高校における総合的な学習の時間とは?目的や実践例をわかりやすく解説
生徒が自発的に学ぶ姿勢を育む方法がわからない。
教育現場での具体的な実践例を参考にしたい。
新しいカリキュラムに適応するための指導法はどうすればいいの?
上記のような悩みを抱えている方も、多いのではないでしょうか?
高校における総合的な学習の時間は、小中学校とは変わり「総合的な探求の時間」となり、進め方も異なります。
2022年に新設されたため、生徒も教師も慣れていない人が大半です。
総合的な探求の時間を効果的に進めるためには、基本的な理解はもちろんですが、他校の実践なども参考になるはずです。
本記事では、総合的な探究の時間の目的や実践例、評価のポイント、課題についても詳しく解説します。
生徒の主体的な学びを促進し、効果的な指導方法を見つけたいと悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
高校における総合的な学習の時間とは?
高校では「総合的な学習の時間」に代わり「総合的な探究の時間」が実施されています。
総合的な探求の時間の目的は、生徒が自ら課題を設定し、情報を収集・分析して新たな考えを生み出す力を養うことです。
小中学校の「総合的な学習の時間」と比べ、より高度な探究活動を行います。
特徴は、自律的で主体的な学びを促進する点にあります。
進路や将来の職業とより密接に関連づけられているため、高校生の発達段階に即した深い学びが可能となります。
学習指導要領での位置づけ
総合的な探究の時間は、高等学校の教育課程で他の教科・科目とは異なる独自の役割を担っています。
総合的な探究の時間の特徴は、以下のとおりです。
教科横断的な学びの場 |
特定の教科に縛られず、複数の教科の知識や技能を統合して活用するスキルをサポート |
探究スキルの育成 |
課題の設定から情報収集、分析、まとめ、発表までの一連のプロセスを通じて、探究的な学習方法を育成 |
生徒の主体性重視 |
生徒自身が興味関心に基づいてテーマを選び、自ら計画を立てて探究 |
例えば、地域の環境問題をテーマに探究活動を行う場合、生徒は理科や社会科の知識を活用しながら、自分たちにできる解決策を考え、実践できるでしょう。
総合的な学習の時間との違い
総合的な探究の時間は、従来の総合的な学習の時間をさらに発展させた取り組みです。
主な違いは、以下のような探究の質と自律性の高さにあります。
探究の質 |
|
自律性 |
|
例えば、地域の高齢化問題を扱う場合、生徒たちは自分たちの住む地域の実情に合わせて課題を設定します。
まず、地域のお年寄りが抱える問題について調べることから始まるでしょう。
その後、自分たちが取り組める課題を選び出します。
情報収集の段階では、お年寄りへのインタビューや地域の施設の調査など、さまざまな方法を用いるかもしれません。
集めた情報を基に、自分たちにできる解決策を考え出すのが次のステップです。
最後に、小規模なプロジェクトとして実際に実施してみるでしょう。
このような活動を通じて、総合的な探究の時間では、身近な社会問題について自分で考え、調べ、行動する力が身につきます。
総合的な探求の時間はいつから?
