リーディング・ファシリテーターの
下良果林(しもらかな)です。
今回は、宮城県を拠点に
「シンプルルール戦略コンサルタント」
としてご活動のかたわら、
地元の企業内(なんと保育園でも!)
で読書会を開催されている及川宗峰さんをご紹介いたします。
企業の経営支援と、企業内でのRead For Action読書会の実施。
そこにはやはり、共通点があるようです。
その共通点を探るため、普段のお仕事からじっくり伺いました。
* * * * *
― 普段は、どんなお仕事をされていますか?
普段は、経営支援の仕事をしています。
世間的にいう、コンサルタントの部類ではありますが、
おそらく一般的なイメージとは真逆の、
必要な状況では自分も段階的に現場に
入っていくという泥臭いスタイルですので、
コンサルタントと名乗っていいのかどうか。
仲間うちからは「ダイ・ハード」と呼ばれます(笑)
今、すすめているのは、シンプルなルールを使っての経営支援で
「あいことば」と呼んでいる方法です。
これは何かというと、経営や仕事における目的、
ゴールの見直し・再定義をかけることで、
要点に集中するルートをつくって、
ムダをそぎ落としていく……。
その結果「共有されたゴールに対して、
組織の力が集中される」
という状態をつくる。そういう内容です。
組織全体でおこなうか、
業務の一部つまりルーティンワークでおこなうか、
の2パターンあります。
全社的におこなう例だと
「先代創業者から会社を引き継いで3年目」
という二代目経営者のケース、
多店舗展開をふまえた創業経営者のケースがあります。
このケースでは、ゴールを示す
「シンプルな事業定義」や「シンプルな経営理念」
として使っていただいています。
現場にいる方にとって、
仕事のゴールが明確になるのがポイントです。
会社の原点・成り立ち、創業経営者のこれまでを含みながら、
さらに、二代目経営者がこれから目指す先を
「ひとこと(あいことば)」にまとめていくので、
足場が固まってくる。
そこからいよいよ、
ご自分の持ち味を活かしたビジョンや、
そのための戦略を……と、
今後に向けての舵取りを進めておられます。
これらのケースだと
「できることは、ある程度見えている」
「行きたい方向は見えている」
だけど、状況は複雑化し、混乱している。
どう全体の整合性をとればいいか……。
どのようにすれば整合がとれるか、わからない。
その結果、自分のところにご相談されるという場合が多いです。
業務の一部でおこなう場合も、
組織をまとめ、業績向上を一気にすすめる点で、
基本は同じです。
今のところ、ゴールに加えてルート設定もつけています。
最終的に、何かを目的に事が動き出したとき、
シンプルなゴールに行きつく形をつくるのですが、
そこで土台になるプラットフォームの準備というか……
認識の共有ですね。
パソコンで言えばOSのような、
ある種の「場のセッティング」をあらかじめおこなう。
それで、情報の伝達をスムーズにする。
それが、私がやっていることなのかもしれません。
― シンプルな目的を設定する、
そのための場をセッティングする、
ということは、リードフォーアクションの読書会設計と、
とても似ている気がします。
そこに着目された、いきさつについて教えていただけますか。
簡単に言うと……関わる人が、
ある目的を達成するために集まっているなら、
スムーズにゴールに行くなら、
その方がいいのではないか。
逆に、不毛なすれ違いや思い込みで
変な方向に行ってしまうのが嫌だというか。
そういうところはありますね。
そこでカギになるのは、見えない構造や、
背景にある情報のズレ、個々の感情などです。
そのあたりに個人的に興味があるというのも、
関係していると思います。
人間がひとりひとり違いますし、
同じことを聞いても受けとめ方が違ったり、
同じものを見ても、違うように感じたり、
ということがありますよね。
そこはまず単純に、
何かにつけて「どうして?」と。いつも気になります。
