

 

②「いつも」「これまでは」「通常は」の思考にとらわれていないかをチェックする。



①で書き出したことについて、

「なぜそうするのが他に比べてベターなのか? 」

「それが正しいという理由は何なのか?」を、

第三者を説得できるような客観性をもって

言葉で明確に説明してみる。

 

「いつも」「これまでは」「通常は」「うちは」「こういう場合は」などの前例をそのまま踏襲する「前例至上主義的な思考」にとらわれていないかどうかを、チェックしてみましょう。 

 

新しい企画が持ち上がった際に

「うちの専門ではない」

「これまでに例がないからできない」

「通常はこうしているので、今回も変える必要はない」

このようなセリフを言ったことはありませんか? 

 

「なぜ、専門じゃないことやらないの?」

改めてその理由を突っ込まれたとき、納得のいく説明はできますか? 

 

もし全て明確で、自分も相手も心から納得できる答えを出せるなら、

それはアンラーンの対象ではありません。

 

つまり逆を言えば、それができないようならアンラーンすべきタイミングだということです。この「言語化」というのが、アンラーンを考える際に非常に大切なポイントとなるような気がします。 

 

なぜなら、 この先の未来のどこかで、「これまで」の道から外れてしまうことが、きっとあるからです。



思考の固定化から脱却することで「見えてくるもの」

 

どこかのタイミングで、あるいは定期的に思い切って 「枠(パターン)を外す」ことをやってみようというのがアンラーンの提案です。

 

枠の存在に気づき、それを思い切って取り外して見ることができれば、

自分本来の思考や、「今の」 自分にとって「ほんとうに」大切なことが見えてきます。

 

ただし、アンラーンして見直した結果、やはり変わらずに今後も行動するということは、もちろんあっていいのです。

 

アンラーンの目的は、行動を変えることそのものではなく、無意識にパターン化していることが「今」の状況の中で、「今」の自分にとって本当にベターなのかどうかを再認識することだからです。 



経験や学び――財産にするか、足枷にするかは自分次第

「学びのチャンス」「アンラーンのヒント」を逃さないために

 

何歳になってもアンラーンを実践し、学び続けていくにあたって重要なことがあります。

それは、「人の話を最後までちゃんと聞く」ことです。

 

人の話を聞いてるつもりでも、無意識のうちに、勝手に「これは大事」「これはいらない」と自己判断で整理してしまうのです。

そのせいで、せっかくの新しい知見がうまく着地してくれません。

 

こういうケースの多くは、過去の成功パターンを無意識のうちになぞり、無意識の自己判断が働いてしまってることに起因します。 

 

もちろん、 過去は必ずしもマイナスに働くわけではありません。ビジネスシーンの中で「 あの時の経験が活きた!」 ということはたくさんあるでしょう。

 

ここで留意しておきたいのは「結果として、過去の経験が活きた」はあるけれど

「無理やりに活かそうとして、うまくいった」はない、ということです。

 

過去から上手に距離を取ることが、アンラーンし学び続けるための大切な態度です。



第3章 アンラーンを阻む7つの壁と、乗り越え方

アンラーンに難しさや心地の悪さを感じます。

「アンラーンできている状態」とは、

どんなイメージでしょうか?

 

アンラーンできている状態を改めて整理すると、「それまでに無雑作に身につけた知識や技能を整理し直し、これからも新しい知識や技能を身につけていくために、できるだけ余計なものを外してシンプルに整えることができている状態」といえます。

 

無意識のクセへのアプローチの過程では「難しさ」や「心地の悪さ」を感じる場合も珍しくありません。ここでは、アンラーンを阻む思考についての理解を深め、より質の高いアンラーンの実践を目指しましょう。 




アンラーンを阻む7つの壁

壁①:「このままでいいんじゃないか」

壁②:「今あるものを手放したくない」

壁③:「せっかくここまでがんばってきたのだから」

壁④:「自分のやり方でやりたい」「他人には分からない」

壁⑤:「あの人の言うことなら間違いない」

 

壁⑥:「だって、これが好きなんだもん」

壁⑦:誰の中にも潜む様々な「バイアス」

 

どんなに「変化」が叫ばれていても、「今の状態が好きだから何も変えたくない」。

それは、一見とても素晴らしいことのように思えます。

 

ただ、1つ気になることがあります。

その「好き」は、本物の「好き」でしょうか?

