人材育成における教育研修の目的とやり方を現役コンサルタントが徹底解説
企業が成長し続けるためには、経営戦略やビジネスモデルを構築するだけでなく、それを実行する人材の育成が欠かせません。
そのために、優秀な人材を確保することは、企業の生命線となる重要な要素と言えるでしょう。
ただ現代の労働環境下においては、優秀な人材を育てることは容易ではなく、せっかく育てた社員が転職してしまうといったケースも少なくありません。
そこで自社でずっと活躍してくれる優秀な人材を育てるためには、優秀で愛社精神の高い社員を育てる「人材教育」が必要です。
そこで今回は、人材の育成方法でお悩みの企業経営者の方や管理職の方に、人材育成のための教育研修の目的ややり方について、現役コンサルタントが徹底解説します。ぜひ参考にしてください。
人材教育とは
人材教育とは、社内の人材を育成する1つの手段として研修などを行い、仕事のスキルや考え方などを教えることを言います。
人材を育成する方法にはさまざまな手法がありますが、人材教育のコンサルタントとして携わるケースは、そのほとんどが研修です。
ただ1回限りや数回の研修によって優秀な人材を育成することはまず不可能で、実際には数年から十数年単位で長期のプランを立て、人材とともに企業の成長をお手伝いさせていただくケースも多くあります。
基本的に人材教育コンサルタントは、クライアント企業からの依頼を受けて、企業の経営責任者の方の意向に沿った教育を行うのが仕事です。
しかし「企業のビジョンや目的意識の薄い会社」の場合には、まずは経営者の方に研修を受けていただくことをおすすめしています。
なぜなら、人材を育成するためには、まず「企業の経営ビジョンや目的」が明確となっていることが大前提だからです。
企業の掲げるビジョンが明確で、そこに向かって全社員が仕事に打ち込める。この前提なくしては、コンサルタントの仕事は「人材育成本1冊分」程度の活躍しかできないでしょう。
なぜならコンサルタントの強みは、個々の企業ごとに異なる経営方針や経営者や社員が創造する明るい未来へ導くための教育プランを、それぞれの会社や部署に合わせて行うことだからです。
余談ですが、経営者研修を提案すると「ビジョンや目的が明確でなかったことを反省し、喜んで研修を受けてくれる経営者」と「社長に勉強しろとは無礼だ」と叱られる会社もあります。
私の知る限りでは、後者の企業のほとんどが、今はありません。人材教育において大事なことは「経営者自身がどのような人材を育成したいか」について、よく考えることが最も重要です。
企業の経営ビジョンの考え方
人材育成とは、社員を自社の成長と発展に貢献できる人材として育成することです。社員の能力を適材適所に開花させることで、業績の向上が期待できるでしょう。
ただし、その能力を向上させるための教育を行う場合には、企業の経営ビジョンや目的を明確にしなければなりません。
なぜなら、企業によって顧客の対象(BtoBやBtoCなど)が異なり、また商品やサービスの販売方法も違うからです。
消費財を販売する企業においては、ロングセラー商品や新しい商品の開発と販売戦略が重要となります。また、近年増えているサブスクリプション型のサービスを扱う企業では、LTV(顧客生涯価値)をどのように高めるかが重要なポイントです。
このように、自社にマッチした経営戦略と顧客のペルソナを明確に設定し、利益と社会貢献を目的としたビジョンを明確にすることが人材育成における要点となります。
経営者自身がしっかりとしたビジョンを持ち、そこから人材育成のステップを踏むことで、人材育成と教育に関する長期的な計画を設定しましょう。
人材育成と教育のプロセス
企業のビジョンを設定できたら、次は人材育成と教育を「いつ・誰に・どのように」行うかといったプロセスを考えなければなりません。
コンサルタントが人材教育のコンサルティングを行う場合は、一般的に「経営ビジョン」の設定から実際の教育を行う前に「採用」「教育」「人事」の3つのどれか、またはすべてに介入します。
以下では、「採用」「教育」「人事」3つの考え方について解説します。
人材採用
人材採用では、新入社員や中途などの人材を採用する際に、自社の経営ビジョンにマッチした人材の採用を戦略的に行います。
