ビジネスコーチングとは、個人や組織にあるビジネス上の問題や課題を解決し、目標達成の支援を行う研修などのプロセスのこと。日本語で「コーチング」と言うと指導者が手取り足取り「教える」というイメージがありますが、これは本来「ティーチング」であるため、コーチングとはアプローチの仕方やプロセスが異なります。

コーチングの基本は「問いかけて聞く」という対話を通じて、受講者の考え方や行動の選択肢を引き出す方法です。この方法により、ビジネスコーチングを受けた受講者には、さまざまな効果を期待できます。

そこで今回は、ビジネスコーチングの効果、目的、メリットと、具体的なやり方を解説します。自社の人材育成にお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。

ビジネスコーチングで期待できる効果とは？

前述したように、中小企業がビジネスコーチングを受けることで、個人や組織のビジネス上の問題や課題を解決し、目標達成の実現を可能にします。以下では、ビジネスコーチングによって享受できる可能性がある、具体的な効果について解説します。

中小企業がビジネスコーチングに期待できる効果は、次の通りです。

1.戦略的な成長の実現に期待できる

ビジネスコーチングでは、経営者が考える企業のビジョンや目標を明確にして、戦略的に成長できるようにサポートします。

ビジネスコーチは、経営戦略の見直しや新たな市場への進出など、ビジネスの成長を戦略的に行えるようにサポートするのが仕事です。

ただ、一般的なコンサルタントとは異なり、ビジネスコーチは企業と並走しながら業務の遂行にあたるのが特徴です。

2.個人や組織のパフォーマンスの向上に期待できる

ビジネスコーチングは、個人や組織のパフォーマンスの向上を促進します。

例えば、従業員のモチベーションやエンゲージメントの向上、効果的なチームワークの構築、生産性の向上など、個人や組織のパフォーマンスを高めるためのサポートを、ビジネスコーチが個人や組織に寄り添いながら達成を目指します。

ビジネスコーチングの特徴は、教育や指導とは異なり、従業員や組織と密接に関わりながら目標を達成に導くところです。

3.リーダーシップ能力の開発と向上に期待できる

ビジネスコーチングは、経営者やチームのリーダーの能力開発とリーダーシップの向上をサポートします。

ビジネスコーチは、リーダーシップスキルの向上、意思決定力の強化、コミュニケーションスキルの改善など、リーダーの成長と組織内での影響力の向上を促進するために、個人と1to1（マンツーマン）で向き合いながらサポートするのが特徴です。

4.業務上の問題や課題の解決に期待できる

ビジネスコーチングは、組織内の問題や課題の解決にも焦点を当てます。

ビジネスコーチは、経営者や経営チームとの対話を通じて課題の分析と解決策の開発とサポートを行います。

ビジネスコーチングは、問題や課題の解決策の一般論を一方通行で提示するのではなく、具体的かつ効果的な対処方法を企業の人材とともに考えながら解決を支援するのが目的です。

そのため、企業にある目の前の問題や課題を解決するだけでなく、解決できるノウハウを構築できるのも強みと言えるでしょう。

5.従業員の成長に期待できる

ビジネスコーチングは、個人の自己成長をサポートするとともに、自己啓発を促します。

ビジネスコーチは自己認識の向上や強みの発見、自己管理のスキル向上など、個人の成長と能力開発を個別にサポートするため、受講者や企業が実際に効果を実感できるでしょう。

このように、ビジネスコーチングでは、経営者や従業員の個々と向き合いながら組織にも寄り添います。この点において、講師やコンサルタントなどによる一方通行な講義や研修とは、研修やトレーニングの内容ややり方が大きく異なります。

具体的な内容とやり方は以下で紹介しますが、ビジネスコーチングの手法を取り入れることで、中小企業の組織の発展や競争力の向上に有益な効果をもたらすでしょう。

中小企業にビジネスコーチングが必要な理由

それでは次に、中小企業にビジネスコーチングが必要な理由について解説します。自社に以下のような課題があると感じている場合は、ビジネスコーチングを取り入れるのがおすすめです。

