『イノベーションへの解』の要約|書籍紹介
タイトル:イノベーションへの解
利益ある成長に向けて
著者
クレイトン・クリステンセン (著)
マイケル・レイナー (著)
▲引用:イノベーションへの解
著者略歴
クリステンセン・クレイトン
ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)教授。主な研究・指導分野は、技術イノベーションのマネジメントと新技術のための新市場の開拓。HBS教授陣に加わる以前、MITの教授らとCPSコーポレーションを設立し、会長兼社長として経営に携わる。またレーガン政権でホワイトハウス・フェローを務めたほか、ボストン・コンサルティング・グループでの勤務経験を持つ。1997年刊の『イノベーションのジレンマ』でグローバル・ビジネス・ブック賞をはじめ、数々の学術賞を授賞。世界のリーディング・カンパニーの経営陣に対するコンサルティングを行っている。ブリガムヤング大学より経済学士号、ローズ奨学生として学んだオックスフォード大学より経済修士号(MPhil)、ハーバード・ビジネス・スクールより経営学修士号(MBA)および経営学博士号(DBA)を取得している
レイナー・マイケル
総合コンサルティング会社デロイトのシンクタンク部門、デロイト・リサーチ社ディレクター。電気通信、メディア、コンピュータ・ハードウェア、コンピュータ・ソフトウェア、金融サービス、エネルギー、ヘルスケアなどの産業分野においてコンサルティングを行う。また、カナダ・オンタリオ州ロンドン市のリチャード・アイヴィー・ビジネススクール教授として、MBAおよび管理者教育プログラムで教鞭を執る。主な関心分野はイノベーションと企業戦略。イノベーションを通じて持続的に成功する方法や、不確実な競争環境で絶えず変化する需要に対処し開拓する方法について研究している。ハーバード大学から哲学士号、アイヴィー・ビジネススクールから経営学修士号(MBA)、ハーバード・ビジネス・スクールから経営学博士号(DBA)を取得している
ファシリテーターの感想・おすすめのポイント
目次
第一章 成長という至上命令
イノベーションはブラック・ボックスなのだろうか
イノベーションを方向付ける力
予測可能性は優れた理論からやってくる
本書の概要
第二章 最強の競合企業を打ち負かす方法
破壊的イノベーションのモデル
破壊的イノベーションの実例
成長を生み出す上で持続的イノベーションが果たす役割
破壊は相対的な概念である
破壊的ビジネスモデルは貴重な企業資産である
二種類の破壊
アイデアを破壊的イノベーションとして形成するための三つのリトマス試験
付録:図2-4に記載した企業の破壊的戦略の概要
第三章 顧客が求める製品とは
仰々しい市場細分化
状況ベースの区分を通じて、破壊の足がかりを得る
破壊を持続させるためのイノベーション
なぜ逆効果を招く方法で市場を細分化するのか
顧客はやりたくない用事には手を出さない
第四章 自社製品にとって最高の顧客とは
新市場型破壊
無消費への対抗が難しいのはなぜか
新市場の顧客に到達するには、破壊的チャネルが必要なことが多い
第五章 事業範囲を適切に定める
統合するか外注するか
製品アーキテクチャとインターフェース
「十分でない」世界には相互依存型アーキテクチャを
オーバーシューティングとモジュール化
相互依存型設計からモジュール型設計へ
再統合の推進要因
状況に調和したアーキテクチャ戦略をとる
ちょうど良いときにちょうど良い場所にいること
第六章 コモディティ化をいかにして回避するか
コモディティ化と脱コモディティ化のプロセス
コア・コンピタンスとROA最大化のデス・スパイラル
「十分良い」状況と「十分でない」状況、ブランドの価値
このモデルを通して自動車産業の将来を展望する
付録:魅力的利益保存の法則
第七章 破壊的成長能力を持つ組織とは
資源、プロセス、価値基準
能力の移動
破壊的な新事業に適した組織を選ぶ
新しい能力を生み出す
資源、プロセス、価値基準を買収する
過ちの代償
第八章 戦略策定プロセスのマネジメント
二種類の戦略策定プロセス
戦略策定プロセスでの資源配分が果たす重要な役割
戦略策定における資源配分
戦略策定プロセスを事業開発段階に合わせる
