企業価値を向上させるブランド力の高め方とブランディングの成功事例を解説
企業を運営する上で、最も重要なポイントは「利益の最大化」にあります。そこで重要となるのが「自社ブランド」の確立です。
ブランドとは、もともと「焼印をつける」という意味の古ノルド語の「brandr」が語源とされ、特定の商品やサービスを生産する企業や組織などが持つ独自の価値観やアイデンティティ、信頼性や認知度などを表す言葉です。
このブランド力を向上させる行為を「ブランディング」と呼び、消費者に対する信頼性の向上、商品やサービスの付加価値の向上、差別化の実現、競争優位性の確立、顧客獲得を促進する上で重要な役割を果たします。このブランド力を向上(強化)させる方法は、さまざまです。
そこで今回は、企業価値を向上させるブランド力の高め方とブランディングの成功事例を解説します。自社ブランドの強化をお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
企業価値を高めるブランド力とは
ブランドとは、もともと古ノルド語の「焼印をつける」という意味の「brandr」に由来し、放牧している家畜が自分の所有物であるかどうかを識別するために使われた言葉がブランドの語源とされています。
企業が販売する商品やサービスには基本的機能があるため、それだけで購入する価値があります。しかし、その商品に付加価値を与えることでブランド価値を高め、差別化を図ることが可能です。
ブランドは顧客と企業の共通の認識であり、顧客に期待を促し、それに応えるものとして効果的な概念です。
米国の経営学者であるフィリップ・コトラー教授によると「ブランドとは、個別の売り手または売り手集団の財やサービスを識別させ、競合する売り手の製品やサービスと区別するための名称、言葉、記号、デザイン、パッケージ、またはその組み合わせであり、商品やサービスに付加的な価値を与えることができる。」と問いています。
このように、企業や商品・サービスなどのブランド力を向上させることで、消費者に対する信頼性の向上、商品やサービスの付加価値の向上、差別化の実現、競争優位性の確立、顧客獲得の促進に役立ちます。
ブランド力は企業価値にも影響する
ブランド力は企業価値にも影響します。そして、企業価値を高めるためには、ブランド力の向上が重要です。
ブランド力とは、企業や商品・サービスの名称、ロゴなどがもつ価値のことであり、自社ブランドが持つ価値を指します。ブランド力には、商品やサービスの品質や価値だけでなく、そのブランドがもつイメージや世界観、価値観など、さまざまなものが含まれます。
企業が自社のブランド力を高めるためには、まず自社のブランドイメージを確立し、消費者に自社のブランドを認知してもらうことが重要です。また、企業のブランドイメージが、消費者の心に響くようなストーリー性や独自性を持たせることも必要です。
さらに、ブランドコミュニケーションやマーケティング活動を通じて、消費者にブランドの価値を伝え、ブランドロイヤルティを高めることも重要となります。
このように、企業価値を高めるためにはブランド力の向上が必要であり、自社のブランドイメージを確立し、消費者にブランドの価値をどのように伝え、広めるかが重要です。
ブランド力を高める方法
企業が競争力を持ち、価値を高める上で、ブランド力は非常に重要です。そこで、ブランド力を高める方法について解説します。
ブランド力を高める方法には、主に次のようなものがあります。
認知度を向上させること
まずは、自社ブランドの認知度を高めることがブランド力を高める一番の方法です。
具体的には、広告や宣伝、マーケティング活動を通じてブランドの知名度を上げることが有効です。
認知度を向上させる方法には、さまざまな方法があります。以下で主な5つの方法を紹介します。
1.コンテンツマーケティングの実施
コンテンツマーケティングは、顧客に役立つ情報を発信することで顧客からの信頼を獲得することを目的としたWEBマーケティング手法のひとつです。
企業が作成するブログ、オウンドメディア、ホワイトペーパーなどのコンテンツを通じて、ターゲット顧客が抱える課題の解決策を示すなど価値が高く信頼できる情報を継続的に発信することで、ブランドイメージを獲得し、認知度を向上させることが期待できます。
2.プレスリリースの利用
プレスリリースは、企業が発表する情報を、ニュース素材としてメディアに提供する文章や資料のことです。
