社員教育の種類と効果的なやり方|人材育成の目的や研修の流れを解説
社員教育とは、企業が従業員を教育する手段の全般を指すものであり、実際の業務で必要な知識やスキルを身に付けることを目的として行われます。社員教育により、従業員がより生産的に仕事をこなせるようになることや、企業の競争力を高めるために必要な能力を身に付けるといった複数のメリットがあります。
社員教育にはさまざまな種類があるため、それぞれの目的に合わせて効果的な社員研修を行うことが大切です。そして、効果的な社員研修を行うためには、人材育成する目的を明確にする必要があります。しかし、厚生労働省の調査からも分かるように、どのような社員教育を施すべきかといった課題をもつ企業が約7割もあるのが現状です。
そこで今回は、社員教育の種類と効果的なやり方、人材教育の目的や研修方法を詳しく解説します。これから社員研修を行う方はもちろん、自社の社員研修にお悩みのある方も、ぜひ参考にしてください。
社員教育の種類
社員教育とは、企業が社員に業務で必要となる知識やスキルを身に付けさせることを目的として行われる、重要な施策です。社員教育を行うことで、従業員一人ひとりがより生産的に業務を行えるようになるため、企業にとって重要な要素の1つです。
社員教育には、以下のような種類があります。
オンボーディングトレーニング
オンボーディングトレーニングとは、新入社員や中途採用社員などの新しく組織に加わった社員が、より効果的に業務に取り組めるようにするためのトレーニングです。
オンボーディングトレーニングは、企業独自の文化やビジョン、業務プロセスやルール、コンプライアンスなどを習得することが目的となります。
オンボーディングトレーニングの内容は企業によって異なりますが、以下のようなトレーニング項目が一般的に行われます。
- ・企業理念やビジョンの説明
- ・業務プロセスやルールの説明
- ・コンプライアンスの重要性や徹底方法の説明
- ・各部署の役割や仕事内容の紹介
- ・社員同士のコミュニケーションの方法や、上司とのコミュニケーションのポイント
- ・社内システムの使い方の説明
- ・その他、必要なスキルや知識の習得に関するトレーニング
オンボーディングトレーニングによって、新しい社員がすぐに仕事に取り組めるようになるだけでなく、企業文化やビジョンを共有することで社員のモチベーションアップや定着率の向上に繋がるのが特徴です。そのため、多くの企業で導入されているトレーニングの1つとなっています。
スキルトレーニング
スキルトレーニングには、さまざまな方法があります。例えば、技能検定の活用などがあります。
技能検定とは、国が労働者の技能を一定の水準によって検定し、技能の高さを証明する国家検定制度です。検定合格者には、厚生労働大臣名などの合格証書が交付されます。
技能検定を活用することで、労働者のスキル習得意欲を高めることができるだけでなく、スキルアップした社員が増えることで、企業にとっても業務の効率化や品質向上に繋がるメリットがあります。
また、技能検定合格者の認定制度を設けることにより、社員のやる気を向上させることも可能です。ただし、技能検定は単なるスキルアップのみでなく、資格取得やステップアップなどのキャリアアップにも役立つことから、計画的かつ戦略的な活用が必要です。
それ以外にも、企業内で独自のスキルアップ制度や評価基準を設け、それぞれに合わせた役職や賃金を支給するといった方法もあります。
社員のスキルアップは、企業の業績や生産性の向上に直結する重要な要素であるため、社員教育の中でも注目度や必要性の高い研修と言えるでしょう。
リーダーシップトレーニング
リーダーシップトレーニングは、企業にとって重要な施策の1つです。リーダーが持つべきスキルや行動、考え方を教育することで、組織全体の力を引き出し、業績向上に繋げることができます。
リーダーシップトレーニングにおいては、以下のようなスキルを習得できるカリキュラムが組まれるのが一般的です。
- ・自己認識能力の向上
- ・コミュニケーション能力の向上
- ・問題解決力の向上
- ・チームマネジメント能力の向上
- ・意思決定力の向上
リーダーシップトレーニングによって、リーダー自身が能力を向上させることで、チームや部下の能力向上にも繋がります。また、リーダー自身が組織のビジョンや目標について深く理解し、共有することで、社員のモチベーションの向上にも繋がるでしょう。
コンプライアンストレーニング
コンプライアンストレーニングは、現代の企業にとって非常に重要な課題の1つです。
コンプライアンス研修は、社員に対してコンプライアンスの重要性や違反によって生じるリスク、守るべき法令を周知し、就業規則などを確認するのが目的です。その内容は広範囲にわたるものの、企業においては、自社に合わせたトレーニングを行う必要があります。
コンプライアンスに関するトレーニングには、法令遵守に関する知識やコンプライアンスの意識向上、違反行為の防止策、許認可取得の方法などが含まれます。社員に適切な知識を提供することで、企業の業務の効率化やリスク軽減に繋がるでしょう。