根本的に異なる二つの戦略プロセスを運営する
戦略プロセスにおける三つの重要なポイント
第九章 良い金もあれば、悪い金もある
不十分な成長から生じるですデス・スパイラル
成長投資のジレンマをどう乗り越えるか
潜在的失速点を知るためには、財務成果ではなくパターン認識を用いる
良い金が悪くなる前に投資方針を立ててしまう
第十章 新成長の創出における上級役員の役割
持続的世界と破壊的世界の橋渡しをする
経営陣関与の理論
お節介の大切さ
経営幹部なら誰にでも破壊的成長を先導できるのか
成長エンジンを作り出す
終章 バトンタッチ
本書の要点
優良企業におけるイノベーションがはらむ落とし穴を実証し、衝撃を与えた名著『イノベーションのジレンマ』待望の続編。イノベーション論を深化させ、研究者らの間に一躍広まったクリステンセン教授の理論のさらなる展開を本書に見ることができる。
前作では破壊的な技術革新を受けて優位を脅かされる側の企業に置いていた視点を、今回はその技術革新で新事業を構築し、優位企業を打ち負かそうとする側に置いている。この「破壊される側ではなく破壊者となって」という立場が本書の特色である。そこでは技術革新にかかわる実務者にとって、より明快な行動指針が得られるだろう。実際に、どうすれば最強の競合企業を打ち負かせるのか、どのような製品を開発すべきか、もっとも発展性のある基盤となるのはどのような初期顧客か、製品の設計、生産、販売、流通のなかでどれを社内で行い、どれを外部に任せるべきか…というような、きわめて具体的な意思決定の「解」が提出されている。
「無消費への対抗」など、次々に展開される破壊的イノベーションの局面は興味深く、そこでのマネジャー個人の行動やモチベーションまでカバーする理論はマネジメントの視野を確実に広げてくれる。事例となる企業や市場は、IBM、ソニーなどの常連から「クイック・サービス型レストランチェーンのミルクシェーク」などまで多彩で読みごたえがある。日本企業に「破壊」される米国市場を取り上げてきた著者が言う、「日本の経済システムは構造的に新たな破壊的成長の波の出現を阻害している」という提起も示唆的だ。さらなる読解が期待できるテキストとして、また、イノベーションやマネジメントの指南書として必携である。(棚上 勉氏より)
要約
第一章 成長という至上命令
金融市場は成長せよ、ますます早く成長し続けよ、と
経営者を容赦なくあおり立てる。
この至上命令を全うすることは、果たして可能なのか。
投資家の成長要求を満たす見込みのあるイノベーションを推進すれば、
逆に投資家には受け入れがたいリスクを負うことにならないのか。
ジレンマの打開策はあるのか。
本書のテーマは、ビジネスにおける新たな成長を見出す方法である。
成長がなぜ重要かと言えば、
成長する企業だけが、株主価値を創造していくことができるからだ。
株式市場は成長を要求する。
だが、どうすれば成長できるのか分からない。
現に成長を遂げつつある企業でさえ、
成長という至上命令からは免れない。
成長のペダルをどんなに速く漕ごうとも、
十分なスピードは得られないのだ。
それは「企業の予測成長率を株式の現在価値に織り込む」という 、
投資家の厄介な性向のせいである。
つまり、たとえ中核事業が力強く成長していても、
株主の予測より早いペースで成長しない限り、
市場平均を上回るリスク調整後のリターンを将来的に実現できないのだ。
イノベーションを方向付ける力
イノベーションのプロセスを予測可能にするには、何が必要だろう。
事業構築に携わる人々に作用する力を理解することが、
予測可能性をもたらす。
つまり、マネージャーが何を決定し、
何を決定できないかをコントロールする強力な力である。
「イノベーションへの解」は、
新事業を狙いどおりに発展させ、
破壊される側ではなく破壊者となって、
ライバルの実績ある優良企業を最終的には
破滅に追い込まなければならないマネージャーに指針を与える、
さまざまな理論をまとめたものだ。
狙い通りに成功するためには、破壊者は優れた理論家でなければならない。
また成長事業を破壊的な事業として形成するためには、
重要なプロセスや意思決定をすべて、
破壊的イノベーションの状況に合わせて調整する必要がある。