1.経営課題が解決しにくい

中小企業が抱えやすい経営課題の第一に、成長戦略の策定と実行が難しいことが挙げられます。

中小企業には強大な経営リソースを持つ大手企業と戦うために、競争力を維持し向上させるための持続的な成長が必要です。しかし、そのためには明確なビジョンや目標の設定、市場の分析、競合状況の評価、新たな戦略の策定が不可欠です。

この点において、中小企業には経営分析やマーケターなどの専門家がいないケースがあるため、経営資源を活かしきれていないことも少なくありません。そこで、ビジネスコーチが経営者や経営チームに対して戦略的な思考と具体的な行動計画の策定を支援し、成長を促進します。

2.組織力が弱い

中小企業にとっては、企業組織の強化も重要な課題です。

中小企業は限られたリソースを活用しながら効率的に業務を遂行する必要があります。しかし、組織の連携や意思の疎通が上手くできていなければ、経営資源に勝る大手と戦うことができません。

そこで、ビジネスコーチが組織の内部プロセスや効率性の改善、組織文化の構築、チームビルディングなどをサポートし、組織のパフォーマンスと競争力の向上を図ります。

3.優れたリーダーがいない

中小企業にとっては、従業員のリーダーシップの向上も重要な要素です。

中小企業の成功には、優れた経営者やリーダーの能力が不可欠です。しかし、もともと従業員数が少ない中小企業では、なかなかリーダーが育たないといった課題を抱えている企業も少なくありません。特にカリスマ経営者がトップに立つ中小企業で、その傾向は顕著です。

そこで、ビジネスコーチがリーダーシップスキルの向上や影響力の拡大をサポートします。リーダーシップの強化によって組織内での指導力が高まり、チームのモチベーションやイノベーションの促進に期待できます。

4.企業の問題や課題を顕在化できない

中小企業では、IT化やDXが進まず、業務を効率化できない企業も多くあります。このような場合は、企業にある潜在的な問題や課題を顕在化できていないケースがほとんどです。

経営者と従業員が近い距離にある中小零細企業では、意思の疎通が意外に難しいケースがあります。従業員が経営者の意見に反発できなかったり、素直に従うことが慣習化している場合に起こりがちです。

そこで、ビジネスコーチが問題解決と課題克服に効果を発揮します。中小企業は日常的にさまざまな課題や問題に直面しますが、ビジネスコーチが経営者や経営チームとの対話を通じて、課題の分析や解決策の策定を支援します。これによって、より効果的な解決方法が見つかるだけでなく、組織の持続的な成長の実現にも期待できるでしょう。

5.経営者や経営陣の成長が難しい

中小企業の最大の課題は、経営者や経営陣の成長が難しいことと言っても過言ではないでしょう。

企業外の資本が入っていない中小企業では、ワンマン経営のために経営者の固定概念が経営に反映されがちです。そのためにIT化やDXが進まず、いつまでも業務効率が悪く、せっかく良い商品やサービスを提供しているにもかかわらず市場競争力が低下しているケースもあります。

そこでビジネスコーチが経営者の自己認識の促進や強みの発見、スキルの開発、自己管理能力の向上などを支援し、経営者や経営チームの成長と能力開発を促します。これによって、中小企業のリーダーたちは、より柔軟かつ戦略的なビジネスを展開できるようになるでしょう。

ビジネスコーチングの具体的なやり方とポイント

ビジネスコーチングとは、ビジネスコーチングの知識やスキルを学ぶためのプログラムです。これにより、ビジネスコーチとしての能力を向上させ、受講する個人や組織に対して価値のある知識やスキルの提供を目指します。

