経営戦略の基本と策定方法|顧客感情を活かすフレームワークを解説
自社の長期的な目標を達成するために、経営戦略を策定する必要がありますが、市場や競合他社の分析だけでは不十分です。それは、より効果的な経営戦略を策定し、実行するには、自社の価値やビジョンを顧客やステークホルダーに伝えることが必要だからです。
そして、そのためには顧客感情を活かすフレームワークが役立ちます。顧客感情とは、顧客が自社の製品やサービスを利用したときに感じる感情のこと。このフレームワークを使えば、経営戦略を効果的に実行し、自社のブランド力や競争力を高めることができます。
そこで今回は、経営戦略の基本と策定方法、そして顧客感情を活かすフレームワークについて徹底解説します。企業の経営戦略の立案や実行に携わる方は、ぜひ参考にしてください。
顧客感情を活かす経営戦略とは?その意義と必要性
顧客感情を活かす経営戦略とは、顧客の感情に働きかけることで購買意欲を刺激し、顧客ロイヤルティを高めることを目的とした戦略です。
感情は人の行動決定に大きな影響を与えるため、感情に訴えかけるマーケティングは効果的です。例えば、「憧れ」「話題性」「おしゃれさ」などの価値観は、顧客の「欲しい」という気持ちを動かします。
顧客感情を活かすことで、顧客ロイヤルティが向上します。顧客ロイヤルティとは、顧客が企業や商品・サービスに対して持つ愛着や信頼の度合いです。顧客ロイヤルティが高いと、リピート購入や口コミなどの好循環が生まれます。
顧客ロイヤルティは、顧客満足度よりも重要な指標です。顧客満足度は、顧客が商品やサービスに対してどの程度満足しているかを表す数値ですが、それだけではリピーターや推奨者になるとは限りません。感情的なつながりがある場合は、競合他社の商品やサービスに流れにくくなります。
このように、顧客感情を活かす経営戦略は、市場の成熟や競争の激化に対応するために必要な戦略です。顧客感情を測定し、分析し、改善することで、企業の収益や成長に貢献できます。
経営戦略の基本プロセス
経営戦略の基本的なプロセスは、以下の手順を踏むことで、効果的な施策となります。ぜひ参考にしてください。
1.経営ビジョンを設定する
経営ビジョンとは、企業が将来に向けて目指すべき姿や理想像を表したものです。経営ビジョンを設定することで、企業の存在意義や目的を明確にし、経営戦略の基盤となります。
経営ビジョンを設定する際には、以下の点に注意する必要があります。
- ・現実的でありながらも挑戦的であること
- ・具体的で分かりやすいこと
- ・社内外の関係者に共感やインスピレーションを与えること
- ・経営理念やミッションと整合性があること
2.環境分析を実施する
次に、環境分析を実施します。環境分析とは、自社が直面する内部環境と外部環境を分析し、自社の強みや弱み、市場の機会や脅威を把握することです。
環境分析を実施することで、自社の競争力や市場ニーズを評価し、経営戦略の方向性を決めるための情報を収集できます。
環境分析を実施する際には、以下の手法がよく用いられます。
SWOT分析
SWOT分析とは、自社の強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)を整理する方法です。
PEST分析
PEST分析とは、外部環境の政治(Political)、経済(Economic)、社会(Social)、技術(Technological)の要因を分析する方法です。
5フォース分析
5フォース分析とは、業界内の競争状況を新規参入者(New entrants)、既存競合者(Rivalry)、代替品(Substitutes)、顧客(Buyers)、仕入先(Suppliers)の5つの力で分析する方法です。
3.戦略オプションを検討する
環境分析ができたら、次に戦略オプションを検討します。
戦略オプションとは、経営ビジョンを達成するために考えられる複数の戦略案です。戦略オプションを検討することで、自社がどのような市場に参入し、どのような顧客に対してどのような価値提供を行うかを明確にします。