総合的な探究の時間は、2022年度から高等学校で導入されました。
新しい取り組みが始まった背景には、社会の急速な変化があります。
現代社会では、単なる知識の蓄積だけではなく、問題解決能力や創造力が重要視されるようになりました。
総合的な探究の時間では、生徒が自ら課題を見つけ、解決策を考え出す力を育成します。
例えば、地域の課題を調べ、解決案を提案するプロジェクトに取り組むことがあります。
総合的な探究の時間を通じて、生徒たちは実社会で役立つスキルを身につけていけるでしょう。
批判的思考力や協働する力、情報を分析する力など、将来の職業生活でも活かせる能力を育成するのが狙いです。
総合的な探究の時間は、変化の激しい現代社会に適応できる人材を育てる新しい教育の形として位置づけられています。
総合的な探求の時間新設により増加した主な教科
総合的な探究の時間の新設に伴い、高校のカリキュラムに新たな探究系科目が加わりました。
探究系科目は、生徒の探究的な学びをさらに深めることを目的としています。
新たに追加された主な科目は、以下のとおりです。
- 古典探究
- 地理探究
- 日本史探究
- 世界史探究
- 理数探究
- 理数探究基礎
探究系科目は、従来の教科学習に探究的な要素を取り入れたものです。
例えば「日本史探究」では、単に歴史的事実を暗記するだけではなく、史料の分析や歴史的解釈の方法を学びます。
「理数探究」では、数学や理科の知識を活用して実際の問題解決に取り組みます。身近な現象を科学的に分析したり、数学的モデルを使って社会問題を考察したりする科目が追加されました。
総合的な探究の時間の目的
総合的な探究の時間の主な目的は、以下のようなものが挙げられます。
- 生徒の主体的な学びを促進
- 横断的・総合的な学習を実現
- キャリア教育との連携
それぞれ詳しく説明します。
生徒の主体的な学びを促進
総合的な探究の時間は、生徒の主体的な学びの促進を目的としています。
従来の授業では、教師が知識を教え、生徒がそれを受け取る形が一般的でした。
しかし、総合的な探究の時間では、生徒自身が学びの主役となります。
総合的な探究の時間では、以下のような流れで授業を進めます。
課題設定 |
生徒自身が興味関心に基づくテーマ選択 |
情報収集 |
必要な情報の自主的な探索と収集 |
分析と考察 |
収集情報の整理と独自の考えのまとめ |
発表と共有 |
探究成果の他者への発表と意見交換 |
例えば「地域の伝統産業を活性化するには」のテーマで探究を行うとするとしましょう。
生徒たちは地元の職人さんにインタビューしたり、他地域の成功事例を調べたりしながら、自分たちなりの提案をまとめていきます。
活動を通じて、生徒は自ら学ぶ楽しさを発見し、学習意欲が高まります。
失敗を恐れずに挑戦する姿勢や、粘り強く課題に取り組む力も身につくでしょう。
横断的・総合的な学習を実現
総合的な探究の時間では、教科の枠を超えた幅広い学びが可能です。
従来の授業では、各教科が独立して教えられることが多くありました。
一方、総合的な探究の時間では、複数の教科の知識やスキルを組み合わせて活用します。
例えば、地域の環境問題を扱う場合、次のような学習活動が考えられます。
- 水質調査の方法や生態系への影響の分析(理科)
- 地域の産業構造や環境政策の調査(地理)
- データの統計処理や将来予測の計算(数学)
- 海外の類似事例の文献調査(英語)
上記のように、一つのテーマを多角的に捉えることで、現実社会の複雑な問題への理解が深まります。
横断的・総合的な学習により、生徒たちは知識を関連づける力や、問題を多面的に見る視点を養えるでしょう。
キャリア教育との連携
総合的な探究の時間は、生徒の将来設計にも役立ちます。
キャリア教育と連携すれば、職業観の育成や自己理解の促進、社会とのつながりの強化ができるからです。
学習で学んだ経験を通じて、生徒は自分の将来に対するビジョンを明確にし、必要なスキルを身につけられます。
キャリア教育と総合的な探究の時間の連携には、他にも以下のような特徴があります。
職業観の育成 |
さまざまな職業について調べ、理解を深められる |
自己理解の促進 |
自分の興味・適性を探る機会となる |
社会とのつながり |
地域の人々との交流を通じて視野を広げる |
実践的なスキル獲得 |
課題解決の過程で必要なスキルを身につける |
例えば、地域の企業と連携したプロジェクトに取り組む場合、生徒は実際の仕事の様子を見学したり、社会人へのインタビューを行ったりするでしょう。
それぞれの活動を通じて、生徒は将来の進路選択に必要な情報や経験を得られます。
