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『ブループリント「よい未来」を築くための進化論と人類史(上)』の要約|書籍紹介

タイトル:ブループリント:「よい未来」を築くための進化論と人類史(上)

著者:ニコラス・クリスタキス


▲引用:「よい未来」を築くための進化論と人類史(上)

 

著者略歴

ニコラス・クリスタキス(Nicholas A. Christakis)

イエール大学ヒューマンネイチャー・ラボ所長、およびイエール大学ネットワーク科学研究所所長。医師。専門はネットワーク科学、進化生物学、行動遺伝学、医学、社会学など多岐にわたる。

1962年、ギリシャ人の両親のもとアメリカに生まれる。幼少期をギリシャで過ごす。ハーバード・メディカルスクールで医学博士号を、ペンシルベニア大学で社会学博士号を取得。

人のつながりが個人と社会におよぼす影響を解明したネットワーク科学の先駆者として知られ、2009年には『タイム』誌の「世界で最も影響力のある100人」に、2009年~2010年には2年連続で『フォーリン・ポリシー』誌の「トップ・グローバル・シンカー」に選出されるなど、アメリカを代表するビッグ・シンカーの1人。2020年の新型コロナウイルス感染拡大に際しては、感染経路対策を『ネイチャー』誌などで発表し、大きな注目を集めている。

 

ファシリテーターの感想・おすすめのポイント

私たちに共通する人間性

 自集団を思いやる能力

  自然選択を通じて、私たち人類は集団に加わる能力と欲求、それも特定の仕方でそうする能力と欲求を身につけた。

  たとえば、自分自身の個人性を放棄できるし、共同体とのつながりを強く感じることで、私的利益に反するような行動、そうでなくとも人びとに衝撃を与えるような行動をとれる。

  それにもかかわらず、自分の属する社会集団のメンバーを思いやる能力は、私たちに深遠な何かを与えてくれる。

  つまり、誰もが自分自身を同じ集団の一部とみなせるのだ。

 

 私たちに共通の人間性

  私たち人間にかんする私のビジョンーすなわち本書の核心をなすものーを述べれば、人びとは共通の人間性によって結びついているし、結びつくべきだ、となる。

  人びとが多様な人生経験を持ち、別々の場所で生活し、もしかすると表面的には違って見えたとしても、他人の経験のかなりの部分は誰もが人間として理解できるのだ。

 

 善き社会への青写真

  異文化間のこうした類似性はどこからやってくるのだろう?人びとはお互いにー戦争さえ始めてしまうほどー大きく違うにもかかわらず、一方でとてもよく似ているなどということがどうすれば可能なのだろう?

  根本的な理由は、私たち一人ひとりが自分の内側に「善き社会をつくりあげるための進化的青写真」を持っているという点にある。



目次

はじめにーー私たちに共通する人間性

 

第1章 社会は私たちの「内」にある

内集団バイアス

人間社会の普遍性

遺伝子に刻まれた人間の普遍的特性

社会性一式とは何なのか

私たちを一つにするもの

 

第2章 意図せざるコミュニティ

「社会をつくる」という自然実験

難破事故の生存者コミュニティ

二件の難破事故のことなる結末

反逆者たちが築いたピトケアン島コミュニティ

シャクルトンの南極コミュニティはなぜ成功したのか

ポリネシアの植民

社会的に生きる



第3章 意図されたコミュニティ

ゲマインシャフトとゲゼルシャフト

アメリカにおけるユートピア建設の試み

ブルック・ファーム

シェーカー教団

イスラエルのキブツ

キブツの転換

心理学的ユートピア

現実の「ウォールデン2」の成否を分けたもの

1960年代の都市コミューン

南極基地の科学者コミュニティ

南極のネットワーク科学

何がコミュニティの成功を決めるのか

 

第4章 人工的なコミュニティ

Amazonのワーカーを使った実験

「つながり」がすべてを変える

オンラインゲームは現実社会を反映する

構築された集団

理論上ありうるすべての貝殻の世界

ありうるすべての社会からなる世界

架空の社会

「進化」が私たちに許す社会の姿

 