企業の新しい製品やサービス、イベントなどをプレスリリースで発信することで、多くのメディアを通じて情報を拡散し、認知度を向上させることができます。
3.SNSの活用
SNSを活用することで、多くの人々に企業や製品の情報を発信することができます。Facebook、Twitter、Instagram、LinkedInなど、ターゲット層に合わせた適切なSNSを選定し、企業のアカウントを開設して、積極的に情報発信することが大切です。
4.展示会への出展
展示会に出展することで、多くの人々に企業や製品の存在を知ってもらうことができます。展示会でのブース設営や、デモンストレーションなどを通じて、直接的な触れ合いを提供し、信頼感を獲得することが可能です。
4.マス広告
テレビCMやラジオCM、新聞広告、雑誌広告などの「マス広告」を活用すれば、一度に多くの人へ情報を素早く発信できます。ただし、マス広告の利用には莫大なコストがかかるため、すでに認知度の高いナショナルブランドメーカーが主体となっています。
ブランド価値を強化すること
企業のブランドが持つ「価値」を明確にして、それを強化することもブランド力を高める方法の一つです。例えば、商品の品質や特徴、サービスの質など、顧客が重視する要素を改善し、アピールすることでブランド価値を高めることができます。
ブランド価値を強化する方法は多岐にわたりますが、主に次の4つのポイントが挙げられます。
1.ブランドストーリーを明確にする
ブランドストーリーを明確にすることが重要です。
自社の理念やビジョン、歴史、製品やサービスの特徴を盛り込んだ魅力的なストーリーを作り上げることで、顧客に共感を与え、ブランドイメージを高めることができます。
2.ブランドパートナーを選定する
ブランドパートナーを選定することも重要です。
ブランドパートナーとは、共通のビジョンや価値観を持った企業や個人との提携を指します。ブランドパートナーとの協業により、ブランド価値を高めることができます。
3.ポジショニングを明確にする
ポジショニングを明確にすることもブランド価値を強化するポイントの一つです。
自社の製品やサービスが、どのような市場や顧客層に向けられているのかを明確にすることで、顧客に適切なメッセージを届けることができ、ブランド認知度を向上させることができます。
4.提供価値を高める
提供価値を高めることもブランド価値を強化するポイントの一つです。
自社の製品やサービスが、どのような付加価値を提供できるのかを明確にすることで、顧客のニーズに合った提案を行うことができ、ブランドロイヤルティを高めることができます。ブランドの提供価値については、次に詳しく解説します。
以上が、ブランド価値を強化するためのポイントです。ただし、これらのポイントは一例に過ぎないため、自社にあったブランド価値強化の方法を模索することが重要です。
ブランド提供価値を向上させること
企業が提供するサービスや商品が持つ独自性や、消費者にとってのメリット、利便性など、ブランド提供価値を高めることでブランド力を向上させることができます。例えば、商品のデザインや機能の改善、新しいサービスの提供などがその例です。
ブランド提供価値を向上させるには、主に以下の5つの方法が考えられます。
1.顧客ニーズの把握
顧客が求める価値を正確に把握し、その価値を提供することが大切です。顧客とのコミュニケーションを深めることで、顧客ニーズを的確に把握することができます。
2.独自性の強化
自社ブランドの独自性を強化することで、競合他社との差別化を図ることができます。
独自性を強化するためには、自社の強みを把握し、それを生かした戦略を立てることが重要です。
3.提供価値の明確化
ブランドが提供する付加価値を明確にすることで、消費者にアピールしやすくなります。
提供する付加価値を明確にすることで、自社の強みをアピールすることができます。
4.コンテンツマーケティング
コンテンツマーケティングを活用することで、消費者に有益な情報を提供することができます。
消費者が有益な情報を得ることで、ブランドに対する信頼度が高まります。
5.訴求力の強化
ブランドの訴求力を強化することで、消費者にアピールしやすくなります。
訴求力を強化するためには、魅力的なキャッチコピーやデザインを活用することが効果的です。
コミュニケーション力を高めること
企業が提供する情報やコミュニケーション活動を通じて、消費者とのコミュニケーションを深めることもブランド力を高める方法です。
