最新記事

ダイバーシティー経営が推進される理由と多様な個を生かすメリットを解説

作成者: 水落康稀|2024.5.15

ダイバーシティ(多様性)は、今日のビジネス環境において、最も注目されている概念の1つです。なぜなら、企業が直面する多くの課題に対する答えとして、また新たな価値を創造する源泉として、多様な人材が求められているからです。

ダイバーシティー経営が推進される理由は、多様な人材が集まることで、異なる視点やアイデアが生まれ、イノベーションが促進されるからです。さらに、多様なチームは、顧客基盤の広がりを反映し、より幅広い顧客ニーズに応えることができます。

しかし、多様性を受け入れることは、組織にとっての挑戦とも言えるでしょう。それは、異なる背景を持つ人々が協力して働くためには、互いの違いを理解し、尊重する文化が必要だからです。

そこで今回は、ダイバーシティー経営が推進される理由と、多様な個を生かすメリットについて徹底解説します。企業の経営者の方はもちろん、多様な人材のリーダーとして活躍されている方も、ぜひ参考にしてください。

そもそもダイバーシティーとは?基本的な概念を解説

ダイバーシティー(Diversity)とは、日本語で「多様性」と訳される、さまざまな人々や要素のバリエーションや相違点のことを指す言葉です。

具体的には、年齢、人種、宗教、学歴、性的傾向、障がいの有無など、さまざまな違いや傾向を持つ人々が集まった状態を表します。

ビジネスシーンにおいて、これらの多様な違いを積極的に活用し、組織の中に取り入れる姿勢がダイバーシティ経営(ダイバーシティマネジメント)です。

ダイバーシティには、大きく分けて「表層的な属性」と「深層的な属性」の2種類があります。表層的な属性とは、他者から見えやすい部分の属性です。例えば、性別、国籍、人種、性的傾向、障がいの有無などが含まれます。一方、深層的な属性は、内面的な部分の属性です。これには、職務経験、家庭環境、考え方、教育、宗教、働き方、コミュニケーション能力、言語などが挙げられます。

ダイバーシティと密接に関連する概念として、インクルージョン(Inclusion)があります。インクルージョンは「包摂」と訳され、全ての人々を包み込むことを意味し、社会的に弱い立場の人々を社会の一員として受け入れ、共生する理念です。

ダイバーシティが多様性を受け入れた状態を指すのに対し、インクルージョンではそれらの多様性が活かされていることを指します。

ダイバーシティ経営を推進する目的とメリット

ダイバーシティ経営を推進する目的とメリットには、以下のようなものが挙げられます。

ダイバーシティ経営を推進する目的5つ

ダイバーシティ経営を推進する目的は次の5つです

1.イノベーションの促進

多様なバックグラウンドを持つ人材が集まることで、新しいアイデアや解決策が生まれやすくなります。

2.市場ニーズへの対応力の強化

異なる視点を持つことで、より広範な顧客ニーズに対応できるようになります。

3.人材の確保と活用

多様な人材を受け入れることで、優秀な人材の採用範囲が広がります。

4.社会的責任の達成

多様性を尊重することで、社会的な期待に応えることができます。

5.組織の柔軟性と適応性の向上

変化に対応する能力が高まり、組織全体のレジリエンスが強化されます。

ダイバーシティ経営がもたらすメリット

ダイバーシティ経営が企業にもたらすメリットは、以下の5つです。

1.人材獲得力の向上

多様な人材を受け入れることで、採用の選択肢が増え、人材獲得の可能性が高まります。

2.リスク管理能力の向上

多様な意見が出されることで、リスクの早期発見と回避が可能になります。

3.イノベーションの創出

異なるバックグラウンドを持つ人材が協力することで、新しいアイデアや製品、サービスの開発が促進されます。

4.社外からの評価の向上

ダイバーシティに富んだ組織は、社会的責任を果たしていると見なされ、信頼と評価を得やすくなります。

5.市場ニーズへの対応力の強化

多様な顧客層に対応するためには、それらのニーズを理解し、適切な製品やサービスを提供することが重要です。

これらの目的とメリットは、企業の競争力を高め、持続可能な成長を支えるために非常に重要です。

ダイバーシティ経営は、単に多様な人材を受け入れるだけでなく、それぞれの能力を最大限に活かし、組織全体としての価値を高めることを目指しています。また、経済産業省によると、ダイバーシティ経営はイノベーションを生み出し、価値創造につながる経営と定義されており、これらの目的を達成することで、企業の競争力を向上させることが可能です。