第5章 始まりは愛

なぜ人間はパートナーに愛情を感じるのか

あらゆる結婚携帯の根っこにあるもの

なぜ一夫一妻制が現在の「主流」になったのか

狩猟採集民バッサ族の一夫一妻制

牧畜民トゥルカナ族の一夫一妻制

父親を「分割」する社会

父親も夫もいない社会

見合いから生まれる愛

たった一つの共通点

 

第6章 動物の惹き合う力

動物における「夫婦の絆」

一夫一妻制と社会生活

メスの力

オスの戦略、メスの戦略

人間のあらゆる行動は「遺伝」する

貞操を守るプレーリーハタネズミ

人間のセックスの謎

パートナー選びと自然選択

「体臭」と指示政党

そして人間は「パートナーへの愛」から「自集団への愛」に進んだ

 

本書の要点

はじめにーー私たちに共通する人間性

 自集団を思いやる能力

  自然選択を通じて、私たち人類は集団に加わる能力と欲求、それも特定の仕方でそうする能力と欲求を身につけた。

  たとえば、自分自身の個人性を放棄できるし、共同体とのつながりを強く感じることで、私的利益に反するような行動、そうでなくとも人びとに衝撃を与えるような行動をとれる。

  それにもかかわらず、自分の属する社会集団のメンバーを思いやる能力は、私たちに深遠な何かを与えてくれる。

  つまり、誰もが自分自身を同じ集団の一部とみなせるのだ。

 

 私たちに共通の人間性

  私たち人間にかんする私のビジョンーすなわち本書の核心をなすものーを述べれば、人びとは共通の人間性によって結びついているし、結びつくべきだ、となる。

  人びとが多様な人生経験を持ち、別々の場所で生活し、もしかすると表面的には違って見えたとしても、他人の経験のかなりの部分は誰もが人間として理解できるのだ。

 

 善き社会への青写真

  異文化間のこうした類似性はどこからやってくるのだろう?人びとはお互いにー戦争さえ始めてしまうほどー大きく違うにもかかわらず、一方でとてもよく似ているなどということがどうすれば可能なのだろう?

  根本的な理由は、私たち一人ひとりが自分の内側に「善き社会をつくりあげるための進化的青写真」を持っているという点にある。




第1章 社会は私たちの「内」にある

 

  遺伝子に刻まれた人間の普遍的特性

   私が焦点を合わせているのは遺伝子に暗号化されている普遍的特性であり、人間が暮らす環境への直接的反応としてのみ(複数の場所で独立に)生じるそれではない(たとえば、食料を求めて川や海を開拓する文化には漁網が普遍的に存在する可能性がある)。

   私自身の普遍的特性のリストは、以上に紹介した成果より焦点を絞った基本的なものとなる。

   このリストは、特に社会的な一連の重要な特徴を中心とし、人間がみずから善き社会とみなすものをつくる理由にかかわっている。

   この普遍的特性のリストを「社会性一式(ソーシャル・スイート)」と呼ぶことにしよう。

 

  社会性一式(ソーシャル・スイート)とは何なのか

   一致団結して社会を形成する能力は、実は人類の生物的特徴であり、この点は直立歩行の能力とまったく同じである。

   人類が生き延び、繁殖する助けとなってきたほかの行動と同じように、社会を構築する人間の能力は本能となっている。

   これから示すように、あらゆる社会の核心には以下のような社会性一式が存在する。

   (1)個人のアイデンティティを持つ、またそれを認識する能力

   (2)パートナーや子供への愛情

   (3)交友

   (4)社会的ネットワーク

   (5)協力

   (6)自分が属する集団への好意(すなわち内集団バイアス)

   (7)ゆるやかな階級制(すなわち相対的な平等主義)

   (8)社会的な学習と指導

  

 

第2章 意図せざるコミュニティ

 

