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「ついやってしまう」体験のつくりかたの要約|書籍紹介

タイトル:「ついやってしまう」体験のつくりかたー 人を動かす「直感・驚き・物語」のしくみ

著者:玉樹真一郎

▲引用:「ついやってしまう」体験のつくりかた

著者略歴

1977年生まれ。東京工業大学・北陸先端科学技術大学院大学卒。プログラマーとして任天堂に就職後、プランナーに転身。全世界で1億台を売り上げた「Wii」の企画を担当。2010年任天堂を退社。同年、青森県八戸市にUターンして独立・起業し「わかる事務所」を設立。全国の企業や自治体などで、コンセプト立案、効果的なプレゼン手法、デザイン等をテーマとしたセミナー、講演、ワークショップ、プレゼン等を年60回以上おこなう。また、コンサルティング、ウェブサービスやアプリケーションの開発等を行いながら、人材育成・地域活性化にも取り組む。2011年5月より特定非営利活動法人プラットフォームあおもりフェロー。2014年4月より八戸学院大学・地域経営学部特任教授。2017年4月より三沢市まちづくりアドバイザー就任。

ファシリテーターの感想・おすすめのポイント

夜道を一人で歩くとき、ついオバケのことを考えてしまうことはありませんか?

もし本当にオバケが出たら・・・助けを呼ぶ?110番?戦う?

激しく動く心は、冷や汗や心臓の鼓動というかたちで、体の働きすら変えてしまいます。

ゲームで遊んでいても同じようなことが起こります。そもそもゲームは虚構、どれだけゲームの主人公がピンチだろうと 現実の人生には何ら影響はないのに、ハラハラして興奮して、悔しくて楽しくて、と、確かにゲームは心を動かします。

オバケとゲーム、その共通点は 私たちの心を動かし強烈な体験をもたらす ということです。

夜道やゲームのように、いとも簡単に人の心を動かせたらいいのに... そう思いませんか?

しかし現実はというと

  • 例えば子育て。 どうして子供はいうことを聞いてくれないんだろう
  • 例えば会話。  一生懸命伝えているのにどうして私の話はわかってもらえないんだろう
  • 例えばビジネスの現場。どうしてよいものが売れないんだろう

 

私たちはいつだって心を動かしたいと思っています。

あなたにとって「心を動かしたい人」は誰ですか?

仕事上のお客さん?仕事仲間?家族や友人?

この本では、あらゆる人の心を動かす方法を紹介します。

例えばこんな感じです。

  • 「つい」やりたくさせてしまう
  • 「つい」熱中させてしまう
  • 「つい」誰かにいいたくさせてしまう

 

人の気持ちを変えること、それが「体験デザイン」

これらの「つい」こそが、体験デザインの持つ力です。

さあ、心を動かす体験デザインの旅を、はじめましょう。

目次

第1章  人はなぜ「ついやってしまう」のか

  •      直感のデザイン

 

第2章  人はなぜ「つい夢中になってしまう」のか

  •      驚きのデザイン

 

第3章  人はなぜ「つい誰かに言いたくなってしまう」のか

  •      物語のデザイン

 

終章  私たちを突き動かす「体験→感情→記憶」

  •      体験デザインの正体

 

本書の要点

  • 第1章  人はなぜ「ついやってしまう」のか
  • 第2章  人はなぜ「つい夢中になってしまう」のか
  • 第3章  人はなぜ「つい誰かに言いたくなってしまう」のか
  • 終章  私たちを突き動かす「体験→感情→記憶」

 

要約

第1章  人はなぜ「ついやってしまう」のか

        直感のデザイン

この章では、世界一売れたゲームとしてギネスブックに掲載されていた『スーパーマリオブラザーズ』という歴史的作品の体験デザインを分析しながら、ゲームがどのように直感的な体験をつくりだしているのか、そして「ひとはなぜゲームを遊ぶのか」について書かれています。

クリボーに出会ったプレイヤーが感じる奇妙なこと 

クリボーは敵なのにも関わらずプレイヤーを喜ばせるのはなぜか

 心の文脈こそが体験の意味を決める

直感のデザインの構造

  •        仮説 自発的に「○○するのかな?」という仮説を立てる
  •   試行 自発的に「○○してみよう・・・」と試しに行動を起こす
  •   歓喜 自発的に「○○で正解だった!」と歓喜する