学校での学びと社会との関連性を実感すれば、学習意欲の向上も期待できるでしょう。
総合的な探究の時間の実践例
総合的な探求の時間は、2022年度より新設され、さまざまな学校が幅広い取り組みをしています。
ここでは、総合的な探求の時間の実践例を3つ紹介します。
- 山梨県立北杜高等学校|地域に密着した課題を設定
- 岡山県立真庭高等学校(落合校地)|「地域防災」を共通テーマに設定
- 広島県立安芸南高等学校|生徒の主体的な思考力と表現力の育成
それぞれの活動内容を確認していきましょう。
山梨県立北杜高等学校|地域に密着した課題を設定
山梨県立北杜高等学校では、「北の杜に生きる」の講座名で総合的な探究の時間を実施しています。
3年間の概要は、以下のとおりです。
1年 |
「いのち」をサブテーマに個人研究 |
2年 |
「つながり」をサブテーマにグループ研究 |
3年 |
「あした」をサブテーマに将来を見据えた探究 |
特に2年次の取り組みは特徴的です。
生徒たちは地域に密着した課題を設定し、校外調査活動を行います。
具体的な流れは、次のとおりです。
- 共通学習で外部講師による講演会を実施
- 8つの分野に分かれて個別課題を設定
- グループで共通課題を決め、1次レポートを作成
- 校外調査活動の準備(事業所選定、アポイント取り等)
- 10月末から11月初旬に校外調査活動を実施
- 2次レポートの作成と発表
活動を通じて、生徒たちは主体性やコミュニケーション能力、地域への理解を深めています。
また、70程度の地域事業所との連携により、実社会との「つながり」を学ぶ機会となっています。
岡山県立真庭高等学校(落合校地)|「地域防災」を共通テーマに設定
岡山県立真庭高等学校(落合校地)では「真庭トライ&リポート」の名称で総合的な探究の時間を実施しています。
3年間の学習は、以下のように段階的に構成されています。
1年 |
「HOW TO LEARN」(調査・まとめ方を学ぶ) |
2年 |
「WHAT TO LEARN」(自ら課題を設定し探究) |
3年 |
「HOW TO LIVE」(進路実現に向けた学び) |
2年次の取り組みでは「地域防災」を共通テーマに設定し、以下の5つのプロジェクトチームに分かれて活動します。
- グローカル
- メディア
- ネットワーク
- ハイスクール
- 地域探索
活動の流れは、テーマ導入から始まり、探究活動、まとめ、発表を経て、総括・フィードバックで締めくくられます。
評価は「課題への主体的な取組」「情報収集力、探究的分析力」「説明、発表の能力」の3観点で実施。生徒の成長を多面的に捉える工夫がなされています。
広島県立安芸南高等学校|生徒の主体的な思考力と表現力の育成
広島県立安芸南高等学校では、生徒の主体的な思考力と表現力の育成に重点を置いた総合的な学習の時間を実施しています。
3年間の学習は、以下のように構成されています。
1年 |
自分史研究、総学新聞作成、グループ課題研究 |
2年 |
北海道研修旅行を軸とした課題別グループ研究、個人課題研究 |
3年 |
将来を見据えた個人学習とグループ学習の組み合わせ |
特に2年次の北海道研修旅行に関連した取り組みが特徴的です。
主な流れは、以下のとおりです。
- マインドマップを用いた課題設定
- 「北海道ウィーク」での教科横断的な学習
- グループでの調査研究活動
- 「壁新聞」の作成
- 文化発表会でのポスターセッション
動を通じて、生徒たちは情報収集・整理・分析のスキルを習得します。また、相互評価活動を積極的に取り入れ、表現力の向上を図っています。
評価は「体験学習への取り組み」「協同的な活動」「調べ学習の効率性」「表現・発表力」の4点から行われます。
総合的な探究の時間を評価するポイント
総合的な探究の時間の評価は、従来の教科学習とは異なる評価方法が必要です。
具体的には、以下のようなポイントを抑えておきましょう。
- 明確な評価基準
- 多角的な評価アプローチ
- 学習過程も評価
それぞれ詳しく説明します。
明確な評価基準
総合的な探究の時間では、明確な評価基準が欠かせません。
探究活動は多様な形態をとり、従来の教科学習とは異なる成果が生まれるからです。
評価基準は、決まったものはありませんが、明確な基準が必要です。
評価基準の具体例には、以下のようなものが挙げられます。
課題設定の適切さ |
|
情報収集の質 |
|
分析の深さ |
|
表現力 |
|
明確な評価基準により、生徒は目標を具体的に理解し、主体的に学びに取り組めます。
同時に、教師の指導改善にもつながり、探究の時間全体の充実につながります。
多角的な評価アプローチ
