ジョブクラフティングとは?厚労省も推進する働き方の実施手順や注意点を解説
「もっと仕事にやりがいを感じたい」
「チームの生産性を高めたい」
のように考えている方は多いのではないでしょうか。
近年、注目を集めているジョブクラフティングは、従業員が主体的に仕事の意味や価値を見出し、より良い働き方を実現する手法です。
厚生労働省も推進するこの取り組みは、タスク、関係性、認知の3つの要素から構成されており、段階的な実践で大きな効果が期待できます。
本記事では、ジョブクラフティングの基本的な考え方から、具体的な実施手順、注意点まで詳しく解説します。
より充実した働き方を目指す方は、ぜひ参考にしてください。
ジョブクラフティングとは?
ジョブクラフティングとは、従業員が自分の仕事の意味や価値を主体的に見直し、より良い働き方に変えていく取り組みです。
単に業務改善を行うのではなく、仕事の本質的な意味を捉え直し、自発的に変化を生み出す点が特徴です。
この概念の本質を理解する上で、経営学者ピーター・ドラッカーの「3人の石工」の話が参考になります。
発言内容 |
仕事への向き合い方 |
|
1人目の石工 |
「親方の指示でレンガを積んでいる」 |
作業だけを見ている |
2人目の石工 |
「レンガで塀を作っている」 |
成果物に意識がある |
3人目の石工 |
「人々がお祈りをするための大聖堂を造っている」 |
仕事の社会的価値を理解している |
この例えが示すように、同じ仕事でも、その捉え方によって意味は大きく変わります。
ジョブクラフティングは、3人目の石工のように、自分の仕事がどのような価値を生み出しているのかを理解し、より良い方向に変えていく取り組みです。
例えば、経理担当者が単に「数字を入力する作業」と捉えるのではなく、「経営判断に必要な情報を提供している」と認識を変え、より分かりやすい資料作成を心がけるようになる。
このような主体的な変化が、ジョブクラフティングの大きな目的です。
厚生労働省も推進する背景
ジョブクラフティングは、働き方改革を推進する一環として厚労省が注目する手法です。
特に、変化の激しい現代のビジネス環境に適応するため、個人の主体性を重視した働き方が求められています。
ジョブクラフティングは、2001年にレズネスキーとダットンによって提唱された概念ですが、近年、厚生労働省も積極的に推進しています。
その背景の一つが「VUCA(ブーカ)時代」での従来の働き方の限界です。
従来の上意下達型の働き方では、変化の激しい現代のビジネス環境に対応できなくなっています。
VUCA時代とは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の4つの特徴を持つ時代を指します。
グローバル化やテクノロジーの急速な進化により、ビジネス環境は目まぐるしく変化し、将来の予測が困難になっています。
このような時代では、従来の上意下達型の働き方では対応が難しく、従業員一人ひとりが主体的に考えた行動が必要です。
そうした中、厚生労働省の研究では、ジョブクラフティングがワーク・エンゲージメントを向上させる効果的な手法であることが実証されています。
特に「認知クラフティング」に着目した研修では、従業員の精神的ストレスの低下も確認されました。
働き方改革の一環として、従業員の主体的な働き方を促進するジョブクラフティングの重要性が、行政レベルでも認識されています。
参照:厚生労働省「ジョブ・クラフティングについて」
ジョブクラフティングの目的
ジョブクラフティングを導入する目的には、主に以下の3つがあります。
- 従業員のモチベーション向上
- 組織への愛着の強化
- 働きがいと生産性の向上
ジョブクラフティングによって、従業員は業務との向き合い方を主体的に変えることができます。
単なる作業として仕事を捉えるのではなく、その意味や価値を見出すことで、より高いモチベーションで取り組むことが可能になるでしょう。
自身の仕事の意義を捉え直せば、会社の目標と自分の役割を結びつけやすくなり、組織への愛着も自然と高まっていきます。
仕事への向き合い方が変われば、社内外のコミュニケーションも活性化するでしょう。
ジョブクラフティングは個人の成長と組織の発展を同時に実現する効果的な手法として注目されています。
ジョブクラフティングの3つの要素
ジョブクラフティングは「タスク」「関係性」「認知」の3つの要素から構成されています。
これらの要素を組み合わせることで、より効果的な働き方の改善が可能になります。
それぞれの要素を具体的な実践方法と効果を見ていきましょう。
タスククラフティング
タスククラフティングは、業務内容や進め方を主体的に見直し、より効果的な仕事の仕方を追求する取り組みです。
これは単なる業務改善ではなく、仕事の本質的な価値を高めることを目指します。
具体的には、以下のような視点で業務を見直していきます。
- 必要な業務と不要な業務の見極め
- 業務の優先順位と進め方の改善
- 本質的な価値を生む作業時間の確保
