リーディング・ファシリテーターの
下良果林(しもらかな)です。
リードフォーアクションの読書会は、
ただ「事前に読まなくていい」「ワークショップ型」
というだけではありません。
実は、参加した人に「変容」を促します。
もちろん、リーディング・ファシリテーター自身も、
自らのうちに起こった変容を体験している人たち。
今回は「自分発見コンサルタント」として
現在大学で就職相談をご担当のかたわら、
リードフォーアクションの読書会を京都・滋賀で広めている
野口容子さんに、お話をうかがいました。
* * * * *
(1) 第一のステージ
「肩書はひとつでいい」
仕事をキャリアコンサルタントに絞った2011年
私は中学生の時に父を亡くしました。
ガンで9ヶ月の闘病の末、帰らぬ人となりました。
専業主婦で、それ以前も家の商売を手伝っていて
勤めた経験のない母は、
生活のために仕事を探すのですが、
思うような仕事に就くことはできませんでした。
結果として再び専業主婦となるのですが、
このときの経験から「一生働ける仕事」
「自分らしく生きていくこと」が
自分の人生のテーマとなりました。
社会に出て、写植オペレーターや
建築製図の仕事をしてきました。
「手に職」が最初の目標だったのです。
その後、結婚退職・出産を経て、
再び働きたいと思ったときに、
どちらの仕事もIT化が進み、
身につけた技能を活かす機会がなくなってしまって。
そこで子育てしながらパソコンの資格を取得したい、
しかし自宅に自分の使えるパソコンがない、
という状況から、パソコンを使わず試験を受けられた
「初級システムアドミニストレーター」の資格取得にチャレンジ。
スキマ時間を勉強にあてて、
半年間独学の後1回の試験チャレンジで合格しました。
この資格取得をきっかけに、
当時あちこちの自治体で開催されていた
IT講習のインストラクター業務を担当することになり、
OAインストラクターとしての道を歩みだしました。
職業訓練校に勤務していたころ、
受講生さんから相談を受けたことがありました。
彼女はシングルマザーで離婚歴が2回。
受講当時も、別の男性とお付き合いしていました。
そのような状況の中
「今、付き合っている人とも、いつまで続くかわからない。
だから今のうちにしっかりお給料をもらえる仕事に就いて、
小学生の息子たちを自分の働きで育てていきたい」
と話されました。
私はただ話を聴く事しかできませんでしたが、
ご本人は訓練終了後、
事務職として再就職することができました。
このことをきっかけに
「自分にできることは何かないのか」と考え、
調べて、キャリアカウンセラーの資格があることを知り、
その後養成講座を受講して資格を取得しました。
しかし、当時(2007年)では、
キャリアカウンセラーの認知も低く、地方では仕事もなく、
しばらくはOAインストラクターの仕事をメインとして、
行政のミニ講座や就職フェアのボランティア活動をしていました。
そのうち、OAインストラクターの仕事も、
自分が得意とする初歩的なWord・Excelの技能を
身につける講座は少なくなってきました。
そんなとき、たまたま
キャリアカウンセラーの養成講座を担当した先生が、
滋賀県でセミナーを開催したことがあり参加しました。
先生が私の名刺にOAインストラクターと
キャリアカウンセラーの2つ肩書が並んでいるのを
ご覧になったんです。
そこで、私がどちらの活動も
中途半端であることを見抜き
「野口さん、肩書はひとつでいいのですよ」
と声をかけてくださいました。
これをきっかけに
「自分はキャリアカウンセラーとしてやっていこう」
と決めることができました。
それをきっかけにOAインストラクターの仕事を手放し、
キャリアカウンセラーとそれに関わる活動、
そこからつながった活動に絞って今に至ります。
現在は国家資格となり、
名称もキャリアコンサルタントとなりました。
でも、最初の想いを軸に今があると言い切れます。
(2) 第二のステージ
初めての読書会体験に
「めっちゃ楽しい!」「自分もやりたい」と強く思った2014年
2014年「シナリオ・プランニング読書会」に参加しました。
はるばる東京へ。ファシリテーターは木村祥子さんでした。
キャリアカウンセラー仲間からご縁をつないでいただいた
「ハタモク」代表の與良昌浩さんから、
イベントのご案内をいただいたのがきっかけです。
ハタモクは、「就活前の学生」と「第一線で活躍する社会人」が、
立場や年齢を超えて「何のために働くのか」を
気楽に真剣に語り合う場をつくっている団体です。
しかも、與良さんと
「フューチャーセッション」の第一人者・野村恭彦さんも来られて、
ワークショップも開催されるとのこと。
「……行こう!」と、遠距離で旅費もかかるというのに
即決で申し込むことにしました。
付箋とカラーペンをたくさん使って
「問い」を立てて話し合う形で進んでいくという
読書会の手法には、
アウトプット効果をものすごく感じました。
参加者が各自導き出したキーワードを
テーブル内で共有していくので、
妙な緊張感もなく語れるのも魅力だなぁと。
課題図書である
『シナリオ・プランニング――未来を描き、創造する』
そのものもワークショップに向いている本だなと思ったのですが、
他の本だったらどういう感じになるんだろう
という興味もわいてきて。
まぁ、とにかくめっちゃ楽しかったんです!