 

わずか数秒でプレイヤーの心は実にこれだけ動いていた

自発的に学んだことなら一生信じられる

「直感的にわかる」=面白い

おもしろそうと思わせるよりも大切なこと

  •   脳はいつも仮説を作りたがっている
  •   アフォーダンス シグニファイア  
  •   体験デザインの基本戦略は直感デザインの連続
  •  

 ・シンプルで簡単な体験で「直感」させる

 ・人々の共通点を利用する脳と心の性質性質

  •   ①脳と心の性質
  •   ②共通の記憶

  

2.第2章  人はなぜ「つい夢中になってしまう」のか

       驚きのデザイン

この章では、マリオと並んで日本を代表するゲーム、といわれる不朽の名作、「ドラゴンクエスト」の体験デザインを分析しながら、なぜドラクエは専門用語や独特なルールが飛び交う複雑なゲームにもかかわらず、眠気を我慢してでも遊びが続けられるのか、その秘密が書かれています。

ゲームの教科書としてのドラゴンクエスト

  •   善なる勇者が悪を倒す剣と魔法の物語 
  •   計算されつくしたデザイン、ドラゴンを倒す冒険の旅というシナリオ
  •   王道のゲーム
  •  

      それなのに・・・

 なぜ「ぱふぱふ」なのか

  •    剣と魔法のファンタジーに唐突に現れる「ぱふぱふ」
  •    ぱふぱふ自体の説明はないが、セクシーに誘惑するもの

 

ドラクエでは、勇者がコマンドの使い方などの専門知識などの大量のルールを学ばな   ければ遊べない。例えるなら休み時間なしで勉強させられているようなもの

  •    直感のデザインの連続は疲れと飽きを生む
  •    疲れと飽きを払拭するのが「ぱふぱふ」の役目

   

 プレイヤーの予想を外すという体験デザイン

   予想はあたり続けても外れ続けてもいけない。その組み合わせが重要。

 きっかけは、ふたつの思い込み

   驚きを生む原動力は人々の思い込み

  •    ①前提への思い込み→このゲームは剣と魔法の冒険物語だ
  •    ②日常への思い込み→タブーは現れないはず
  •  

   そこに二つの思い込みを意図的に裏切ることが現れる

  •    非日常で予想外なもの
  •    「パフパフしてほしいなら50ゴールドよ」という誘惑が現れるから驚く

 

 驚きのデザインの構造

  •    誤解  自発的に「○○するのかな?」という誤った仮説を立てる。
  •        (ただし」プレイヤーは仮説があっていると思い込んでいる)
  •    試行  自発的に「○○してみよう」と試しに行動を起こす。
  •         (ただし、プレイヤーは試行があっていると思い込んでいる。)
  •    驚愕     自発的に「○○はまちがいだった!」と驚く。
  •        (ここで初めてプレイヤーは仮説・試行が誤りと気づく。)

 

誤解→試行→驚愕 は、直感のデザインの連続で疲れや飽きがたまったプレイヤーに   対して用いることで、疲れや飽きを拭い去り、より長時間の体験をもたらすために使   われている。

 10種のタブーのモチーフ 

  •    前提への思い込みにはうそを伝え続ける必要があり時間がかかる。 
  •    そこで前提への思い込みのかわりとなるのが「タブーのモチーフ」だけで驚かせる方法も用いる。
  •     本能的に求めるポジティブなモチーフ:性、食、損得、承認,
  •     誰もが忌み嫌うネガティブなモチーフ:けがれ、暴力、混乱、死、
  •     射幸心と偶然のモチーフ、プライベート
  •    

   例:カジノ

努力を重ね学びながら冒険しようとするプレイヤーの真面目さをカジノは意図的に奪う。あえて冒険を一時停止させるデザインだが、最終的には、冒険へとカムバックする。しっかり遊んでしかも手には強い」装備品やアイテムがある状態で自然と冒険に旅立つように仕組んである。ゲームのカジノだからこそ、確率を調整し、怪しまれない程度の確率でプレイヤーに勝たせ、心地よく冒険へと送り出してくれる。

