クリティカルシンキングとロジカルシンキングの違いや能力を鍛える実践方法を解説
クリティカルシンキングは、日本語で「批判的思考」と訳されるため、ついマイナスのイメージを持たれるかもしれません。
しかしクリティカルシンキングの本来の意味は、自分の判断や思考について「これで正しいのか」という客観的な視点を持ち、より正しい論理に導こうとする思考です。
もし仕事や日常生活において「成果がなかなか出ない」や「周囲の人に自分の意見が通らない」など、自分の思う通りに物事が進まないと感じる方は、クリティカルシンキングが足りていない可能性があります。
クリティカルシンキングを養うことで、自分の思考に対する偏りや不完全なところを減らすことができ、成果や協調性などの向上に期待できます。
そこで今回は、クリティカルシンキングとロジカルシンキングの違いや能力を鍛える実践方法を解説しますので、ぜひ参考にしてください。
クリティカルシンキングとは
クリティカルシンキングとは、1つの事象や結果に対してさまざまな角度から検証し、正しい判断ができるようになる思考法です。
クリティカルシンキングでは、自分が普段無意識にとっている行動や思考を意識的に振り返り、客観的な視点で振り返ります。
このクリティカルシンキングを取り入れ、身につけることで、仕事や日常生活のなかのさまざまな問題や課題の解決に対し、意思決定の基盤を構築できます。
またクリティカルシンキングが身につくことで、自分の思考に偏りがないかを確認できるため、他者とのコミュニケーション能力を高めるのにも役立つでしょう。
クリティカルシンキングが注目される背景
クリティカルシンキングが注目される背景には、近年の働き方改革や新型コロナウィルスの蔓延などによる、ビジネス環境の大きな変化があります。
平成に入ってからは、日本企業の特徴であった年功序列や終身雇用制度が事実上破綻し、派遣雇用やジョブ型雇用といった雇用形態も台頭しています。
このような現代社会では、これまでのような「前例に習えば成功する」といった思考は通用しません。むしろ古い形式や慣習を疑い、これまでとは異なった角度から物事を見直し、新しいアイデアを出しながらトライ&エラーを繰り返すことが重要です。
そしていくつかのサンプルに対して、あらゆる角度から分析と検証を行い、取捨選択しなければなりません。
このように、企業や教育現場などの幅広い分野において、クリティカルシンキングの必要性が高まっているのです。
クリティカルシンキングとロジカルシンキングの違い
クリティカルシンキングと混同されがちな思考法に、ロジカルシンキング(論理的思考)があげられます。
ロジカルシンキングとは、ゴールに向けたプロセスを根拠に基づいて積み上げていくか、結果に対して検証を行いながら根拠を見出していく思考法です。
一方クリティカルシンキングでは、ロジカルシンキングによる理論的な正しさの検証だけでなく、対象となる判断や結果について、妥当性の有無も検討します。
わかりやすい例えで言うと、新商品の販売数が目標をクリアできた理由を検証する際に、ロジカルシンキングでは「成功した根拠を推理・検証する」のに対し、クリティカルシンキングでは「成功理由だけではなく、もっと売れる方法がなかったか、より効率よく販売できないか」などに取り組む思考法を指します。
クリティカルシンキングとロジカルシンキングで活路を見出す
上記のように、クリティカルシンキングは、ロジカルシンキングとは異なったアプローチで問題や課題に向き合います。
ただ、この2つの思考法は視点が異なるだけで、決して相反するものではありません。
クリティカルシンキングを行うことで、ロジカルシンキングが不要になるということでもなければ、ロジカルシンキングだけで完結するものでもありません。
クリティカルシンキングとロジカルシンキングは、双方が効果を補完し合うことで、物事を論理的に組み立て、前提条件となる視点の偏りを無くすことができます。
このようにクリティカルシンキングとロジカルシンキングは、それぞれの特徴を理解しつつ、両方を効果的に使うことで活路を見出せるのです。
クリティカルシンキングのメリット
ここでは、ビジネスシーンを例に取り、クリティカルシンキングのメリットについて考察します。クリティカルシンキングのメリットには、次の2つがあります。
コミュニケーション能力が身につく
