トークスクリプトとは、営業活動時に顧客に対して「どのようなことを話すか」といった内容を、あらかじめ決めておく営業台本(マニュアル)のことを言います。
トークスクリプトがよく使用される「テレアポ営業」などでは、この営業台本のクオリティが顧客獲得の成功率に直結するため、十分に内容を考えて作成することが大切です。
ただ、トークスクリプトの書き方は販売する商品やサービスによって変わるため、慣れるまでは「どのように書けば良いか分からない」という方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、トークスクリプトの基本的な概念を押さえながら、営業効果の高いトークスクリプトの書き方をご紹介します。
会社でトークスクリプトの制作を任されたり、営業成績がいまいち伸びていないとお感じの方も、ぜひ参考にしてください。
トークスクリプトは、営業担当者が顧客に対して営業トークをする際に、話す内容や流れなどをあらかじめ決めて作成する台本(スクリプト)のことです。
トークスクリプトを営業で活用するシーンは、テレアポが代表的ですが、フィールドセールスによって実際の営業現場でも使用されます。
トークスクリプトで最も重要なポイントは、顧客に興味を持ってもらえる内容を複数のパターンで書き出しておき、実際の現場で状況に応じて使い分けることです。具体的には、会話の始まりから商品やサービスについての説明、話の展開、顧客の質問と回答、クロージングなどを、フローチャート式にまとめておくと良いでしょう。
しかし、どのような業種・業態にもマッチするテンプレートは、基本的にありません。
そこで、自分が紹介したい商品やサービスに合わせたテンプレートを自作するのが、最も良い方法です。自分で作ったトークスクリプトであれば、営業トークの最中でもアドリブを効かせやすく、顧客に合わせた営業トークを自然にできるでしょう。
営業トークスクリプトのテンプレートを作成する際に、ぜひおすすめしたいのが「PASBECONA(パスビーコーナ)の法則」です。
PASBECONAの法則とは、1999年に神田昌典が提唱した「ユーザーの購買行動を促しやすいメッセージの伝え方」を具体的に示した、マーケティングの基本法則です。
PASBECONAの法則を使うと「何をどのような順番で伝えるべきか」を迷うことがなくなり、商品やサービスの魅力を最大限に伝えることができるため、営業トークスクリプトの作成にもピッタリです。
トークスクリプトを書く際は、言葉選びや文章の構成が重要です。また、営業対象となる人の心理を予測しながら書くことが求められます。
このPASBECONAの法則には、神田昌典のマーケッターとしての膨大な経験と試行錯誤から導き出された最上級のマーケティングエッセンスが詰まっているため、この法則に沿った文章を書き、トークスクリプトに反映するだけで「誰もが商品やサービスの利点を理解しやすくなり、価値の高いトークスクリプト」が書けるでしょう。
以下では、「人の心を動かすPASBECONAの法則」をトークスクリプトに当てはめながら、具体的に解説します。
PASBECONAとは、以下の単語の頭文字をとった造語で、それぞれに意味があります。
このように『P・A・S・B・E・C・O・N・A』の順に文章を書いて行けば、誰もが商品やサービスの利点を理解しやすくなり、価値の高いトークスクリプトが書けます。
以下では、さらに詳しく事例を挙げながら解説してみましょう。
まず最初に、自分が商品やサービスを紹介したいターゲットに「問題」を定義します。
ここでは「痩せたい人」をターゲットにしながらよくある事例を紹介しましょう。
たとえば「夏を前に新しい水着で海やプールへ行きたいけど、ちょっとお腹周りが気になる…。そんな方方も多いのではないでしょうか?」など。こんなフレーズを、1度は聞いたことがあるでしょう。
商品やサービスを言葉で売るときは、まずターゲットの「問題」を定義して、解決してあげることが重要です。そこで、誰もが「そうそう!」と感じるフレーズを準備することが大切になります。
次に行うのが「共感」すること。ターゲットに寄り添いながら共感し、解決策があることを優しく示します。
たとえば上記の続きで言うと「実際に多くの方がそんな悩みを持っています。でも大丈夫です!今日ご紹介する〇〇を飲めば、あなたのお悩みを解決できます!」
このようにターゲットに優しく共感し、安心感を与えることで、続きを見たり読みたくなるでしょう。
そして次に提示するのが「解決法」です。痩せたい人には「痩せる方法」を伝授します。
「水着を新調したいけど、ちょっとお腹周りが気になるといったお悩みをもつあなたに。今日おすすめするのが〇〇ドリンクです。この〇〇を毎朝コップ1杯飲むだけで、お腹周りがスッキリと痩せられます」
