サステナビリティとSDGsの違いは?取り組み事例や課題も徹底解説
近年、企業活動で「サステナビリティ」と「SDGs」の言葉が頻繁に耳に入るようになりました。
しかし、2つの概念は混同されがちであり、それぞれの本質的な意味や違いを理解している人は意外と少ないのではないでしょうか。
本記事では、サステナビリティとSDGsの概要やその他の関連用語との違い、企業にとっての重要性、具体的な取り組み事例、そして取り組む際の課題も詳しく解説します。
サステナビリティとSDGsは、どちらも地球環境や社会の持続可能性に関わる重要な概念ですが、それぞれ異なる視点からアプローチする点がポイントです。
それぞれの本質を理解し、より効果的な取り組みをする必要があります。
サステナビリティとSDGsの概要
サステナビリティとSDGsのそれぞれの概要は以下のとおりです。
- サステナビリティとは「持続可能な開発」
- SDGsとは「持続可能な開発目標」
それぞれ詳しく見ていきましょう。
サステナビリティとは「持続可能な開発」
サステナビリティ(Sustainability)は、日本語で「持続可能性」を意味し、環境、社会、経済の三側面で長期的な持続可能性を追求する考え方です。
具体的には、以下の3つの柱をバランス良く保つことを指します。
環境面 |
すべての人々が、健康で豊かな生活を送れるように、地球環境を守り、生物多様性を保全していく |
社会面 |
すべての人が平等な機会と権利を持ち、尊厳を持って暮らせるように、人権、労働環境、貧困問題などの社会課題を解決していく |
経済面 |
すべての人々が経済的な豊かさを持続的に享受できる状態を実現していく |
サステナビリティは、これらの三側面が互いに調和し、長期的に持続していく考え方です。
SDGsとは「持続可能な開発目標」
SDGs(Sustainable Development Goals)は、2015年の国連サミットで採択された、2030年までに達成すべき17の目標です。
具体的な目標は、以下のとおりです。
- 貧困をなくそう
- 飢餓をゼロに
- すべての人に健康と福祉を
- 質の高い教育をみんなに
- ジェンダー平等を実現しよう
- 安全な水とトイレを世界中に
- エネルギーをみんなにそしてクリーンに
- 働きがいも 経済成長も
- 産業と技術革新の基盤をつくろう
- 人や国の不平等をなくそう
- 住み続けられるまちづくりを
- つくる責任 つかう責任
- 気候変動に具体的な対策を
- 海の豊かさを守ろう
- 陸の豊かさも守ろう
- 平和と公正をすべての人に
- パートナーシップで目標を達成しよう
SDGsは、「誰一人取り残さない(leave no one behind)」を理念として掲げています。
サステナビリティと関連用語との違い
サステナビリティと混同されやすいものに以下のようなものが挙げられます。
- SDGs
- CSR
- ESG
それぞれの違いを解説します。
「SDGs」との違い
SDGsは、サステナビリティの理念を実現するための具体的な目標と指標です。
2015年に採択された国連の持続可能な開発目標で、17のゴールと169のターゲットから構成されています。
サステナビリティとSDGsの主な違いは、以下のとおりです。
項目 |
サステナビリティ |
SDGs |
定義 |
持続可能な社会の実現を目指す考え方や取り組み |
2030年までに達成すべき持続可能な開発のための国際目標 |
構成 |
概念 |
17のゴールと169のターゲット |
具体的な目標 |
なし |
あり |
期限 |
なし |
2030年 |
SDGsはサステナビリティを実現するための手段の一つです。
SDGsの達成により、サステナビリティ社会の実現につながります。
「CSR」との違い
CSR(Corporate Social Responsibility)は、企業が社会に対して負う責任を指します。
具体的には、環境保護、人権尊重、労働基準の遵守、地域貢献などが含まれます。
CSRは、企業が自社の利益を追求するだけではなく、社会全体に貢献していくことを目的としています。
一方、サステナビリティ(Sustainability)は、持続可能性を意味します。
サステナビリティは、企業に限らず、個人や政府、国際機関など、あらゆる主体が取り組むべき課題です。
主な違いをまとめると以下のとおりです。
項目 |
サステナビリティ |
CSR |
定義 |
環境、社会、経済の三つの側面がそれぞれ調和し、持続していくこと |
企業が社会に対して負う責任 |
主体 |
企業や個人、政府、国際機関など |
企業 |
目的 |
地球環境や社会の持続可能性 |
社会貢献 |
具体的な取り組み |
環境負荷の低減、社会課題の解決、経済活動の持続可能性の向上など |
環境保護や人権尊重、労働基準の遵守、地域貢献など |
これらの違いを理解した上で、それぞれの概念に基づいた適切な取り組みを進めていくことが重要です。
「ESG」との違い
ESGは、投資家が企業の持続可能性を評価するための指標として重要ですが、サステナビリティは、企業が長期的な視点で持続的に成長していくための経営理念や戦略そのものを指します。
ESGとサステナビリティの具体的な違いをまとめると以下のとおりです。
項目 |
サステナビリティ |
ESG |
