アクティブラーニングとは?主体的な学びの方法と効果やメリットを解説
文部科学省をはじめ、さまざまな教育機関で積極的に導入が進められているのが、アクティブラーニングです。
アクティブラーニングとは、学校の教師などが一方的な指導を行うのではなく、生徒や学生が自ら能動的に学ぶことを指します。
しかし実際の教育現場では、何を目的として、具体的にどのような授業を実践すればよいのかわからない方も多いのではないでしょうか。
そこでまずは、アクティブラーニングを授業に取り入れる前に、アクティブラーニングについての内容を正しく理解することが重要です。
今回は、アクティブラーニングの概念や、主体的に学ぶ方法と効果やメリットなどを詳しく解説します。教育に携わる方は、ぜひ参考にしてください。
アクティブラーニングの概念
アクティブラーニングとは、これまでのような一方的な教育や指導を行う授業ではなく、生徒が自ら能動的に考え、学習を進めていく教育法です。
具体的な学習方法として、グループによるディスカッションやディベート、グループワークなどを通じて認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験などを育成します。
このアクティブラーニング最大の特徴は、答えの決まった問題を解いたり、一般的な知識の修得を目指すのではなく「正解のない課題に対し、個々自らの考えで問題解決へ向かう思考方法を身につけること」を目的とするところです。
そのため、教師がこれまでのように正解のある問題例を挙げ、その模範解答を示すといった教育方法とは一線を画します。
アクティブラーニングでは、あくまでも生徒の主体性を重視します。その中で、教師がファシリテーターの役目を果たし、中立的な立場にたって生徒の考えや議論に対してサポートできる体制が求められるのです。
アクティブラーニングと探究学習
このアクティブラーニングを教育現場で実践するための具体的な方法として取り入れられているのが、2020年から小学校で、2021年に中学校でスタートした「総合的な学習の時間」です。
2022年からは高等学校でも「総合的な探究の時間」として採用されており、次世代を担う生徒の育成方法として注目が集まっています。
この探究学習とは、文部科学省において「問題解決的な活動が発展的に繰り返されていく一連の学習活動のこと」と定義づけられた学習手法です。
「探究」は「探求」と間違われやすい言葉で、しばしば混同されてしまうケースもあります。しかし、探究とは「物事を最も深いところまで明らかにする」のに対し、探求は「物事を深く探し求める」という点において大きな差があります。
もっと簡単に言えば『探究学習』とは『問題を解決するための学習』と置き換えることができるでしょう。
これまでの勉強は、すでに答えのある問題について、そのプロセスを探すことが目的でした。しかし探究学習では、答えの見つかっていない課題や問題に対し、自分なりの解決方法を明らかにしていく過程を重視します。
これまでの学習法とは全く異なり、ゴールを求めるのではなく、課題解決に向けたアプローチ方法を考えることが主題であることが分かります。
アクティブラーニングとは「答えのない課題」に積極的にアプローチすること
アクティブラーニングでは「何をテーマとして議論するか」が最も重要です。そしてその問いを教師が設定するのではなく、個々の生徒が自ら見つけ、考えることに意義があります。
アクティブラーニングにおける学習の特徴は、テーマにある問いに対して、明確な「答え(正解)がない」ことです。
しかし「答えがないことをどのように教えれば良いか」という疑問を抱く方も多いのではないでしょうか。
これまでの教育では、正解の決まっている問題に対し、子どもたちをその答えに導くために皆が同じ考えで、同じプロセスをとることを良しとしてきました。
そのためITが発達し、正解のある問題を自動的かつ瞬時に導き出してくれる現代においては、ディベートが苦手な日本人が世界で活躍できる場がなくなりつつあるのです。
だからこそ、これからの社会では「答えのない問い」に対し、個々が自ら「考える能力」が必要とされるのです。
考える能力の養い方