「職場から、自宅に帰る」という場合、
途中の道で迷う方はあまりいないと思います。
もし迷っても、道や看板など目に見えるので
起動修正がしやすい。
でもアタマの中の動きになると、そうはいかない。
例えば、困ったときや、迷ったとき、
何かを実現したいとき
「どうしたらいいか」とか「答え」を求める人、
いますよね。
では「答えを出せば満足するか」
「すぐできるか」というと、
意外と、そうではない。
答えだけ分かっても「動けない」
という場合もあります。
どうしてこの話をするのかというと、
経営支援をする際にどこまで深く関わるか……
自分としては
「相手がこれからどう生きていくかに影響する」と考えると、
勝手に安易な答えを出せないですね。
「相手が、これから、どうなりたいか」が重要なので。
望まれたとおり「答え」や「やり方」のみを提供しても、
跳ね返されたり、本心では違うことを
感じておられたりということもありますから。
そこでいろいろと洞察していくのですが、
言動が一致していない場合や、
求める結果に対して行動が一貫していないときの違和感や
チグハグさに隠れている要点を導き出します。
そして、本人の目的地や、
向かっていきたい方向が見えてきたら、
流れを調整して、スムーズにする。
コンピュータに興味があり、
25歳で起業したのですが、
途中から他社の支援業務が増えていき、
30歳の頃からは、会社の立ち上げや全社的な支援など、
重量感がある案件が増えました。
そうすると、心の動きや感じ方、
感性から「強み」を観察したり、
その人、その人達が、
スムーズに動けるようにするにはどうしたらいいのか、
ということを考えるようになったりして。
それと同時に「どうして人は、こんなに違うんだろう」
と感じるようになって、今そうであるように、
人間や、認知・認識に関心が向いていったのです。
33歳になった2013年には、
拠点を再び宮城にして。
2016年には、助言をいただくなどのきっかけもあって、
複雑化した自分自身もシンプルにしていこうと(笑)。
今は冒頭でもお話しした「あいことば」をテーマに、
検証をすすめながら活動しています。
― リーディング・ファシリテーターとなった時期と
そのきっかけについて、教えてください。
リーディング・ファシリテーターになったのは、2016年3月です。
山本伸さんによる
リーディング・ファシリテーター養成講座を
東京で受けたのですが、当時、かなり短い期間で
大きな立ち上げ案件があり、
寝る間もないほど忙しくしていました。
その中で、ほんの少しスケジュールが空いた隙間に、
駆け込みで参加しました(笑)。
読書会を知ったきっかけとしては……WEBで見た気がします。
でも案の定「宮城県ではやってないなぁ」とガッカリ(笑)。
そんなとき、仙台の
リーディング・ファシリテーター奈良理香さんとお会いして、
その後、読書会に参加しました。
そのときに「これは、すごくいいなぁ」と。
読書会も面白くて、参加されていた方も、
素敵な方々で、感激して。
それから
「拠点がある宮城県北部でも
リードフォーアクションの読書会を開催したいなぁ」
と思っていたのですが、またしばらくの間、忙しくて。
その中で「支援先の組織力を高めるには」
「スピーディに、質も同時に上げるには」
と検討していたときに
「あ、リードフォーアクションの読書会なら、ぴったりかも」と。
そこですぐ、養成講座に参加。
おかげさまで現在は、
非常によい形で活用できています。
余談ですが、
リーディング・ファシリテーターとして活動されている、
他の方とお会いする機会があって、
それもとても嬉しいです。
同じ、宮城県北部地域のヒーロークリエイターである
二階堂真吾さんとは、
その後も何かとご一緒させて頂いています。
― その後は、ビジネスをテーマに
読書会を開催されたり、
企業の中で開催されたりしていらっしゃいますね。
やはりビジネスの課題解決に
リードフォーアクションが求められている、
というご実感はありますか?