総合的な探究の時間では、多角的な評価アプローチが大切です。
単一の視点からの評価では、探究活動の成果を十分に捉えられないからです。
多角的な評価アプローチの具体例には、以下のようなものが挙げられます。
教師による評価 |
|
生徒の自己評価 |
|
相互評価 |
|
外部評価 |
|
多角的なアプローチにより、生徒は自身の強みや課題をより明確に認識しやすくなります。
社会で求められる多面的な能力の育成にもつながるでしょう。
学習過程も評価
総合的な探究の時間では、学習過程自体を評価対象とします。
探究活動の本質は、問題解決のプロセスにあるためです。
学習過程の評価方法には、以下のようなものが挙げられます。
探究ノートの活用 |
|
中間発表会の実施 |
|
教員による日常的な観察 |
|
例えば、探究ノートを定期的にチェックすれば、生徒の思考の変化や気づきの深まりが見えてきます。
中間発表会では、生徐の進捗状況や探究の方向性が適切かどうかを確認し、必要に応じて指導を加えられるでしょう。
学習過程の評価により、生徒は自己の学びを振り返り、メタ認知能力が向上する可能性が高まります。
教師にとっても、指導の効果を随時確認し、支援の方法を調整する良い機会です。過程の評価は探究活動の質を高め、生涯学習の基礎づくりにつながります。
総合的な探究の時間の課題
総合的な探究の時間にはいくつかの課題が存在します。
それぞれの課題は、生徒の学びや教員の指導に影響を与え、探究活動の効果を低下させる可能性があります。
主な課題には、以下のようなものが挙げられます。
- 時間管理の難しさ
- 生徒の探究活動の質の差
- 教員の負担増加
それぞれの課題内容を確認していきましょう。
時間管理の難しさ
生徒にとって、探究活動に必要な時間をうまく管理することが難しい場合があります。
特に、複数の教科や課題を同時に進める中で、優先順位を付けることが求められます。
時間管理の課題には、他には以下のような課題も挙げられます。
- 探究活動には多くの時間が必要
- 他の科目との調整が求められる
- 生徒の自主性を重視するため、時間の使い方が難しい
時間管理は生徒にとって大きな課題です。
限られた時間内で効果的に探究活動を行うためには、計画的なアプローチが不可欠です。
教師の方は、スケジュール管理をする際などに、サポートしてあげると良いでしょう。
生徒の探究活動の質の差
生徒の探究活動には質の差が見られます。
教科書のような例題がないため、生徒自身が自ら課題を設定し取り組む必要があるからです。
そのため、探究活動が進まない生徒もいれば、課題を追求する生徒もいるでしょう。
探究活動に割いている時間は同じでも、活動の内容に差がでる可能性はあります。
探究活動の差が生じる主な理由には、以下のようなものが挙げられます。
- 生徒の興味や能力にばらつきがある
- 自己管理能力の違いが成果に影響
- 教員の指導方法に依存してしまう場合が多い
探究活動の質には、生徒個々の特性や指導環境が影響します。
差を埋めるためには、適切な支援やフィードバックが必要になってくるでしょう。
教員の負担増加
総合的な探究の時間は、教員にとっても負担が増す要因となります。
生徒一人ひとりに対する細かな指導が求められてしまう傾向が高いからです。
教員の負担が増加する主な理由は、以下のとおりです。
- 探究活動の指導には時間と労力がかかる
- 評価方法の多様化が必要
- 生徒の進捗を常に把握する必要がある
教員の負担が増加する中で、効率的な指導法やサポート体制の構築が求められています。
総合的な探求の時間を効果的にするためには、生徒だけではなく教員自身の成長も求められるでしょう。
まとめ
高校における「総合的な探究の時間」は、生徒が自ら課題を設定し、情報を収集・分析して新たな考えを生み出す力を養うことを目的とした新しい教育の形です。
総合的な探究の時間は教科横断的な学びを促進し、生徒の主体性を重視しています。
地域の問題解決に取り組むことで、実社会で役立つスキルや批判的思考力、協働する力を身につけることが期待されています。
キャリア教育との連携により、職業観の育成や社会とのつながりへの学びにもつながっていくでしょう。
総合的な探究の時間は、急速に変化する現代社会に適応できる人材を育てる重要な要素として位置づけられています。
ただし、2022年度から新設されたこともあり、まだまだ課題はたくさんあるのが現状です。
課題の内容を理解し、より深い学びにつながるように指導していけるように教師側も学ぶ姿勢が求められるでしょう。
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