ビジネスコーチとは、職場の部下や後輩を指導・育成する現場のマネージャーやOJT担当者のことで、部下の可能性とやる気を引き出し、自発的に目標達成できるようにサポートするのが役割です。
現代は労働人口の減少や市場競争の激化に対処するためにIT化やDXを推進するなど、ビジネス環境が激しく変化していることもあり、ビジネスコーチによるコーチングを導入する企業が増加しています。
ビジネスコーチは、一般的なビジネスコンサルタントとは異なり、実際の職場で指導する個人と伴走しながらサポートを行うのが特徴です。そのためビジネスコーチには、幅広い知識や技術と行動力が求められます。
そこで今回は、ビジネスコーチングに必要なキャリアとスキルの具体例やコーチの種類を解説します。職場にビジネスコーチングを取り入れたいとお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
ビジネスコーチとは？
ビジネスコーチングとは、経営者やビジネスパーソンに対して、目標達成や能力の向上を支援する仕事です。そしてビジネスコーチは、個人やチームと協力して自己意識や自己理解を高め、自己成長を促進するためのサポートを提供します。
ビジネスコーチングの目的は、受講者が自身の目標を明確にし、目標に向けた行動ができるようにすることです。そこで、コーチが受講者と協力してビジョンの設定を行い、戦略の策定や課題の克服、新しいスキルの開発などを幅広く支援します。
ビジネスコーチングでは、コーチと受講者が対話を通じて問いかけやフィードバックを行うのが特徴です。その中で受講者が自らの考えや感情を整理し、目標達成に向けた行動計画を策定することが重要です。また、コーチが受講者の進捗状況を常に観察し、必要に応じて調整や修正を行います。
具体的なビジネスコーチングの内容は、受講者やコーチの目標、ニーズ、業界の要件などによって異なります。例えば、経営者がリーダーシップスキルの向上を求める場合は、コーチが対話を通じてリーダーシップ能力の開発サポートを実施します。また、経営者がビジネスプランを策定する際には、コーチがビジネス戦略の構築やリソースを最適化するためのアドバイスが主な仕事となるでしょう。
このように、ビジネスコーチングは受講者の自己意識と能力の向上に焦点を当て、パフォーマンスの向上や目標の達成をサポートします。これにより、受講者が自身の視点や能力を客観的に評価し、新たな思考能力や行動の選択肢を見つけることができるようになるのです。
ビジネスコーチになるためにはどんなキャリアが必要？
ビジネスコーチになるためには、以下のようなキャリアステップを踏むことが役に立ちます。順に解説しますので、ぜひ参考にしてください。
1.コーチングスキルを習得する
ビジネスコーチとして活躍するためには、コーチングスキルの習得が不可欠です。
コーチングの基礎的な理論や技術、コーチングスキルを学ぶために、コーチングトレーニングプログラムに参加するのもおすすめです。
コーチングを学ぶ際は、後で紹介する、国際コーチ連盟（ICF）などが認定するプログラムを選ぶと良いでしょう。
2.ビジネス経験を積み重ねる
ビジネスコーチは、ビジネスの実務経験や経験的な知識を持つことが重要です。
組織内での管理職経験やプロジェクトリーダーとしての経験、ビジネスコンサルティングなど、ビジネスの領域で経験を積むことが役立ちます。
これによって、受講者のビジネスの課題やニーズを理解し、具体的なアドバイスや支援を提供できるでしょう。
3.コミュニケーションスキルを磨く
ビジネスコーチはクライアントとの対話やフィードバックの提供において優れたコミュニケーションスキルが求められます。
効果的なコーチングを実践するためには、質問技術や傾聴能力、承認記述など、明確な表現力と適切なフィードバックを提供できるようにコミュニケーションスキルを磨くことが重要です。
4.コーチングの実践とフィードバックを受け入れる姿勢
ビジネスコーチとしての経験を積むためには、実際の現場で受講者とセッションを行い、コーチングの実践を重ねることが何よりも大切です。
初めはボランティアや低料金でセッションを提供するなど、実践の機会を探すところから始めましょう。また、実践後に受講者や先輩コーチなどからのフィードバックを受け入れ、自ら成長する姿勢も重要です。
5.認定資格を取得してみる
ビジネスコーチとしての信頼性と専門性を高めるために、国際コーチ連盟（ICF）などが提供する認定プロセスに参加するのもおすすめの方法です。