  「社会をつくる」という自然実験

    科学者はSF作家ばりの想像力を駆使してあらゆる可能なタイプの社会を描き、それから、現実の人間をそれぞれの社会に送り込んで実験したいと思うかもしれない。

   科学者が規定するであろうー住民は幸せか、あるいは身内殺しを避けるかといったー定義にしたがって「機能する」社会はどれかを調べるためだ。

   科学者は社会制度を体系的に操作し、人びとや集団への影響を短期的に観察できる。

   また、マカクザルの群れからリーダーを排除するなどといった方法で、ほかの社会的な種の社会組織を意図的に操作することもできる。

   社会をつくろうとする人間の生来の性向を探るための別のタイプの実験は、文化にいっさい触れさせずに子供を育てることかもしれない。

   彼らが大人になったときにどんな社会をつくるか見てみようというのだ。

   もう一つの仮想実験は、社会活動にかかわる遺伝子(たとえば、友人の選び方を制御する遺伝子)に突然へにを起こし、それから、そうした突然変異のある人びとの集団でどんな交流が生じるかを観察するというものかもしれない。

   科学者はいわゆる「自然実験」を利用できる。

   一見したところ偶然に、外部の力によってさまざまな被験者集団に処置が割り当てられるケースだ。

   自然実験のおかげで、科学者は実際的な障害を回避し、倫理的な問題(たとえば配偶者を殺すなど)を軽減し、再現できない大規模な現象(たとえば軍事侵略の影響)を研究できる。

 

第3章 意図されたコミュニティ

  アメリカにおけるユートピア建設の試み

   一五一六年、トマス・モアはギリシャ語の単語を基にして、「ユートピア」という言葉をつくった。

   そのギリシャ語は「どこにもない場所」を意味するが、英語では「良い場所」のルーツのような響きもある。

   ユートピア社会をつくる試みの多くが失敗したことを考えると、こうした両義性は実に印象深い。

  コミューン的ユートピアを築こうとする取り組みにとって、アメリカはとりわけ肥沃な土壌であり、その取り組みは社会に足跡を残してきた。

  数千という数のユートピア的コミュニティが、歴史を通じてアメリカの風景の中に散らばっていったという事実は驚くに値しない。

  アメリカ合衆国はつねに、社会的・地理的移動性を保証し、結社の自由を約束し、押しつけがましく独裁的な制度を排除し、斬新なアイデアを積極的に受け入れ、自己改善や自己再生の機会を提供してきた。

  

  

  何がコミュニティの成功を決めるのか

   新たなコミュニティを形成しようとする意図的な取り組みは、一連の自然実験を提供してきた。

   それらを通じて人類の社会状況が浮き彫りになり、社会性一式の重要性が立証されてきた。

  社会性一式の必要性を尊重した新たなコミュニティは、そうしなかったコミュニティよりうまくいった。

 

第4章 人工的なコミュニティ

  オンラインゲームは現実社会を反映する

   新たな社会と社会性一式の特徴にかんするオンライン・データのもう一つの宝庫は、数十万人が参加する多人数参加型ゲームだ。

   三◯万人のプレーヤーを対象としたある研究で、ギルドの規模は三人から二五七人にまでわたるが、平均はおよそ一七人であることがわかった。

  社会的ネットワークの構造が一定の役割を果たした。

  絆の密度が高く、つながりの強いギルドほど長続きしたのだ。

  これらはすべて社会性一式が重要な特徴である。   

 

  「進化」が私たちに許す社会の姿

    ここで私たちが関心を寄せる普遍的文化ーつまり社会性一式ーの焦点は、社会組織に関わる特質のうち、自然選択によって形成され、一部は遺伝子にコード化されている特質だ。

   このように焦点を絞ったとしても、社会性一式ののそれぞれの特徴が、多様な環境や社会のうちでも比較的かぎられた範囲で見られることから、そうした範囲から外れた社会が現実にはうまくいきそうにないことがわかる。