多様性を受け入れる企業文化の構築方法7ステップ

多様性を受け入れる企業文化を構築する方法は、組織内での意識改革と実践的な取り組みが必要です。以下では、そのための具体的な7つのステップを解説します。

1.トップダウンのアプローチ

経営層が多様性を重視する姿勢を示し、企業文化の変革をリードすることが重要です。経営者が積極的に多様性を推進することで、組織全体にその価値が浸透します。

2.教育とトレーニング

従業員に対して多様性とインクルージョンに関する教育を行い、異なる文化やバックグラウンドを理解し尊重する意識を高めます。

3.コミュニケーションの強化

多様な意見が尊重されるオープンなコミュニケーションを促進し、従業員が自由に意見を交換できる環境を作ります。

4.多様な採用戦略

採用プロセスにおいて多様性を重視し、様々なバックグラウンドを持つ人材を積極的に採用します。

5.インクルージョンの実践

多様性を受け入れるだけでなく、それを組織の強みとして活用するための具体的な施策を実施します。

6.多様性とインクルージョンの目標設定

明確な目標を設定し、それを達成するための戦略を立て、進捗を定期的に評価します。

7.フィードバックと改善

従業員からのフィードバックを受け入れ、多様性とインクルージョンの取り組みを継続的に改善します。

これらのステップを通じて、多様性を受け入れる企業文化を構築し、組織のイノベーションと競争力を高めることが可能です。また、従業員の満足度とエンゲージメントの向上にも寄与します。

企業はこれらの取り組みを通じて、多様性がもたらす利点を最大限に活用することができるでしょう。

ダイバーシティー経営を推進する具体的な方法

ダイバーシティ経営を推進するためには、以下のような具体的な方法があります。

経営戦略への組み込み

経営のトップが多様な人材の必要性を認識し、ダイバーシティの推進によって目指す企業像を明確に示すことが重要です。

例えば、「女性管理職比率を30%以上とする」などの具体的な目標を設定します。

推進体制の構築

経営者がダイバーシティ推進のリーダーとなり、推進体制を構築することがポイントです。各事業部門との役割分担や連携体制を整理し、全社的に進められるような体制を整えます。

ガバナンスの改革

効率的なダイバーシティ推進のためには、組織のガバナンスを見直し、多様性を尊重する文化を根付かせる必要があります。

全社的な環境の整備

多様な人材が活躍できる職場環境を整えることが大切です。これには、柔軟なワークスタイルの導入や、社内にダイバーシティの理解を広める取り組みが含まれます。

管理職の行動・意識改革

管理職がダイバーシティを理解し、推進することで、部下やチームにもその意識が浸透します。

従業員の行動・意識改革

従業員一人ひとりがダイバーシティを理解し、尊重することで、組織全体として多様性が活かされるようになります。

労働市場・資本市場への情報開示と対話

企業がダイバーシティ推進に関する情報を積極的に開示し、ステークホルダーとの対話を通じて理解を深めることも重要です。

これらの方法は、経済産業省の「ダイバーシティ2.0行動ガイドライン」に基づいています。ダイバーシティ経営を成功させるためには、これらのアクションを継続的に実施し、組織文化として定着させることが不可欠です。

ダイバーシティー経営の成功事例

ダイバーシティ経営の成功事例には、さまざまな企業がありますが、ここでは特に注目されているいくつかの事例を紹介します。

東和組立株式会社の事例

岐阜県にあるこの企業は、自動車用ショックアブソーバーを製造しており、従業員数135人のうち外国人38人、障がい者15人を雇用しています。

多様な属性の人材が活躍することで労働生産性を向上させるため、業務の固定化を廃止し、人材の特性に合わせた配置を実施しています。

ITやIoTを活用して多能工化を実現し、出来高生産性が約25%向上しました。

株式会社サニックスの事例

山形県のこの企業は、自動車整備業及び輸送機械器具製造業を営む企業で、従業員数75人です。

優秀な技術者の不足や若い人材の確保と技術の継承が課題でしたが、新卒採用と育成・定着、企業イメージ刷新のための職場環境改善を推進し、若手社員からシニア社員までの情報共有が図られ技術継承が進展しました。

これらの企業は、ダイバーシティ経営を通じて、多様な人材の活躍を促し、組織全体の生産性向上に成功しています。ダイバーシティ経営は、単に多様な人材を受け入れるだけでなく、それぞれの特性を活かして企業価値を高めることが重要です。

