リスキリングとリカレント教育の違い|注目理由やメリット、導入方法を解説
日本国内の企業が直面する課題には、労働人口の減少による人材不足や、国内外の事業競争の激化があります。
これらに立ち向かい、勝ち抜くためには、優秀な人材を確保するための教育を充実させる必要があります。
そこで注目されているのが、リスキリングやリカレント教育です。リスキリングとは、社内研修などで社員教育を実施する方法で、リカレント教育の社外に学ぶ方法とは教育プロセスに違いがあります。
ただ、どちらも自社に必要となる新しい知識やスキルを学ぶ機会を従業員に提供するといった目的は同じと言えるでしょう。
そこで今回は、リスキリングとリカレント教育の違いを明確にして、注目される理由やそれぞれのメリット、リスキリングの導入方法を解説します。
従業員の教育でお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
リスキリングとは
リスキリング(Re-skilling)とは、近年の情報技術などの革新に対応するために、業務上必要となる新しい知識やスキルに関する再教育をおこなうことです。
リスキリングは、企業が主体的に行う教育方法を指し、事業戦略の一環として社員に教育機会を与えるのが一般的です。
とくに技術革新のスピードが早いIT分野や、DXなどに対応するために、リスキリングを積極的に行なう企業が増えています。
リカレント教育とは
リカレント(recurrent)とは、日本語で「循環する」「再発する」を意味する言葉です。そしてリカレント教育とは、大学などの学校教育を卒業して社会に出てからも必要に応じて再び教育を受け、仕事と学習を繰り返すことです。
日本では、仕事を休まず学び直すスタイルもリカレント教育に含まれます。このようなケースは、社会人になってから自分の仕事に関する専門的な知識やスキルを学ぶために「社会人の学び直し」とも呼ばれています。
リスキリングとリカレント教育の違い
このように、リスキリングとリカレント教育には、教育を受ける対象者に違いがあります。
リスキリングの対象者が企業に所属する従業員であるのに対し、リカレント教育を受ける対象者は、企業を離職した人材です。
そのためリカレント教育を受けた人材の場合は、教育を支援した企業に必ずしも就業するとは限らず、他社に就職したり、起業するケースもあります。
一方リスキリングでは、企業を離職せずに教育を受けることができるため、企業と教育を受ける社員それぞれにリスクが少ない教育方法と言えるでしょう。
もともと日本の企業や社会には、終身雇用や年功序列といった考えが深く浸透しているため、リカレント教育と比較しても、リスキリングの方が浸透しやすい傾向があります。
リカレント教育についての詳しい内容は「リカレント教育とは?企業の導入目的やメリット、支援方法を徹底解説」をぜひご参照ください。
リスキリングが注目される理由
リスキリングが注目される背景としては、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が企業にとって不可欠となり、社員に必要な知識やスキルが増えたことにあります。
DXの推進が国内で求められるようになったいま、新たなデジタル技術を導入し、業務の効率化と生産性の向上をおこなうことが、企業が発展・持続するために欠かせません。
しかしDXの推進には、高度なデジタルスキルを有する人材の確保が必要となります。ただ労働人口の減少が進んでいるうえに、デジタル人材が不足している日本国内においては、社内の人材を育成することが喫緊の課題です。
また、働き方改革や新型コロナウィルスの蔓延による労働環境や働き方の変化も、リスキリングが注目される要因の1つです。
近年の働き方改革や新型コロナウィルスの蔓延により、リモートワークやオンラインを使った会議や商談などが広く浸透し始め、労働環境が大きく変わりました。
このような変化によって、従業員の新たな知識やスキルの習得が不可欠となり、合理的に従業員の教育を実施できるリスキリングが注目されるようになったのです。
これからも労働環境の加速度的な変化が予測される中において、リスキリングによるスキルアップやキャリア形成の重要性が高まると考えられています。
