組織開発とは?具体的手順やフレームワークまでわかりやすく解説
組織開発とは、組織が抱える課題を解決し、より良い状態へと変革するための取り組みです。
しかし、具体的に何をすればいいのか分からない、自社には本当に必要なのか、とお悩みの方もいるのではないでしょうか。
この記事では、組織開発の基本から、具体的な手順、そして役立つフレームワークまで、分かりやすく解説します。
組織開発を理解できれば、組織の課題を明確にし、解決策を見つけ出す力が身につきます。
さらに、従業員の主体性を引き出し、より働きがいのある職場環境を構築するためのヒントが得られるでしょう。
組織開発に取り組みたいが何から始めていいかわからない方は、ぜひ参考にしてください。
組織開発とは
組織開発とは、組織全体の力を高めるための取り組みです。
組織内の人間関係やコミュニケーションを改善し、組織文化をより良く変えていくことを目指します。
働き方や価値観が多様化している現代では、組織開発の重要性が増しています。
組織開発は、単に問題解決をするだけではなく、組織が成長し続けるための土台となるでしょう。
組織開発が注目される背景には、従来の組織運営では対応しきれない課題が増えていることが挙げられます。
例えば、成果主義の導入で従業員間の協力が不足したり、テレワークの普及でコミュニケーションが希薄になったりするケースが見られます。
これらの課題に対し、組織開発は有効な解決策となり得るでしょう。
組織開発では、さまざまなアプローチを用いて組織の変革を目指します。
チームビルディング研修でメンバー間の信頼関係を深めたり、組織診断で課題を可視化したりも有効です。
これらの取り組みを通じて、組織全体をより良い状態にし、従業員が働きやすい環境を作っていくことが大切です。
組織開発の目的
組織開発の目的は、組織のパフォーマンスを最大化させることです。
組織が持つ力を最大限に引き出し、より高い成果を目指します。
組織のパフォーマンスを向上させるためには、まず組織が抱える問題を洗い出す必要があります。
その上で、具体的な改善方法を模索していくことが大切です。
組織の問題点が改善できれば、以下のような効果が期待できます。
- 従業員の主体性向上
- 従業員のモチベーション向上
- 業績向上
組織開発では、従業員自らが課題解決する力を育てていくことも大切です。
また、従業員同士が相乗効果を発揮できるような組織風土を作り上げることで、企業の生産性を高めることができるでしょう。
組織開発は、一度きりの取り組みではなく、継続して取り組む必要があります。
組織全体に理念や目標、文化が定着するまで、地道な行動を続けていく必要があるでしょう。
期待される効果
組織開発に取り組むことで、組織にはさまざまな良い影響がもたらされます。
組織全体の活性化はもちろん、従業員の成長や働きがいにもつながるため、組織開発は、企業にとって重要な取り組みです。
組織開発によって期待できる主な効果は、以下のとおりです。
- 従業員エンゲージメントの向上
- チームワークの改善
- 組織全体のパフォーマンス向上
これらの効果は、組織開発を継続的に行うことで、より確実なものとなります。
組織開発によって、従業員エンゲージメントが向上し、従業員が会社に対して愛着を持ち、積極的に業務に取り組むようになるでしょう。
チームワークが改善されれば、チーム内のコミュニケーションが活発になり、メンバー間の協力体制が強化されます。
組織全体のパフォーマンスが向上すれば、組織の潜在能力を最大限に引き出し、持続的な成長を促すことができるでしょう。
人材開発との違い
組織開発と混同されやすい言葉に、人材開発があります。
どちらも組織を良くするための取り組みですが、焦点を当てる部分が異なります。
組織開発と人材開発の主な違いは、以下のとおりです。
組織開発 |
人材開発 |
|
主な対象 |
組織全体の人間関係 部門間の連携 業務プロセスなど |
個人のスキルアップ 知識習得 キャリア開発など |
主な目的 |
組織全体の生産性向上 組織文化の改善 組織全体の課題解決など |
個人の能力向上 個人の成長 キャリアアップなど |
アプローチ |
チームビルディング 組織診断 コミュニケーション改善 業務フローの見直しなど |
社内研修 OJT メンター制度 1on1ミーティングなど |
組織開発は、組織全体の成長と健全性に焦点を当て、組織内の人間関係やプロセスを改善すれば、組織全体のパフォーマンス向上を目指します。