利益ある成長事業の構築とは、あまりにも膨大なテーマだ。
そのため、本書では成長を生み出すためにあらゆるマネージャーが
下さなければならない、9つの意思決定に的を絞った。
これからの各章では、成功確率を高める決定を導く、様々な理論を取り上げる。
第二章 最強の競合企業を打ち負かす方法
「イノベーションのジレンマ」では、
イノベーションの状況に基づいて、
持続的イノベーションと破壊的イノベーションを特定した。
持続的イノベーションの状況、
つまり企業が魅力ある顧客に高く売れる、
より良い製品を作ることで競い合う状況では、
ほぼ必ず既存企業が勝つことが分かった。
これに対して破壊的イノベーションの状況、
つまり新規顧客や魅力のない顧客群に安く売れる、
シンプルで便利な製品を商品化することが課題である状況では、
新規参入者が既存企業を負かす確率が高い 。
したがって、新興企業が実績ある競合企業を攻撃する最良の手段は、
もちろん、破壊的戦略を取ることだ。
破壊的イノベーションには、業界リーダーを無力にする効果がある。
大手企業には、持続的イノベーションを支えるために設計され精緻化された
資源配分プロセスがあるため、構造上破壊的イノベーションに対応できないのだ。
つねに上位市場に向かうように動機付けられている一方で、
破壊者にとって魅力的な、
新市場やローエンド市場を防御する意欲はほとんどない。
本書では、この現象を非対称的なモチベーションと呼ぶ。
このモチベーションの非対称性こそが、
イノベーションのジレンマの根幹をなしており、
同時にイノベーションへの解の手がかりにもなるのだ。
第三章 顧客が求める製品とは
才能溢れる人々が、最善を尽くしているにも関わらず、
売れる新製品を生み出そうとする企てのほとんどが失敗に終わる。
総計すると、製品開発に費やされる資金の実に4分の3が、
商業的に成り立たない製品を生み出す結果に終わっている 。
しかし、失敗はランダムな現象などではない。
状況を適切に分類することで、失敗を予測し、
しかも回避することは可能なのだ。
三章では、一般的なアプローチとは若干異なる、市場細分化の考え方について説明する。
顧客が特定の「用事」を片付けるために
製品を「雇う」、という考えに基づく
この手法を用いれば、顧客が現実に生活を送る様子を
正確に映し出すような形で、市場を細分化することができる。
またその過程で、破壊的イノベーションの機会を発掘することもできるのだ。
問題は、新製品の事業計画を策定するプロセスの中で、
捉えた機会を定量化せざるを得ないことにある。
データは一般に、製品の特性や潜在顧客の
人口統計的、心理的要因に基づく特徴に沿って体系化されている。
消費者の真のニーズと、製品開発の取り組みを方向づけるデータとの間に
ミスマッチがあるために、企業はイノベーションの標的を
実在しない目標に置くようになる。
適切な顧客と結びつくことができれば、
まず市場で足がかりを築き、
それから持続的向上の軌跡に沿って利益を上げながら成長し、
市場を支配する製品やサービスを開発することができるのだ。
第四章 自社製品にとって最高の顧客とは
どのような初期顧客が、利益ある成長事業を築く確かな基盤となる可能性が
最も高いのだろうか。
そして、どうすればそのような人々に到達できるだろうか。
ローエンド型の破壊では、理想的な顧客を見つけるのは比較的簡単だ。
主流製品を現在使っているが、
性能の高い商品には無関心だと思われる人々だ。
だが、新市場の顧客、つまり「無消費者」を見つけるのは、ずっと骨が折れる。
これは、非現実的なことではない。イノベーションのアイデアを、
本章で紹介する消費者への対抗パターンの四つの要素に適合するように形成すれば、
見つけられるのだ。
にもかかわらず、企業が実際にその機会に局面すると、
正反対のタイプの顧客顧客を追求してしまう。
先見の明があるマネージャーや科学技術者は、
破壊的イノベーションの到来を実際に察知すると、
それを「脅威」として捉える。
ゆえに、既存の顧客や事業の防衛に注力することになる。
実績ある企業がやらなければならないことは、
しかるべき時期にジレンマを乗り越えてそれをチャンスとして活かすことなのだ。