認定コーチとしての資格を取得することで、クライアントに対して信頼性をアピールすることができるだけでなく、自らの自信にも繋がります。
上記のように、ビジネスコーチになるためには、コーチングスキルとビジネス経験をバランスよく発展させることが重要です。また、自己成長の意欲や学びの姿勢を持つことが、ビジネスコーチとしての成功を切り開く鍵となるでしょう。
ビジネスコーチに必要なスキルの具体例
それでは次に、ビジネスコーチに必要なスキルの具体例を紹介します。ビジネスコーチングに必要となる具体的なスキルには、主に次のようなものがあります。
1.コミュニケーションスキル
コーチには、受講者や組織のコーチングニーズを満たすための、優れたコミュニケーションスキルが不可欠です。そこでビジネスコーチには「聞き手としてのスキル」「話し手としてのスキル」「面談スキル」の向上が重要となります。
このようなスキルを「傾聴」と呼び、ビジネスコーチングの重要なスキルの1つとされています。傾聴は、受講者の話に注意深く耳を傾け、全体的な理解を深めるためのスキルです。コーチは傾聴を通じて、言葉の意味だけでなく、受講者の感情や裏にある意図を読み取ることが重要です。この傾聴の目的は、受講者が自身の思考や感情を整理し、その奥にある本質に気づき確認することにあります。
2.ビジネスの知識
ビジネスコーチは、ビジネスに関するトピックや業界知識を把握し、深い知識として蓄積することが重要です。なぜなら、これらの知識がクライアントが直面する課題を理解し、解決策の策定支援に不可欠だからです。
そこでビジネスコーチになる、また育成するためには、幅広い知識の獲得はもちろん、実際にコーチングを繰り返しながら経験とフィードバックを積んでいける環境を整える必要があります。
3.問題解決能力
ビジネスコーチには、クライアントが直面する問題や課題を分析し、解決策の策定を支援するスキルが求められます。そのためには、創造的な問題解決能力が必要です。
問題や課題を解決する能力を向上させるためには、さまざまな種類の分析方法を学び、実際に実務経験を積むことが大切です。
そこでコーチになる方は、さまざまな業務を経験しながら、各部門や職種ごとの課題や問題点を把握して、解決策をシミュレーションしてみることをおすすめします。
そして自ら考えた回答を実際に試し、PDCAを繰り返しながらスキルを高めましょう。
4.モチベーションスキル
ビジネスコーチには、受講者のモチベーションを高めるためのスキルが求められます。なぜなら、受講者の目標達成を支援するための動機付けを行う必要があるからです。
そこで必要なのが「承認」です。コーチングにおける承認とは、受講者の思考や感情を受け入れ、尊重することを言います。
コーチは受講者が自由に話すことができる安全な空間を提供し、受講者の意見や感情に対して偏見を持たずに受け止めることが重要です。これにより、受講者は自己の内省や成長に向けた探求を、安心して進めることができるでしょう。
5.目標設定とフォローアップスキル
ビジネスコーチには、受講者の目標を設定し、そのフォローアップを行います。これには、問題解決能力や時間管理能力、責任感などの高い能力とスキルが必要です。
この目標設定とフォローアップには、ビジネスコーチの質問力が求められます。質問は、傾聴した上で受講者の思考を促進し、新たな視点や洞察を引き出すためのスキルです。
適切な質問を使うことで、受講者が自身の目標や価値観、課題について深く考え、自己の成長や目標達成に向けた行動計画を策定できます。そして、実際に行動する際にもコーチが並走し、アドバイスやフォローを行うのが、ビジネスコーチングの特徴です。
上記は、あくまでもビジネスコーチに求められる基本的なスキルであり、他にも多くの能力やスキルが必要です。そのためビジネスコーチには、常に学び続け、スキルを向上させる姿勢と努力が求められるでしょう。
ビジネスコーチの種類
ビジネスコーチング力をつけるためには、学びの実践を繰り返すだけでなく、数あるコーチングの種類の中から最も自分の得意なタイプや興味のあるタイプを特定し、その方法に特化したトレーニングを積むことが重要です。
そこで以下では、ビジネスコーチングの一例を紹介します。
1.スタートアップコーチング
スタートアップコーチングとは、スタートアップ企業の課題解決や、成長のためのコーチングです。スタートアップコーチは、ビジネスモデルの策定やマーケティング戦略、資金調達などを支援します。
2.リーダーシップ・マネジメントコーチング