例えば、営業担当者の場合、定型的な報告作業を効率化すれば顧客との商談時間を増やしたり、訪問ルートを最適化してより多くの商談機会を作り出したりします。
また、看護師の例では、これまで慣習的に行っていた記録作業を見直し、より患者とのコミュニケーションに時間を使えるよう業務を組み替えることもできるでしょう。
タスククラフティングを通じて業務を丁寧に見直すことで「本当に必要な工程とそうでない工程を見極める」意識が芽生えていきます。
その結果、仕事の手順を自分で判断して組み替える主体的な行動が可能になり、より価値の高い業務により多くの時間を使えるようになるでしょう。
関係性クラフティング
関係性クラフティングは、仕事における人とのつながり方を見直し、より良い協働関係を築いていく取り組みです。
現代のビジネスでは、一人で完結する業務はむしろ少なく、多くの場合、チームやステークホルダーとの協力が不可欠です。
関係性クラフティングでは、以下のような取り組みを通じて、職場の人間関係を改善していきます。
日々のコミュニケーションの見直し |
挨拶や声かけの機会を増やす 相手の状況を考えた情報共有 定期的なフィードバックの実施 |
協働関係の強化 |
チーム内での知識・経験の共有 部署を超えた連携の促進 社外関係者とのネットワーク構築 |
周囲との関わり方を意識的に見直すことで、より広い視野で仕事の状況を把握できるようになり、新しい気づきや学びの機会も増えていくでしょう。
認知クラフティング
認知クラフティングは、仕事の意義や価値を主体的に捉え直す取り組みです。
単なる業務の見直しではなく、自分の仕事が社会や顧客にもたらす価値を深く理解し、より大きな視点で仕事の意味の再定義を目指します。
認知クラフティングでは、以下のような視点で仕事を捉え直します。
- 自分の仕事が誰のために役立っているか
- どのような社会貢献につながっているか
- 顧客や取引先にもたらす具体的な価値
この取り組みの代表的な事例として、東京ディズニーリゾートの「カストーディアル」が挙げられます。
もともと掃除係は不人気職種でしたが、自身の役割を「来場者をおもてなしする一員」として捉え直すことで大きく変化しました。
掃除の合間に地面にキャラクターを描いたり、パントマイムのような動きを取り入れたりと、独自の工夫で来場者を楽しませる存在へと進化し、今では人気職種の一つとなっています。
認知クラフティングを通じて仕事の捉え方が変わると、以下のような好影響が期待できます。
- 仕事への誇りややりがいの向上
- 顧客への価値提供に対する自信
- 創造的な業務改善の発想
こうした認知クラフティングの取り組みを通じて、仕事への意識が変わり、従業員の成長や組織の活性化が促されます。
一人ひとりの小さな意識改革が、チームや企業の新たな価値創造を後押ししてくれるでしょう。
ジョブ・クラフティングを実践する具体的なステップ
ジョブクラフティングを効果的に実践するには、計画的なアプローチが必要です。
具体的なステップは、以下のとおりです。
- 自己分析
- 目標設定
- 行動計画
- 振り返り
それぞれの内容を確認していきましょう。
自己分析
ジョブクラフティングの第一歩は、現状の自分の理解から始まります。
自分の強みや興味、価値観を明確にするとともに、現在の仕事に対する不満や課題も客観的に洗い出す必要があります。
効果的な自己分析のためには、以下のポイントに注目しましょう。
自分の強みと弱み |
得意な業務とその理由 苦手な業務とその原因 周囲から評価される点 |
仕事に対する価値観 |
やりがいを感じる瞬間 目指したいキャリアの方向性 大切にしたい仕事の価値 |
例えば「締切に追われる業務は苦手だが、丁寧な仕事ぶりは評価されている」「新しいアイデアを考えることに喜びを感じる」といった具体的な気づきを書き出していきます。
この自己理解の過程で、自分らしい働き方のヒントが見えてくるでしょう。
目標設定
自己分析で明確になった課題や願望を、具体的な目標に落とし込んでいきます。
この際、漠然とした目標では効果的な行動に結びつきにくいため、SMART基準を活用すると良いでしょう。
SMART基準による目標設定のポイントは、以下のとおりです。
- Specific(具体的)
- Measurable(測定可能)
- Achievable(達成可能)
- Relevant(関連性)
- Time-bound(期限設定)
例えば「もっと顧客と良い関係を築きたい」などの漠然とした思いは「3ヶ月以内に主要顧客5社との月1回の定期ミーティングを設定し、関係強化を図る」と具体的な目標に変換できます。
実現可能で測定できる目標を設定すれば、ジョブクラフティングの効果を実感しやすくなります。
また、短期と長期の目標をバランスよく設定すれば、持続的な改善が可能になるでしょう。
行動計画
目標が定まったら、具体的な行動計画を立案しましょう。
この段階では、タスク、関係性、認知の3つの要素それぞれに関して、実践可能な行動を具体化していきます。