 

壁⑥:「だって、これが好きなんだもん」を紹介しますと

 

確認したいのは「好き」と「慣れているから心地いい」ことの線引きが

しっかりできているかどうかということです。

「すっかり慣れていて快適だから」これも、ある種の「パターン化」現象です。

 

「慣れていること」から、いったん離れてみる。これは、自分の本来の気持ちに気づくためにとても重要なことです。

 

壁⑦:誰の中にも潜む様々な「バイアス」

 

バイアスとは、「偏り」「かさ上げ」「思い込み」というような意味です。

僕たちが考えたり判断したりすることには、たいていの場合、このバイアスがかかっています。これは避けようのないことで、バイアスを完全になくすことは不可能です。

 

じゃあ、どうすればいいのか。

それは、「自分の中にあるバイアスを知る」ことです。

どんなバイアスなのかを細かく正確に知ることは難しくても、

「自分にもバイアスがかかっている」ことを認識しておくことです。

しかも、「なかなかそれに気づくことができない」ことを理解しておくということです。

その認識があるかどうかで、アンラーンの成果に大きな違いが出ます。



7つの壁を乗り越えるヒント

 

自分の中に「優秀なコーチ」を持つ

 

自分自身の思考のクセに気づくのが難しい以上、

自分1人でアンラーンを実践することは非常に困難です。



かといって、自分のキャリアや未来と真剣に向き合ってくれる他人というのは、

そうそういるものではありません。

 

やはり理想は自分で完結すること。

そのためには、自分の中に「自分を導いてくれるコーチ」を持つしかありません。

 

では、そのコーチにはどんな役割を担ってもらえばいいのでしょうか。

スポーツ界では、アスリートに対してコーチが行っていることは、大きく分けて次の三つです。

いちばん大切なのはモチベーターとしての役割です。

選手のやる気を引き出すこと。

 

二つ目は質問者としての役割です。

質問によって選手自身が

「自分が何をしたいのか」「何を課題と感じているか」をクリアにしていきます。

 

三つ目は技術の伝達です。

選手に対してより上達するための技術を伝えると同時に、

選手が今どのように働いているかをフィードバックするという役割です。

 

自分が自分のコーチになってコーチングを行うというのは、

この三つを自ら行うということです。

このとき大事なのは、客観視できるかどうかということ。

つまり、自分自身の中に優秀なコーチを持つというのは、

「自分自身を他人のようにみるクセをつける」ということなのです。

 

モチベーターとしては、「どこで」「何をして」「どんな体験をして」「誰と会う」と自分のやる気が出るのかを知って、それを積極的に自分に対して提供していきます。

 

質問者の役割は、自分自身に対していい質問を浴びせることで果たしましょう。

僕(為末)はかつて、試合のあとにいつもこう問いかけていました。

「この試合で、僕はいったい何を学んだのか?」

この質問について真摯に考えることによって、ただの反省で終わることなく解決策を見出すところまで自分を連れていってくれました。

 

技術の向上において、大切なのは、フィードバックです。

自分がやったことを常に振り返る。

今自分はどう見えているのかを、時折、周囲に聞いてみるということで客観的な視点が手に入ります。



第4章「アンラーン」を人生とキャリアの武器にする方法

 

アンラーンしないとどうなるの?