戦略オプションを検討する際には、以下のフレームワークがよく用いられます。
アンゾフのマトリックス
アンゾフのマトリックスとは、既存市場・新規市場と既存製品・新規製品の組み合わせから、市場浸透・市場開拓・製品開発・多角化の4つの成長戦略を考える方法です。
ポーターの戦略論
ポーターの戦略論とは、競争優位性と市場範囲から、差別化・低コスト・集中化の3つの基本戦略を考える方法です。
4.戦略選択と実行計画の策定を行う
そして次に、戦略選択と実行計画の策定を行います。
戦略選択とは、検討した戦略オプションの中から、最も経営ビジョンに適合し、実現可能性が高いものを選ぶことです。戦略選択を行うことで、自社の経営方針や目標を明確にします。
戦略選択を行う際には、以下の点に注意する必要があります。
- ・戦略オプションのメリットやデメリットを比較検討すること
- ・戦略オプションの実現に必要な資源やコストを見積もること
- ・戦略オプションの実現に伴うリスクや不確実性を評価すること
実行計画とは、選択した戦略を実現するために必要な具体的な行動やスケジュールを策定することです。実行計画を策定することで、戦略の具体化や進捗管理が可能になります。
実行計画を策定する際には、以下の点に注意する必要があります。
- ・戦略の目標や指標を明確に設定すること
- ・戦略の目標や指標に沿ったアクションプランを作成すること
- ・アクションプランに責任者や期限を割り当てること
5.戦略評価と改善を行う
最後に、戦略評価と改善を行います。
戦略評価とは、実行計画に基づいて戦略の実施状況や成果を測定し、分析し、評価することです。戦略評価を行うことで、戦略の有効性や問題点を把握し、改善策を考えるためのフィードバックが得られます。
戦略評価を行う際には、以下の点に注意する必要があります。
- ・定量的なデータだけでなく、定性的なデータも収集すること
- ・客観的かつ公正な視点で評価すること
- ・評価結果を関係者と共有し、意見交換や学習を行うこと
改善とは、戦略評価の結果に基づいて、戦略や実行計画に必要な修正や変更を行うことです。改善を行うことで、戦略の効果や効率を高めることができます。
改善を行う際には、以下の点に注意する必要があります。
- ・改善の目的や範囲を明確にすること
- ・改善の優先順位や期限を決めること
- ・改善の責任者や担当者を明確にすること
以上が経営戦略の基本プロセスです。経営戦略は一度策定したら終わりではなく、環境変化や事業状況に応じて柔軟に見直しや改善を行うことが重要です。
顧客感情を活かすフレームワークとは?メリットや手順、活用事例を解説
顧客感情とは?
顧客感情とは、顧客が商品やサービスに対して抱く感情のことです。
顧客感情には、喜びや満足、期待や信頼などのポジティブな感情と、不満や不安、怒りや失望などのネガティブな感情があります。顧客感情は、顧客の購買行動やロイヤルティに大きな影響を与えます。
顧客感情を活かすフレームワークのメリット
顧客感情を活かすフレームワークとは、顧客感情を測定し、分析し、改善するための方法論です。顧客感情を活かすフレームワークのメリットには、以下のようなものがあります。
- ・顧客のニーズや期待を正確に把握できる
- ・顧客の満足度やロイヤルティを高めることができる
- ・顧客の口コミや評判を良くすることができる
- ・顧客との長期的な関係を築くことができる
顧客感情を活かすフレームワークの具体的な手順
顧客感情を活かすフレームワークの具体的な手順は、以下のようになります。
1.顧客感情の測定
顧客が商品やサービスに対してどのような感情を持っているかを定量的または定性的に測定します。測定方法には、アンケートやインタビュー、NPS(推奨者指数)やCES(努力指数)などがあります。
2.顧客感情の分析