一方、人材開発は、個人のスキルや知識を向上させることに焦点を当て、研修やOJTを通じて個人の成長を促します。
組織開発と人材開発は、どちらも組織にとって大切な取り組みですが、それぞれの目的やアプローチが異なる点を理解しておくことが大切です。
組織開発の主な手順
組織開発は、組織全体をより良く変えていくための取り組みですが、具体的な手順が分からなければ、どこから手を付ければ良いか迷ってしまうこともあるでしょう。
そこでここでは、組織開発を効果的に進めるための主な手順を解説していきます。
ゴールを設定する
組織開発を始めるにあたって、まず最初に行うべきことは、具体的なゴール設定です。
ゴールを設定すれば、組織開発の方向性が定まり、組織全体で同じ目標に向かって取り組むことができるようになります。
組織開発のゴールは、以下の3つの視点を参考に、具体的な内容に落とし込むようにしましょう。
- 従業員満足度やエンゲージメントの向上
- 無駄な業務プロセスの削減、業務効率化
- 市場変化への対応力強化、新しい技術の導入
ゴールを設定する際には「何を、いつまでに、どのような状態にしたいのか」を明確にしましょう。
例えば「1年後に、従業員エンゲージメントを〇〇%向上させる」や「3ヶ月後に、業務効率を〇〇%改善する」といった具体的な目標を設定が必要です。
具体的な目標を設定すれば、組織内での共有や推進が簡単になり、組織開発そのものが目的化してしまうことを避けることができるでしょう。
組織の現状を確認する
組織開発では、ゴールを設定するのと同じくらい大切なのが、組織の現状の正確な把握です。
現状を把握すれば、組織が抱える課題や問題点が明確になり、より効果的な組織開発を進められるでしょう。
組織開発の対象は、社員同士の関係性や組織構造など、数値で測りにくいものが多いため、現状把握が難しい側面もあります。
例えば「職場の風通しが良くない」や「職場に活気が無い」といった印象による評価に留まってしまうことも少なくありません。
組織の現状をより詳細かつ正確に把握するために、社員からのヒアリングやアンケートの実施も有効です。
管理職や現場など、多方面から情報を収集すれば、組織の課題を多角的に捉えられるでしょう。
この際、正確な情報を収集するためには、「事実と意見を分けた回答を得ること」を意識する必要があります。
事実に基づいた客観的な情報と、個人の意見や感想を区別すれば、より正確な現状把握ができるでしょう。
優先課題を絞り込む
組織開発では、目的と現状を明確にした後、その差を埋めるための「課題」を設定する必要があります。
「何を行えば、現状から目的とする状態に変えられるだろうか」という観点から検討を進めていきましょう。
現状分析で把握した情報を基に、組織開発の対象である社員同士の関係性や組織構造のうち、どこに対して働きかける必要があるかを見極めます。
例えば、以下のような課題が見つかるかもしれません。
- 社員間のコミュニケーションが不足している
- 部門間の連携がうまくいっていない
- 特定の部署に業務が集中している
- 新しいアイデアが生まれにくい風土がある
対象が定まれば、課題の設定は完了です。
この段階で、課題を具体的に特定できれば、その後の組織開発を円滑に進められるでしょう。
小さく始める
課題を設定したら、まずは「小規模」のアクションプランで試してみましょう。
組織開発は、組織全体に影響を与えるため、最初から大規模な取り組みを行うのではなく、小さく始めることが大切です。
小規模で始めることには、以下のようなメリットがあります。
- 早期の効果検証が可能で、改善と実施を繰り返し行いやすい
- 全社展開のための先行事例を得られる
- リスクを最小限に抑えられる
アクションプランは、5W2H(Why|なぜ、Where|どこで、Who|誰が、What|何を、When|いつ、How|どうやって、How much|いくらで)に当てはめて具体化すれば、計画の抜け漏れやブレを防ぐことができます。
5W2Hを意識し課題を設定すれば、より具体的で効果的なアクションプランを作成できるでしょう。
結果を分析する
小規模での試験運用が完了したら、次は、その結果を分析する段階です。
この段階では、試験運用で得られた効果を検証し、当初の目標を達成できたかどうかを確認します。