以下では、ビジネスコーチングの具体的なやり方とポイントを解説します。

1.コーチングスキルの習得

ビジネスコーチング研修では、コーチングの基本的なスキルである傾聴や質問技術、フィードバックの提供方法、目標設定のサポートなどを行います。

これによって、受講者の思考や洞察力を引き出し、自己認識や行動変容を促す能力を身につけることができます。

2.コーチングフレームワークやモデルの学習

ビジネスコーチング研修では、さまざまなコーチングフレームワークやモデルについての知識やスキルを提供します。

例えば、受講者の目標達成に向けた自己発見と行動計画の支援を行うためのフレームワークとして広く使われている「GROWモデル」や、受講者のリソースやポジティブな要素に焦点を当て、解決策の発見と成果の達成を支援するコーチング手法である「OSKARモデル」などです。

これらは、コーチと受講者が対話的に進めるコーチングセッションにおいて、目標設定や問題解決、自己成長のプロセスをサポートするために効果的に活用されています。

3.ロールプレイや実践機会の提供

ビジネスコーチング研修では、実際の仕事のケースやシナリオに基づいたロールプレイや実践の機会を提供します。これによって、実際のコーチングシナリオをシミュレーションし、コーチングスキルを実践的に練習することができます。

これらを社内で研修する際は、OJTによるトレーニングを取り入れることで、より効果的な学びと業務遂行が可能です。

4.フィードバックとサポート

ビジネスコーチング研修では、トレーナーや他の参加者からのフィードバックやサポートを得ることが重要です。これによって、自身のコーチングスキルやアプローチを改善し、成長を促すことができます。

フィードバックでは、受講者の考えを否定せず、客観的で理解しやすい内容で内省を促すことを目的とします。これにより、受講者のモチベーションを下げることなく、積極的な学びを促進できるでしょう。

5.コーチングの3原則に基づいて行うのがポイント

ビジネスコーチングは、次の「コーチングの3原則」に基づいて行うことが大切です。「コーチングの3原則」とは、双方向（インタラクティブ）・個別対応（テーラーメイド）・現在進行形（オン・ゴーイング）から成ります。

ビジネスコーチングにおいては、この3つの原則を基にした取り組みを行うことが成功のポイントです。以下で、それぞれの内容を解説します。

1.双方向（インタラクティブ）

ビジネスコーチングでは、基本的に個々のビジネスパーソンにアプローチしながら、潜在的な問題や課題を含めた対応を行います。そのため、一般的な研修にあるような、定型的な指導（座学講義やセミナーなど）は行いません。

コーチの役割は、あくまで個々のビジネスパーソンからヒアリングを行い、双方向に質問や疑問をぶつけながら解決策を導くことにあります。そこで、ビジネスコーチング研修においても、この受講者に並走する取り組みが重要です。

2.個別対応（テーラーメイド）

ビジネスコーチングでは、受講者それぞれの個性に合わせたアプローチを行います。そのため、集団で講義を行う定型的なアプローチは行いません。

そのためビジネスコーチには、受講者に個別対応しながら関係性を深めることができるコミュニケーション能力や資質、そして努力が求められます。また、個別対応するための時間とリソースが必要となるため、計画的に研修やトレーニングを進めることが重要です。

3.現在進行形（オン・ゴーイング）

ビジネスコーチングでは、受講者の問題や課題を解決するための「過程にアプローチする」のが特徴です。そのためKGIやKPIを設定し、それぞれのプロセスにおける支援を行います。

ビジネスコーチは、受講者の問題や課題を顕在化して解決策をともに考え、施策の実行にも並走します。そのため、常に「現在進行形」で業務を遂行するのが大きな特徴といえるでしょう。

ビジネスコーチングの効果のまとめ

上記のように、ビジネスコーチングとは個々のビジネスパーソンの問題や課題を明確にして、解決に向けた施策を自走できるようにサポートするプロセスです。

ビジネスコーチングを行うことで、個人や組織全体で潜在的な問題や課題を顕在化し、解決できるスキルを身につけることができるため、中小企業内でビジネスコーチを育成する取り組みが進んでいます。

そこでもし、ビジネスコーチングに関する質問や疑問があれば、いつでもアルマ・クリエイションにご相談ください。それぞれの企業ごとに最適なソリューションをご提供いたします。

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