経営戦略の策定に必要なフレームワークとは?目的や分析方法を解説
経営戦略のフレームワークとは、ビジネスにおいて分析や意思決定をスムーズに行うための枠組みのことで、社内外の情報を分析し、質の高い経営戦略を策定するために必要なツールの1つです。
フレームワークを活用する際は、自社の目的や特性に合ったものを選ぶこと、フレームワークによる分析は目的ではなく、経営戦略まで落とし込むことを忘れずにする必要があります。また、フレームワークはあくまでも道具であり、分析の精度や有用性が分析を行う人の能力によって左右されるため、運用の際には、十分な注意が必要です。
この記事では、経営戦略の策定に必要なフレームワークについて、代表的なフレームワーク11選と、その目的や分析方法を解説します。ぜひ参考にしてください。
経営戦略とは?
経営戦略とは、企業が競争環境の中で、企業体を維持し、持続的に生き残り、また成長していくための方針や戦略のことを指します。
この戦略は、企業の中期的な目標・ゴールを定め、一般的に有限である企業の経営資源(ヒト・モノ・カネ)を企業の掲げる目標達成のために以下に最適に配分していくことを指します。経営戦略は、企業が将来のビジョンを達成するための方策を立てるために、非常に重要です。
経営戦略の策定・遂行・評価のプロセスを「戦略経営(戦略的経営)」と呼びます。戦略経営は、自社や競合相手の内的要因や外的要因を分析・評価し、目標を設定し、それらの目標を達成するために必要な計画や手段を定めることから始まります。その後、戦略の実行に必要な資源を配分し、命令系統や権限・責任を組織内のグループやメンバーに割り当て、プロセス遂行を管理することで、経営戦略を実行していきます。
また、大きな視野で見ると、経営戦略の中には事業戦略や全社戦略など、より細分化された概念を包括することも可能です。
そこで、経営戦略を策定する際には、SWOT分析などのフレームワークを使い、業界のトレンドや市場の動向を正確に把握することが必要です。
そこで以下では、経営戦略に必要となるフレームワークについて解説します。
経営戦略の策定に必要なフレームワーク
経営戦略の策定に必要なフレームワークとは、企業が経営戦略を策定する際に用いる枠組みのことです。
フレームワークは、内部環境と外部環境を分析することにより、自社の経営課題や方向性を分析し、経営戦略をロジカルに組み立てるベースとなります。
フレームワークには、さまざまな種類があるため、自社の目的に合わせて選択することが重要です。フレームワークを活用することで、思考時間が短縮され、適切なアウトプットが得られるメリットがあります。
ただし、自社の目的や特性に合わせたフレームワークを選択し、分析することが目的ではありません。経営戦略におけるフレームワークの目的は「分析結果を基に、経営戦略に落とし込むこと」が重要であると理解しておきましょう。
経営戦略の策定に必要なフレームワーク11選
経営戦略に役立つフレームワークとしては、主に次の11種類が挙げられます。
- STP分析
- SWOT分析
- 3C分析
- VRIO分析
- PEST分析
- ファイブ・フォース分析
- 4P分析
- ポーターの競争戦略
- BCGマトリックス
- バリューチェーン分析
- PDCAサイクル
これらのフレームワークは、社内外の情報を分析し、経営上の課題や機会を把握し、戦略を策定するための指標として用いられています。
以下で、それぞれ詳しく解説します。
STP分析
STP分析とは、マーケティングにおいてよく用いられる分析方法の1つです。
STP分析は、Segmentation(セグメンテーション)、Targeting(ターゲティング)、Positioning(ポジショニング)という3つの英単語の頭文字から名付けられた言葉で、自社や商品が市場におけるどの位置にあるのかを明確化し、その後のマーケティング戦略を策定するために利用されます。
STP分析の手法は、新規事業を展開していく上で有効なフレームワークとして位置付けられており、自社の強みを発揮できるポジションを探り、競合他社との差別化を狙うことができます。
STP分析では「誰に、何を、どのように売るか」というマーケティングのテーマにおいて、「誰に」と「何を」に関わる視点として重要です。
SWOT分析
SWOT分析とは、経営戦略を立案するために用いられる現状分析手法であり、内部環境と外部環境のプラス面・マイナス面を洗い出すことで、自社の強み、弱み、機会、脅威を明確にすることが目的です。
SWOTとは、Strengths(強み)、Weaknesses(弱み)、Opportunities(機会)、Threats(脅威)の頭文字から成る言葉で、内部環境と外部環境における各要素を表しています。
内部環境は自社内を意味し、外部環境とは市場や競合他社など、自社に影響を及ぼす外部要因を指します。