もし期待通りの成果が得られた場合は、その成功要因を明確にするようにしましょう。
成功した要因を分析すれば、再現性を高め、他の部署やチームにも応用できるようになります。
一方、期待した成果が得られなかった場合は、その原因を究明しなければなりません。
なぜうまくいかなかったのかを分析し、改善策を検討しましょう。
組織開発では、全社展開の根拠となる事例を得るために、この結果分析と改善策の検討を繰り返すことが大切です。
目的の期日に支障が出ない範囲で、効果がでるまで改善を繰り返しましょう。
全社に展開する
小規模での試験運用で得られた効果を検証したら、次は、いよいよ全社への展開です。
全社展開をする上で大切なのは、組織を構成する社員一人ひとりが当事者意識を持つことです。
組織開発は、一部の社員だけが取り組むのではなく、全員が主体的に参加できれば、より大きな効果が得られます。
社員同士の関係性や組織構造のどちらに関する施策にでも、その目的や必要性、そして試験運用で得られた成功事例を明確に示す必要があります。
もし、十分な成功事例が得られていない場合は、その対策や留意点とあわせて示すようにしましょう。
全社展開をスムーズに進めるためには、事前の丁寧な情報共有が大切です。
定期的に振り返りを行う
組織開発は、全社に展開したら終わりではありません。
組織は常に変化するため、定期的に振り返りを行い、効果を検証する必要があります。
振り返りを行うことで、組織開発の取り組みが当初の目標を達成できているか、また新たな課題は発生していないかなどを確認できます。
振り返りの頻度は、組織の状況や課題によって異なりますが、少なくとも年に1回は実施するようにしましょう。
振り返りでは、アンケートやヒアリングなどを活用し、客観的なデータを収集してください。
振り返りの結果を踏まえ、必要に応じて改善策を講じていきましょう。
組織開発は、継続的に改善を繰り返すことで、より効果的なものになっていきます。
組織開発に活用できる主なフレームワーク
組織開発を進める上で、さまざまなフレームワークを活用すれば、より効果的に組織開発を進められるでしょう。
フレームワークとは、組織の課題を分析し、解決策を検討するための枠組みのことです。
ここでは、組織開発で活用できる代表的なフレームワークをいくつか紹介します。
タックマンモデル|チームの形成段階を可視化
タックマンモデルは、心理学者ブルース・タックマンが1965年に提唱した、組織の成長段階を示すフレームワークです。
このモデルでは、組織を以下の5つの段階に分類し、それぞれの段階の組織の状態と、その段階で適切な対策を提示しています。
形成期 |
チームが発足したばかりで、メンバーがお互いに様子見をしている段階 |
混乱期 |
メンバー間の意見の対立や、役割分担に関する不満が生じやすい段階 |
統一期: |
チームの目標や役割が明確になり、メンバー間の協力体制が構築され始める段階 |
機能期 |
チームが自律的に動き、高い成果を上げられるようになる段階 |
散会期 |
プロジェクトが完了し、チームが解散する段階 |
組織開発で、タックマンモデルを活用すれば、組織が現在どの段階にあるのかを把握し、その段階に応じた適切なアプローチを取ることができます。
タックマンモデルは、組織の団結力を高めるチームビルディングの手法として、多くの企業で取り入れられています。
チームの成長段階を可視化し、適切な対応策を講じることで、より理想的な組織へと成長させることが可能になるでしょう。
ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)|価値観を共有
組織での共通の価値観を定めるために役立つフレームワークの一つが、「ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)」です。
MVVは、組織のあり方を表現する概念として企業理念に記載されることもあり、組織開発では、目指す組織の姿を検討する際に活用できます。
MVVは、それぞれ以下の要素で構成されています。
ミッション(Mission) |
企業や組織が社会に対して果たすべき使命や存在意義を表す 企業の価値観の根幹となるもの |
ビジョン(Vision) |
企業や組織が中長期的に目指す目標 |
バリュー(Value) |
ミッションやビジョンの実現のために、大切にすべきことをまとめたもの |