リカレント教育が注目される理由
一方で、リカレント教育が注目される理由には、少子高齢化や生活スタイルが変わったこと、さまざまな分野で技術革新が急速に進んだことなどが挙げられるでしょう。
今から約50年ほど前の1970年代、日本の定年退職年齢は55歳が一般的でした。その後1990年代には60歳未満の定年退職が禁止され、今では70歳まで働く機会の確保を努力義務とする法案が成立し、70歳まで働き続けられる環境が整いました。これは、単に平均寿命が伸びたからと言うだけではなく、労働人口の減少に歯止めがかかっていないことも大きく影響しています。
このような状況のなか、急速に進む情報化社会の技術革新に対応するためには、過去に学んだ知識やスキル以外の学びが必要です。もちろん、このような理由以外にも、働き方やライフスタイルの多様性といったスマートな理由もあるでしょう。
いずれにせよ、今の時代は「大学を出れば学びは終わり」ではなく、学校を卒業してからも「学び」を続けることが重要であることが浸透し始めています。
このように、リスキリングとリカレント教育それぞれが注目される理由には、企業視点と従業員視点という主体性の大きな違いが見られます。
リスキリングのメリット
リスキリングを行うメリットには、次の5つがあります。
- ・業務を効率化できる
- ・採用コストの削減
- ・人材不足の解消
- ・新規事業の立案と実現を可能にする
- ・企業理念を継承できる
それぞれ解説します。
業務を効率化できる
リスキリングを行うことで、企業の業務を効率化できます。新しいIT知識やスキルが社内に定着することで、業務フローが改善し、自動化やスピードアップに期待ができるでしょう。
また、データ分析や情報管理にも大きく貢献します。
採用コストの削減
企業のIT化やDXを進めるために、優秀な人材を新規採用するには、莫大な採用コストがかかります。しかし、自社の既存社員にリスキリングを行うことで、採用コストを削減可能です。
教育費用がかかるものの、社員の定着率と業務の効率化、採用コストの削減を考えると、企業に大きなプラスとなるでしょう。
人材不足の解消
採用コストの削減とともに、リスキリングによって必要な人材を社内の従業員で賄えるため、人材不足の解消にも役立ちます。
国内におけるデジタル人材の不足は深刻な状況にあるため、多くの企業で採用難となっているいま、リスキリングによる社員教育は必須と言えるでしょう。
新規事業の立案と実現を可能にする
リスキリングによる従業員の知識やスキルのアップデートは、新しいビジネスアイデアの発掘や、事業の拡大にも大いに役立ちます。
企業のグローバル化が進む現代においては、既存の事業だけではなく、自社のリソースを最大限に活かせる事業展開を実現するためにも、リスキリングが必要なのです。
企業理念を継承できる
リスキリングを行うことで、自社独自の企業風土や理念を理解した社員が、積極的に事業をリードできます。
必要なスキルを持つ人材を外部から招聘するよりも、すでに自社の社風を理解した人材を活用することで、最も強みを活かすことのできる事業を展開できるでしょう。
リカレント教育のメリット
リカレント教育が必要となった理由については、次の3つが主な要因となっています。
- ・企業の競争力が向上する
- ・人材不足の解消
- ・従業員の離職を防ぐ
それぞれ解説します。
企業の競争力が向上する
従業員がリカレント教育を受け、学ぶことで、社内教育では身につけられないような専門知識やスキルを習得できるでしょう。
現在の業務に直結した知識やスキルを学び直し、習得することで、他の従業員への教育指導にも役立ち、企業の生産性の向上にも期待できます。
人材不足の解消
少子高齢化社会による労働人口の減少が進む国内産業において、労働者の安定的な確保が企業にとって大きな課題となっています。
このような状況の中で、出産や育児などを理由に離職中の人材や、すでに定年退職した人材に対してリカレント教育を支援することで、積極的な復職を可能にします。
企業がリカレント教育を活用することにより、優秀な人材が長く活躍できる環境を整えられるため、人材不足の解消にも役立つでしょう。