コミュニケーション能力は、ビジネスだけでなく、普段の生活においても重要な能力の1つです。
クリティカルシンキングを身につけることで、他者との間に認識の違いが起きた時でも、冷静に相手の話を聞くことができます。そして相手の思考の背景を読み取り、双方の立場を踏まえた上で、自分の主張をわかりやすく伝えることができるでしょう。
数値や情報を基にした的確な判断能力が身につく
ビジネスシーンで重要となる数値やさまざまな情報は、マーケティング戦略の構築や、PDCAサイクルを回していく過程において必要不可欠です。
クリティカルシンキングを身に付けることで、数値や情報に隠された重要なデータを把握し、的確な判断ができるようになるでしょう。
クリティカルシンキングの能力を身につける方法
クリティカルシンキングの能力を身につける主な方法には、次の4つがあります。
- ・客観的な視点を持つ
- ・事実に基づいた発言を意識する
- ・正確な情報を集める
- ・複数の人とディスカッションを行う
それぞれ解説します。
客観的な視点を持つ
クリティカルシンキングでは、常に客観的な思考を持つことが重要です。
もし自分の主観で物事を判断してしまうと、他者から見た自分の評価や、問題や課題に取り組む前提条件の間違いに気づくことすらできなくなります。
事実に基づいた発言を意識する
事実に基づいた発言を意識することで、クリティカルシンキングが効果的に身につきます。
エビデンスのある事実に基づいた情報を発言することで、感情的になることがなく、常に冷静な思考能力が養えるため、クリティカルシンキングの習得に役立つでしょう。
正確な情報を集める
事実に基づいた発言を行うためには、常に正確な情報を集める必要があります。
正確な情報とは、インターネットや週刊誌にあるようなトレンド情報ではなく、情報の発信元やエビデンスのある情報です。客観的な視点と同じく、常に正確な情報収集を癖づけましょう。
複数の人とディスカッション(討論)を行う
何かの問題や課題が見つかった時は、自分一人で考えるのではなく、できるだけ多くの人とディスカッション(討論)してみることをおすすめします。
ディスカッションとは、議題に対してさまざまな立場や視点から自由に意見を出し合い、より良い結論を導き出す行為を言います。
ディスカッションを繰り返すことで、自然と自分の主観的な物事の考え方が変化し、クリティカルシンキングを養うことができるでしょう。
クリティカルシンキングの鍛え方
それでは次に、身につけたクリティカルシンキングを鍛える方法を紹介します。クリティカルシンキングを鍛えるためには、次の3つを意識することが大切です。
- ・常に具体的に話す習慣をつける
- ・常に仮説と検証を繰り返す
- ・事実と意見を見分けて区別する
それぞれ解説します。
常に具体的に話す習慣をつける
話す相手に「自分の真意が上手く伝わらない」と感じている方は、常に具体的に話す習慣をつけてみましょう。
具体的に話す場合は、物事の前後をしっかりと意識することが重要です。主語を省かずに、できるだけ具体例などをあげて話すのも効果的です。
また自分がわかっていても「あれ」や「それ」といった指示代名詞を使うのも、会話の内容をわかりにくくする原因となるため注意しましょう。
常に仮説と検証を繰り返す
クリティカルシンキングは、自分の思い込みを排除するための思考法です。
自分の思い込みに気づき、無くすためには、仮説と検証を繰り返すのが効果的です。
クリティカルシンキングとロジカルシンキングを行いながら、仮説をたてて結論に導くだけではなく、結論を再度検証することによって、一方的な思い込みによる間違った視点を見つけられるようになります。
事実と意見を見分けて区別する
「物事の事実」と「人の意見」を見分けることは、極めて重要です。
例えば「今後、日本の人口が減少する」ことは事実です。しかし「人口が減少しても、国内の経済は発展する」という考えは人の意見であり、これとは異なった意見もあります。
このように、相手が事実を話しているのか、それとも意見を述べているかに注意することは、クリティカルシンキングを鍛えるのに役立ちます。
クリティカルシンキングの実践方法
以下では、クリティカルシンキングの実践方法について解説します。
クリティカルシンキングの実践は、次の4つのステップで行います。
- 議論の目的を決める
