社員教育の目的と効果的なやり方、メリット・デメリットなどを解説
社員教育の目的は、スキルアップや業務改善、生産性の向上、組織の課題解決、リーダーシップ育成などが挙げられます。ただし、社員一人ひとりが所属する部署や職務に応じて必要なスキルや知識が異なるため、個別に教育が行われることもあります。
教育のやり方としては、オンライン学習、セミナーや研修、実践トレーニングなどさまざまです。
社員教育は、やり方次第で従業員のモチベーションや定着率の向上にも繋がるため、企業にとって非常に重要な要素であると言えるでしょう。しかし、厚生労働省の調査からも分かるように、どのような社員教育を施すべきかといった課題をもつ企業が約7割もあるのが現状です。
そこで今回は、社員教育の目的とやり方について、企業が効果的に人材育成をする方法を解説します。これから社員研修を行う方はもちろん、自社の研修に課題や疑問もある方も、ぜひ参考にしてください。
社員教育が必要な背景と理由
社員教育が必要とされる背景には、ビジネス環境の急激な変化や競争力の激化などがあります。
ビジネス環境の変化としては、ITやDXの推進や市場のグローバル化、少子高齢化といった複数の要因があります。これらの変化に対応するためには、社員が新しいスキルや知識を身につけ、柔軟かつ迅速に対応する必要があります。また、市場競争の激化に対応するためには、社員のモチベーションを高め、組織全体の能力の向上が必要です。
そこで重要となるのが、社員教育です。社員教育を行うことで、個々のスキルアップを図り、生産性を向上させることができます。また、企業理念やビジョンを共有・浸透させることにより、社員全員が同じ目標に向かって取り組むことができ、組織としての強みを生み出せるでしょう。
さらに、社員教育によって、企業の社会的な信頼を得ることも可能です。社員教育によって、自社の社員が社会人としてのマナーや振る舞いを身につけることで、顧客やパートナー企業とのコミュニケーションを円滑に行えるようになるため、企業としてのイメージアップにつなげることも可能です。
しかし、社員教育にはデメリットもあります。例えば、社員教育にかかるコスト、社員が研修に参加することによる仕事の遅れ、研修の内容が社員にとって必要でなかった場合の無駄な時間といったケースです。そこで社員教育を実施する際は、綿密な計画とスケジュール管理が必要となります。
以上のように、企業にとって社員教育は必要かつ重要な要素ではありますが、その計画と実施には、慎重な検討が必要です。
社員教育の目的
社員教育とは、企業の業務を遂行するために必要な知識やスキルを社員に提供することです。社員教育は、企業理念やビジョンを社内で共有し、浸透させるために必要不可欠なものであり、個々のスキルアップを図り、生産性を向上させるためにも必要な活動です。
具体的な社員教育の目的は、主に次のようなものがあります。
技術や知識の習得
社員教育は、従業員が必要とする技術や知識を習得するための重要な手段です。社員教育を通じて、社員それぞれの業務に必要なスキルや知識を身に付け、より効率的に業務を遂行できます。
具体的な技術や知識として、製品やサービスの知識、業務プロセスやシステムの使い方、コミュニケーションスキルなどがあります。これらのスキルや知識は、業務効率を改善し、品質を向上させるために必要なものです。社員教育を行うことで、従業員がより高いパフォーマンスを発揮できるでしょう。
業務プロセスの改善
社員教育は、業務プロセスの改善にも効果があります。社員が効率的かつ正確に業務を遂行するためには、業務プロセスの改善が必要です。社員教育を通じて、業務プロセスの改善について学び、その改善案を実践できます。
例えば、ミスが多く発生している業務に対してトレーニングを行い、ミスの原因を洗い出すことができます。また、業務フローの見直しや改善案の提案など、社員からの意見を積極的に取り入れることも重要です。
社員が業務プロセスについて深く理解し、改善案を実践することで、業務の効率化や品質の向上に期待できます。
リーダーシップやコミュニケーション能力の向上
社員教育は、リーダーシップやコミュニケーション能力の向上にも効果があります。社員同士や上司とのコミュニケーションを円滑に行うことで、チームワークの向上や業務の円滑な進行、モチベーションの向上に期待できます。