また、コンプライアンス研修は、一回限りで終わらせるのではなく、定期的な研修やトレーニングが必要です。社員が日々の業務で遵守すべき法令やルールの変更に対応するためにも、常に最新の情報を提供することが大切です。また、企業によっては、内部監査やチェックリストの作成、モニタリング体制の整備などが必要となるケースもあります。
コンプライアンス研修は、社員が企業の規則や法令を遵守することを促進するだけでなく、企業の信頼性やブランド価値の向上にも繋がる重要な施策です。
セキュリティトレーニング
セキュリティトレーニングも、コンプライアンストレーニングと同じように、現代の企業にとって欠かせない重要課題の1つです。
企業の情報セキュリティは、従業員一人ひとりが自覚を持って遵守することによって維持されるものであるため、従業員を納得させられる説得力と具体性を備えたトレーニングが求められます。
セキュリティトレーニングには、メールの添付ファイルについてのパスワードの設定方法やUSBメモリの取り扱い方法、社外に持ち出す場合のルールなどがあります。また、マルウェアやフィッシング詐欺などの脅威についての知識や、セキュリティに関する重要なポイントの理解なども必要です。
従業員が情報セキュリティについて十分な知識を持ち、ルールを守ることができるようになるためには、継続的なトレーニングが必要です。また、企業によっては定期的な研修やトレーニングだけでなく、内部監査や社員のセキュリティ意識向上のための啓発活動も行っています。
セキュリティトレーニングは、企業の情報セキュリティにおいて欠かせない施策です。そこで、従業員が企業の情報資産を守るために必要な知識やスキルを身につけることができるよう、企業が積極的に取り組むべき課題と言えるでしょう。
社員教育の実施手法
社員教育にはさまざまな手法があります。例えば、社内ポスターや社内SNSを使った情報共有、メンタリングやコーチング、e-ラーニングやオンラインセミナー、ワークショップやグループディスカッション、外部の講師を招いた研修などです。
企業がどの手法を採用するかは、教育の目的や対象者、コストや実施のタイミングなどによって異なります。また、近年では、AIやVRを使った教育も注目されています。
このように、社員教育のやり方は多岐にわたるため、企業のニーズに合わせて選択することが重要です。
社員教育の目的
社員教育による人材育成の目的には、次のようなものがあります。
技術や知識の習得
社員教育は、従業員が必要とする技術や知識を習得するための重要な手段です。社員教育を通じて、従業員は自分たちの業務に必要なスキルや知識を身に付け、効果的に業務を遂行することができます。
具体的には、製品やサービスの知識、業務プロセスやシステムの使い方、コミュニケーションスキルなどの習得です。これらのスキルや知識は、業務効率を改善し、品質を向上させるために必要なものであり、社員教育を通じて従業員がより高いパフォーマンスを発揮することが期待されます。
業務プロセスの改善
社員教育は業務プロセスの改善にも効果があります。
社員が効率的かつ正確に業務を遂行するためには、業務プロセスの改善が必要です。社員教育を通じて、業務プロセスの改善について学び、その改善案を実践できます。
例えば、ミスが多く発生している業務に対して、社員に対するトレーニングを行い、ミスの原因を洗い出すことができます。また、業務フローの見直しや改善案の提案など、社員からの意見を積極的に取り入れることも重要です。
社員が業務プロセスについて深く理解し、改善案を実践することで、業務の効率化や品質の向上が期待できます。
リーダーシップやコミュニケーション能力の向上
社員教育は、リーダーシップやコミュニケーション能力の向上にも効果があります。
社員同士や上司とのコミュニケーションを円滑に行うことで、チームワークの向上や業務の円滑な進行、モチベーションの向上に期待できます。
具体的には、コミュニケーション能力を高めるためのトレーニングや、プレゼンテーション技術の向上、コーチングやフィードバックのスキルを身に付けるトレーニングなどがあります。
また、リーダーシップ向上のためには、マネジメントの基礎やビジネス戦略の理解、チームマネジメントや目標管理のトレーニングが効果的です。これらのトレーニングは、社員一人ひとりの能力向上や、チーム全体のパフォーマンス向上にも繋がるでしょう。
企業文化やビジョンの共有
社員教育によって、企業文化やビジョンの共有が促進可能です。
社員教育を通じて、企業が目指す方向性や価値観を明確にできます。また、社員がそれらを理解し、共有することで、企業全体が一体となり、目標達成に向けた取り組みがしやすくなるでしょう。
さらに、社員が企業文化やビジョンを理解し、それを実践することで、社員のやる気やモチベーションが向上し、組織全体のパフォーマンス向上にも期待できます。
コンプライアンスの徹底
社員教育は、企業のコンプライアンス徹底にも役立ちます。コンプライアンスとは、法令やルール、倫理規範などに従うことであり、企業にとっては重要な経営課題の一つとなっています。
社員教育によって、社員たちは企業が遵守すべき法令やルール、倫理規範などを正しく理解し、それらを遵守する意識を高めることが可能です。また、社員たちに違反行為がないよう、コンプライアンスの重要性を定期的にアピールすることで、企業としても安心して事業を展開させることができるでしょう。