3C分析
3C分析とは、自社や事業が成功するために必要な要因を探り出す分析方法の一つです。
3Cとは、Customer(顧客)、Company(自社)、Competitor(競合)の頭文字をとった言葉であり、それぞれの要素を分析することで、自社の強みや弱み、競合他社との差別化点や市場ニーズを把握することができます。
この分析手法は、マーケティング戦略の策定や事業計画の立案に活用されます。また、新規事業の開発や市場調査、顧客ニーズの把握などにも役立ちます。
3C分析の特徴は、外部環境として市場・顧客、競合を分析するだけでなく、自社の内部環境も含めた全体像を捉えることができる点です。
具体的には、自社の資源や能力、製品・サービスの特徴や差別化点、競合他社との比較などを分析することで、事業戦略の策定や改善点の発見につながります。
3C分析は、自社や事業を成功させるための重要な手法の一つであり、幅広い分野で活用されています。
VRIO分析
VRIO分析とは、企業の経営資源を評価するためのフレームワークです。
VRIO分析は、自社の競争優位性を確保するための内部環境を評価するために使用されます。VRIOとは、「Value(経済的な価値)」「Rareness(希少性)」「Imitability(模倣可能性)」「Organization(組織)」の4つの要素から構成される言葉です。
自社の経営資源について、この4つの要素を客観的に評価することで、自社の競争優位性がどのようなものであるかを判断することができます。
具体的には、自社のビジネスモデルの重要な経営資源が強みになっているのか、また仮に弱みの場合はどうすれば強みに変えられるのかを考えることができます。VRIO分析によって、自社の内部環境の調整や改善が可能です。
PEST分析
PEST分析とは、自社を取り巻く外部環境の政治、経済、社会、技術の4つの視点から分析するフレームワークです。
この分析手法を用いることで、自社に影響を及ぼす外部環境の変化を把握し、今後の事業戦略やマーケティング戦略を策定するための材料とすることができます。
PEST分析は、主に事業戦略(経営戦略、海外戦略、マーケティング戦略などを含む)を策定する際に使用されます。
PESTとは、Politics(政治的)、Economy(経済的)、Society(社会的)、Technology(技術的)の頭文字をとったものです。
この手法を用いることで、外部環境の変化によるプラス・マイナスの影響を整理し、事業戦略やマーケティング戦略における機会と課題を発見することができます。
PEST分析は、新たに事業を立ち上げる際に、自社の現状を把握するだけでなく、外部環境に関する情報を収集・分析するために役立ちます。
ファイブ・フォース分析
ファイブ・フォース分析とは、競合各社や業界全体の状況と収益構造を明らかにし、その中で自社の利益の上げやすさを分析するフレームワークで、業界の構造を把握するための手法の1つです。
ファイブ・フォース分析では、業界内に存在する5つの力(要素)に着目します。この5つの力とは「既存競争者同士の敵対関係」「新規参入の脅威」「代替品の脅威」「売り手の交渉力」「買い手の交渉力」のことを指します。
この5つの要素を分析することで、業界の収益性を高めるための戦略策定が可能です。
具体的には、自社の競争力を高めるための施策や、新規参入者や代替品からの脅威に対する対策などが考えられます。
4P分析
4P分析とは、マーケティング施策を企画・立案する際に用いられる分析手法の1つです。
4P分析は、自社製品・サービスを「Product(自社の製品・サービス)」「Price(価格)」「Place(販売場所・提供方法)」「Promotion(販促活動)」の4つの視点から分析し、その強みやアピールポイントをマーケティング企画に活かすフレームワークです。
4P分析では、自社製品・サービスを分析し、販売戦略につなげることができます。また、4P分析の各項目は独立したものでなく、それぞれに関連性がある状態でなければなりません。
ポーターの競争戦略
ポーターの競争戦略とは、企業が生き残るためのポジショニングや戦い方を提唱する経営戦略論です。この理論は、競合他社に打ち勝ち業界の中で競争優位を築くための枠組みとして、世界中で使用されています。
ポーターの基本戦略は、コスト・リーダーシップ戦略、差別化戦略、集中戦略の3つに分類されます。企業は、自社に合った基本戦略を1つ選び、単独で実行することが基本ですが、状況によっては複数の基本戦略を組み合わせ、同時に行うことも可能です。ポーターの理論で有名なのが、5つの競争要因(ファイブ・フォース分析)と3つの基本戦略です。
ファイブ・フォース分析は、業界の競争環境を分析するためのツールであり、競争要因として、新規参入の脅威、代替品の脅威、顧客の交渉力、供給業者の交渉力、既存競合他社の脅威を考慮します。また、3つの基本戦略は、コストリーダー戦略、差別化戦略、集中戦略の3つで、企業は、これらの戦略を組み合わせることで、競争優位を獲得することができます。