具体的な教育方法は、コミュニケーション能力を高めるためのトレーニングや、プレゼンテーション技術の向上、コーチングやフィードバックのスキルを身に付けるトレーニングなどです。また、リーダーシップ向上のためには、マネジメントの基礎やビジネス戦略の理解、チームマネジメントや目標管理のトレーニングが効果的です。
これらのトレーニングは、社員一人ひとりの能力向上や、チーム全体のパフォーマンス向上にも繋がります。
企業文化やビジョンの共有
社員教育によって、企業文化やビジョンの共有ができます。社員教育を通じて、企業が目指す方向性や価値観を明確にできます。また、社員がそれらを理解し、共有することで、企業全体が一体となり、目標達成に向けた取り組みがしやすくなるでしょう。
さらに、社員が企業文化やビジョンを理解して実践することで、社員のやる気やモチベーションが向上し、組織全体のパフォーマンスの向上にも期待できます。
コンプライアンス遵守の徹底
社員教育は、企業のコンプライアンス遵守の徹底にも役立ちます。コンプライアンスとは、法令やルール、倫理規範などに従うことで、現代の重要な経営課題の一つとなっています。
社員教育によって、企業が遵守すべき法令やルール、倫理規範などを社員それぞれが正しく理解し、それらを遵守する意識を高めることが可能です。
また、社員たちに違反行為がないよう、コンプライアンスの重要性を定期的にアピールすることで、企業としても安心して事業を展開できるでしょう。
具体的な取り組みとしては、コンプライアンスに関するトレーニングや教育を実施することや、コンプライアンスに関する相談窓口を設置することなどが挙げられます。さらに、社員たちがコンプライアンスを遵守するために必要な情報やルールを明確にすることも重要です。
これらの取り組みによって、社員たちのコンプライアンス意識が高まり、企業のコンプライアンスの徹底に繋がります。
安全衛生管理の徹底
社員教育は、安全衛生管理の徹底にも役立ちます。従業員に対して、安全に関する正しい知識や技能を教育することで、労働災害や健康被害のリスクを低減することができます。また、安全衛生管理に関する法令やルールの遵守を徹底するためにも、従業員に対して適切な教育が必要です。
具体的には、安全衛生管理に関する教育プログラムを設けることが考えられます。例えば、作業環境のリスク評価や安全対策、安全に関する法令やルールの理解などについて、トレーニングやワークショップを実施することが挙げられます。また、定期的に安全衛生管理の見直しを行い、必要に応じて教育プログラムを改善することも重要です。
社員教育による安全衛生管理の徹底は、従業員の安全と健康を守るだけでなく、企業にとっても業務の継続性や信頼性を高めるための重要な取り組みです。
上記のような社員教育を実施することで、従業員の能力向上や仕事の効率化、企業の成長に繋げることができるでしょう。また、それぞれの企業においては、自社の状況や課題に合わせた適切な教育方法や教育内容を検討し、社員教育に力を入れることが重要です。
社員教育の効果的なやり方
以下では、効果的な社員教育のやり方を紹介します。
社員教育の目標設定
社員教育においては、目標設定が非常に重要です。目標を設定することで、教育の方向性や成果の評価が可能となります。
教育の目標を設定する際は、まず解決すべき課題を明確にし、それを基に目標を設定することが大切です。また、目標は明確かつ具体的なものであることが望ましいでしょう。
例えば、スキルアップが目的である場合は、どのスキルをどの程度身につけるかを明確にすることが重要です。また、目標は社員の能力や現状に合わせて設定するのが理想的です。
目標が高すぎる場合は社員がモチベーションを失う可能性があり、低すぎる場合には成長を阻害することがあるため、十分に注意しましょう。
教育プログラムの設計
社員教育のプログラム設計は「分析」「設計」「開発」「実施」「評価」の5つのフェーズから成り立ちます。
社員教育の場合は、各フェーズごとに目標とゴールを設定することが大切です。その上で、カリキュラムや教材の選定、トレーニング方法の決定、評価方法の設定などを行い、効果的な教育プログラムを構築しましょう。
社員教育の実施