これは実際に、経営者のご感想や、
経営の現場で体感していることですが、
ビジネス課題の解決に
リードフォーアクションの読書会は非常に有用だと思います。
お伝えしたとおり私の本業は経営支援ですが、
実際に何かのアクションをとる段階になると、
経営者だけではなく、
管理や実務にあたる方々の協力が欠かせません。
現場からの提案で、
実働している現場のチームが直接動くことを想定しても、
同じことが言えます。
組織の実現力・自己解決力を高める方法として、
組織内の個々の力を高めることと、
チームが協力しての創造力を高めること。
この2つに、リードフォーアクションの読書会は
効果を発揮します。
実際に企業内で開催して、その後、
経営者や経営幹部、参加された方からの声、
フィードバックとしては
「要点をつかんでから、動ける」
「そもそも分からなかったことを、高速でインプットできる」
「ひとりではなく、一気にチームで進められる」
「そのチームのアタマの中を、すり合わせできる」
このようなメリットがあるとのことです。
「本当に基本的なことだけど、
組織としてまずは、ここをおさえないと」
という点をおさえることもできます。
例えば、一連のワークや対話によって
基礎的なコミュニケーションの土壌ができたり、
自主的な学びへの姿勢、向上心が生まれたり。
情報が増えれば、状況が複雑化したり、
複雑な状況が増えたりしますが、
別の視点から見ると
「適切なポイントをつかめないことにより、
自分がかえって、煩雑なものにしてしまう」
という面もあるのではないでしょうか。
リードフォーアクションの読書会は、
この点に対するひとつの打開策と
いえるのではないかとも思うのです。
― そのようなご活動の中で、
ご自身が得られた気づきはございますか。
リードフォーアクションの読書会と企業との、相性の良さですね。
なぜなら
「個々の力と、チームの力を定期的に底上げすることで、
社会全体の生産性を上げるということを最も効率的にできるところはどこか」
と言ったら、やはり企業などの
組織・団体ではないかと思います。
企業での開催を通じて「問いかける力」が、
多人数で、習慣化されていく。
それはやがて生産力の向上につながります。
その企業の開催メリットも、もちろんですが、
社会的にもすごく意義のあることではないかと感じています。
私の仕事の要点もそうですが、
リードフォーアクションの読書会の土台となるものも
「問い」「問いかけ」です。
「問い」を意識的に使う機会というのは、
他にありそうで、なかなかないですよね。
私自身も、自分に色々な問いをかけています。
例えば
「読書会の開催後に、ご参加くださった方々に何を残そうか」
「どんな変化を持ち帰ってもらおうか」
といったことです。
そこで残せたものや、
持ち帰っていただいたもので、
また誰かが変わって、
新しく良い変化を生み出せるのだとしたらうれしいです。
私の場合、日常のフィールドが
企業支援という事もあって、
企業と読書会の相性の良さも実感していますし、
私のスタンスとして
「企業内読書会に特化したリーディング・ファシリテーター」
も面白いなと、思っています(笑)。
― このブログをお読みの方の中には、
企業内での読書会に興味をお持ちの方も
いらっしゃるかと思います。
そのような方にメッセージがありましたら、
お聞かせください。
ご自分の力で、または
自分達の力で部内を変えたいという方、
あるいは自社の課題解決をしたい
とお考えの経営者の方には、
ぜひともおすすめしたいですね。
必要な情報を、ひとりではなくチームで、
しかも短時間で取り入れることができますし、
得られた情報をその場で共有できます。
また、経営者や上司の方がよく口にされるのは
「社員やスタッフが、何を考えているか。
どんなモノの見方をしているか。それがわかった」
ということ。
基礎的なコミュニケーションの機会としても
いいのではないでしょうか。
ゴールに焦点を当てつつ、
自由に意見が言い合えるので、
ミーティングの場としてもいいですね。
本を通して何かに気づく。
自分で要点をつかむためのポイントがわかってくる。
結果「今まで避けてきた専門書を、
自主的に手に取るようになった」
というフィードバックもいただいています。
特に、本に苦手意識がある方からは
「読書の印象が変わった」
「読書が楽しいものになった」
という感想をいただいております。
「読書会」というと
「面倒な感じなのかな」
「本を読むのは苦手だしな……」
という印象がある方も多いでしょうけれど、
実際の読書会では、
そのような本を読むのが
当たり前ではない方の
「開放感にあふれた表情」も、
見ていてうれしいことのひとつです(笑)。
企業内で開催する場合、
目的が何らかの課題解決であるという
ケースが多いと思います。
その場合の重要なポイントは、すばり
「課題は一体何か」という要点化と
「選書」ではないでしょうか。
選書が、課題に対する解決策を引き出す
「テーマ」にあたります。
開催前に、読書会そのものの目的や
テーマを明確にすることによって、
その課題を解決するための解決策を、
参加者が一丸となって
見つけ出していくことができる。
例えば、目的が新規事業の検討であれば、
ビジネスモデルや経営戦略などを
題材にした課題図書に。
業務の知識向上を目的とするのであれば、
その業界の専門書でもいいかもしれません。
どんなテーマの読書会でも、
得られるものはたくさんありますし、
何より個々人の気づきが加速するかと思いますが、
企業での場合はできるだけ短時間で、
何らかの成果を出したいのではないかと思います。
となれば、やはり焦点を明確にしておくことで、
それに対する課題図書の選定やテーマを
明確にしていくことができるし、
その後の結果も変わってくるのではと思います。
やはりまずは、
一度リードフォーアクションの読書会にご参加いただき、
その後、リーディング・ファシリテーターの認定を受けて、
自社でご活用いただくことをおすすめしたいですね。
(2017年2月取材 下良果林)