   人間的事象について普遍的であることのすべてが遺伝子にかかわっているわけではないし、あらゆる多様性が文化に由来するわけでもないのだ。

   私たちが共通する人間性を持つ理由は、私たちがつねに自分と同じ種の中で生きてきて、まさにその難局に対処すべく進化してきたことなのである。

   一見まるで異なる世界各地のあらゆる人間文化において、新たな社会をつくるための度重なる機会において、私たちは同一の基本パターンを繰り返し目にするのである。

 

第5章 始まりは愛

  なぜ人間はパートナーに愛情を感じるのか

   人間の条件の大きな謎の一つ、すなわち、単なる「性的な関係」ではなく「愛情のある関係」を他人と築こうとする衝動の根底にあるものは何だろう。

   こうした普遍的特徴のなかでもカギとなるのが、「夫婦の絆」を結ぼうとする傾向だ。

   これは、パートナーと強固な社会的愛着関係を築きたいという生物学的な衝動であり、ますます理解が進んでいる分子と神経のメカニズムによって促進される。

   結婚の規範は、夫婦の絆の構築がとりわけ好まれるということ以外でも、進化した生態を別の面で土台としている。

   人間は集団の規範に従うように進化してきたため、進化の異なる一面、つまり社会的学習や協力に結びつく側面もまた、結婚を支える役割を担っている。

   そのおかげで人間は一般的に、どんな規則であれ自分が属する内集団の文化的規則に従うことを心地よく感じるものなのだ。

 

  たった一つの共通点

   どんなタイプの結婚であろうと、その要は愛情だ。

   生態的あるいは文化的な最強の力でさえ、人間関係のある基本的特徴を打ち消すことは、皆無ではないとしてもめったにないのだ。

   人類の重要な性質であるその特徴とは、性的パートナーのあいだの夫婦の絆だ。

   パートナーを愛するという衝動は普遍的なものなのだ。

 

第6章 動物の惹き合う力

  パートナー選びと自然選択

  人間の遺伝子は、パートナーへの全般的な愛着感のみならず、私たちが選ぶ具体的なパートナーにも関与する。

  自然選択の観点からすると、これは驚くべきことではない。

  パートナーの選択は、生殖の成功と、各世代が次世代に伝える遺伝物質のタイプを左右するからだ。

  遺伝子がパートナー選びに関与していることが判明したという事実は、社会性一式のこの重要な部分が進化によって形成されたてきたとする主張をいっそう強力に支持するものだ。

 

 そして人間は「パートナーへの愛」から「自集団への愛」に進んだ

  夫婦の絆は、配偶者の男女が共に育児に取り組み、労働を分担する子育ての仕方への前適応の役割を果たしたようだ。

  相互認識と持続的愛着が、両性の個体と複数の世代を含む新しいタイプの家族構造への道を拓いた。

  そうしたより大きな集団では、親族の認識が集団内の協力関係のさらなる進化をうながした。

  夫婦の絆と原初的家族の出現が核となって、集団生活にかんするより広範な特徴が育まれ、社会性一式のほかの側面が現れてきた。

  私たちは、パートナー、子、親族への愛着と愛情の輪の外へ出て、自分の友人と自分の集団への愛着と愛情へと歩を進めていったのだ。



要約

第1章 社会は私たちの「内」にある

  遺伝子に刻まれた人間の普遍的特性

  社会性一式(ソーシャル・スイート)とは何なのか

  私たちを一つにするもの

 

第2章 意図せざるコミュニティ

  「社会をつくる」という自然実験

 

第3章 意図されたコミュニティ

  アメリカにおけるユートピア建設の試み

  何がコミュニティの成功を決めるのか

 

第4章 人工的なコミュニティ

  ありうるすべての社会からなる世界

  架空の社会

  「進化」が私たちに許す社会の姿

 

第5章 始まりは愛

  なぜ人間はパートナーに愛情を感じるのか

  たった一つの共通点

 

第6章 動物の惹き合う力

 人間のあらゆる行動は「遺伝」する

 パートナー選びと自然選択

 そして人間は「パートナーへの愛」から「自集団への愛」に進んだ

 

 

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