社員教育を実施するためには、教育の実施方法を決定する必要があります。実施方法は、大きく分けて「実際の業務の中で学ぶOJT(On The Job Training)」と「業務の現場から離れて学ぶOFF-JT(Off The Job Training)」があります。
OJTは実際の業務の中で学ぶため、実践的なスキルや知識を身につけることが可能です。一方、OFF-JTは業務の現場から離れた場所で学ぶため、広い視野や理論的な知識を身につけることができます。
OJTとOFF-JTのどちらの方法を採用するかは、教育の目的や対象者、環境などによって異なります。
社員教育とプログラムの評価
社員教育の評価方法は、アメリカの経済学者ドナルド・L・カークパトリックが1975年に提唱した「4段階評価法」を採用するのが一般的です。
この方法は、教育の効果を「反応」「学習」「実行」「結果」の4つの段階で評価するもので、実施後の教育プログラムの改善に役立ちます。
具体的には、反応段階では受講者の満足度や評価を測定し、学習段階では受講者の知識やスキルの向上を評価し、実行段階では実際に職場で行動や業務に反映されたかどうかを評価し、最終的に結果段階では教育がもたらした成果を評価します。
社員教育とプログラムの評価を次のプロセスに繋げることで、PDCAを効果的に回せるようになるでしょう。
社員教育のフィードバックと改善
プログラムに参加した社員からのフィードバックを受け取ることで、社員教育の改善を図ることが可能です。フィードバックを行うことで、社員が自分自身の強みと弱みを認識し、改善のための計画を立てることができます。
そのため、フィードバックは、定期的かつ具体的に行うのが理想的です。また、社員がフィードバックを受けることでモチベーションが向上し、行動力を高めるなどの心理的効果にも期待できます。
そして、フィードバックを受けた社員が計画を立てて改善することで、教育プログラムの改善にも繋がるでしょう。
社員教育を行うメリット
社員教育を行うメリットには、次のようなものが挙げられます。
生産性の向上に期待できる
社員教育は、企業が生産性を向上させるために重要な手段の1つです。生産性向上に必要な5つのルールを理解した上で、社員教育を行うことが重要です。
生産性は人材育成で向上できるスキルであり、社員教育で学ぶべき5つのスキルがあります。それは、成果、集中、調整、優先順位、改善です。社員がこれらのスキルを習得することで、業務の効率性が向上し、生産性の向上につながります。社員教育によって、従業員の能力向上とともに生産性の向上を実現できます。
社員のモチベーション向上に役立つ
社員のモチベーションを向上させるには、企業の教育施策が重要な役割を果たすことがあります。特に、企業が社員に対して投資を行い、能力開発の場を提供することで、モチベーションを向上させることが可能です。
企業による教育施策は、社員が自己成長やキャリアアップを実現することができるため、働くことへのやりがいや職場への帰属意識を高めることができます。また、社員教育は、社員が仕事に対する知識やスキルを向上させることができるため、業務の品質向上にもつながります。このように、社員教育を通じて、社員のモチベーションを向上させることが可能です。
企業イメージの向上に期待できる
社員教育は、企業イメージの向上に繋げることが可能です。例えば、企業が社員に対して教育を重視し、能力開発やキャリアアップの機会を提供することで、社員が自己成長を実現できます。これにより、社員が働くことへのやりがいを感じ、職場への帰属意識を高めることが可能です。また、社員教育を通じて、社員が企業の理念や価値観に共感し、実践できるようになることで、企業イメージの向上にも繋がります。
このように、社員教育は、社員の能力向上だけでなく、企業イメージの向上にも役立ちます。
自社で人材育成ができる
社員教育は、従業員の能力を向上させることに重要な役割を果たします。厚生労働省の報告書によると、企業が人材育成を行う目的は「今いる従業員の能力をもう一段アップさせ、労働生産性を向上させること」と定義しています。社員教育によって、従業員が持つスキルや知識を磨き、企業の業務に必要な専門性を高めることが可能です。