例えば、SNSやブログ、公式ウェブサイトなどを通じて、商品やサービスに関する情報を発信し、消費者とのコミュニケーションを活発化させることが効果的です。
消費者と適切なコミュニケーションを取ることは、より良い商品やサービスを提供するために欠かせません。そのためには、アナログ的なコミュニケーションに加えてデジタルコミュニケーションも有効に活用する必要があります。また、消費者が人間的な魅力を感じることができるブランドづくりも、コミュニケーション力を高めるために重要です。
消費者の行動は常に変化していくため、企業は柔軟に対応できるよう、消費者の嗜好や需要を常に把握し、戦略を見直しながらPDCAを回すことが大切です。
ブランド力を高めるメリット
企業がブランド力を高めるメリットを解説します。
顧客ロイヤリティが向上する
顧客ロイヤリティとは、顧客がある企業や商品、サービスに対して感じる信頼や愛着のことです。また、顧客が企業や商品に対して忠誠心を持つことを意味する場合もあります。
顧客ロイヤリティが向上すると、企業にとってさまざまなメリットや効果が期待できます。例えば、リピート率の向上や解約率の低下が挙げられます。一般的に、新規顧客を獲得するためにかかるコストが高いことが知られており、既存顧客にフォーカスしたマーケティングを行うことが重要です。しかし顧客ロイヤリティが高い顧客は、企業に対して愛着があるため、安易に解約するという気持ちになりにくく、解約率(チャーンレート)の低減につながります。
さらに、顧客の声を正確に把握することによって、顧客ロイヤリティを向上させることができます。そのために、NPS®、LTV、継続利用意向、満足度などの指標を用いて顧客の声を把握し、顧客満足度を向上させることが大切です。
優良な取引先を確保できる
企業が優良な取引先を確保できることで得られるメリットにはいくつかあります。
まず第一に、優良な取引先からの提供物やサービスの品質が高く、企業が提供する製品やサービスの品質向上に繋がる点です。また、優良な取引先との取引は、納品スケジュールの守備範囲が広がり、生産管理や在庫管理が円滑になるため、企業の生産性の向上にもつながります。さらに、優良な取引先との取引は、不良品や不良サービスなどのトラブルが少ないため、企業のリスクマネジメントにも役立ちます。
このような優良な取引先を確保することで、さらなる自社ブランドの向上にも期待できるでしょう。
競合他社との差別化ができる
競合他社との差別化で得られるメリットには、いくつかの点が挙げられます。
まず、競合他社が存在することで、自社の製品やサービスが市場に求められていることが明確になります。そのため、自社の製品やサービスが他社と異なる点を見つけ、それを差別化ポイントとしてアピールすることで、顧客に訴求力のある商品を提供することが可能です。
また、差別化によって、価格競争に巻き込まれることを避けることができます。同じような製品やサービスであっても、差別化を図ることで独自性を打ち出すことができます。そして、その独自性をアピールすることで、自社のブランド価値を高めることが可能です。
さらに、差別化によって、市場を拡大することができる可能性もあります。競合他社と異なる商品やサービスを提供することで、新しい需要を創造することができるためです。また、差別化によって、自社で独自の市場を築くことができる場合もあります。
一方で、差別化戦略にはデメリットも存在します。例えば、差別化によって独自性を打ち出すために、製品やサービスに必要以上にコストがかかることなどです。そのため、差別化ポイントを見つける際には、コスト面を十分に考慮する必要があります。
低コスト・高収益が可能になる
ブランド力の向上によって、低コストで高収益を実現することが可能です。
ブランド力を向上させるためのブランディングに成功すると、商品・サービスに付加価値が生まれるため、コストを抑えたり商品価格を上げたりすることができます。
また、ブランドイメージが向上することで、商品やサービスに対する顧客の信頼感や満足度が高まり、リピーターや口コミでの認知拡大が期待できます。
ただし、ブランディングには一定の期間が必要であるため、短期的な収益向上を期待する場合にはさまざま戦略を組み合わせる必要があるでしょう。
組織力を強化できる
組織力とは、会社全体がブレることなく目標・ゴールに向かえる推進力を養う取り組みのことです。このため、ブランド力を高めることは組織力を強化する一つの手段となり得るでしょう。