  •   コンテンツの基本は直感と驚きの組み合わせ
  •   ゲームは必需品ではない。だから驚きが必要だ。

 

第3章  人はなぜ「つい誰かに言いたくなってしまう」のか

  •      物語のデザイン

  

これまでの章で、直感のデザインと驚きのデザインという2つの体験デザインを組み合わせることで直観的かつ飽きることのない長時間の体験を構成できるということがわかった。しかし、ゲームで遊ぶなんて時間の無駄、人々を堕落させる」悪魔などという言論も堪えない。そこで必要となるのが「物語のデザイン」。この章では、体験の核心となる「物語のデザイン」について書かれている。

物語はどんな形をしているのか?

そもそも物語ってなんだろう?

名だたるゲーム賞を総なめにした2作、『ラストオブアス リマスタード』と『風の旅  ビト』

ラストオブアス あらすじ

人間に取りついてゾンビ化させる謎の菌でパニックになるアメリカで、感染により娘   をなくした主人公ジョエルが、なくなった娘と同じ年で、世界でただ一人菌に耐性を   持つ少女と旅をする 

  •   ・登場人物のセリフと映像だけで情報を伝えている

 

風の旅ビト あらすじ

見たことのない服に身を包んだ主人公が、唐突に、誰もいない砂漠の真ん中で目を覚   まし、遠くに見える山の頂きを目指して歩き始める

  •   ・ゲームの中に文字言葉自体が出てこない

 

  ⇒物語は文字で表現しなくても成り立つ

  •    物語(ナラティブ) 物語内容(ストーリー)何があったか
  •              物語言説(ディスコース)どう伝えるか

 

  •    ・ゲームは文章、音声、映像と同じく、物語の作り方の一つ / ナラティブ

 

 断片的に語る、波をつけて語る、未来に語る

 物語の伝え方 3つのモチーフ    

  •     3つのモチーフはすべて、プレーヤーが持つ物語る本能を刺激する。
  •     五感と思考を駆使して物語を語る脳を翻弄するのが第一ステップ。

 

  ■ 環境ストーリーテリング 

環境の中に配置された情報をプレイヤーが自発的に集めながら物語を構築していく  

目、鼻、耳といった無数のセンサーからかき集められた断片的な情報を統合し、これ   までの人生と照らし合わせながら「結局のところ、目の前で起きているのは何なの    か」という意味を推測し、文脈をつなぎ、あなたの人生という物語を語る、それが脳   の本質的な役割。

 脳は物語を語る臓器 脳には「物語る本能」がある

   個々のシーンの並べ方も重要

  ■ テンポとコントラスト

個々のシーンの情報量、能動的/受動的 という二つの要素で波を作っている。

  • ・疲れや飽きをかわすため(驚きのデザインと似た効果)
  • ・物語る本能が来なう未来予想をシンプルで簡単にするため(直感のデザイン と似た効果)

  

  ■ 伏線   

流れる時間の上に適切な順番で体験を並べる

「あのシーンのあれってそういう意味だったのか」とあとから真意に気付かせる伏線   というデザインは物語の理解が一気に進む快感を生むための装置  

   体験の意義

主人公がどれだけ成長してもプレーヤー自身には一切なんの影響もない。

  •   架空の物語 プレイヤーが成長するという体験を創り出す手段に過ぎない
  •   プレイヤーの物語 ゲームという体験を通してプレイヤー4自身がたどる物語
  •            
  •   プレイヤーを現実に成長させるために、どんな架空の物語を描けばいいのか
  •   