第五章 事業範囲を適切に定める
何を内部調達し、
何を業者や提携相手から調達するかの決定は、
新成長事業の成否を大きく左右する。
この決定を導くために広く用いられている理論が、コア・コンピタンス(中核的な能力)の区分に基づくものだ。
つまり、企業のコア・コンピタンスに結びつく業務は車内に残し、コアコンピタンスに結びつかない業務については、外部の専門業者に委託すべきだという考え方である。
経営者はこう問わなくてはならない。
「将来顧客が重要だと判断するであろう改良軌跡の上で秀でるためには
今日何を習得し、将来何を習得する必要があるだろう?」
この質問に対する答えは、
「片付けるべき用事」をベースにした考え方から始まる。
顧客は、自分にとって重要な問題の解決でなければ、商品を購入しない。
何が解決策となるかは、
「商品が十分でない」と「十分以上に良い」という二つの状況で異なる。
製品が十分でない状況では統合が、
そして製品が十分以上に良い状況では外部委託、つまり専門化や特化が有利である。
これを解明するには、
エンジニアリングの概念である「相互依存性」と
「モジュール方式」が、製品設計の決定でかぎとなることを
押さえておく必要がある。
製品の「アーキテクチャ」( 基本設計概念)は、
製品の構成要素とサブシステムを決定し、
また目標機能を実現するためにそれらはどのように相互作用する
(組み合わさって連携する)必要があるかを定義する。任意の二つの構成要素が組み合わされる境界名は、「インターフェース」と呼ばれる。
あるインターフェースにおける一方の構成要素を、もう一方の構成要素と独立して構築できないとき、 そのアーキテクチャはそのインターフェースにおいて相互依存型であると言う。
相互依存型アーキテクチャとは、
一方の設計・製造方法が、もう一方の設計・製造方法に依存する状態である。
機能面と信頼面での性能を最適化する。
当然ながら独自仕様である。
これに対してモジュール方式は、
全構成要素または全段階にわたって、相互依存関係が全く存在しない。
あらゆる要素の絡み合いや機能が完璧に指定されているため、
企画を満足させる限り、誰が部品やサブシステムを作るかは問題ではない 。
モジュール型アーキテクチャは柔軟性を最適にするが、
厳しい規格を必要とするため、エンジニアに設計の自由度をあまり与えない。
つまり、性能の犠牲の上に成り立っている。
モジュール型と相互依存型のアーキテクチャは、
連続体の両極に位置し、ほとんどの製品がこの両極間に位置している 。
製品アーキテクチャを競争状況に適合させる企業が、成功する可能性が最も高い。
第六章 コモディティ化をいかにして回避するか
どれほど驚異的なイノベーションも、
いつかは必ず「コモディティ化」される運命にある、と
観念している経営者は多い。
コモディティ化とは、
市場参入時に、高付加価値を持っていた商品の市場価値が低下し、
一般的な商品になることである。
われわれがコモディティ化に関する研究から得た
最も興味深い洞察の一つは、
コモディティ化がバリューチェーンのどこかで作用しているときは、
必ず脱コモディティ化という補完的なプロセスが
バリューチェーンの別の場所で作用している、ということだ。
コモディティ化が差別化を阻むことで
企業の収益力を破壊するのに対して、
脱コモディティ化は潜在的に
莫大な富を創出し獲得するチャンスを生み出すのである。
破壊の領域で最も成功する企業は、
「十分ではない」最終使用製品の設計、組立を行う統合型企業だ。
このような企業が魅力ある利益を得られる理由は二つある。
1.製品の相互依存性の独自アーキテクチャにより、差別化が容易である。
2.相互依存型のアーキテクチャを持つ製品の設計と製造では、元来変動費に対する固定費の割合が高く、大きなスケールメリットが働く。
だが、多くの企業がこの安息の境地にたどり着かないか、
到達しても長く留まらない。
その理由は、企業が独自アーキテクチャ製品を
競合企業よりも高いコスト競争力で製造できるのは、
「十分でない」状況があってのことだからだ。
これは強調に値する。
状況が変化すれば、 つまり収益性の高い支配企業が
主流顧客の利用能力を抜いてしまえば、
このやり方は通用しなくなり、形勢は一変し始める。