ブランド力を強化するためには、企業内組織の意思統一も重要です。社内でブランドの方向性やイメージについての共有を行うことで、企業全体が同じ方向を向き、ブランドイメージの一貫性を維持することができます。社内で統一感がない場合、求職者や顧客に対して混乱を招くこともあります。
このように、企業組織内での意思共有によってブランドイメージの一貫性を維持することが大切です。そして、ブランド力を向上させる取り組みは、組織力の強化にも繋がります。
ブランディングによる企業価値の向上に成功した事例
以下では、国内のブランディングによる企業価値の向上に成功した事例を3つ紹介します。
1.MAZDA【リブランディングの成功事例】
MAZDAは、国内の販売シェアにおいて第4位に位置する自動車メーカーです。
MAZDAのブランディング戦略は、1990年代に大幅な値引き戦略を行った失敗事例から学び「ナンバーワン」よりも「オンリーワン」を目指す戦略を展開し、成果を出しています。
MAZDAは「カーライフを通じて人生の輝きを人々に提供する」というビジョンを掲げ、クルマを通じて人々がより豊かな人生を送ることができるように取り組んでいます。同社のブランディング戦略は「単なる移動手段としてのクルマではなく、人々が愛着を持ち、豊かなライフスタイルを実現するためのパートナーとしてのクルマを提供する」というものであり、自動車メーカーとしては珍しい価値観を持っていると言えるでしょう。
またMAZDA独自の「2%戦略」と呼ばれるビジネス戦略を展開しており、ブランディングにも関わっています。この戦略は、自動車市場において売り上げの2%以上のシェアを持つことを目指し、革新的な技術やデザインを取り入れた高品質な製品を提供することによって、長期的なブランド再構築を目指すものです。
2.Red Bull【商品ブランディングの成功事例】
Red Bull(レッドブル)は、1984年にオーストラリアで誕生したエナジードリンクメーカーです。1987年にエナジードリンク「Red Bull」の販売を開始し、日本への参入は2005年でした。
Red Bullは、同じエナジードリンクの中でも比較的高価でありながら今や若者から絶大な人気を誇る商品として世界的な有名メーカーとなっており、このような急成長の背景にブランディングが大きく関係しています。
Red Bullは「翼をさずける」をコンセプトに、さまざまなスポーツ選手などを中心に「主役を応援するためのアイテム」という姿勢を長年貫いたことで、多くの企業や消費者からの信頼を獲得しました。また、街中に奇抜な宣伝カーを走らせながら商品を無料配布するという地道な手法を活用し、顧客への認知機会を作ってきたことも、Red Bullのブランディングの成功要因と言えるでしょう。
3.タニタ【企業ブランディングの成功事例】
タニタは、体重計や体温計、血圧計など、主に一般家庭向けの健康器具を製造・販売しているメーカーです。
タニタでは、ブランドイメージの強化を目指し、健康づくりに貢献することを企業理念に掲げ、その理念を明確に伝えるために、社内にブランディング推進部を設置し、積極的に活動を展開しています。その取り組みが功を奏し、タニタは「健康を意識したブランド」として認知され、企業イメージの向上に成功しました。
また、タニタは、製品の開発にも力を入れており、独自の技術である「BIA方式」を採用した体組成計を開発したことで、同社の技術力と信頼性が高まり、ブランドイメージの向上にも繋がっています。
さらに、タニタのブランディング成功には、広報戦略の重要性も大きく貢献しています。それは、新しい商品の発表やキャンペーンなどを積極的に行い、マスメディアに露出することで、企業イメージを高める取り組みです。
タニタのコンセプトは「世界の人々の健康づくりに貢献する」ことであり、まず社員の健康を守るための高栄養・低カロリーの食事を提供する「社員食堂」を始めました。そしてこの社員食堂が話題となり、社食向けのレシピ本の販売や一般人も利用できる「タニタ食堂」の出店するなど、自社の事業活動を拡大させながら企業ブランディングの向上にも成功しました。
ブランド力のまとめ
このように、ブランド力の向上は、企業の利益を最大化させるだけではありません。企業が長く存続し、顧客ロイヤリティを高め、企業価値そのものを高める重要な戦略と言えるでしょう。
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