さらに、もっと強くアピールしたいときは「なかなか痩せられないあなたに、今すぐ簡単にできるたった1つのダイエット法」など、数字を使って印象付ける手法もあります。
Benefit(利得)では、上記の「この〇〇を毎朝コップ1杯飲むだけで、お腹周りがスッキリと痩せられます」といった、具体的なユーザーへの利益を強調します。
なぜこの商品をおすすめするのかや、この商品を使うことでユーザーにどのように成功し、どのような素敵な未来を提供できるかを示しましょう。
Evidence(証拠)とは、この商品を使って実際にどれだけの成功データがあるかなどを、ユーザーが一目で理解できるように示す必要があります。
学術的なデータはもとより、具体的に「〇〇%の方が効果を感じています!」というように、数字を使ってわかりやすく示すのも良い方法です。
Contents(内容)では、提供する商品やサービスがどのようなものかを、わかりやすく示すことが大切です。
上記の商品を例にすると「爽やかな柑橘ジュースのような飲みやすさで、毎朝飲むのが嬉しくなる“美味しく飲めて、楽しく痩せられるドリンク”です!」など、ユーザーが欲しくなるような内容を詳しく解説しましょう。
では次に、文章の流れを大切にしながらターゲットに購入を促す「提案」をします。
たとえば「今なら1ヶ月分のご購入で、購入代金20%割引します」など、具体的な数字を入れてアピールしましょう。
ここまで来たら、次は更に購買意欲のある方だけを絞り込みます。
たとえば「今回ご購入いただけるのは、本当に痩せたい方だけ」など、この言葉で「あなたが対象です」と訴えかけます。
そして、最後に行動を促します。
「購入いただけるのは、今から30分以内にお電話いただいた方限定です!本当に痩せたいと思った方は、今すぐお電話を!」このように、できるだけすぐに行動してもらえるように誘導しましょう。
ここでは、トークスクリプトを作るメリットを紹介します。
営業担当者が電話トークを行う際に、トークスクリプトがないと、営業結果が個々のスキルに左右されます。そのため、営業時の機会損失が増えてしまい、結果として企業の利益が損なわれる可能性が高まるでしょう。
しかしトークスクリプトを作成することにより、社内の営業担当者が、商品やサービスについて統一した知識と情報に基づいた話ができます。
全員が同じ基準をもって話すことで、アポイント獲得やアプローチ方法の分析がしやすくなり、結果的にチーム全体の営業成績アップに繋がります。
営業に慣れていない人が、いきなり台本もなく営業や架電をするのは、不安要素が大きいものです。そして不安なまま営業をしてしまうと、スタッフが自信を無くすだけでなく、顧客も不安に感じるでしょう。
そんな時でもトークスクリプトがあれば、自信をもった営業活動が可能です。「話す内容や順番が決まっている」「会話の先が予測できる」「質問の答えが用意されている」ことにより、新人でもスムーズなセールストークを展開できます。
トークスクリプトは、新人教育のテキストとしても活用できます。自社の商品やサービスのメリットを要約したものがトークスクリプトであるため、統一した指導内容で教育や研修を実践することができます。
トークスクリプトをテンプレートに活かすことで、成約の成功率が飛躍的に向上するでしょう。そして以下の項目を重視することで、さらに効果の高いトークスクリプトを作成できます。
トークスクリプトを使って営業を行う際は、テレアポやインサイドセールス、フィールドセールスなどの目的を明確にしてから流れや内容を組み立てて作成します。それは、アポイントの獲得が目的なのか、もしくは成約が目的なのかによってトークスクリプトの内容や流れも異なるからです。
トークスクリプトを使って営業を行う際は、相手の特徴に合わせたアピール方法を準備しましょう。それを実践するためには、顧客のペルソナ設定が効果的です。
具体的な人物像を作ることで、より緻密な内容のトークスクリプトを作成できます。
営業を行う際は、商品やサービスを一方的にすすめるのではなく、相手の状況や反応を見ながらタイミングよく話を聞き出すことも大切です。顧客の悩みがはっきりと分かれば、その解決方法を提示できるため、商談の成約率が飛躍的に向上します。
このように、PASBECONAの法則をトークスクリプトの作成に活かすことで、質の良いトークスクリプトを作ることができます。
質の高いトークスクリプトを用意することで、営業の成約率が飛躍的に高まるでしょう。
ただ、トークスクリプトやテンプレートは、1度作成すれば終わりではありません。実際に営業を行いながら収集した成功と失敗のパターンを分析し、結果をフィードバックしながら制度をさらに高めていきましょう。
ぜひこの記事を参考にしながら、自社の商品やサービス、顧客にマッチしたトークスクリプトを作成してください。