測定したデータをもとに、顧客感情の傾向や要因、影響度などを分析します。分析方法には、RFM分析やCTB分析、CPM分析などが効果的です。
3.顧客感情の改善
分析した結果をもとに、顧客感情を改善するための施策やアクションプランを策定します。
改善方法には、商品やサービスの品質向上や価値提案、カスタマーサービスやアフターサービスの充実、コミュニケーションや関係構築の強化などがあります。
顧客感情を活かしたフレームワークの活用事例
顧客感情を活かしたフレームワークの活用事例として、以下のようなものがあります。
ロート製薬の事例
ロート製薬では、顧客の声を収集、分析し、顧客感情を活かした商品開発と改善に活用しています。
例えば、目薬の容器の形状やキャップの開けやすさなど、顧客の感情に関わる部分を改善しているのが特徴です。
ベネッセの事例
ベネッセでは、顧客の声を収集、分析し、顧客感情を活かした教育サービスの提供に活用しています。
例えば、子どもの学習意欲や親子関係など、顧客の感情に関わる部分をサポートして成功しています。
アンデルセンの事例
アンデルセンでは、顧客の声を収集、分析し、顧客感情を活かしたパンやケーキの開発・改善に活用しています。
例えば、顧客の好みや嗜好など、顧客の感情に関わる部分を、商品の開発や改善に反映しています。
ディズニーの事例
ディズニーでは、顧客の声を収集、分析し、顧客感情を活かしながらパーク内でのゲスト(来場者)の体験に活用しています。
例えば、CES(努力指数)を用いて、パーク内でのゲストの体験における努力度合いを測定し、サービスの改善に成功しているのが特徴です。
コカ・コーラの事例
コカ・コーラでは、顧客の声を収集、分析し、顧客感情を活かした商品やブランドイメージの開発・改善に活用しています。
例えば「シェア・ア・コーク」キャンペーンでは、顧客が自分の名前や愛称などをコカ・コーラのボトルに印刷できるサービスを提供し、顧客の感情に訴えかけました。
おそうじ本舗の事例
おそうじ本舗では、顧客の声を収集、分析し、顧客感情を活かした清掃サービスの提供に活用しています。
例えば「おそうじレポート」では、清掃前後の写真や清掃箇所や方法などを詳細に報告し、顧客の感情に訴えかけました。
上記の事例は一例ですが、どれも顧客からの声を経営戦略に活かし、事業戦略へと落とし込んでいます。このような取り組みにより、顧客満足度やロイヤルティの向上に成功している点に注目し、自社の経営戦略にお役立てください。
顧客感情を活かしたフレームワークと経営戦略のまとめ
顧客感情を活かしたフレームワークとは、顧客が商品やサービスに対して抱く感情を測定し、分析し、改善するための方法論です。顧客感情は購買行動やロイヤルティに大きな影響を与えるため、顧客感情を活かすことで、企業が市場で優位に立つことができます。
経営戦略とは、企業が将来に向けて目指すべき姿や理想像を表した経営ビジョンを達成するために策定する戦略です。経営戦略は、自社が直面する内部環境と外部環境を分析し、自社の強みや弱み、市場の機会や脅威を把握し、自社の競争力や市場ニーズを評価し、自社がどのような市場に参入し、どのような顧客に対してどのような価値提供を行うかを明確にします。
そして、顧客感情を活かしたフレームワークと経営戦略は、相互に関連しています。顧客感情を活かしたフレームワークは、経営戦略の策定や実行において、顧客のニーズや期待を正確に把握し、顧客の満足度やロイヤルティを高めることができる有効なツールです。経営戦略は、顧客感情を活かしたフレームワークの実施において、顧客感情の改善に向けた施策やアクションプランの方向性や優先順位を決めることができる有効なガイドラインとなるでしょう。
このように、経営戦略に顧客感情は欠かすことのできない要素です。そこで、顧客感情についてもっと詳しく学びたい方には、神田昌典の「ビジネス探究」チャンネルがおすすめです。
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