近年は、労働人口の減少によって人材の採用が難しいのが現実です。そのため、ただ自社に足りない資格やスキルを持つ人材を採用するのではなく、入社後に成長し、自社の発展に貢献してくれるような志の高い人材を採用することが大切です。
人材教育
人材教育においては、新人社員への社内研修や、中間管理職へのマネジメント研修、経営者へのヒアリングやアドバイスなど、それぞれのビジネスパーソンに合わせた育成教育を行います。
一般的には新入社員や中間管理職の方に行う研修が多くなりますが、企業の分社化が進む現代では、親会社のオーナーなどが子会社の経営陣への教育をコンサルタントに依頼するケースもあります。
人事
人事に関するコンサルティングでは、教育・育成した人材を適材適所に配置して、企業の体質改善をサポートします。
働き方改革などにより働く方の雇用形態も多様化している現代では、雇用に関する法律を理解し、遵守することも大切です。そこで、専門のコンサルタントが適切な人材評価と法律に則った人事を行うことで、優秀な人材の流出を防ぎ、企業の発展を妨げることがないようにサポートします。
人材育成と教育の対象
次に、人材育成を行う際の教育対象について解説します。
新入社員教育
人材教育で、まず最初に思い浮かぶのが新入社員に行う研修ではないでしょうか。新入社員に行う研修では、まず企業理念や自社業務の詳しい内容などを伝えながら、ビジネスマナーといった社会人としての基本的な心得を教育します。
社員研修
社員研修とは、一般的に部署ごとに行われる研修で、業務に対するロジカルな考え方やコミュニケーションスキルなどを広く教育します。
営業や人事、製造など、各部署によって教育内容が大きく異なるため、人材を適材適所に配置した上で行うことが大切です。
人材育成を学ぶのにおすすめの書籍を『人材育成のおすすめ本|ビジネスの本質とマネジメントを理解する』の記事で紹介しています。ぜひ参考にしてください。
管理職教育
管理職における教育では、部下の人材教育の仕方から、自らの業務に関するマネジメント教育まで多岐に渡ります。
また管理職の方の業務は普段から非常に多いため、しっかりと教育を行うためには、管理職の業務をサポートする体制づくりも成功のポイントです。
そのため、人材育成や教育に全社をあげて取り組み、教育と実践を繰り返しましょう。
管理職の人材育成・教育については『マネージャーの育成|必要なスキルや能力を研修で成長させる方法』の記事で詳しく解説しています。ぜひご参照ください。
経営者教育
そして絶対に忘れてはならないのが、経営者教育です。なぜなら、経営者自身が自社の経営ビジョンや理念を明確に持ち、常にその目標に向かって企業をコントロールしながら企業運営を成功に導かなければならないからです。
昨今、さまざまな企業で経営者の不祥事が発覚する中で、経営者自らが学び向上する姿勢を部下に見せることも企業にとって大きなプラスとなることでしょう。
人材教育を内製化する際の考え方
人材教育の目的は、社員などの社内リソースを、企業の成長と発展のために貢献できる人材として育成することにあります。
人材教育を内製化することで、自社スタッフのパフォーマンスの向上に繋がるため、業績の向上が期待できるだけでなく、業務のスムーズな運営にも役立つでしょう。
また人材教育は、人材を指導する側にもメリットが大きいのが特徴です。
なぜなら、人材の育成経験を通じて自身の成長に繋がるだけでなく、人材育成を成功させるために愛社精神や社内風土を構築できるからです。
人材教育には、新入社員や中堅社員、管理職といった、教育対象に応じていくつかの種類があります。
また、社内で先輩などの指導を受けながら職場で業務を学ぶ「OJT(On the Job Training)」や、職場を離れて能力開発に取り組む「Off-JT(Off the Job Training)」、自己啓発を意味する「SD(Self Development)」など、それぞれによって考え方や教育方法が異なります。
人材教育における課題と7つのポイント
このように、人材育成と教育は、どの企業にとっても重要な課題です。しかし、なかなか思うように進まないとお悩みの経営者の方も多いことでしょう。
その理由として「人材育成すべき管理職の方が日々の業務に忙しい」ことや「リモートワークの導入により、社員同士のコミュニケーション機会が減少している」といった業務に関わる要因だけでなく「育成する側・される側の業務に対する意識や意欲の低下」といった原因も増えています。