定義 |
環境、社会、経済の三側面のバランスを保ちながら、長期的に存続していくこと |
環境、社会、ガバナンスの3つの観点から企業を評価する指標 |
目的 |
経営理念・戦略 |
投資判断 |
視点 |
長期的な視点 |
短期的な視点 |
企業は、形式的なESG対策ではなく、本質的なサステナビリティ経営に取り組むことが重要です。
企業がサステナビリティとSDGsに取り組む重要性
企業がサステナビリティとSDGsに取り組む重要性には、以下のようなものが挙げられます。
- 環境リスクの低減
- 新たなビジネスチャンスの創出
- 持続的な成長の実現
それぞれ詳しく解説します。
環境リスクの低減
サステナビリティとSDGsの取り組みは、企業にとって環境リスクの低減にもつながるため重要な取り組みです。
環境リスクを放置すれば、事業活動の停止や企業イメージの悪化など、さまざまなリスクが伴います。
サステナビリティとSDGsの観点から環境対策に取り組むことで、これらのリスクを低減し、事業の持続可能性を高められます。
具体的な取り組みの一例は、以下のとおりです。
- エネルギー使用量の削減
- 3R(リデュース、リユース、リサイクル)の推進
- 資源の有効活用
- 化学物質の使用削減
これらの取り組みは、環境リスクの低減だけではなく、コスト削減にもつながります。
新たなビジネスチャンスの創出
サステナビリティとSDGsへの取り組みは、新たなビジネスチャンスの創出にもつながります。
環境問題や社会課題の解決に貢献する商品やサービスへの需要は高まっており、こうしたニーズを満たす革新的なビジネスが誕生しているのも事実です。
以下は、サステナビリティとSDGsに関連する新たなビジネスチャンスの具体例です。
再生可能エネルギー事業 |
太陽光発電、風力発電、バイオマス発電などの再生可能エネルギー事業など |
省エネルギー事業 |
省エネ設備の開発・販売、省エネルギーコンサルティングなど |
環境負荷の低い素材・製品の開発・販売 |
バイオプラスチック、リサイクル素材を使った製品など |
持続可能な農業・漁業 |
有機農業、自然栽培、エコラベル認証を受けた農産物・水産物の生産・販売など |
教育問題解決事業 |
オンライン教育、途上国向けの教育支援など |
ジェンダー平等推進事業 |
女性のエンパワーメント支援、ダイバーシティ&インクルージョン施策など |
サステナビリティとSDGsへの取り組みは、企業にとって持続的な成長を実現するための戦略の一つとなります。
持続的な成長の実現
企業がサステナビリティとSDGsに取り組むことは、持続的な成長を実現するための重要な戦略です。
以下の3つの観点から、その重要性を詳しく解説します。
収益性の向上 |
環境配慮型製品の開発による新市場開拓 省エネ施策によるコスト削減 サステナブルな取り組みによるブランド価値向上 |
リスクの低減 |
気候変動や資源枯渇などの環境リスクへの対応 人権問題などの社会リスクへの対策 将来的な規制強化に対する先行準備 |
人材の獲得・定着 |
社会課題解決に取り組む企業としての評価向上 若手人材の価値観との合致 従業員のモチベーション向上と長期定着 |
サステナビリティとSDGsへの取り組みは、企業の収益性向上、リスクの低減、人材の獲得・定着の3つの側面から、持続的な成長の実現に貢献します。
サステナビリティの指標
サステナビリティの指標となるものに、以下のものが挙げられます。
- GRIスタンダード
- DJSI
それぞれ解説します。
GRIスタンダード
GRIスタンダードは、オランダのアムステルダムに本部を置くGlobal Reporting Initiative (GRI)が開発した、サステナビリティ報告の国際的な枠組みです。
この枠組みは、企業が経済、環境、社会に与える影響を透明性高く報告するためのツールとして広く認知されています。
GRIスタンダードは、企業が経済・環境・社会に与える影響を報告し、持続可能な発展への説明を目的としています。
GRIスタンダードの採用は世界的に広がっており、2021年1月時点で、世界で4000社以上、日本では80社以上がこの枠組みに準拠して報告書を作成しています。
DJSI
DJSI(Dow Jones Sustainability Indices)は、世界経済フォーラムとS&P Dow Jones Indicesが共同で開発・運営する、持続可能性への取り組みが優れた企業を評価・選定する株価指数です。
DJSIは、環境、社会、ガバナンス(ESG)の3つの側面から企業の持続可能性を評価し、各業界や地域ごとに指数を作成しています。
DJSIに選定されることは、企業の持続可能性への取り組みが優れていることを示す指標として、投資家や社会から高い評価を受けています。
2023年には、38の日本企業がDJSI World Indexに選定されました。
DJSIに選定された企業には、以下のような企業があります。
- 三菱重工業
- 東ppan
- セブン&アイ・ホールディングス
- 富士通
- 本田技研工業
これらの企業は、環境負荷の低減、資源の有効活用、従業員の福祉向上、地域社会との共生など、さまざまな持続可能性への取り組みを行っています。
DJSIに選定されることは、企業にとって大きな名誉であり、企業イメージの向上や投資家からの資金調達に有利に働く可能性があります。
