現代のビジネスにおいて、多くの企業が直面している課題には、労働人口の減少による人材不足や国内外の市場競争の激化などがあります。これらの課題を克服し、企業間の競争に勝ち抜くためには、企業内で優秀な人材を育成するための人材教育を充実させることが重要です。
そこで注目されている教育方法の1つが、リスキリングです。リスキリングとは、社内研修などによって社員教育を実施する方法で、リカレント教育などの社外の教育機関で学ぶ手法とは異なります。
リスキリングでは、自社の社風や企業文化に対する理解のある人材を教育するため、新しい人材を採用して教育するよりもメリットが大きいのが特徴です。
そこで今回は、国内企業のリスキリング成功事例5つとそれぞれの注目ポイントを解説します。社内の人材教育にお悩みのある方は、ぜひ参考にしてください。
企業がリスキリングを導入する主な目的は、以下のようなものがあります。
企業がビジネスを遂行する上で必要なスキルや知識が変化することがあります。そのため、企業は従業員のスキルや知識を最新のものに更新することで、業務遂行の効率化や品質向上を図ることができます。
リスキリングを導入することで、従業員に新しいスキルや知識を身につける機会を提供し、自己啓発やキャリアアップの機会を与えることができます。それにより、従業員のモチベーションを向上させ、企業の人材育成にもつながります。
企業が自社で必要とするスキルや知識を持った人材を採用することが困難になる場合があります。そのため、リスキリングにより、既存の従業員に必要なスキルや知識を習得させることで、人材確保や採用コストの削減につなげることができます。
企業が新規事業を展開する場合や海外市場に進出する場合、それに必要なスキルや知識が異なる場合があります。そのため、リスキリングを導入することで、必要なスキルや知識を身につけ、新規事業や市場進出に備えることができます。
以下では、国内企業のリスキリング成功事例5つと、それぞれの注目ポイントを紹介します。
株式会社日立製作所では、全従業員16万人を対象とした、独自のDX人材育成研修を実施しています。
人材戦略の1つとして「デジタル人財の強化」をあげ、日立グループの日立アカデミーと連携し、独自の研修プログラムを開発しました。
また、デジタルリテラシー底上げのため、2020年度より「デジタルリテラシーエクササイズ」というDX基礎教育プログラムの提供を開始しています。
デジタルリテラシーエクササイズでは、研修プログラムを4つのステップに分類し、習得したいDXスキルのロードマップを提示。これは、デジタル技術に関する基礎知識から実践的な問題解決に至るスキルが習得できる内容となっており、同社のデジタル事業についての理解を深める内容となっています。
以下では、株式会社日立製作所のリスキリングの特徴やポイントを紹介します。
日立製作所は、従業員の能力やスキルに応じたカスタマイズされたトレーニングプログラムを提供することで、リスキリングに取り組んでいます。このカスタマイズには、社員が自分自身の進路を自己決定できるような柔軟性があることが含まれます。
日立製作所は、従業員の技術力を強化することに焦点を当てています。例えば、AIやデータサイエンス、クラウド技術、セキュリティなど、最新の技術分野に関するトレーニングを提供しています。
日立製作所は、オンライン学習プログラムの提供に注力しており、従業員が自宅やオフィスから学習できるようにしています。また、オンライン学習を通じて、学習の進捗状況を追跡し、必要に応じてカスタマイズされたサポートを提供しています。
日立製作所は、従業員が単独で学習するだけでなく、チームで学習することを奨励しています。社員同士の協力や知識共有を通じて、リスキリングがよりスムーズに進むことが期待されます。
日立製作所は、リスキリングを通じて、従業員のキャリア開発を支援しています。トレーニングプログラムの中で、職務上のスキルを向上させることに加え、キャリアアップのための支援も行っています。
SOMPOホールディングス株式会社は、保険事業を中心に各種事業を展開する企業です。
SOMPOホールディングスでは、2021年~2023年度の中長期計画において、保険などの主力既存事業のほかに、デジタル事業にも注力する方針を打ち出しました。
そこで、事業展開を推進するために、全従業員を対象としたDX人材への育成施策を開始しています。