また学び直しの機会を与えることで、仕事に意欲のある人材に魅力的な職場となり、採用市場においても有利となるのもメリットの1つです。
従業員の離職を防ぐ
企業や従業員の終身雇用に対する概念が変化し、近年は従業員が個々の能力の成長や、実力を発揮できる職場環境を求める傾向が強くなっています。
このような状況においては、企業がリカレント教育を支援し、従業員が積極的に学べる環境を整えることが重要です。
企業が売上や利益を追求するだけではなく、従業員とともに成長して社会に貢献することで、従業員の仕事に対するモチベーションが向上し、従業員の離職率の低下にも繋がります。
リスキリングの導入方法
リスキリングを導入するにあたっては、次の4つのフローを策定することが重要です。
- 教育で習得すべきスキルを決める
- 教育カリキュラムを選定する
- 教育環境を整備する
- 教育後の職場環境を整備する
それぞれ解説します。
1.教育で習得すべきスキルを決める
まずは従業員の既存スキルを見える化しましょう。
社内で教育を実施するリスキリングにおいては、従業員がどのようなスキルを持ち、どのようなスキルが必要かを確認した上で、教育すべき知識やスキルを決定することが重要です。
それは、現在のスキルと新たに身につけるべきスキルのギャップレベルを把握することで、教育過程を効率化できるからです。
またリスキリングを行う際は、従業員のスキルをデータで管理するのがおすすめです。データ管理することによって、社内で全体で各担当者のスキルレベルを共有できるだけでなく、教育終了後に最適な業務への配置が可能となります。従業員自身も自分のスキルをキャッチアップできるため、しっかりと管理・共有しましょう。
2.教育カリキュラムを選定する
リスキリングの導入にあたり、重要となるのが、教育カリキュラムを適切に選定することです。
自社の業務に必要となる新たなスキルを見極め、スキルにマッチした教育カリキュラムを選定しましょう。
教育カリキュラムの選定においては、専門知識のある社外の教育コンテンツの活用がおすすめです。
特に初めてリスキリングを実施する際は、外部のカリキュラムを活用することで、専門的な教育ノウハウを学び、社内に教育体制を構築することができるでしょう。
3.教育環境を整備する
リスキリングはリカレント教育とは異なり、原則として働きながら学習することを想定しています。そのため、リスキリングを業務の一環として行うのが一般的です。
リスキリングに関しては、基本的に就業時間外ではなく、従業員の負荷になりすぎないように、社内研修の一環として行うようにしましょう。
また、学習しやすい環境を整えるために、普段業務で使用しているPCや職場から学習プログラムへ直接アクセスできる学習管理システムの導入が推奨されています。
このように、従業員が学びやすいように環境を整えることも、リスキリングの成功に欠かせない施策です。
4.教育後の職場環境を整備する
従業員がリスキリングで習得したスキルを企業内にしっかりと定着させるためには、学んだ知識やスキルが十分に実践できる場を提供することが重要となります。
せっかくリスキリングで習得した知識やスキルを十分に発揮できる職場環境が整っていないケースがよくあります。これは、企業にも従業員にも、大きな機会ロスを生む原因です。
習得したスキルは、慣れるまで実践を繰り返すことが大切です。そこでリスキリングのスケジュール管理においては、教育後の職場環境と業務の遂行を含めた計画を行いましょう。
リスキリングとリカレント教育のまとめ
このように、リスキリングやリカレント教育には、主体性の違いや導入方法に違いがあります。
ここではリスキリングを中心に解説を行いましたが、リカレント教育についての詳しい内容は「リカレント教育とは?企業の導入目的やメリット、支援方法を徹底解説」をぜひご参照ください。
また、リスキリングやリカレント教育に関する疑問や質問は、アルマ・クリエイションにご相談ください。それぞれの企業ごとに最適なソリューションをご提供いたします。
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