それで
「私も語り合う場をつくっていけたらいいなぁ」
「自分も読書会を開いてみたいなぁ」
と強く思いました。
さまざまなセミナー手法も試していたんですが
「これは自分のキャラに合ってる!」
という直感も働きましたね。
(3) 第三のステージ
2015年、リーディング・ファシリテーターに
「なったからには」と次々読書会を開催
2015年に入り、
リーディング・ファシリテーター養成講座が
ついに大阪で開催されるとのことで参加しました。
講師は、初めて参加した読書会の
ファシリテーターと同じ木村さんです。
朝 10 時から 18 時まで
がっつり学んだセミナーでしたが、
ワクワクしっぱなしであっという間の講座でしたね。
認定書をいただいたからには、
読書会を開催したいなと思って。
最初が滋賀県近江八幡市の
「アクティ近江八幡」で、
その次は草津市の「草津市立まちづくりセンター」で……
というふうに、いろいろな開催場所で。
そしていろいろなテーマや本で、
読書会を企画・運営していきました。
(4) 第四のステージ
現在、仲間やNPOとのコラボ読書会を次々と開催
ファシリテーターにとっての読書会も「学びの場」
それから現在にかけて、
リーディング・ファシリテーター仲間とのコラボ企画読書会や、
NPO・図書館・商工会の協力を得て、
起業を目指す女性のための読書会を開催しています。
滋賀県の湖南エリアを中心として
「地域」で「創業」したい人向けに勉強会を
企画・運営されているNPO「創業未来会議室」の代表の方と
個人的につながりができ、読書会をご依頼いただいたんです。
「創業未来会議室」は、商工会で企画する
「創業塾」的なセミナーに参加する人が
実際セミナー期間終了後に
事業を開始しないことが多いこと、
また「何かやりたい」という思いを持っている女性の方に
一歩踏み出す機会を地域で創りたいという思いから、
各市町の商工会に掛け合い、
短期的にビジネスモデルキャンパスで
自分のアイデアを落とし込む勉強会を展開されています。
年3~4回、同じ内容の勉強会を企画されているのですが、
同じ人が繰り返し受講することが続いているそうで、
一度受講した方が再度集まれるように、
また違った視点から学べるように、
ということでお声がけいただきました。
会場に使わせていただいたのは、
図書館の会議室。課題図書も、
図書館司書さんから
「図書館での本の探し方」をレクチャーいただいて、
30冊近く選んでくださって。
テーマが「お金」だったのですが、
多彩な切り口で選定してくださり、
ずらっとならんだ本を見るだけでワクワクしちゃいました。
『男はお金が9割』という本を手に取った方に、
気になったキーワードを紹介いただき、
その後グループで討議してもらいました。
その本はどちらかと言えば
「肉食系」なグイグイいく男性像が書かれているのですが、
そこから今の若い男性が「草食系男子」と言われている
理由についてアレコレ意見が出ていました。
また『すべてのお金の悩みを永久に解決する方法』という本から、
ご自身の家庭のマネープランを家族と相談するという
「小さな一歩」を宣言された方もいました。
好奇心旺盛な方ばかりで、
キーワードの共有を聞いているこちらが
勉強になったくらいでした。
地方と首都圏では、参加者の質が大きく違うと感じます。
これは20代の頃に関東と関西と両方で仕事していた友人が
「東京では新しいモノやコトにすぐ興味を持って
やってみる人が多いけれど、大阪ではすぐに飛びつかないで、
知り合いから“○○がよかったわ”な
口コミから興味を持つ人が多い」