今後は、国内グループ全従業員約6万人にDX基礎研修を実施し、従業員のデジタルスキル習得を目指します。
以下では、SOMPOホールディングス株式会社のリスキリングの特徴やポイントを紹介します。
SOMPOホールディングスは、リスキリングを経営戦略の一部と位置づけています。従業員の能力やスキルの強化を通じて、企業の成長戦略を支援することに力を入れています。
SOMPOホールディングスは、グローバルなトレーニングプログラムを提供しています。これにより、海外拠点で働く従業員にも最新のスキルを提供できます。
SOMPOホールディングスは、マネージャー育成プログラムを設けています。経営陣が主体となり、社員のリーダーシップスキルの向上に力を入れています。
SOMPOホールディングスは、デジタルトレーニングプログラムを提供しています。これにより、デジタル技術に関する最新情報を提供し、従業員のデジタルスキルの向上を促しています。
SOMPOホールディングスは、オン・ジョブトレーニングを導入しています。これは、従業員が実際の業務の中でスキルを身につけることを支援するもので、継続的なスキルアップが可能となっています。
SOMPOホールディングスは、リーダーシップ開発プログラムを提供しています。これにより、社員がリーダーとして必要なスキルを習得できます。
これらの特徴により、SOMPOホールディングスは、従業員のスキルアップを支援し、企業の成長につなげることができるリスキリングプログラムを提供しています。
三菱UFJフィナンシャル・グループの都市銀行である三菱UFJ銀行では、金融業界の厳しい競争環境へ対応するためにDXを推進し、業務の効率化と課題解決を目指しています。
三菱UFJ銀行ではDX推進の体制化を実施し、2021年4月に「デジタルサービス事業本部」を設立して、同社のDXを牽引しています。
以下では、株式会社三菱UFJ銀行のリスキリングの特徴やポイントを紹介します。
三菱UFJ銀行は、従業員の専門性を高めるためのトレーニングプログラムを提供しています。これには、金融商品の知識やビジネススキルを向上させるためのトレーニングが含まれます。
三菱UFJ銀行は、従業員の役割や業務に応じて、カスタマイズされたトレーニングプログラムを提供しています。これにより、従業員が必要とするスキルや知識に集中し、より効果的なトレーニングを受けることができます。
三菱UFJ銀行は、オンライン教育プログラムを提供しています。これにより、従業員は自分のペースで学習を進めることができ、効率的にスキルを向上させることができます。
三菱UFJ銀行は、従業員に対してコーチングやメンタリングの支援を提供しています。これにより、従業員は上司や専門家からのフィードバックを受け、自己啓発に努めることができます。
三菱UFJ銀行は、外部の専門家によるトレーニングプログラムを提供しています。これにより、従業員は業界の最新動向やベストプラクティスについて学ぶことができます。
食品メーカー大手の味の素株式会社では、2020年の中期経営計画において「食と健康の課題解決企業として、社会変革をリードする存在になる」というビジョンを基に、大幅な組織変革を開始しています。
味の素株式会社では、ビジョンの達成にはDX推進がポイントであるとして、DXによる生産性や競争力、企業価値を高めていくという方針を定めて変革を進めています。
味の素株式会社では、実際に2026年~2030年の間に、全従業員をDXビジネス人材化する予定です。
現在では、人材育成などの取り組みを基軸として、AIを導入した物流プロジェクトやフードテック企業と連携した新しいビジネスを創出するなど、革新的なプロジェクトを展開中です。
以下では、味の素株式会社のリスキリングの特徴やポイントを紹介します。
味の素株式会社は、「自己変革プログラム」と呼ばれる研修プログラムを実施しています。このプログラムでは、従業員が自己分析を行い、自分自身の課題や成長のための目標を設定することができます。
味の素株式会社は、リーダーシップ開発プログラムを提供しています。このプログラムでは、リーダーシップのスキルやマネジメントの方法を学ぶことができます。
味の素株式会社は、従業員のキャリアアップ支援のために、キャリアカウンセリングや、部署や職種をまたいだ転職支援などを実施しています。