BCGマトリックス
BCGマトリックスとは、ビジネスの成長を促進し、市場シェアを獲得する製品の可能性を分析する戦略的な計画ツールの1つです。
BGCマトリックスでは、製品ラインまたはビジネスユニットのパフォーマンスと位置を分析することで、リソースをどこに割り当てるかを決定するために使用されます。
BCGマトリックスには、市場成長率と相対市場シェアの2つの要素があり、これにより、製品が市場シェアの成長機会を創出するのかどうかを分析することができます。
バリューチェーン分析
バリューチェーン分析とは、企業のビジネスや事業の価値創造プロセスを分析するフレームワークであり、原材料から商品やサービスが顧客に届くまでの一連の活動を「物の連鎖」「価値の連鎖」として捉えます。
バリューチェーン分析によって、どのような活動でどのような付加価値が生み出されているのかを可視化し、企業の競争優位性を評価することが可能です。
バリューチェーン分析は、企業の主活動と支援活動に分けられます。主活動とは、原材料の調達、製造、出荷、マーケティング・販売、そしてサービス提供に関する活動であり、商品やサービスの開発から販売までのプロセスに関わる活動のことです。一方、支援活動は、主活動を支援するための活動であり、企業内でのインフラストラクチャ、技術開発、人的資源管理、そして調達のプロセスに関わる活動を指します。
バリューチェーン分析を行うことで、企業は、どの部分にコストがかかっているのか、どの部分で付加価値が生み出されているのか、競合他社との差別化点は何かなどを把握し、改善点を見出すことができます。分析のプロセスは、バリューチェーンの洗い出し、コスト分析、強みや弱みの分析、そしてVRIO分析の4つです。
バリューチェーン分析の例としては、納期が短い、バリエーションがある、商品の質が高い、おいしい、精密さ・正確さがある、技術力が高いなどが挙げられます[1]。これらの要素は、企業が顧客に提供する価値を高めるための重要な要素であり、競争力を高めるために改善すべき点を顕在化できます。
PDCAサイクル
PDCAサイクルとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)という4つのフェーズを繰り返すことで、業務の品質や効率を改善するための手法です。
PDCAサイクルは、継続的な業務の効率化を図ることを目的としており、スピーディな業務改善を進めていくために「PDCAを高速で回す」という表現が使われています。PDCAサイクルを適用することで、業務の生産性や品質向上に役立てることができます。
経営戦略におけるフレームワークの効果的な使い方
経営戦略のフレームワークを効果的に使うためには、以下のようなポイントがあります。
目的に合わせたフレームワークを選ぶ
経営戦略のフレームワークにはさまざまな種類がありますが、自社の目的や課題に合わせた適切なフレームワークを選ぶことが重要です。
例えば、SWOT分析は自社の内部環境と外部環境を分析するためのフレームワークであり、3C分析は顧客、競合他社、自社の状況を分析するためのフレームワークです。
分析だけにとどまらず、戦略に落とし込む
フレームワークを用いて分析を行うことは大切ですが、それだけにとどまらず、分析結果を具体的な戦略に落とし込むことが必要です。
例えば、分析結果から競合他社との差別化戦略を策定するなど、分析結果を戦略に結びつけることが大切です。
定期的にフレームワークを見直す
自社の状況や市場環境は常に変化していくため、フレームワークを定期的に見直し、必要に応じて変更することが重要です。
また、フレームワークを使った分析結果を元に、戦略の見直しも行うことが必要です。
以上が、経営戦略のフレームワークを効果的に使うためのポイントとなります。
自社の課題や目的に合わせたフレームワークを選び、分析結果を具体的な戦略に落とし込むことが大切です。また、定期的な見直しや改善も忘れずに行うようにしましょう。
経営戦略の策定に必要なフレームワークのまとめ
このように、経営戦略の策定におけるフレームワークの役割は非常に大きく、分析結果を重要な指標として活用することができます。ただし、経営戦略におけるフレームワークの目的は「分析結果を基に、経営戦略に落とし込むこと」であるため、分析を行った後、いかにマーケティング活動へ反映するかが重要です。
もし、経営戦略やフレームワークに関する質問や疑問があれば、いつでもアルマ・クリエイションにご相談ください。それぞれの企業ごとに最適なソリューションをご提供いたします。
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