効果的な行動計画には以下の要素を含めることが大切です。
優先順位の設定 |
すぐに着手できる項目 準備が必要な項目 長期的に取り組む項目 |
実施スケジュール |
具体的な実施時期 必要な準備期間 定期的な見直しのタイミング |
例えば「週に1度、チーム内で15分のナレッジシェアの時間を設ける」「毎日の始業時に本日の価値創造目標を設定する」といった具体的な行動に落とし込みます。
このように、具体的で実行可能な計画を立てることで、着実な実践につながります。
振り返り
ジョブクラフティングの効果を高めるためには、定期的な振り返りと改善が欠かせません。
実践した行動の結果を評価し、次のステップにつなげていく作業が必要となります。
効果的な振り返りのポイントは、以下のとおりです。
定量的な評価 |
目標の達成度 業務効率の変化 具体的な成果 |
定性的な評価 |
仕事への意識の変化 周囲との関係性の変化 新たな気づきや学び |
例えば、月1回の振り返りシートを作成し「実践できた工夫」「得られた効果」「次月の課題」などを記録していきます。
この過程で見つかった改善点は、次の行動計画に反映させましょう。
実践と振り返りを繰り返すことで、より効果的なジョブクラフティングが実現できます。
ジョブ・クラフティングを実施する上での注意点
ジョブクラフティングを効果的に実施するためには、いくつかの注意点があります。
ここでは、ジョブクラフティングを効果的に進めるための具体的な注意点と対策を解説していきます。
従業員の自主性を尊重する
ジョブクラフティングを成功させる上で最も大切なのが、従業員の自主性を尊重することです。
単に「やりがいを見つけましょう」と伝えるだけでは、真の意味での主体的な取り組みは生まれません。
効果的に自主性を引き出すポイントには、以下のようなものが挙げられます。
- アイデアを否定せず、まずは受け入れる姿勢
- 小さな工夫や改善を評価する仕組み
- 失敗を学びの機会として捉える文化
例えば、週1回のチームミーティングで各自の工夫を共有する時間を設けたり、改善提案制度を設けたりすれば、従業員の主体的な行動を促進できるでしょう。
大切なのは、上からの押し付けではなく、従業員自身が「やってみたい」と思える環境を整えることです。
自主性を重視する姿勢が、ジョブクラフティングの持続的な実践につながります。
仕事の属人化を防ぐ
仕事の属人化は、組織にとって大きなリスクとなります。
ジョブクラフティングを進める際にも、特定の従業員にのみ業務が集中したり、独自の進め方が標準化されずに属人化したりする可能性があります。
属人化を防ぐためのポイントは、以下のとおりです。
- 工夫や改善内容の文書化
- チーム内での定期的な共有
- マニュアルやガイドラインの整備
例えば、ある従業員が開発した効率的な業務手法があれば、それをチーム内で共有し、誰もが活用できる形に整理します。
定期的なフィードバックの機会を設けることで、特定の個人に依存しない、組織全体での成長が可能となります。
個人の工夫を組織の財産として活かすことで、より効果的なジョブクラフティングの実践ができるでしょう。
目標設定と共有の場を設ける
ジョブクラフティングを組織全体に定着させるためには、目標設定と共有の場を適切に設けることが大切です。
PDCAサイクルを活用し、継続的な改善を促す仕組みづくりが効果的です。
効果的な目標管理のポイントには、以下のようなものが挙げられます。
Plan(計画) |
具体的な目標の設定 |
Do(実行) |
取り組みの実践 |
Check(評価・確認) |
成果の確認 |
Act(改善・行動) |
次のステップへの反映 |
例えば、月1回の全体会議で各自の取り組みを共有したり、四半期ごとに成果発表会を開催したりすれば、組織全体での学び合いが促進されます。
共有の場を通じて、個々の工夫が組織の標準的な取り組みへと発展していく可能性も生まれるかもしれません。
組織全体で目標を共有し、互いの成長を支援する環境を整えることで、より効果的なジョブクラフティングが実現します。
まとめ
ジョブクラフティングは、従業員が主体的に仕事の意味や価値を見出し、より良い働き方を実現する効果的な手法です。
タスク、関係性、認知の3つの要素から構成され、それぞれの視点で工夫を重ねることで、仕事のやりがいと生産性を高めることができます。
導入に際しては、自己分析から始まり、具体的な目標設定、行動計画の立案、振り返りまで、段階的に進めていくことが大切です。
従業員の自主性を尊重しながら、属人化を防ぎ、組織全体で共有・実践していく視点も欠かせません。
まずは小さな工夫から始めて、自分らしい働き方を見つけていきましょう。
その積み重ねが、個人と組織の持続的な成長につながります。
そこでもし、ジョブクラフティングに関する疑問や質問のある方は、いつでもアルマ・クリエイションにご相談ください。貴社に最適なソリューションを提供いたします。
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