やがて、モジュール方式が支配的となり、コモディティ化が始まる。
破壊とコモディティ化は表裏一体をなしている。
モジュール型破壊者にとって、
健全な利益を確保する唯一の方法は、
低コストのビジネスモデルをできるだけ早く上位市場に持ち込み、
高コストの独自製品メーカーと最前線で競争し続けることだ。
そして性能決定部品の向上を求める結果、
こうした部品の供給業者が、
破壊的イノベーションの「十分でない」領域に押し戻されてしまうのである。
その結果、性能決定部品の供給業者は競争の力によって、
サブシステム内部でますます相互依存的で
独自のアーキテクチャを生み出すことを強いられる。
つまり、性能決定サブシステムは、
最終使用製品がモジュール化しコモディティ化する結果をして、
脱コモディティ化するのである。
このプロセスを明らかにすれば、
独自製品を通じて利益ある成長を遂げる新しい機会がどこに出現するかを、
経営者がより正確に予測する手助けができるのではないかと、
われわれは考えている。
第七章 破壊的成長能力を持つ組織とは
能力という概念を、
組織にできることとできないことを決定づける、三つの要素に解きほどくと、
「資源、プロセス、価値基準」となる。
この枠組みが、組織の能力と無能力を的確に評価し、
破壊的イノベーションの成功率を高める、強力な手段になる。
従業員が労働、技術、情報、活力といった資源のインプットを
価値の高い製品やサービスに変換するとき、組織は価値を生み出す。
組織がこのような変化を実現する、
相互作用や連携、意思伝達、意思決定などのパターンが、「プロセス」である。
成長機会に取り組む組織の経営者は、
まず、 成功するために必要な人材やその他の資源があるかどうかを
判断しなければならない。
それから、次の二つの質問に答える必要がある。
「組織で習慣的に用いられているプロセスは、この新しい課題にふさわしいのか?」
「組織の価値基準は、この実行計画に必要な優先順位を与えるのか?」
実績ある企業が、破壊的イノベーションでの成功の確率を高めるには、
機能別に構成された軽量級チームと重量級チームをそれぞれ適切な場合に用い、
持続的イノベーションについては主流組織で商品化し、破壊的イノベーションは自律的組織に任せる必要がある。
イノベーションを成功させることが
一見困難で予測不能であるように思われる主たる理由は、
企業がしばしば有能ではあるが、
安定企業特有の問題に取り組むための精緻化された
マネジメント・スキルを備えた人材を活用するからだ。
経営者は、 一つのやり方を何でも当てはめることをやめなければならない。
課題にあったプロセスや価値基準を持つ組織に
有能な人材を配置するよう心を砕くことが、経営者の力点なのだ。
第八章 戦略策定プロセスのマネジメント
どんな革新的なアイディアも、
生まれたときはまだ生焼けで未完成である。
アイデアはその後形成プロセスを経て、
細部まで詰められた事業計画と、その計画を実行する戦略という形に姿を変える。
これらがそろうことが、その計画に資金を獲得するための必要条件なのだ。
二種類の戦略選定プロセス
意図的プロセスと創発的プロセス
意図的な戦略選定プロセスとは、
意識的で分析的なもので、
市場成長率、市場分野の規模、顧客のニーズ、競合企業の強味と弱味などに関するデータの徹底分析を基にしていることが多い。
一般にこのプロセスでは、
戦略は始めと終わりがはっきり決まっているプロジェクトで策定され、
「トップダウン」で実行に移される。
意図的戦略を用いて、社内の活動を適切に組織化できるのは、次の三つの条件が揃ってる時に限られている。
- 成功のために必要なすべての重要な詳細を網羅し、対処する。
戦略の実行責任者は、経営陣の意図的戦略を全て理解していなければならない
2.経営トップだけではなく、全従業員にとって、それぞれが置かれた状況から考えて理にかなったものでなければならない。そうでなければ、全員が首尾一貫した適切な行動をとることができない。
3.集団の意図は、外部からの政治的、技術的な力や市場動向などの予期しない影響を、極力排除しつつ果たさなければならない。
現実には、この条件が三つとも当てはまる状況がほとんどないため、