日本が世界の経済大国から転落した大きな理由の1つは「自ら考える能力が欠如している」ことでしょう。現代の日本には、自分の主張をしないで周囲に合わせようとする「ことなかれ主義」が蔓延し、子どもの頃から「皆と同じことが良い」とする価値観が植え付けられてきました。
そのため、子どもが自分で考えることをしなくなり、教科書に書かれていることや先生が言ったことに従う従順な子どもが、学校という工場で生産されているのが現状です。
日本には古来より「和の精神」を大切にする文化がありますが、この「和の精神」とは、それぞれの「個」が力を発揮する中で調和が取れている状態です。
多くの人が集まって議論を重ねると、当然のことながらエゴとエゴのぶつかり合いが多くなります。その中で調和をはかり、さらに新しいものを生み出す力に変えていくためには、相手や状況によって柔軟に考え、対処しなければなりません。
アクティブラーニングのテーマとなる問いには、明確な答えがありません。「社会的な課題」や「SDGs」などの大きなテーマの中から、個々に興味のある問いを見出し、自ら考えて探究するのが目的です。
その中で自己や他者の考えや立場を肯定しながら、探究の問いや回答に対して無批判に受け入れるのではなく、多様な角度から検討し、論理的・客観的に理解するクリティカルシンキングを養うことが大切です。
アクティブラーニングの必要性
アクティブラーニングという学習法については、以前よりその必要性が訴えられていました。そして近年、この欧米の教育機関では当たり前のように行われているディベート型の学習方法がようやく日本でスタートした背景には、現代日本の抱える社会問題と大きく関係していると言えるでしょう。
これまでの日本といえば、優秀で真面目な国民性により、皆が同じ方を向いてベルトコンベア式に安くて高性能な製品を作り上げ、戦後の数十年の間に急成長してきました。
しかし現代の日本では、少子高齢化やグローバル化への対応、労働人口の減少による国家財源の減少、社会保障問題など、AIで答えを導き出せない問題が山積しています。
偏差値の高い大学に入れば「一生安泰」が保障されていたような昭和の時代とは異なり、これからの時代は「考える能力と課題解決力」が必要です。
そのためには、さまざまな問題に対するアプローチ方法や解決方法を自ら想定し、仮説を立て、検証し、言語化して発表する能力が必要となります。そして個々が主体性を持ちつつ、日本人が得意な協調性を発揮することで、次世代を引っ張るリーダーとしての資質を養うことができるのです。
このような「主体性と協調性をもって、自らで課題を見つけて解決する能力」を養うためには、これまで主流であった「正しい知識の暗記や、決まった答えのある問題の解き方を教える」教育法では不可能といえるでしょう。
そこで「課題の発見と解決に向けて主体的かつ協働的に学ぶ」という、深く探究できるアクティブラーニングが必要なのです。
アクティブラーニングの学習方法
アクティブラーニングの学習方法に決まった形式はありません。実際に、全国各地で多種多様な授業が展開されています。
以下では、アクティブラーニングを実践するのに必要な要素について解説します。
アクティブラーニングの基本となる行動は「問題や課題(テーマ)の設定」→「情報収集」→「整理と分析」→「まとめ・表現」という過程を繰り返しながら議論を深めていくことです。
そのためには、生徒自身が予習し、主体的に学び、考えの異なる人と議論しようと試みる姿勢が必要となります。ただこれらの要素が揃っていれば、アクティブラーニングの実践に、特別な設備などは必要ありません。
またアクティブラーニングの授業では、教師が次のポイントを重視することが大切です。
- 生徒が主体的に議論に参加しているか、できているか
- テーマや議論の内容よりも、生徒の思考力を重視しているか
- 生徒自らがテーマの情報収集や分析、まとめや表現に関わっているか
- 生徒自らが積極的に活動しているか
- 生徒自らが自己の思想やアイデンティティ、価値観を探究できているか
- 個々の生徒それぞれが問題や課題に取り組み、解決に向けたアプローチをしているか
上記のように、教師が直接指導するのではなく、あくまでも寄り添いながらサポートすることが大切です。
また教師や大人が考える「正しさを押し付ける」のではなく、生徒それぞれの考えを尊重しつつ、探究をさらに深められるように導くことを目的と考えましょう。