組織開発で、MVVを明確にすれば、組織全体の方向性を定め、従業員が共通の目標に向かって行動できるようになります。
MVVを組織全体で共有し、浸透させられれば、組織の一体感やエンゲージメントを高める効果も期待できるでしょう。
7Sモデル|内部環境を診断
「7S」とは、組織運営に欠かせない7つの経営資源の相互関係を表したものです。
大手コンサルティングファームであるマッキンゼーが提唱したフレームワークとして知られています。
7Sモデルは、以下の表のように、3つのハード要素と4つのソフト要素で構成されています。
ハード要素 |
戦略(Strategy) |
組織が目標を達成するための計画や方向性 |
組織構造(Structure) |
組織の階層構造、部門間の関係性 |
|
システム・制度(System) |
業務プロセス、情報システム、評価制度など |
|
ソフト要素 |
共通の価値観・理念(Shared value) |
組織全体で共有する価値観や理念 |
経営スタイル・社風(Style) |
組織の文化や風土、経営者のリーダーシップスタイル |
|
人材(Staff) |
組織を構成する従業員の質や能力、育成制度 |
|
スキル・能力(Skill) |
従業員が持つ知識や技術、組織全体の強み |
7つの要素をバランス有効活用すれば、自社に合った事業戦略を策定できます。
7Sモデルのフレームワークは、組織開発などの経営戦略を練る際に役立ちます。
組織の内部環境を多角的に分析し、課題を特定する上で、有効なツールとなるでしょう。
アプリシエイティブ・インクワイアリー(AI)|強みを活用
「AI(Appreciative Inquiry)」とは、組織が抱える課題よりも、組織が「なりたい姿」に目を向けることで、現状を肯定的に捉える手法です。
従来の組織開発のアプローチとは異なり、組織の強みや成功体験に焦点を当て、それをさらに発展させていくことを目指します。
AIは、組織全体で未来に対する具体的なアクションプランを描く上で有効であり、以下の4つの段階を経て進められます。
発見(Discover) |
組織の強みや成功事例を発見する段階 |
夢(Dream) |
組織が目指す未来の姿を明確にする段階 |
設計(Design) |
未来の姿を実現するための具体的な計画を立てる段階 |
実行(Destiny) |
計画を実行し、組織を変化させていく段階 |
AIは、それぞれの段階で、個々の従業員の考えや想いを共有しながら組織開発へとつなげていきます。
自社の将来の方向性を全員で話し合うことで、組織変革を図れるでしょう。
組織全体のエンゲージメントを高め、主体的な行動を促す効果が期待できます。
OKR|目標達成を管理
OKRは、組織や個人の目標管理をするための考え方で、Objectives and Key Results(目標と主要な成果)の略称です。
組織全体の目標を明確にし、その達成度を測ることで、組織の成長を促進します。
OKRは、他の目標管理方法と比較して、高い頻度で「目標設定」「調査」「評価」を実施する点が特徴です。
目標サイクルが1ヶ月〜四半期と短いため、組織は変化に柔軟に対応しながら、スピード感を持って課題解決を進められます。
高頻度で評価を行うことになるため、目標管理システムのようなツールを活用して、効率的に運用するのがおすすめです。
OKRを効果的に活用すれば、組織全体の目標達成力を高め、組織開発をよりスムーズに進めることができるでしょう。
まとめ
組織開発は、組織全体の活性化や成長を促すための取り組みです。
この記事では、組織開発の目的や手順、活用できるフレームワークについて解説してきました。
組織開発を成功させるためには、組織全体の目標を明確にし、現状を正確に把握し、適切な課題を設定する必要があります。
タックマンモデルやMVV、7Sモデルなど、さまざまなフレームワークを活用すれば、より効果的な組織開発を進めるられるでしょう。
今回ご紹介した内容を参考に、ぜひ組織開発に取り組んでみてください。
組織開発は、組織の持続的な成長に不可欠な要素です。
継続的に取り組める体制を少しずつ整えていきましょう。
そこでもし、組織開発に関する疑問や質問のある方は、いつでもアルマ・クリエイションにご相談ください。貴社に最適なソリューションを提供いたします。
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