サステナビリティとSDGsへの取り組み事例
サステナビリティとSDGsに取り組んでいる以下の企業の事例を紹介します。
- 楽天
- ファミリーマート
- ニチレイ
それぞれ詳しく見ていきましょう。
楽天
楽天は、企業理念である「イノベーションを通じて、人々と社会をエンパワーメントする」に基づき、サステナビリティの観点からさまざまな取り組みを進めています。
主な取り組みは、以下のとおりです。
環境問題への取り組み |
|
社会課題への取り組み |
|
ガバナンスの強化 |
|
楽天のサステナビリティへの取り組みは、国内外で評価されています。
DJSI(Dow Jones Sustainability Indices)では、2023年に13年連続で「DJSI World」に選定されました。
また、気候変動対策や水資源管理に関する取り組みが評価され、CDP(Carbon Disclosure Project)スコアで、最高評価である「A」を獲得しています。
ファミリーマート
ファミリーマートは、コンビニエンスストアチェーンとして、地域社会と共生し、持続可能な社会の実現を目指しています。
そのために以下のようなサステナビリティ活動に取り組んでいます。
食品ロス削減 |
「ファミマフードドライブ」(家庭で余った食品を回収し、地域のフードバンクなどに寄付する活動) 「エコ割」(賞味期限間近の商品を割引販売) |
プラスチック資源削減 |
プラスチック包装材の使用量削減 リサイクル可能なプラスチック素材の使用促進 |
エネルギー使用量の削減 |
省エネ設備の導入 LED照明への切り替え |
ファミリーマートは、この活動を通じて地域社会への貢献と環境保護の両立を目指しています。
ニチレイ
ニチレイグループは、サステナビリティとSDGsへの取り組みを積極的に推進しています。
「サステナビリティ基本方針」を掲げ、食の「調達」「生産」「物流」「販売」などの事業活動を通じて新たな価値を創造し、社会課題の解決に取り組んでいます。
具体的な取り組みには、以下のようなものが挙げられます。
持続可能な食料調達 |
|
フードロスの削減 |
|
リサイクルの推進 |
|
地域社会への貢献 |
|
ニチレイグループのサステナビリティ活動は、地球環境の保全、地域社会の発展、そして企業の持続的な成長に貢献しています。
サステナビリティやSDGsに取り組む際の課題
サステナビリティやSDGsへの取り組みは、企業にさまざまなメリットをもたらしますが、以下のような課題もあります。
- 専門知識やノウハウ不足
- 費用対効果の不明確さ
- 継続的な取り組みが必要
それぞれ解説します。
専門知識やノウハウの不足
サステナビリティやSDGsへの取り組みは、企業にとって新たな事業機会の創出や、企業価値の向上につながる可能性を秘めています。
しかし、その一方で、専門知識やノウハウ不足の課題も存在します。
具体的な課題としては、以下のようなものが挙げられます。
- 目標設定の難しさ
- 適切な施策の立案
- データ収集・分析の困難さ
- 人材不足
課題を克服するためには、専門知識やノウハウの習得が重要です。
費用対効果の不明確さ
サステナビリティやSDGsへの取り組みは、長期的な視点に立った投資であるため、短期的には費用対効果が明確でないケースも少なくありません。
投資額に対してどのような経済的・社会的効果が得られるのかを定量的に示すことが難しく、経営層や投資家から理解を得にくい課題があります。
費用対効果を明確にするためには、以下のような点に注意する必要があります。
- 定量的な目標を設定する
- 初期投資だけではなく、ランニングコストも全て把握する
サステナビリティやSDGsへの取り組みは、必ずしも短期的に大きな利益を生み出すわけではありません。
長期的な視点で、企業価値の向上やリスクの低減などの効果を考慮する必要があります。
継続的な取り組みが必要
サステナビリティやSDGsへの取り組みは、短期的な成果ではなく、長期的な視点に立った継続的な取り組みが求められます。
なぜなら、これらの目標は複雑かつ相互に関連しており、一夜にして達成できるものではないからです。
企業の場合、短期的な利益を追求するだけはなく、長期的な視点で事業活動を展開していく必要があります。
継続的な取り組みは容易ではありませんが、企業の長期的な成長と持続可能性を実現するためには不可欠です。
まとめ
サステナビリティとSDGsは、持続可能な社会の実現に向けた重要な概念です。
本記事では、両者の概要や違い、企業が取り組む重要性などを解説しました。
サステナビリティは長期的な持続可能性を追求する考え方であり、SDGsは具体的な目標を設定したグローバルな取り組みです。
企業にとって、これらの概念に取り組むことは社会的責任を果たすだけではなく、長期的な成長にもつながります。
一方で、取り組みを進める上では、短期的な利益との両立や社内外の理解促進、適切な指標設定などの課題があります。
これらの課題を克服し、サステナビリティとSDGsへの取り組みの推進は、企業の持続的な発展と社会全体の持続可能性向上につながる重要な取り組みです。
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