 

ビジネスパーソンの場合、いつのまにか仕事が本質から外れ、

時代遅れで形式的なものになっていきます。

 

アンラーンは、自分の学びや経験を整理し直す機会です。

自分を時代に合わせてチューニングしなおすということでもあります。

それをせず、ただキャリア・経験を積み重ねても、

この先にあるのは「先が見えない不安」と「行き詰まり感」です。



閉塞感や不安、プレッシャーばかり感じるようになって、

未来にワクワクできなくなってきます。 

 

アンラーンが、「活躍し続けるための武器」である圧倒的根拠

「適応しすぎると成長が止まってしまう」 !?

 

人間の特徴として、適応しすぎると成長が止まる、ということがいわれています。

 

その環境にどっぷり浸かり続けていると、

ミスマッチや思考のクセにも自然と適応してしまって、

それが当たり前のように感じられてしまうものなのです。

 

アスリートは、「クロストレーニング」といって、

一年に一度、自分の専門とは違った競技のトレーニングを数週間行います。

自分の競技から一旦離れて違う競技を行うことで

本業の競技が客観的に見えるようになり、 より本質をとらえやすくなるからです。

 

定期的に本業とは違うことに本気で取り組んで、

「新たに身につけたいこと」に適用しようとすることが、

これまでは目覚めていなかった別の能力を向上させ、

結果としても「元々やっていたこと」に良い影響を及ぼします。





「なんだかうまくいかない」とき、アンラーンが打開策になる

 

移動したら、とたんに使い物にならなくなった

 

以前の部署ではそれなりに業績をあげることができていたのに、

新しい環境では何もかもがうまくいかない。

そんなとき、真面目な人ほど「自分の能力が足りない」と感じて

深く沈み込んでしまいます。

 

でも、実際は、能力不足なのではなくて、能力の方向性が適応していないだけです。

方向性が適応していないというのは、余計な「クセ」が邪魔をしているということです。

 

「こうすべき」という思いが強い人ほど取り残される

コロナ禍の状況は、このような頭の中のクセを取り除いて、ニュートラルなポジションから新たに考え始めることの必要性を、多くの人に実感させることとなりました 。

 

特に、これまで、「会社員はこういうふうに行動すべき」「サービスはこうあるべき」 など、「べき」で物事を考えてきた人には、その衝撃は大きいと思います。 

出社することは絶対に必要なのか、実際に会って話さないと信頼関係は深まらないのか、今日と同じことをしていて明日は大丈夫なのか。

こうした、 僕たちが「当たり前」と思っていたことについて、本当にそうなのかと問い直してみる。

 

既存の概念にとらわれて問題意識を持つことさえ思いつかない「現時点での当たり前」がたくさんあります。

それに気づく力を、「アンラーン」という新しい道具を使って、 僕たちは今度こそしっかりと鍛えていくことが必要なのだと思います。



「変化し続ける」世の中で、強くしなやかに生きるために

どこか一つの安定した場所にとどまっていれば安心、 

というのはもはや幻想でしかありません。



あるいは、何か一つの事を脇目も振らずにやり続けることで

成功を得られる時代は過去のものです。

 

だからこそ、コロナ禍を通して気付かされた「変化」や「リセット」を、コロナ禍の収束とともに忘れてしまうのではなくて、これから先の未来を、 今までよりもう少しスムーズに、よく社会に対してチューニングされた状態で生きていくために活かしましょう。

 

「アンラーン」を身につけ、習慣化することで、

いつでも自分をニュートラルに戻し、思考の固定化を防ぐことができます。 

 

変化に柔軟に対応するだけではなく、

環境の中でこれまでの経験や知識を適切に活かして、

難しいことに挑戦したり、既存の取り組みに新しい視点を加えたりすることで、

飛躍していく発想を持てるようになるはずです。

 

そしてそのときには、自らが能動的に「変化」を起こしていく。

「可能性の未来」はそうなったとき、はじめて、無限に広がっていくでしょう。




あとがきにかえて  僕たちがアンラーンに「前のめり」な理由



 

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