アクティブラーニングの学習事例
それでは実際に、日本各地で行われ、大きな成果を上げているアクティブラーニングの事例を紹介します。
ふたば未来学園高校の事例
ふたば未来学園高校では、未来創造型探究の普及に以前から注力しています。その中でも、理想の未来像を描き、現状との差異を課題として解決に取り組むアプローチとして『フューチャーマッピング』を未来創造探究に適していると評価し、同校の探究教育に活用。
2015年頃から『フューチャーマッピング』のツール活用を開始。そして2019年度より5期生の120名の生徒の探究学習に3年間活用し、キャリア教育や探究プロジェクトの企画立案、進路指導、大学の面接でのプレゼンテーション企画などを行っています。
ふたば未来学園高校の荒先生は『フューチャーマッピング』によって、従来の教育の枠を超えた自由な発想や内発的動機に基づいた企画が増えこと、また「10倍目標」などにより生徒自らが設定する目標が高くなり、達成度も高くなったと評価しています。
生徒自身がテーマを設定することで、自らのアクションを可視化しながら行動する生徒が増え、さまざまな表彰を受ける生徒がどんどん生まれています。
※ふたば未来学園高校における『フューチャーマッピング』の活用事例
1.メディアコミュニケーションゼミ:生徒が「ふたばメディア」というホームページを企画・制作。地域の貴重な情報を取材し、メディアとして発信し、年間5千円のバナー広告でスポンサーも獲得。
2.ふたば未来高原子力防災班ゼミ「Future Quest ~ふたばの魅力を探究する」では、3.11の伝承と新しい町づくりをテーマに生徒がスポンサーを獲得し、双葉町に120万円の看板を制作するなどに成功。
3.中央大学の高大接続入学試験における入試プレゼンテーション作成で、フューチャーマッピングを活用。想定外の“皆の力を一つにする”といったアイディアを取り入れ、より厚みのあるプレゼンテーションとなり、合格しました。
4.2015年にふたば未来高の「人材育成要件ルーブリック」作成のスタートとして、理想の生徒像教員向けワークショップを成功させています。 他にも多数の事例あり
フューチャーマッピングについての詳細は「探究学習はオンラインがおすすめ|フューチャーマッピング(全脳思考)を学ぶ方法」の記事で詳しく解説しています。ぜひご参照ください。
アクティブラーニングの効果やメリット
アクティブラーニングにより、課題の発見と解決に向けた主体的で協働的な学びを得ることで、生徒がこれから生きていく上で必要となるさまざまな汎用性の高い能力の育成に期待できます。
以下では、アクティブラーニングの具体的な効果やメリットを紹介します。
個別の知識と技能を習得できる
アクティブラーニングでは、生徒それぞれが個別の知識や技能を身につけることができます。この知識や技能とは、従来のベルトコンベア式の「同じ知識と技能」の習得ではなく、あくまで個人の興味や特技に即したものを指します。
思考力・判断力・表現力が身につく
アクティブラーニングでは、生徒個人が興味のあることや、得意なことを伸ばす教育方針です。そのため自分で考え、判断し、表現することに対し、より積極的に取り組むことができます。また、正しい答えがない課題に対して自由な発想をもって取り組むことで、生徒自身の思想やアイデンティティの形成にも役立つでしょう。
真摯に学び、人間性を養える
アクティブラーニングでは、社会や世界で起きていることの現在・過去・未来それぞれを、生徒自身が主体的に見つめることが可能です。これにより、実際の出来事などをさまざまなな角度から捉え、議論することができます。そのような中で、他者とコミュニケーションをとりながらそれぞれの意見を尊重・交換して良好な関係を構築していくことは、真摯に学び、人間性を養える絶好の機会となるでしょう。
教師だけではアクティブラーニングの指導ができない
全国の高等学校の教員を対象に行ったアンケートによると、アクティブラーニングを行うための探究学習において、約半数の教員が指導するにあたって「生徒からの質問に答える時間や人脈がない」と答えています。
探究では生徒が主体となって独自に学習テーマを設定し、情報収集や分析を行い、最終的なまとめを行います。