 成長のモチーフ1「ない」を集める

穴があると埋めたくなる  

   例:12 45678  思い浮かべる数字は3で9ではない

  同じ体験を何度も繰り返し成長 

   例:ポケモンを1匹づつ捕まえる

  如何に飽きさせずに反復させるかという体験デザインが重要

   例:ラジオ体操 66回手を挙げるのはやる気が起きないがリズムに乗ればできる

  収集、反復、リズム

 時間は目に見えないし、問題は終わらない

  問題が未解決のままであれば、緊張感を維持してもらえる。 間を開けない。

   例:テトリス

 〇収集と反復

  穴を提示する、全体像を予感させる、リズムをつける、問題を未解決のままにする

 成長のモチーフ2 選ぶことで得られるもの

 成長をもたらすのにうってつけの体験

 〇選択と裁量

  •    自らの感覚をたよりに選択・裁量し、自分なりの冒険を組み立てていく
  •    収集反復にも、選択裁量にも難易度調整の機能がある
  •    ちょうどよい難しさ
  •  

ゲームはプレイヤーに「失敗はお前のせいだ」と感じさせる。ゲームはフィードバッ   クをかえすので、プレーヤーが自らの選択や裁量の意味を把握し「うまくやった」    「失敗した」という実感が得られる。 

   ゲームはインタラクティブなメディア  

 成長のモチーフ3  旅の同行者

  •  客観を主観へと入れ替える
  •  成長の果てでなければたどり着けない体験

 

 〇翻意と共感   

  •    ラストオブアスの同行者エリー 
  •    風の旅ビトの謎の同行者

 

 どちらもプレーヤーをいらだたせるようにふるまう

①主人公に強烈な問題を引き起こし、徹底的に不幸にして痛めつけるという残酷な     デザインを行い、目の前の人の感情を自分のことのように感じる心の動きをつかさ    どるミラーニューロンで主人公に興味を持たせ、主人公と同じ思いをもたせる。

②面倒な同行者を登場させ、プレーヤーが市人口と同様に主観的に「同行者。はらがた   つなあ」と感じさせる。これでプレーヤーと主人公の気持ちの向きが揃う。

③同行者を死や絶望の瀬戸際まで追い込むことでプレイヤーは憎しみを超えて共感し、   成長する。

〇意思

   ラストオブアス:ワクチンはエリーの命と引き換え 

耐性を持つエリーの脳からワクチンを作るためにエリーの脳を摘出しようとす      る意思らを殺すか、助けるか

   風の旅ビト

たどり着いた山頂にある光があふれる谷と一本道 その光に入ったら何が起こる     か未知 旅を終わらせるか、立ち止まるか

  •    命のやり取り 未知の体験
  •    プレーヤー自らが意思をもって物語を描き始める 解釈の余地
  •    

 なぜ物語はスタートに戻るのか

  •    ラストオブアスも 風の旅ビトもゲームのスタートに戻る
  •    同じ環境で比較させて成長を認識させる
  •    過去の自分と今の自分を比較することで成長を実感できる
  •  

 物語のデザインの構造 / 体験と記憶

  •    翻弄 物語を理解しようとするプレイヤーを翻弄し、物語らせる
  •    成長 物語中の主人公同様、プレイヤーを成長させる
  •    意思 プレイヤー自身の意思で運命を切り開かせる
  •  

旅と同じように、ゲームは体験そのものを通して生まれる」プレーヤー自身の」物語にこそ意義があります。

終章  私たちを突き動かす「体験→感情→記憶」

 体験デザインの正体

 3つの体験デザインの振り返り  

  •   直感のデザイン(仮説→試行→歓喜)
  •   驚きのデザイン(誤解→試行→驚愕)
  •   物語のデザイン(翻弄→成長→意思)
  •  

 ゲームは無数の体験デザインを通して、プレーヤーの感情を動かしている。よろこび・いかり・かなしみ・たのしさ。幾多の感情を一手ずつ繰り返し、そのときそのときの文脈をつくりながら、プレイヤーの心を動かしていく。それが体験デザインの正体。

心が動く他県を潜り抜けた結果、プレーヤーにはゲームで遊んだ思い出という形で記憶が残るだろう。

  •  強く感情が動くと記憶に残る。
  •  体験→感情→記憶 という流れが常に私たちの人生を突き動かしている。

 

 「いかに心が動く体験を作るか」が鍵。体験デザインは様々な職業や専門性を持つ人々が集い、協力しながら研究すべきメタ的・学術的な領域になるであろう。

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「ついやってしまう」体験のつくりかた

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