企業が実際に実行する戦略を、創発的戦略策定プロセスが修正していくのである。
創発的戦略は、組織の内部から湧き上がってくるもので、
中間管理職やエンジニア、営業部員、財務スタッフなどが、優先順位や投資などについて
日常的に下す決定の積み重ねである。
これらはたいてい、観念的でも未来志向でも戦略的でもない人々によって
日々下される戦術的な業務上の決定である。
創発的戦略は、
意図的戦略策定プロセスの分析、計画段階では予見できなかった問題や機会に、
マネージャーが対処することによって生まれる。
創発的プロセスを通じて出来上がった戦略の有効性が確認できれば、
それを公式なものとして改良し、活用することは可能だ。
このようにして、創発的戦略を、意図的戦略に変えることができる。
重要なのは、 戦略が生み出されるプロセスをマネジメントすることだ。
戦略策定における経営陣の力点は三つある。
第一は組織のコスト構造、
つまり価値基準をマネジメントし、
理想顧客から破壊的製品に対する注文が優先されるように図る ことだ。
第二は発見志向計画法、
つまり何が有効で何がそうでないかについての学習を加速させる、
徹底したプロセスを用いること。
第三は意図的、創発的プロセスが各事業の状況に応じて用いられるよう、
油断なく気を配ることである。
このような挑戦を乗り越える事ができた経営者はほとんどいない。
そしてこれこそが、
実績ある企業がイノベーションで失敗する最も重要な理由の一つなのだ。
第九章 良い金もあれば、悪い金もある
第9章では、
事業を育成するための資金をどこから調達するか、
誰の投資資金が成功を促し、誰の資金が命取りになるか。
各発展段階で、最も役に立つ資金源はどれか。
について説明しています。
第十章 新成長の創出における上級役員の役割
企業が破壊的成長の新しい波を次々と生み出すためには、
上級役員が次の三つの責務を果たさなければならない。
第一のものは、短期的な課題だ。
破壊的成長事業と主流事業のインターフェースを直接監督し、
企業の資源とプロセスのうち、
どれを新事業に適用すべきか、すべきでないかを判断、決断することである。
第二はやや長期的な責任であり、
われわれが「破壊的成長エンジン」と呼ぶ、利益ある成長事業を
繰り返し巧みに立ち上げるための反復可能なプロセスを作り出すことだ。
第三の責務は永久に続くもので、状況の変化を察知し、
変化の微候を見分ける方法を教えることである。
上級役員が、イノベーションのマネジメントにおいて果たすべき役割は、四つある。
第一に、適切な連携プロセスが存在しない場合には、さまざまな行動や決定を、自ら進んで連携させなくてはならない。
第二に、部下が新しいコミュニケーション、連携、意思決定のパターンを必要とする、新しい課題に直面したときには、既存プロセスの支配力を崩さなくてはならない。
第三に、同じような行動や決定が組織内で繰り返し行われるとき、経営幹部はこれに関わる従業員の活動確認すべき勉強させるためのプロセスを作り出さなくてはならない。
そして第四に、新たな破壊的成長事業を続けざまに立ち上げ育むためには、 同時進行する複数のプロセスやビジネスモデルを構築し維持する必要があるため、上級役員はさまざまな組織の橋渡しを行って、新成長事業での有益な学習を主流部分に還流させ、適切な資源、プロセス、価値基準が適切な状況で用いられるよう、心を砕かなくてはならない。
終章 バトンタッチ
多くの優良企業が、破壊を1度だけ成功させている。
数度の破壊に成功している企業も、若干だがある。
だが、われわれの知る限り、破壊的成長エンジンを生み出し、
それを持続的に作動させることに成功している企業は、ない。
理論はあるが過去に前例のない、
「利益ある成長を生み出し続ける」ための方法を提案するため、
われわれは全力を尽くしたつもりである。
本書では、数百社の企業の成功、
そして失敗から引き出した、総合的な理論体系を示した。
今度は、読者にバトンを渡したい。
読者がイノベーションの「ジレンマ」に対する自分なりの「解」を
導いてくれることを望むばかりである。
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