この探究のプロセスにおいては、実社会で活用できる能力を育成することを目的としているため、実社会を経験することなく教員となった先生が、生徒の質問に答えることができないのは、ある意味当然といえるでしょう。
そこで必要となるのが、学校外の企業組織や民間団体などの知見を積極的に活用し、生徒の学びを支え、ともに伴走する姿勢です。
せっかくの探究学習で生徒のニーズに対応するためにも、さまざまな外部のリソースを活用し、21世紀の社会を次世代を担う学生とともに未来の日本を創り上げていくことが求められるのです。
企業が創る未来のカタチ
現代は、労働人口の減少や働き方改革など、企業の存続が危ぶまれるほどに厳しい時代です。そんな時代だからこそ、より前向きに産学が連携しながら地域社会の未来を創り上げていく活動が必要なのです。
地方に秘められた本物の価値
現代は東京や大阪などの都心部に人口が集中し、地方都市でさえ人口減少に悩まされているエリアが少なくありません。
しかし都心部にある産業は、商業や金融業、医療・福祉・教育などのサービス業や、外食産業、情報通信産業などの第三次産業ばかりです。
このような状況を鑑みると、地方でしかできない第一次産業や第二次産業を盛り上げることは十分に可能であるといえるでしょう。
実際に、政府が進めるUターンやIターン事業の推進により、優秀な人材が地方エリアに分散されつつあります。
ただ前述したように、学校の教員や自治体の職員、地元の政治家などにビジネスのノウハウや知見がないため、思うように探究が進まないのが現状です。
このような現状を踏まえ、アルマ・クリエイション株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役 神田昌典、以降アルマ・クリエイション)では、分野横断的な社会変革事業や教育事業に取り組み、次世代への影響力を持つ社会課題解決や、経済的持続性への貢献、デジタル変革推進を実践した変革リーダーを、かねてより表彰する活動を実施しています。
詳しい内容は→「アルマ・クリエイション、次世代へ影響力を持つ社会課題解決を実践した変革リーダーを表彰」をご参照ください。
このように、もし貴社で新たな取り組みを進めたいとお考えの企業経営者の方は、ぜひアルマ・クリエイションにご相談ください。
これからの教育とビジネスの行方
2021年7月、神田昌典が経営するアルマ・クリエイションは大阪万博の共創パートナーとして認定されました。これを機に、アルマ・クリエイションは全国の高校や大学と連携しながら、学生によるビジネスコンテストを毎年開催する予定です。
そして、神田昌典がこれまでにインプットとアウトプットを繰り返しながら確立してきたマーケティング業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)を教育分野に応用し、教育DXによるこれまでにない教員と学生が教え学び合う関係を構築します。
今後、世界経済はより一層混迷を極めることは容易に想像できます。特定地域の人口減少と人口爆発、世界的な気候変動、宗教人口比率の変遷、疫病の発生増加など、これまでになく深刻な状態です。
今はまだ豊かな日本のイメージがありますが、現実をみると、すでに経済基盤をアジアや中東諸国に追い抜かれてしまっている分野も少なくありません。
これからは、ICTを教育やビジネスでより効率的に使い、日本国内外に向けて勝てるビジネスパーソンを育てることが重要です。
アルマ・クリエイションでは、来る2025年の大阪万博に向けた取り組みとして、これまでのビジネス教育からさらに拡大した【探究教育】を実施して参ります。
興味のある方は、ぜひ神田昌典が配信するメッセージを、ぜひお受け取りください。
以下では、日本一のマーケッター神田昌典氏が、あなたの目標に近づく原動力となる具体的で役立つ言葉を毎日紡いで配信中です。
1. 毎日その日にぴったりのメッセージが自動的に届く
2. 5 秒で簡単に読めるから、高度な内容でも頭に入ってくる
3. 配信ごとに様々なテーマを取り扱うため、飽きずに楽しめる
毎朝マーケティングのヒントとなる素敵なコトバが届きます!ぜひお試しください。
-
- ▼詳しくは👇こちらをクリック▼