- 議論する前提条件を分析する
- 論理の整合性を検証する
- 問題解決の行動に対してPDCAを回す
それぞれ解説します。
1.議論の目的を決める
まずは議論する議題の目的を決めましょう。
どのような議題に対して議論するのか、その目的を決めて何のためにクリティカルシンキングを行うかを明確にします。
ビジネスであれば「商品の売上額を上げる」ことと「利益額を向上させる」ことでは、議論する目的が違います。議論の目的を統一してからクリティカルシンキングを行わなければ、議論自体が成立しません。
2.議論する前提条件を分析する
議論する前提条件とは、事実に基づいた前提条件であるかが重要です。
例えば「売上が下がった」という事実に対し、不景気だから、他社が新製品を出したから、といった主観を前提とするのは危険です。
事実に基づいた議論を実施するためにも、他の商品の売上も同様に下がっているか、他社の製品が市場に出たタイミングと自社商品の売上状況が一致しているかなど、さまざまな事実に基づいたデータや情報を収集して分析と検証を行うことが重要です。
3.論理の整合性を検証する
2の前提条件の分析と検証結果から、理論の整合性が取れているかを検証しましょう。
もし検証結果と仮説理論が矛盾している場合には、自分もしくは自分達の思い込みや先入観が先行している可能性があります。
4.問題解決の行動に対してPDCAを回す
3の理論の整合性が取れていない場合には、問題解決の行動に対してPDCAを回しながら、最適解を求めることが必要となります。
PDCAとは、Plan(計画)→Do(実行)→Check(検証)→Action(改善)を繰り返すことで、ビジネスを成功に導くプロセスの1つです。
クリティカルシンキングにおいては、特にCheck(検証)を重視します。
クリティカルシンキングで重要な3つのポイント
それでは最後に、クリティカルシンキングを行う際の重要ポイントを3つ紹介します。
クリティカルシンキングで重要となるポイントは、次の3つです。
- ・さまざまな視点から物事を検証する
- ・主観的な思考を排除する
- ・事実と意見を客観的に見分ける
それぞれ解説します。
さまざまな視点から物事を検証する
物事を検証する際は、ロジカルシンキングだけでなく、さまざまな視点から判断・検証するクリティカルシンキングも取り入れましょう。
特にビジネスにおける問題や課題は、答えが1つではないケースがほとんどです。そのためにも、既存の枠組みに囚われることなく、常に新しい視点を意識することが大切です。
主観的な思考を排除する
人は、誰もが主観的な思考を持ち合わせているのが普通です。この主観を排除することは意外に難しいものであるため、できるだけ多くの人の意見を取り入れて物事を考える習慣を持つことが大切です。
普段から人の意見を聞いて自分と異なるところを見つけたり、読書や心理テストを試すなど、自分にはない新しい思考を身につけるように心がけましょう。
事実と意見を客観的に見分ける
ビジネスや学校などでは、上司や先輩、教師からさまざまなことを教えられたり、アドバイスを受けることがあります。ただ、教えやアドバイスのすべてが正しいわけではありません。
特にビジネス環境が大きく、そしてスピーディーに変化している現代では、上司や先輩のアドバイスが間違っているケースも多いことでしょう。
このような「事実」と「意見」を見分ける能力を養うことは、今後の混沌とした世界で生き抜くためには必要不可欠と言えます。
これらを見分けるためにも、クリティカルシンキングの実践方法を参考に、ぜひ取り組んでみてください。
クリティカルシンキングのまとめ
このように、クリティカルシンキングは単独で行えば良いというものではなく、ロジカルシンキングと合わせて活用することが重要です。
またクリティカルシンキングは、一度身につければ終わりという思考ではなく、常に自分の思考のベースとして理解しておくべきスキルの1つです。
クリティカルシンキングは、日常生活だけでなく、ビジネス環境においても非常に重要な考え方です。そこで、もしクリティカルシンキングやロジカルシンキングといった思考法について疑問がある方や、もっと詳しく知りたい方は、いつでもアルマクリエイションにご相談ください。
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