これらの事例は、他の企業にとっても参考になるモデルと言えるでしょう。

ダイバーシティー経営がもたらすイノベーションの具体例

ダイバーシティ経営がもたらすイノベーションの具体例としては、以下の事例が挙げられます。

新たなプロダクトの開発

多様なバックグラウンドを持つ従業員が協力して、異なる文化や言語に合ったアプリやサービスを開発し、世界中でユーザーに愛される製品を生み出すことができます。

プロセスの改善

異なる視点を持つ従業員が集まることで、従来のビジネスプロセスを見直し、より効率的で革新的な方法を導入することが可能です。

市場ニーズの発見

多様な従業員が自らの経験を活かして新たなニーズや市場を発見し、それに対応するサービスや製品を開発できます。

顧客対応力の強化

IBMをはじめとするグローバル企業では、ダイバーシティマネジメントを積極的に推進し、世界各地の顧客ニーズに応じた製品やサービスを提供する力を強化しました。

これらの事例は、ダイバーシティ経営がいかに企業のイノベーションに貢献しているかを示しています。多様な人材が集まることで、新しいアイデアや解決策が生まれ、企業の成長や競争力の向上につながっています。

ダイバーシティ経営は、単に多様な人材を受け入れるだけでなく、それぞれの特性を活かして企業価値を高めることが重要です。

ダイバーシティー経営の課題と克服方法

ダイバーシティ経営を推進する際には、いくつかの課題が存在し、それらを克服するための方法があります。そこで以下では、主な課題とその解決策について解説します。

シニア社員の活躍

ダイバーシティー経営では、シニア社員が自らのキャリアを考える意識を持つ支援と、役割を発揮する機会づくりが必要です。

そこで研修等を通して、シニア社員に企業の成長を支える人材として長く活躍してほしいという期待を伝え、キャリア形成の意識を持ってもらうことが重要です。

女性の活躍と活用

ダイバーシティー経営では、女性管理職のロールモデルが少なく、自信の無さや漠然とした不安から積極的な役割発揮に躊躇してしまうことがあります。

そこで、女性活躍支援のための委員会の設置や育児休業制度の拡充など、女性が活躍しやすい環境を整えることが効果的です。

障がい者や外国人の活躍

ダイバーシティー経営では、多様な人材・価値観を受け入れるダイバーシティの取り組みを進める中で、組織内の調和を保つことが課題となることがあります。

そこで組織全体として最低限共有するビジョンやミッションを定め、多様性を尊重する文化を根付かせることが重要です。

コミュニケーションの壁

ダイバーシティー経営では、多様なバックグラウンドを持つ社員間でのコミュニケーションが難しくなることがあります。

そこで簡単な言葉で話す、内容を具体的に伝えるなど、コミュニケーションの工夫が求められます。また、ダイバーシティを推進する中で、社員同士にコミュニケーションの壁が生まれないようにするための研修を行うことも有効です。

働き方の違いによる業務の遅れ

ダイバーシティー経営では、リモートワークや時差勤務など、働き方の違いによって業務の遅れが生じることがあります。

そこで、締め切りやミーティングの日時を丁寧にリマインドするなど、時間感覚の違いへの対応が必要です。また、ITを上手に活用することで、働き方の改革を進めることがキーポイントになります。

これらの課題を克服することで、ダイバーシティ経営を成功に導き、組織のパフォーマンス向上や経営上の成果に結びつけることができます。ダイバーシティ経営では、多様な人材を受け入れるだけでなく、それぞれの特性を活かして企業価値を高めることが重要です。

ダイバーシティー経営のまとめ

このように、ダイバーシティー経営は、少子高齢化が進む現代のビジネス環境において多様な人材を活用することで企業の競争力を高め、持続可能な成長を実現するために不可欠な要素と言えるでしょう。

ダイバーシティー経営を推進することで、企業の人材獲得や働き方改革、グローバル化への対応はもちろんのこと、これまでになし得なかった多くの問題や課題の解決策を見出せるようになるかもしれません。

そこで、もしダイバーシティー経営に関する疑問や質問のある方は、いつでもアルマ・クリエイションにご相談ください。貴社に最適なソリューションを提供いたします。

 

  • 下記のボタンからは、日本一のマーケッター神田昌典氏が、あなたの目標に近づく原動力となる具体的で役立つ言葉を毎日紡いで配信中です。

    • 1. 毎日その日にぴったりのメッセージが明日の朝から自動的に届く
      2. 5 秒で簡単に読めるから、高度な内容でも頭に入ってくる
      3. 配信ごとに様々なテーマを取り扱うため、飽きずに楽しめる


    毎朝マーケティングのヒントとなる素敵なコトバが届きます!ぜひお試しください。

  • ▼詳しくは👇こちらをクリック▼