リーダーシップ・マネジメントコーチングとは、リーダーシップスキルの向上を目的としたコーチングです。リーダーシップ・マネジメントコーチは、組織の課題解決やチームのモチベーション向上、コミュニケーションのスキルアップなどを支援します。
3.ビジネスグロースコーチング
ビジネスグロースコーチングとは、企業の成長を目的としたコーチングです。ビジネスグロースコーチは、マーケティング戦略の策定や人材育成、新規事業の開発などを支援します。
4.キャリアトランジションコーチング
キャリアトランジションコーチングとは、個々のビジネスパーソンのキャリアに関する問題や課題を解決するためのコーチングです。キャリアトランジションコーチは、スタッフそれぞれのキャリア形成や目標の設定、スキルアップ、キャリアパスの選択などを支援します。
5.エグゼクティブコーチング
エグゼクティブコーチングとは、トップマネジメントの課題解決、成長のためのコーチングです。エグゼクティブコーチは、リーダーシップスキルの向上や経営戦略の策定、チームのモチベーション向上などを支援します。前述したリーダーシップ・マネジメントコーチングと比較して、さらに大きな組織のマネジメントを目的とするのがエグゼクティブコーチの役割です。
上記はあくまでも一例であり、ビジネスコーチングの種類は業界やニーズに応じて異なります。また、これらの種類は独立しているわけではなく、複数の種類を組み合わせるケースもあります。
ビジネスコーチングに資格は必要？
ビジネスコーチになるために必要な資格は、明確に規定されていません。ただ、無資格ではビジネスコーチとして仕事をすることは難しいため、以下のような資格を取得するのがおすすめです。
ビジネスコーチングの資格にはいくつかの種類があり、それぞれビジネスコーチングの業界団体や教育機関によって発行されています。以下は、ビジネスコーチング資格の一例ですので、ぜひ参考にしてください。
International Coach Federation (ICF) の認定資格
ICFは、世界で最大のビジネスコーチング業界団体です。ICFは、コーチング能力と知識のレベルに応じて、Associate Certified Coach (ACC)、Professional Certified Coach (PCC)、Master Certified Coach (MCC)の3つの認定資格を発行しています。
プロフェッショナル・コーチ・トレーニング・インスティテュート (PCTI) の認定資格
PCTIは、ビジネスコーチングのトレーニングプログラムを提供する団体です。PCTIは、プロフェッショナル・コーチ (PC) の認定資格を発行しています。
トラスト・ベース・ドット・コム (TBD) の認定資格
TBDは、ビジネスコーチングに関連するトレーニングプログラムを提供する団体です。TBDは、トラスト・ベース・コーチ (TBC) の認定資格を発行しています。
コーチング・インスティテュート (CI) の認定資格
CIは、ビジネスコーチングのトレーニングプログラムを提供する団体です。CIは、プロフェッショナル・コーチ (PC) の認定資格を発行しています。
上記はビジネスコーチングの資格の一例であり、他にも多くの資格があります。
ビジネスコーチングの資格は、ビジネスコーチとしての信頼性や専門知識の証明として非常に重要な役割を果たしています。そこで、自らフリーランスとしてビジネスコーチになりたい方や、企業でビジネスコーチを育成したい時に、上記のような資格を取得すると良いでしょう。
ビジネスコーチに必要なキャリアとスキルのまとめ
上記のように、ビジネスコーチになるためのキャリアやスキルには、さまざまなものがあります。また、何をすれば良いかについても、自分がなりたいビジネスコーチの種類によって異なります。
そこで重要となるのが、ビジネスの本質を掴み、経営者や従業員という垣根のない学びを得た上でコーチングを行うことです。
ビジネスコーチは、個々のビジネスパーソンの問題や課題を明確にし、解決に向けた施策を自走できるようにサポートするのが仕事です。
ビジネスコーチングを行うことで、定型的な作業効率を向上させるだけではなく、個人や組織全体で潜在的な問題や課題を顕在化し、解決できるスキルを身につけることができるでしょう。そのため、社内でビジネスコーチを育成する取り組みも進んでいます。
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