味の素株式会社は、グローバル人材育成プログラムを提供しています。このプログラムでは、海外拠点での業務経験や異文化コミュニケーションのスキルを身に付けることができます。
味の素株式会社は、オンライン学習プラットフォームを活用し、従業員が自己学習を行うことができる環境を整備しています。従業員は、自分のペースで学習を進めることができ、自己啓発に努めることができます。
大手精密機器メーカーであるキヤノン株式会社では、現在新規事業の展開に注力しています。
キヤノン株式会社では、2021年に発表した経営方針で、産業機器・商業印刷・ネットワークカメラ・メディカル分野の事業成長を加速し、現行事業との融合による新たな事業領域を開拓する方針を掲げました。
そこで新規ビジネスの展開に合わせ、非デジタル人材を対象としたリスキリングを開始しています。
キヤノン株式会社では、主力事業である事務機器やデジタルカメラの市場が縮小傾向にあるため、成長市場の事業強化を急ぎつつ、従業員のスキルチェンジを通した成長に注力しています。
以下では、キヤノン株式会社のリスキリングの特徴やポイントを紹介します。
キヤノン株式会社は、従業員が自己の能力を最大限に発揮できるよう、キャリアパスの構築を支援しています。従業員が自分自身のキャリアの方向性を明確にし、必要なスキルを身につけることで、組織の成長と自己成長を両立できます。
キヤノン株式会社は、従業員のキャリア形成を支援するため、キャリア教育プログラムを提供しています。このプログラムでは、キャリアの選択や目標設定、スキルアップの方法などを学ぶことができます。
キヤノン株式会社は、従業員が自己学習を進めるためのオンライン教育プログラムを活用しています。このプログラムでは、従業員が自分自身のペースで学ぶことができ、自己啓発に努めることができます。
キヤノン株式会社は、グローバル人材育成の推進を進めています。海外におけるビジネスの機会を拡大するため、従業員に異文化体験や語学力の向上を支援する取り組みを行っています。
キヤノン株式会社は、従業員が複数の業務に対応するために、マルチスキル習得プログラムを提供しています。このプログラムでは、異なる部門での業務経験や、必要な技術やスキルを習得できます。
日本企業におけるリスキリングが、欧米よりも遅れている理由については、以下のような要因が考えられます。
日本の企業には、従来から終身雇用や年功序列が一般的であり、一度入社すればその企業で一生働き続けることが期待されてきました。そのため、長期的な人材育成や継続的なスキルアップに対する投資が十分に行われてこなかったという側面があります。
日本とアメリカの教育やトレーニングの文化には、大きな違いがあります。アメリカでは、個人の成長やキャリアアップを支援するために、自己啓発や継続的な学びを促進する文化が根付いています。一方で、日本では、学校や企業での教育を通じた学びが重視される一方、個人の自発的な学びやキャリアアップへの取り組みが十分に行われていないという側面があります。
アメリカの企業は、常に急激な変化に対応するための柔軟性やリーダーシップを求められることが多く、そのために必要なスキルや知識を身につけることが一般的に重視されています。一方で、日本の企業は、安定性や安全性を重視する傾向が強く、変化に対応するためのスキルや知識を身につけることがそれほど重要視されていなかったという側面があります。
以上のような要因が絡み合い、日本のリスキリングが遅れていると考えられています。
ただし、最近ではグローバルな競争環境の変化や、ICT技術の進化などが迫り、従来の雇用慣行に根ざした人材育成に限界を感じる企業も増えており、リスキリングの必要性がより高まってきています。
このように、現代の企業が直面しているさまざまな問題や課題を解決するためには、リスキリングが欠かせません。リスキリングによってIT化やDXを進めることは、企業の事業効率を向上させるだけではなく、人材不足を解消するといった事業の存続に関わる問題の解決にも役立ちます。
優秀な人材の獲得が難しくなっている現代社会においては、リスキリングによる既存のリソースを活用する重要性が、今後も高まり続けることでしょう。
もしリスキリングでお悩みの方は、いつでもアルマ・クリエイションにご相談ください。貴社にとって最適なソリューションを提供させていただきます。