具体的な取り組みとしては、コンプライアンスに関するトレーニングや教育を実施することや、コンプライアンスに関する相談窓口を設置することなどが挙げられます。さらに、社員たちがコンプライアンスを遵守するために必要な情報やルールを明確にすることも重要です。
これらの取り組みによって、社員たちのコンプライアンス意識が高まり、企業のコンプライアンス徹底に繋がります。
安全衛生管理の徹底
社員教育は、安全衛生管理の徹底にも役立ちます。
従業員に対して、安全に関する正しい知識や技能を教育することで、労働災害や健康被害のリスクを低減することができます。また、安全衛生管理に関する法令やルールの遵守を徹底するためにも、従業員に対して適切な教育が必要です。
具体的には、安全衛生管理に関する教育プログラムを設けることが考えられます。例えば、作業環境におけるリスク評価や安全対策、安全に関する法令やルールの理解などについて、トレーニングやワークショップを実施することが挙げられます。また、定期的に安全衛生管理の見直しを行い、必要に応じて教育プログラムを改善することも重要です。
社員教育による安全衛生管理の徹底は、従業員の安全と健康を守るだけでなく、企業にとっても業務の継続性や信頼性を高めるために重要な取り組みです。
上記のような社員教育を実施することで、従業員の能力向上や仕事の効率化、企業の成長につなげることができるでしょう。また、それぞれの企業においては、自社の状況や課題に合わせた適切な教育方法や教育内容を検討し、社員教育に力を入れることが重要です。
社員教育の流れ
上記のように、社員教育には、技術や知識だけでなく、リーダーシップやコミュニケーション能力、ビジネスマナーやコンプライアンスなど、幅広い分野での人材育成が含まれます。
以下では、人材育成の研修の流れを紹介します。
社員教育の目標設定
社員教育において、目標設定は非常に重要です。目標を設定することで、教育の方向性や成果の評価が可能となります。
教育の目標を設定する際は、まず解決すべき課題を明確にし、それを基に目標を設定することが大切です。また、目標は明確かつ具体的なものであることが望ましいと言えるでしょう。
例えば、スキルアップを目的とする場合、どのスキルをどの程度身につけるかを明確にすることが重要です。また、目標は社員の能力や現状に合わせて設定するのが理想です。目標が高すぎる場合は社員がモチベーションを失う可能性があり、低すぎる場合には成長を阻害することがあるため、注意が必要です。
教育プログラムの設計
社員教育のプログラム設計には、従来のカリキュラムや教育設計の手順が適用されることがあります。一般的に、教育設計の手順は「分析」「設計」「開発」「実施」「評価」の5つのフェーズから成り立ちます。
社員教育の場合、教育設計フェーズで目標やゴールを設定することが重要です。その上で、カリキュラムや教材の選定、トレーニング方法の決定、評価方法の設定などを行い、効果的な教育プログラムを構築することが求められます。
社員教育の実施
社員教育を実施するためには、教育の実施方法を決定する必要があります。大きく分けて、実際の業務の中で学ぶOJT(On The Job Training)と、業務の現場から離れて学ぶOFF-JT(Off The Job Training)があります。
OJTは実際の業務の中で学ぶため、実践的なスキルや知識を身につけることが可能です。一方、OFF-JTは業務の現場から離れた場所で学ぶため、広い視野や理論的な知識を身につけることができます。
OJTとOFF-JTのどちらの方法を採用するかは、教育の目的や対象者、環境などによって異なります。
社員教育とプログラムの評価
社員教育の評価方法としては、アメリカの経済学者ドナルド・L・カークパトリックが1975年に提唱した「4段階評価法」が世界的に定着しています。
この方法は、教育の効果を「反応」「学習」「実行」「結果」の4つの段階で評価するもので、実施後の教育プログラムの改善に役立ちます。具体的には、反応段階では受講者の満足度や評価を測定し、学習段階では受講者の知識やスキルの向上を評価し、実行段階では実際に職場で行動や業務に反映されたかどうかを評価し、最終的に結果段階では教育がもたらした成果を評価します。
社員教育とプログラムの評価を次のプロセスに繋げることで、PDCAを効果的に回せるようになるでしょう。
社員教育のフィードバックと改善
プログラムに参加した社員からのフィードバックを受け取ることで、社員教育の改善を図ることが可能となります。
フィードバックを行うことで、社員が自分自身の強みと弱みを認識し、改善のための計画を立てることができます。そのため、フィードバックを定期的かつ具体的に行うのが理想的です。
また、社員がフィードバックを受けることでモチベーションが向上し、行動力を高めるなどの心理的効果にも期待できます。そして、フィードバックを受けた社員が計画を立てて改善することで、教育プログラムの改善にも繋がります。
社員教育の種類と効果的なやり方のまとめ
このように、社員教育の種類と効果的なやり方については、それぞれの企業に必要な教育の種類を選び、適切な方法で研修を行うことが重要です。
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