そこで人材教育に取り組む際は、次の7つのポイントを意識して取り組むことで、比較的スムーズに進められるでしょう。
- 教育目的を明確にする
- 個々の考えも重視する
- 実践とサポート体制を強化する
- 長期で社員教育の計画を立案・実行する
- 指導側の育成も行う
- 社内全体で意識を共有する
- 成長を可視化してPDCAを回す
以下で、7項目それぞれについて解説します。
1.教育目的を明確にする
人材育成では、教育の目的を明確にすることが重要です。
対象者が新入社員の場合は、まず自社が目指す経営ビジョンを理解してもらい、企業と顧客の利益を最大化するために必要な要素を共有しなければなりません。
また人材育成の最大の目的である「次世代リーダー」の育成では、リーダーに必要な要件を定義し、リーダーとして相応しい候補者を選ばなければなりません。
そして選ばれた人材は、次世代のリーダー候補としての意識を持って学びを得ることが大切です。
2.個々の考えも重視する
いくら素晴らしい研修によって高い意識やスキルを身につけて現場に戻っても、いつの間にかそれまでの社内風土や慣習に流され、成果を発揮できないといったことがよくあります。
しかし、そのような状態では、せっかく企業にとって大きな利益となるはずの人材育成施策が無駄になる可能性が高まります。
そこで、社員個々の自主性を大切にしながら、会社が社員をバックアップし、守るといった環境づくりを心がけることが大切です。
3.実践とサポート体制を強化する
人材育成を通じてさまざまな教育を受けた人材には、積極的に実践機会を設けることが大切です。
そして、経験の浅い人材には、現場の上司がしっかりとしたサポートを行うことが求められます。
このように、実際に業務を行う現場での実践と人材をサポートする体制作りの強化も、人材育成の重要な施策の1つです。
4.長期で社員教育の計画を立案・実行する
人材育成は、実施すればすぐに結果が出るものではありません。そこで、長期的な育成計画を立案・実行し、体系的な組織作りを進めることが大切です。
企業ごとに、それぞれの役職での役割は大きく異なるため、各人材に必要な要件を満たす人材育成を行いましょう。
5.指導側の育成も行う
企業が人材育成を行う際は、現役の管理職やOJTのトレーナーとなる中間管理職など、指導する側の育成にも取り組まなければなりません。
特に管理職や中間管理職にある人材が、現場の業務が多忙なことで、部下への人材教育ができないといった課題の克服は必須です。
そこで、指導側の業務を調整しながら人材育成の重要性と意義をしっかりと理解し、人材育成がおざなりにならないように注意しましょう。
6.社内全体で意識を共有する
人材育成と教育は、社内の部署がそれぞれに連携して進めなければ、目標を達成できません。
そのため、まずは社内全体で人材育成のミッションやビジョンを共有し、それを実現するための施策へ落とし込んでいきましょう。
7.成長を可視化してPDCAを回す
人材育成においては、教育を受けた人材の成長を可視化し、企業組織内でPDCAを回す体系的な取り組みを行うことが重要です。
近年は人事評価や目標管理などを見える化する取り組みを進めている企業が増えており、社員の知識やスキルレベルを、客観的かつ定量的に把握できるテストの導入も人気となっています。
そして個々の社員の育成や教育施策に関してPDCAを回し、自社にあった教育制度や施策を充実させて行きましょう。
コンサルタントが解説する人材教育のまとめ
このように、人材教育は企業にとって欠かせない施策の1つです。特に規模の大きい会社や、リモートワークの多い企業にとっても今後は必須となるでしょう。
しっかりとした教育で、企業理念をもった仕事ができる社員は、他社への流出リスクも減少するメリットがあります。また、経営者が適切な報酬額や人事評価を学び、社員を大切にする企業は業績も安定する傾向にあります。
そのため、人材教育を行う際は、しっかりと体系立てて長期計画で実施しましょう。
また人材教育で何かお困りの際は、いつでもアルマ・クリエイションにご相談ください。
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