このように、人材育成は企業の長期的な発展にとって欠かせない要素であり、社員の成長と企業の成長は密接に関連しています。
コンプライアンスを徹底できる
社員教育を通じたコンプライアンスの徹底には「法令遵守+CSR、リスクマネジメント」のコンプライアンスを実現するため、まずコンプライアンス違反の原因を把握することが重要です。
具体的には、社員が法令遵守の意識を持ち、遵守できる知識や技能を身につけることが必要です。また、社員が性弱説の考えに陥るリスクも想定し、適切な教育を行う必要があります。
コンプライアンス教育には、eラーニングやワークショップなど、さまざまな方法があります。効果的なコンプライアンス教育のためには、教育内容を社員が理解しやすい形で提供することが必要です。さらに、教育を受けた社員が実際に行動に移すことができるよう、フィードバックや報告制度の整備も必要となるでしょう。
社員教育によるコンプライアンスの徹底は、企業の持続的な発展にとって不可欠な要素です。適切なコンプライアンス教育を行い、社員一人ひとりが法令遵守の意識を持って行動することで、企業の信頼性向上や社会的責任の履行につながります。
社員教育のデメリット
社員教育には、次のようなデメリットが考えられます。
費用がかかる
社員教育を実施するには費用がかかるため、社員教育にどれくらいのコストをかけるべきかについて、悩む担当者や経営陣も少なくありません。
しかし、社員教育は企業の成長に欠かせない重要なものであり、必要不可欠な投資です。適切な教育を受けた社員は、業務効率の向上や品質の向上、コンプライアンス遵守の促進などに貢献することができます。また、社員教育は、社員のモチベーションアップやキャリアアップの機会となることもあります。
このような社員教育による効果は、将来的に企業の競争力の向上につながる可能性があるため、非常に価値のある投資です。そのため、社員教育にかけるコストは、企業の規模や業種、社員数、教育内容などに応じて柔軟に設定する必要があります。
コストを抑える方法としては、eラーニングや社内研修など、効率的な方法があります。また、社員教育にかかる費用は、従業員の教育費用として税務上認められる場合もありますので、その点も確認しておくと良いでしょう。
生産性が低下する可能性がある
社員教育に参加するために、社員たちは仕事から離れる必要があります。このため、社員教育が生産性の低下を引き起こす可能性があります。
ただし、社員教育による生産性の低下はあくまでも一時的なものであるため、十分に計画性をもって取り組むことで回避できるでしょう。
反発心や拒否感を招く可能性がある
社員教育によって、社員の反発や拒否感が生じる原因には、次のようなものが考えられます。
- ・トレーニングの内容が自分には必要ないと感じる場合
- ・トレーニングが実務に直結しないと感じる場合
- ・トレーニングのやり方がわかりにくい場合
- ・トレーニングが強制的に行われる場合
このような状況が発生することで、社員がトレーニングに積極的に取り組まなくなり、その効果が十分に発揮されなくなる可能性があります。
そこで、社員がトレーニングに参加する意欲を高めるために、トレーニングの必要性や重要性を明確に伝えることや、トレーニングの内容ややり方を改善する必要があります。
教育した内容が定着するとは限らない
社員教育を行ったからといって、社員たちが身につけた新しいスキルや知識が、必ずしも定着するとは限りません。また、技術革新が進む現代においては、大金をかけて教育した技術が数年で古くて使えなくなるリスクもあります。
ただし、このようなリスクは、計画的な教育プログラムの実施や、社員の理解と協力を得るための努力によって軽減することが可能です。
社員教育の目的とやり方のまとめ
このように、社員教育の目的ややり方をしっかりと定めて取り組むことで、企業に大きなメリットがあります。社員教育には、本文中で紹介したように、いくつかのデメリットがあります。しかし、十分な計画と社員の理解と協力によって十分回避することが可能です。
社員教育は、現代のビジネスに欠かすことのできない重要な施策であるため、企業それぞれがしっかりと取り組むべき課題の1つとなっています。
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