とつぶやいていたことが思い出されます。
読書会活動も「新しい読書スタイル」
というだけでは集客が難しいなあと。
「何か」と「リードフォーアクションの読書会」を
組み合わせて企画することで、
良さを感じていただけるのではないでしょうか。
そういう点では、この事例のように
「いつか起業したい女子」で集まるコミュニティに
読書会を体験してもらうなど
既存のコミュニティの興味・関心のあるテーマでの開催は、
参加者の対話が深まるのでいいですね。
また、場所の提供をしてもらったり、
別の人脈から口コミで人が集まったり
というのも新鮮な視点で対話が進むので面白いと感じました。
「行動する読書会となりたい自分になる魔法の質問ワークショップ」
という読書会では、
「魔法の質問キッズインストラクター」の方と組み、
リードフォーアクションのメソッドと
「魔法の質問」のワークを合体させた形で行いました。
お子さん同伴でご参加いただきましたが、
それでも時間内におさめられ、
運営できたというのはいい機会となりました。
ファシリテーター同士のコラボ企画もあります。
「【未来から選ばれる働き方】から学ぶ読書会」は、
『未来から選ばれる働き方』の著者のおひとりである
神田昌典さんの本を使って読書会をやりたい、という思いから、
リーディング・ファシリテーター仲間の西野高弘さん、酒巻秀宜さんの
ご協力を得て企画した会です。
私自身がキャリアコンサルタントというのもあってか、
「未来」「働き方」というキーワードに
ピンときた方が多く参加くださいました。
西野さんがコメントしてくださった
「進化も劣化も、とにかく変化がドンドン早くなる時代に
その定義をドンドン書き換えていけること」
と言う言葉に、
「自分はこう」という思いこみを手放すことも必要なんだな、
と勉強になりました。
リードフォーアクションは
「講座のシナリオが良く出来ている」と感じますね。
読書会の他にも勉強会や他の方と
コラボの講座などを企画しては実行に移していますが、
講座を企画した際のタイムスケジュール作成などに
リードフォーアクションのメソッドを活用したりもしています。
ファシリテーターになる前の自分と
今の自分とを比較してみると……。
元々「仕掛け人」体質で、
いろいろな企画を形にしてきました。
そこに「最強のツール」が加わったなと感じますね。
ワークショップは「1回体験したらもういい」
と感じるものが多い中、
リードフォーアクションの読書会は
何度も繰り返し開催できる点が魅力です。
参加者や本が変わると、
対話の内容も深みも変化し、
ファシリテーションしている側も学びが多いんです。
キャリアコンサルタントとして企業に訪問し、
従業員さんと面談する機会があるのですが、
中小企業の事業所様では、
経営者のマインドや理念、ビジョンという
「軸」になる部分が社内で共有できていない
と感じることも多々あります。
もし、社長さんが本を出版されていたり、
記念に社史など出版されていたりしたら、
本棚に飾るのではなくそれを社員全員で読む読書会を
開催してみたいですね。
企業マインドの熟成に役立つのではと思います。
あとは、地域課題、社会課題を扱う
コミュニティで読書会を開催して、
多くの人の想いや意見を引き出せるといいなあ
と思っています。
リードフォーアクションの読書会に「面白そう!」と思ったら、
ぜひ参加してみてください。
リーディング・ファシリテーターの役目は、
皆さんの心の中の想いを引き出すこと。
皆で本を読む体験を通して得られるものは、多いですよ!
野口 容子さんプロフィールはこちら
(2017年6月取材 下良果林)